「不老不死の男」の惰眠と後悔 Mrs.fictions『伯爵のおるすばん』再演

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舞台
2019.2.2

Mrs.fictionsの舞台『伯爵のおるすばん』が、3月20日から吉祥寺シアターで再演される。

2007年に結成されたMrs.fictionsは、今村圭佑、岡野康弘、中嶋康太からなる劇団。「人と人とは出会わなければならない」を理念に掲げ、複数の劇団が15分間の舞台作品を紹介するショーケースイベント『15 Minutes Made』などを展開している。

2013年に初演された同作は、「不老不死の男」と言われたサンジェルマン伯爵の生涯を描いた作品。18世紀に稀代の詐欺師として約100年にわたって活動した後、宇宙が終わりを迎えるまで惰眠と後悔にまみれて静かに過ごすサンジェルマン伯爵と、彼が愛した人物たちが織り成す物語を描く。

作・演出を中嶋康太(Mrs.fictions)が担当。キャストにMrs.fictionsの今村圭佑と岡野康弘をはじめ、市原文太郎、大宮二郎(コンプソンズ)、木本夕貴、東野良平(劇団「地蔵中毒」)らが名を連ねる。の予約受付は2月3日10:00からスタート。

中嶋康太は再演に際し、「吉祥寺シアターさんはじめ様々な助けを借りてもう一度すみずみまでお届けしたい、今の私たちにぴったりの演目です」と意気込みを語っている。

中嶋康太(Mrs.fictions)のコメント

「死ななかったらどうしよう」
物語の中でたまに描かれるこの想像がとても好きです。不老不死というのはおそらく死の恐怖を和らげる為に誰かが考えた嘘っぱちの概念なのに、そこに無用なリアリティを感じてシクシクと胸を痛めてしまう、そんなバカバカしくて可愛くて美しい想像力の飛距離みたいなものが好きなのだと思います。 私は多分結構かなり臆病なので死んだり終わったりするのが嫌いだし怖いんですけど、だからこそ心の準備みたいなことをしておきたくて、人生こんな感じで終わるのならまあアリかな? という気分で書いたのがザ・ミセスフィクションズ※2『サヨナラ サイキック オーケストラ』でした。地球に巨大隕石が落ちるお話です。(※ザ・ミセスフィクションズというのは我々が滅多にやらない単独公演の超カッコイイ呼び方なので是非覚えて帰って下さい)
なので今回は死ななかったときの心の準備もしておきたくて、不老不死で有名な伯爵さまを主人公にしてみました。ずっと死なないまま、地球も宇宙もその外側? も全部終わるまでを描きたいと思っています。もちろん難解で壮大な歴史物とかではありません。特に
理由も無く長生きしてしまう伯爵さまが、もう会えない人や物や場所に向かって言いそびれた沢山の「ごめんね」とか「ありがとう」を抱えて右往左往するといった、要するに私たちの、いつもの日々の暮らし向きのようなお話です。

……といった挨拶文を2013年初演時のチラシに書いたのですが、読み返してみたら驚くほど気持ちに成長がなかったのでそのまま再掲させて頂きました。吉祥寺シアターさんはじめ様々な助けを借りてもう一度すみずみまでお届けしたい、今の私たちにぴったりの演目です。

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