ベース好き垂涎のメンツとパフォーマンス、そして重低音に震えた『J-WAVE ベース・ロワイアル』

レポート
音楽
2015.11.17
 撮影:上飯坂一

撮影:上飯坂一

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2015.11.11 J-WAVE ベース・ロワイアル LIQUIDROOM

2015年11月11日は、音楽ファンの中の、特に低音に魅せられたタイプの人々(筆者も含め)にとって特別な日となった。この日は「1111」を4本の弦ーーつまりベースの弦に見立てて「ベースの日」とすることが正式に認められてから、初めて迎えたベースの日だったのである。それを記念してベースの日の発起人でもある亀田誠治と、そのキッカケとなったFM局・J-WAVEがタッグを組み、LIQUIDROOMで開催したのが『J-WAVE ベース・ロワイアル』だ。

開演前から場内に流れているのはRed Hot Chili Peppersなどベース好きならニヤリとしてしまう楽曲たち。さすがベーシストの、ベーシストによる、ベーシスト(とは限らないが)のための祭典である。

ハマ・オカモト 撮影:上飯坂一

ハマ・オカモト 撮影:上飯坂一

場内にタイトルコールが流れると大歓声が湧き、ひとり登場した1組目となるハマ・オカモト(OKAMOTO’S)はおもむろにハンドクラップを要求する。そしてオーディエンスによるハンドクラップをドラム代わりに、自身のベースとのセッションを始めたのである。なんとも粋な演出だ。しばらくすると「本物の」ドラムとしてオカモトレイジ(OKAMOTO’S)が登場、さらに間を空けてペトロールズの長岡亮介(G)も加わり、ジャムセッションに。後半にはラッパーの呂布まで登場するなど初っ端から豪華なメンツである。ツボを押さえたゆったりとしたベースラインに時折テクニカルな小技を交えるハマのベースは、半強制的にステップを踏んでしまうファンクネスと陽性なグルーヴに満ちていて、「そう、これが見たかったんだよ!」という王道な満足感を味わわせてくれる。さらには観客に対して<低音がめっちゃ好き 待ちわびたベースの日>という自作の歌詞を歌うようにと呼びかけ、笑いと一体感まで作り上げたハマは、最後に「ラインナップ以上のことが起きるんで、今日は」と期待を大いに盛り上げる一言を残してステージを後にした。

撮影:上飯坂一

撮影:上飯坂一

2組目はKenKen(RIZEなど)。トレードマークのハットを被りガウンを羽織って静かに歩み出た彼は、「セッションだって聞いてたから、何も決めないで来ちゃったんだよねぇ」「25分間、好き勝手やらせてもらいます」とゆるめの宣戦布告。が、そこからはエグいほどのパフォーマンスを展開する。スラップというよりもはや「弦をぶっ叩いている」と言ったほうが相応しいようなプレイングで不協和音を鳴らしながら、ラップとも朗読とも取れるような言葉の数々を繰り出し、その鬼気迫る迫力に観客は息を飲む。そこへスティーヴ・エトウが加わってパーカッションとのセッション形式となるが、なんとスティーヴは途中からドラム缶を叩き始めたではないか。さらに伊藤篤宏がオプトロン(蛍光灯を使用した音具)で参戦し、多彩なエフェクトを駆使したベースと、ドラム缶を叩くという極めてプリミティブな金属音のビートに、光とノイズをかき鳴らすオプトロンという、おそろしく前衛的なインダストリアルが展開されていく。超高速のスラップなど、そのテクニックもすさまじかったのは言わずもがなだ。若くして日本最高峰のベーシストとも呼ばれるKenKenによる、ベースの表現を超えるかのような圧倒的なパフォーマンスだった。

KenKen 撮影:上飯坂一

KenKen 撮影:上飯坂一

撮影:上飯坂一

撮影:上飯坂一

ここからはTOKIEと中尾憲太郎がステージを引き受ける。この日唯一のツインベースでの登場となった二人だったが、そこにドラマーの柏倉隆史が加わり、ベース、ベース、ドラムというこちらも異色のセッションで重厚なグルーヴが形成されていく。中尾が低音でボトムを支える上を、TOKIEがエゲツなく歪ませたフレーズを泳がせてアンサンブルの妙を見せ付けたり、ピックで弾いていたかと思えば、ピックを加えながら指で弾いたり、アップライトベースに持ち替えたりと視覚的にも楽しませる。さらには事前にアナウンスされていなかったDragon AshのATSUSHIが突然現れ、コンテンポラリーながら原始的な熱を帯びた激しいダンスを披露した。TOKIEが「カオスに応えてくれる」と評した柏倉のトリッキーかつエモーショナルなドラムプレイも圧巻。そして登場から一回も演奏を止めないまま、あっという間の持ち時間を終えた4人はさすがのテクニックと貫禄、そして「華」を見せつけ、バトンを本日のトリであり本イベントの主催者でもある亀田誠治へと繋いだ。

TOKIE 撮影:上飯坂一

TOKIE 撮影:上飯坂一

柏倉隆史

柏倉隆史

中尾憲太郎  撮影:上飯坂一

中尾憲太郎 撮影:上飯坂一

DJブースが設置されたステージに登場したのは、もちろん亀田とKREVA、DJは熊井吾郎が担当している。場内はひときわ大きな歓声が上がり、黄色い声も飛ぶ。トリにしてここまでで初めて「ちゃんと歌がある」ステージとなったこのコラボ、亀田のベースソロをじっと聴いていたKREVAが「いい音色だ……」とつぶやきスタートした一曲目は、もちろん「音色」だった。全体的にファンキーな味付けになっているものの、しっかり歌を引き立たせる亀田の円熟したプレイは、さすがは長年の経験と技術がなせる業といったところか。とはいえしっかりベースソロでも聴かせてくれる。その後「成功」なども披露し、即興のRAPとベースのセッションや、まるでRAPバトルのように向かい合って音をぶつけ合う2人の姿でも楽しませてくれた亀田とKREVA。最後はKREVAの「C’mon,Let’s Go」と、椎名林檎の「丸の内サディスティック」のマッシュアップという、おそらくこの日しか観られないスペシャルなコラボレーションに、場内は最高潮の盛り上がりを見せた。

KREVA 撮影:上飯坂一

KREVA 撮影:上飯坂一

亀田誠治 撮影:上飯坂一

亀田誠治 撮影:上飯坂一

ステージを終え第一声で「楽しかった!」と笑顔を見せた亀田は、司会のDJ・サッシャとの掛け合いの中で「音楽に想いを寄せる会を作りたかった」と、ベースの日の立ち上げ及び『ベース・ロワイアル』への心境も吐露した。そこへ4人のベーシスト+柏倉が戻り、ものすごくレアで贅沢なベース5本でのセッションがスタートする。KenKenが演奏しながら弦を緩めていったりとユニークな演出も飛び出し、各々の奏でる音色の違いや、ベースを構えるスタイルの違いなどもありありとわかったベーシストたちの5重奏。最後は5人全員がステージ最前列まで出て乱れ弾き、第一回目のベーシストの祭典を締めくくった。

撮影:上飯坂一

撮影:上飯坂一

はじめて迎えた今年、すでにツイッターのトレンド入りまで果たしたというベースの日。来年以降も『ベース・ロワイアル』を継続してもらうことは当然の希望として、よりパワーアップ、スケールアップしたイベントとなっていくことを切に願う。なお、この公演の模様は11月18日11:30からのJ-WAVE「BEAT PLANET」内で一部オンエアされるので、ぜひチェックしてみてほしい。


撮影=上飯坂一 文=風間大洋

撮影:上飯坂一

撮影:上飯坂一

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