根本宗子にインタビュー アイドルグループ「GANG PARADE」の楽曲・主演の新作ミュージカルに挑戦!

インタビュー
舞台
2019.5.29
根本宗子

根本宗子

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2009年7月に劇団「月刊「根本宗子」」を旗揚げし、全公演の脚本・演出を担当してきた根本宗子。『愛犬ポリーの死、そして家族の話』(2018年12月上演)が岸田國士戯曲賞の最終候補作となったほか、最近ではラジオDJに挑戦するなど、活躍が目覚ましい彼女が、この夏挑むのが、“ミュージカル”だ。
 
今年4月にメジャーデビューしたアイドルグループ「GANG PARADE」の楽曲をアレンジし、実際にメンバーにも出演してもらうという。どんな舞台になるのだろうか。5月に行われた取材会で、根本にその構想や思いを聞いた。

ギャンパレの魅力は、「チーム感」と「熱量」 

GANG PARADE

GANG PARADE

ーー今回はアイドルグループ「GANG PARADE」(通称:ギャンパレ)と一緒に作品を創られます。ギャンパレは、根本さんにとって、今一番創作意欲を刺激される存在だそうですが、改めてギャンパレの魅力を教えてください。
 
もともと私は旧BiS(※2010年結成、2014年解散のアイドルグループ)が大好きで、そこからWACK(※BiSやGANG PARADEなどをプロデュースしている会社)のアイドルは全部追いかけています。ギャンパレは出来た時から見ているので、ギャンパレが歩んできた道を知っているんです。
 
ギャンパレが持っているドラマ、つまりメンバーが増えたり減ったり、色々なことを経て今の体制になったことや、もともとBiSになりたくてオーディションを受けたけれど、今はギャンパレとして頑張っている人がいることなど、ストーリーが興味深いなぁと思っています。
 
そして、純粋に楽曲がものすごく格好良くて、好きです。メンバーが作曲している楽曲もあるので、それを使ったミュージカルを作ることができたら面白いのではないかなというのが、今回の企画の始まりでした。

ーーギャンパレのストーリーは他のアイドルグループと違う、と。

どんなアイドルグループでもストーリーを持っていると思うのですが、ギャンパレはチーム感というか、成長が凄まじいイメージがあるんです。分かりやすいところでいうと、ダンス。全員で揃える意識がすごく高いグループだと思います。
 
未完成なものを楽しむ、成長していく過程を楽しむといった文化のアイドルグループもありますが、ギャンパレは全員のパフォーマンスをお客さんに見せようという意識がものすごく高い。ライブ見た時にそう思いました。そういう意識がある人たちの方が演劇をやった時に、力を発揮してくれるのではないかなと思ったんです。

 
多分本人たちの中では、「この人に負けたくない」といったようなこともあると思うのですが、そういうことが見ているこちら側には一切分からない。全員が仲間だと思っていて、全員でいいパフォーマンス、全員でこの曲を歌うぞみたいな熱量がすごく好き。演劇の座組でも全員が一丸となっているものはどうしても勝てないので、熱量を持っている10人が芝居をやると、すごくいいものができるし、私も周りの役者も感化される部分や影響受ける部分があるんだろうなと思っています。

根本宗子

根本宗子

ーーその彼女たちのパフォーマンス力もお芝居の中にふんだんに盛り込まれるのでしょうか? どんな風にギャンパレを見せていきたいとお考えですか?

振付も歌割りも変わりますが、入れる予定です。ギャンパレがやっている普段やっているパフォーマンスではないので、その辺は大変になるかもしれません(笑)。ストーリーに楽曲を当てていくので、いつでも全員で歌うわけではないし、まだ分かりませんが、1人で1曲歌う人もいるかもしれない。
 
……今から4、5年前、劇団員がいた時代、私はものすごく劇団員と関係性が近かったんです。同世代の女の子だし、何が悲しかった、楽しかったといったことをほぼ全部知っている状況で本を書いていました。演劇で言う「当て書き」には色々な意味があると思うんですけど、例えば、本当にその人のことを書くこともあれば、役者としてその人を見たときに、こういうことをやると面白いという種類の当て書きもあるし、単純に見た目に当てて書くこともあると思う。昔は、本人たちのことを知って書いていたので、総合的な当て書きをやっていたんです。​
 
そして、芝居をやることがお仕事になってきて、いわゆる芸能人の方と一緒にお芝居をやると、事細かにどういう人生を歩んできたのかは聞かずに書いていくことが増えていくのですが……ギャンパレは、自分がずっと見てきて、どういう人となりなのか、勝手に知っているし、話す時間を何回か頂いて、どういうことを考えている人なのか、私として知る時間を設けました。


つまり、今回の脚本は昔の自分の書き方に近いんです。ギャンパレは役者を本業としている人たちではないので、感じるものが自分に近いものにした方がやりやすいし、面白いものになるのではないかなと思って。本人たちの話をかなり根掘り葉堀り聞きました。今も聞いているところです。かなりエモーショナルな物語を書きそうな予感がします。

「かなりエモーショナルさを求めている」

ーーストーリーのあらすじは、ギャンパレの皆さんに話を聞く中で思いついたのですか? 着想のきっかけを教えてください。

話を聞く前に思いついています。ギャンパレのキャッチフレーズが「みんなの遊び場」なんですが、遊び場を表現するという時に、歌舞伎町を舞台にするのが面白いなと思ったんです。人数がたくさんいるグループとお芝居をつくる機会はそうそうないので、バーレスクっぽいものをやりたいなと。
 
一言で「風俗嬢の芝居です」と言うと、何となくネガティブなイメージを持たれる方もいるかもしれないのですが、何故その仕事に就いたのか、そこで何を抱えている人なのかといったことを描きたいなと思っています。昔自分が書いていた、すごく切実な女の子の想いが、ギャンパレの楽曲とともに、ミュージカルになるみたいな感じですね。

 
ーー歌舞伎町のナンバーワンホストを演じるのが磯村勇斗さんです。磯村さんの印象を教えてください。

物語としての主軸になるのは磯村さんです。あくまで群像劇なのですが、それらをつなぐ役割は磯村さんにやっていただく予定です。ギャンパレ以外の役者さんは、がっつりお芝居をしてもらいます。そういう作り方もあまりやったことがないです。​​

磯村勇斗

磯村勇斗

磯村さんは印象はあんなに背が高いと思わなくて(笑)。画面で見ていると小柄なのかなと思ったら、背が高くてスッとしていて、真ん中に立つのにぴったりだなと。可愛らしい役柄もちょっといかつい役柄も両方できる役者さんだなと思います。

ーーブルー&スカイさん、鳥越裕貴さん、富川一人さんなどと個性的なメンツが並びます。その他のキャストさんについても教えてください。

ブルー&スカイさんはめちゃくちゃ前から知り合いでして、うちの芝居を観にきたブルー&スカイさんが「役者で出してほしい」と言ってくださったんです。登場しどころがないなと思いつつ(笑)、ずっと片隅にはあったんです。それで今回、普通のおじさんをやれる人が欲しくて。もちろん、ブルー&スカイさんに役者としての技術がないと言っているわけではないんですけど(笑)。私が本当にブルーさんのファンなので、お迎えする心の準備が整ったのでお呼びしました。あと、初めてご一緒するんですが、今までに会って話したり芝居を観たりしていて俳優として私栗原くんをとても信頼していて。栗原くんとブルーさんに同じ空間にいて欲しかったんです、なんとなく。​
 
私は今回ギャンパレ自体にかなりエモーショナルさを求めているんです。自分の中のエモーショナルさを体現できる女優さんは私の中でかなり限られている。でも、ギャンパレのライブを見たときに、「この人たちはお芝居の技術とかではなく、そうではないところで出してくれそうだな」と思った。その人たちと並ぶときに、技術でおじさんをやる人ではなくて、「この人、どこから連れてきたんだろう?」という人に出て欲しいなと思って、それでブルー&スカイさんしかいないなと思って!(笑)。あと、ブルー&スカイって、ギャンパレの中にいそうな名前でいいかなぁと(笑)

富川さんはシアタートラムで上演された、草彅剛さん主演の舞台『父帰る・屋上の狂人』(2006年)に出演されていたのを見て、「超上手い!」と思って、いつかご一緒したいなと思っていたんです。去年、新感線☆RS『メタルマクベス』disc1 を見たときは、「富川さんってこんなに動けるんだ」と思って。動けてお芝居ができて、パワフルさも繊細さも持っている人が欲しいなと思って富川さんにお願いしました。富川さんには、世間的では普通の生活を送っているけど、実はすごくぶっ飛んだ性的な趣味を持っているような役を演じてもらいたいなと思っています(笑)。
 
鳥越さんもずっと昔からうちの芝居を観にきてくれていて、いつも「いつか」と言ってくれていて。歌舞伎町に普段から出入りしていて、横暴な役を担っていただく予定です。風俗の話ですが、そんなにいやらしいシーンがあるわけではなくて、歌と踊りで見せていくので、しっかりお芝居を支えてくれそうな富川さんと鳥越さんにお願いした感じですね。
 
それから猫背椿さんもWACKのファンなんです。猫背さんにギャンパレと一緒に風俗嬢をやってもらうか迷って、「まだその可能性あります」と言ったら、「ふざけんな」と言われました(笑)。若い女の子たちをまとめている、おばちゃんをやってもらおうと思います。

ミュージカルだからこその表現がある

ーー先ほど、ギャンパレにエモーショナルさを求めていると仰いました。やはり普通の女優さんとはまた違うものが引き出せるのではないかなという期待があるわけですね?

そうですね。技術でエモーショナルさを出せる女優さんはもちろんたくさんいるんですけど、技術がある人とやりたい作品と、技術ではないところでやろうとしてくれる熱量重視のキャスティングが私の中であって、今回は後者の作品なんです。多分、普通の女優さんではできないことができるんだろうなと思います。

ーー“ミュージカル”ということで、根本さんにとっては取り組み方も変わりますか? また、ミュージカルだからこそできる表現はあると思いますか?
 
チャラン・ポ・ランタンの小春ちゃんに楽曲を作ってもらうなど、自分の中でも音楽を使う舞台は増えていますし、これからも増えると思います。今回の作品も前からやる予定があったので、音楽を使っていくということに対して、自分の中で慣れる時間をここ1年ぐらいとってきました。今回は、ギャンパレの楽曲をミュージカルアレンジしますし、ダンスもちゃんとステージング担当がいます。私も未知数な部分もありますが、周りのスタッフと一緒に作っていきます。​
 
ミュージカルだからこそできる表現はあると思いますし、ミュージカルって、やっぱり広いんです。歌った時の広がりはものすごい。私はヤママチさん(※GANG PARADEのメンバーのヤママチミキ)の歌声が好きなのですが、芝居の中で彼女がちょっと歌うだけで、だいぶ世界が広がる。

根本宗子

根本宗子

私の芝居自体、とてもセリフが多いし、思っていることを基本的に全員が喋ります。普通の作家はここまで書かないだろうというところまで書く。それが自分の芝居の「色」だと思っています。セリフにするとすごく説明的になったり、照れくさいと感じたりすることも音楽になることで全然歌えちゃう。それは曲の力だし、歌う人の力だと思うんです。自分の演劇の幅を広げてくれるなと思いますね。表現の幅が単純に広がるという感じがします。

今回はもともと歌詞が決まっています。グループの曲を使ってミュージカルを作ると、ぶっちゃけ失敗例も多いんです(笑)。無理やり曲を繋げるので、作品としては楽しくても、ストーリーとしてちょっと無理やりだろ……みたいなことになりがち。今回はそれが絶対に起こらないように周到な準備を経て、この公演に私の中では至っています。また、ギャンパレの楽曲はそういうチグハグな状況が起こらないような曲ばかりなので、私の中でも繋げやすいです。その辺を楽しみにしてもらいたいなと思います。

根本宗子のこれまでの10年、これからの10年とは

ーー今回は初のパルコプロデュースですが、何か意識されていることありますか?
  
パルコは、硬派な企画からエンタメ要素の強い企画まで幅広くやられているイメージで、自分が呼ばれる時はどちらなのだろうと思っていたんですが、一番最初にお話をいただいた時に、「夏っぽいお祭り感ある感じで」と言われて。私、演劇界の中でお祭り女だと思われているんだと思いました(笑)
 
それならば、お祭りのオーダーには応えつつ、お芝居面もただのハチャメチャにはならないようにしたいですね。ハチャメチャなドタバタ劇という風に見えるように打ち出すと思うのですが、観に来たら全然違うものになっていると思います。

ーー今年は劇団立ち上げ10周年です。今、ご自身としては振り返って、どういう時点にいらっしゃるのですか?
 
あまり自分では分からないのですが、もっと早くパルコさんから声かかると思っていたんです(笑)。意外と来ねえなあと(笑)そんな簡単に来ないの当たり前なんですけど。まぁ冷静に考えると大きい劇場でいきなりやる人はいないので、ちゃんといろんな劇場で経験を踏んだ上での、今回のお話なので。今までやった色々なことの経験値が生かせればいいなと思っています。​
 
パルコさんから「何かやりませんか」と話をいただいて、ギャンパレとミュージカルという自分発信の企画が通ったので、とても思い入れが強いです。本当にやりたいことを実現してもらえたので、すごく楽しみです。

ーーこれからの10年は、どんな10年にしたいですか?

今まではやれるだけハイペースで新作を作ってきました。演劇のスピード感みたいなものに対して、自分の中で疑問も多かった。1本芝居を作っても、1年後だと忘れられちゃう。「あの人の芝居面白かったなぁ〜」と思っているところで、次の芝居が始まるというスピード感を作りたかったので、そうしていたんです。それを続けて、自分の色やポジションが演劇界の中で何となく確立されたなというのがこの10年でした。
 
これからは1本にかける時間を増やしたいです。逆ですね、今までと。10年やっていくうちにそういう気持ちになったし、今までやった芝居をもう1回リメイクしていくことにも興味が出てきました。これまで再演に興味がなかったのは、初期の作品は役者に宛て書きをしてきたので、他の人がやる意味があまりなかったんです。でも近年描いた作品は、ドキュメントのような作りではないので、人を変えてやってみたいな、自分としても違う演出でやってみたいな、という思いが出てきています。

根本宗子

根本宗子

ーー最後に、今回の舞台をどんな人に見て欲しいか、コメントをお願いします!

毎回同じコメントになってしまいますが、演劇を観たことない人に観てほしいですね。特に今回は音楽も入っていて、観やすいと思うので。ギャンパレのファンの方もそうですし、ギャンパレの曲を聞いたことがない方も観てほしいです。
 
あと、演劇をやっている人、特に小劇場出身の人は、いわゆるちゃんとした「ミュージカル」を観たことがない人が多いと思うんです。「ミュージカルって大きい芝居をして、急に歌って……」と思っている俳優や作り手にも観てもらいたいですね。「アイドルが主役の舞台でここまでできちゃうんだ!」と思ってもらうことが私の目標であり、課題です。「アイドルが舞台やったのね、頑張ったね」だけでは、終わらない舞台を目指しています。

ーー熱量だけではない舞台、と言うことですか。

そうですね。頑張っていたというのは当たり前。みんな頑張っていると思うので。頑張っていた以上の感想を出すというのが、すごく難しいと思っていて。そうでないところで何か感じてもらえるといいなと思います。ギャンパレと私がコラボしたらこうなりました、と新しい何かを出せたら正解だと思うんです。それを探すのが稽古期間だと思います。
 
自分が持っているプランが全部正しいと思って稽古に行かないつもりです。ギャンパレが正解を持っていることもあると思うので。自分の演劇、自分が今まで作ってきた演劇論が全て正しいと思わず、かなりこちらも柔軟にいこうと思っています。

取材・文・撮影=五月女菜穂

公演情報

2019年8月根本宗子企画
『プレイハウス』
 
作・演出:根本宗子
音楽:GANG PARADE
出演:GANG PARADE、磯村勇斗、栗原類、鳥越裕貴、富川一人、ブルー&スカイ、猫背椿
 
日時:2019年8月25日〜9月1日
会場:東京芸術劇場プレイハウス
 
企画・製作:株式会社パルコ
 
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