plenty アルバム『いのちのかたち』から野音公演、来年のツアーまで今の想いを語る
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3人体制となってから初となる、約2年振りのフルアルバム『いのちのかたち』を発表し、先日、日比谷野外大音楽堂にてワンマンライブを行ったplenty。11月3日(火・祝)=「レコードの日」にはバンド初となるアナログLP『いのちのかたち』をリリース。さらに、来年1月からはじまる『plenty ワンマンツアー “いのちのかたち”』も決定している彼らに、日比谷野音公演の振り返りから、アルバム『いのちのかたち』への想いやツアーに向けた今の気持ちを語ってもらった。
──先日の日比谷野音ワンマンは、『いのちのかたち』を聴いたときに感じた、宇宙と繋がっていくような感覚がより強くありましたし、それを野音という屋根がない会場で味わえたのがすごく心地よかったなと思って。今日はそのライブの話からお伺いしたいんですが、終わった今の率直な感想というと?
江沼郁弥(Vo,Gt・以下、江沼):終わってみた感想……寒かった記憶しかないですね(一同笑)。
──やっぱりそこですか(笑)。
中村一太(Dr・以下、中村):曲間にこっち向いて「寒い」って言ってたもんね(笑)。
江沼:うん。これやっちゃいけないやつだと思って(笑)。
新田紀彰(Ba・以下、新田):郁弥と俺は前にもやったことがあったんですけど(2012年4月)、その時も寒くて。あったかい時期にもやってみたいです。
──でもなんか、その寒さも良かったんですよね。アルバムを聴いた後に残る温かさを、より体感できる感じもしたので。ライブにはレコーディングにも参加された方々(sébuhiroko(Piano)、山本拓夫(Sax)、村田陽一(Trombone)、西村浩二(Trumpet))も、ゲスト出演されていましたね。
江沼:sébuさんとは何度かやらせてもらってるんですけど、すごいんですよ。拓夫さんたちもすごいし。なんか……どう言えばいいのかな(笑)。
──MCでもおっしゃってましたよね。「聴けば分かると思います」って。
江沼:そうそう(笑)。それこそなんか宇宙っぽいというか。テクニックどうこうじゃなくて、精神が鍛えあげられてる人たちだから、一緒に演奏していると連れて行ってもらえる感じというか、どっか行っちゃう感じというか。
──曲が持っているものを増幅させてくれたような?
江沼:うん。なんか、そういう音楽の高みみたいなものを味わうためにやっているというのもあるので。気持ちよかったですね。本番もそうだし、リハのときも。
中村:ライブで演者が放つオーラというかパワーみたいなものは、リハではなく本番で初めて見えるじゃないですか。「よっしゃ、見せてやるぜ」みたいな(笑)、あの感じはすごくシビれました。
──やっぱりリハとは全然違います?
中村:違いますね。やっぱりお客さんを前にすると、オラオラ感が出てくるというか(笑)。そういうところで負けないようにしようっていう気持ちもあったし、逆に一緒に音を出す仲間が増えたなっていう感じもありました。
新田:sébuさんとは「よい朝を、いとしいひと」のレコーディングで一緒に音を鳴らしたことがあったんですけど、拓夫さんたちとは初めてで。レコーディングは、俺らの演奏を録ってから、そこに音を入れてもらったので、同時に音を鳴らすことは新鮮だったし、すごくいい経験になったと思います。いつもの3人でやってる感覚と違うというか、またデカいものを感じられて。またやりたいですね。
江沼郁弥(Vocal/Guitar)
──過去曲もアレンジされていましたけど、特にゲストの方々含めた全員での「ETERNAL」がとにかく圧巻で。
江沼:あれは成功だったね(笑)。
中村:リハで「やり過ぎたら戻ろう」っていう話をしてたんですよ。
江沼:あの曲は「カオス」がテーマだったんですけど、カオスってやっぱりカオスだから、やり過ぎたらお客さんが具合悪くなっちゃうんじゃないか?って(一同笑)。そこから戻していったんですけど。
──じゃあリハではもっとカオス?
江沼:ある程度練ってはいたんで、具合が悪くなるまでにはならなかったんですけど。でも、すごいカオスになりました。
──まさにそこが気持ちよかったです。今後はゲストをもっと入れていきたいですか?
江沼:入れていきたいですね。ここら辺で、3人での活動に終止符を打ちたいなと思っていて。
──そうなんですか?
江沼:いや、まだどうなるか分からないですけど(笑)、なんか……自分が表現したいものが、そういうものになってきているのかなと思って。音数どうこうというより、大きくなってきているというか。3人だから3人だけでという感じではなく、もう少し広くやっていきたいと思います。
──その編成でのライブも楽しみにしつつ、アルバム『いのちのかたち』についても伺っていきたいと思うんですが、そもそもなぜ「いのち」や「愛」を掘り下げようと思ったんですか?
江沼:最初は思いつきだったんですよ。今年1年を制作の年にしようっていう会議があって、どうしようかなって考えているときに、そういえば「愛」ってちゃんと描いたことがあんまりなかったなと思って。これまで1枚のアルバムで1つのテーマをというのをやったこともなかったので、じゃあそのテーマを「愛」にしてみようと思って始めた1曲目が「体温」だったんです。そこから愛ってなんだろう?って考えながら書いているうちに、男女のいざこざとかではなく「生命愛」みたいな方になって、それが「いのち」とか「宇宙」とか、「生きる」っていう方に行って、それが全部「愛」とイコールで繋がっていって。
──じゃあ、最初はなんとなくやってみようかなぐらいの感じだったと。
江沼:それぐらいの気持ちだったんですけど、後からちょっと後悔したりもして(笑)。やっぱり「愛」っていうテーマって重たいじゃないですか。なんかよく分かんないから途中で止めようかなとは思ったけど、逃げちゃいかんなと思って最後までやりました。
──江沼さんが「愛」について掘り下げようと思っていたことを、お2人は直接聞いてたんですか?
中村:言葉として直接言ってたっけ?
江沼:言ってないんじゃないかなぁ。
中村:でも、「自分が表現したいものを、言葉では言い表せないところがある」って言っていて。自分達は音楽をやっているわけだから、それを音楽で表現できるのが理想だし、表現しようということになったんですけど、それをするにはどうしたらいいんだ?っていう話はしてましたね。歴史的に、そういう「言葉では言い表せないもの」を表現している人たち、表現しようと叫んでいるような音楽を聴いて、「この人たちにはグルーヴがあるよね」とか。
──どの辺りを聴いてたんですか?
江沼:Robert Glasper(ロバート・グラスパー)?
中村:あぁ。グルーヴの話でね。
江沼:あとはリズム隊で言えばPortishead(ポーティスヘッド)とか。
中村:そうだね。あと、個人的にはゴスペルもあったんですよ。あの人たちが奏でる音楽って、変な言い方ですけど、お金の色がまったくないんですよね。愛の歌だったら「あなたが好きです」っていう気持ちだけで歌っているし、神様と通じたいという気持ちだけで音楽をやっていて。そういうところが大事だと思うんです。言葉では表現しきれないところを表現しきるためには。そこは気持ちだけがあればいいわけじゃないんですけど、そういう部分はすごい意識してました。
新田:今回は郁弥が歌詞や曲を作る時間もあったし、去年の8月から一太が入って、みんなでスタジオに入ることもできるようになったんですよ。郁弥と2人だったときは一緒にスタジオに入る時間も少なくて、データでやり取りすることが多かったんですけど。でも今は、郁弥がまず「こういうのが出来た」って持ってきたものを、まず一太に投げて。ここの2人は話が合うというか、すぐに分かり合えるというか(笑)。「こういうことを言ってるから、こういう風にしてみようか」って、それを俺に分かりやすく伝えてくれるし、自分にない引き出しを持っているので、そこがすごく刺激的でよかったなと思います。
新田紀彰(Bass)
──先ほどグルーヴというお話が出ましたけど、『いのちのかたち』は、それが心地よいものになってますよね。
新田:「体温」がまず出来て、曲としてはゆったりしてるんだけど、もっとリズム隊だけでも踊れる感じ、横ノリにしたいっていう話があって。今回はリズムを重視していた部分もあったので、グルーヴを強化しようっていうのはありましたね。
──江沼さんとしても、グルーヴがもっと強いものにしたいという想いがあったんですか?
江沼:なんかね、むしろ音楽にはグルーヴしか必要ないような気がしてて。
──それはまたなぜ?
江沼:なんでだろう……音楽だから、かな?(笑) 自分がそういうものが好きっていうのはあるし、曲が良い、メロディが良いっていうのは大前提ではあるんですけど。やっぱりアレンジしていて、俺が歌詞やメロディやギターのコードを変えても、そんなに変わらないんですよ。でも、ベースやドラムのパターンとか、リズムの組み合わせで曲の雰囲気は変わるし、グルーヴが良いから歌詞とメロディを味わえるというか。だからそもそもですね。グルーヴが必要なのは。
──でも、そのグルーヴというのは、いわゆるこういうノリが流行ってるからとか、BPMが速くてとか、そういうのとは全然違う方向ですよね。
江沼:そうですね。なんか、そういうの嫌なんです。別に4つ打ちが嫌いなわけではないし、ダンスミュージックも好きだけど、それをやっておけばいいという精神で音楽に触れるのがあんまり好きじゃなくて。ノレるかノレないかはBPMの話じゃないし。でも、差がハッキリしているような気もしますけどね。そういうモチベーションでやっている人と、そうじゃない人とで。もちろん良い人は良いわけだから。
──僕もそう思います。あと、そういう横ノリであったり、ゆったりしたグルーヴになることで、それこそ宇宙と繋がるというか、儀式めいた感じになっていくイメージも、個人的にはあって。
江沼:あぁ。なんかありますよね。でもなんか、宇宙と言っても、ロケットがどうとかではなくて。なんていうか……こうやって喋っていると、言語って人の間を行き交うものじゃないですか。でも音楽って、もうちょっと別の層にある気がするんです。もうちょっと高いところにある。それはキーがどうこうじゃなくて、高尚という意味で、高みがあって、深みがある。そういう感じがするんです。
──その感覚すごくわかります。
江沼:さっき一太が話してたゴスペルも、そういうものを昔の人が感覚的に感じていて、歌うことで天に届くような感じがあって、それが神と一番近くなる行為だと思っていたって、何かの本で読んだこともあって。きっとそういうものなんですよね、音楽というもの自体が。
──ゴスペルであれば天にも昇るというか、それこそ連れて行ってもらえるというか。
江沼:なんか、今話していることを文字にすると、相当ヤバい奴みたいになると思うんですけど(笑)、でもあるじゃないですか。聴いていて「なんか好き」とか「英語全然分かんないけど泣いちゃう」とか。音楽が持っているそういう不思議な感覚に、自分は取り憑かれてるんだろうなと思います。
──確かにそういう「感じる」ということを、そのまま閉じ込めているアルバムですよね。
江沼:むしろ、自分がやることはそれだけだと思ってました。文字とかに捕われない感覚を大切にするっていう。たとえば「青い空」っていう歌詞を書くことが大事なんじゃなくて、「青い空」って歌ったときに、青空が思い浮かぶ歌と音とグルーヴがないと、聴いた人が想像出来ないじゃないですか。そういうものを与えられる人がアーティストなんじゃないかと思って。だから聴いてくれる人に対して、ちゃんとしないといけないなっていう緊張感というか、責任感みたいなものはありますね。
──そして「体温」に引き続き、『いのちのかたち』もアナログ盤をリリースされていて。
江沼:CDも好きですけど、前からずっとアナログは出したかったんですよ。それぞれ好きな形で聴いてもらえたらいいと思うんですけど、やっぱりアナログだと音のあたたかさが違うというか。CDとかって、人間の耳では聴こえない周波数をカットしているんですよ。聴こえないからそれでいいっていうことになっているんだろうけど、人間は別に耳だけで音を聴いているわけではなくて。音は振動だから、喋っていても自分の身体だけじゃなくて、周りにあるものも振動しているし、それをまた自分の身体で感じるわけであって。だからライブが良いっていうのは、そういうことというか。聴こえているか、聴こえていないかだったら聴こえていないんだけど、そこに確かに「ある」っていうものが、レコードにはあるんですよ。今回は感じることを大切にしているアルバムでもあるから、絶対にやりたいなと思っていて。
新田:郁弥と一太は昔から聴いていたんですけど、俺は「体温」が出るタイミングでプレイヤーを買って、そこから聴くようになったんですけど。なんかこう、やっぱり聴いていてあったかいし、ジャケットも大きくてかっこいいし。そこから取り出してプレイヤーに置いたときにドキドキするというか。アルバムももらって聴きましたけど、やっぱりよかったですからね(笑)。みんなも聴いてほしいです。
中村一太(Drums)
──中村さんは元々アナログを聴いていたと。
中村:そうですね。家にあったので、ジャズとか好きで聴いてました。
江沼:なんでジャズってCDとあんなに差があるんだろうね。
中村:音の差はすごいあるね。でもスピーカーとイヤホンの違いっていうか……あ、話が逸れるか(笑)。
──全然大丈夫ですよ(笑)。
中村:なんか、さっきの周波数の話もあるし、アナログってスピーカーで聴くために作られていると思うんですよ。アナログをそのままMP3にすると耳が痛かったりするから、これはイヤホンで聴くものじゃないなとか。そういうスピーカーで聴く良さみたいなものもあると思っていて。あと、向き合わないと聴けないじゃないですか。歩きながら聴けないし。
江沼:曲を簡単に飛ばせないのもいいよね。僕、めんどくさいのが好きなんですよ。アナログっていちいちひっくり返さないといけないんだけど、でも、好きなアーティストのLPを手に入れて、針を落として、ひっくり返してっていうその行為が、作品に関わっている感じがして。あとは表と裏があるっていうのも人間っぽくていいなとか。
中村:あと、『いのちのかたち』はレコードありきで作った部分もたくさんあるんですよ。
──A面の最後が「ドーナツの真ん中」ですけど、そういう曲順も考えてたんですか?
江沼:そうですね。ここで(流れが)切れるっていうのは。
中村:で、「よい朝を、いとしいひと」で始まるっていう。
江沼:そういうのは決めてました。あとはアートワークもCDと変えているし、カッティングっていう最終加工をニューヨークでしてもらって、音もアナログ用になっているから、また全然違う感じになってます。
──そういえば、何かの記事で見たんですけど、MP3にするときにカットした部分を取り出して、聴こえるようにフィルタをかけると幽霊の声みたいな音になるっていうのがあって。
3人:へー!
中村:初めて聞いた(笑)。
江沼:そうなんだ。あれか、人は死んだらそこに行くのか……。
中村:なんか宗教感がだいぶ強くなっちゃってるけど(笑)。
江沼:ヤバいバンドみたいになってんじゃん!
中村:「繋がれるんだ……」とか(笑)。
江沼:あの、健全なバンドですからね(笑)。
──充分に分かってます(笑)。さて、来年の1月からアルバムを掲げたワンマンツアーが始まりますが、どういうものになりそうですか?
江沼:それがね、まったく何も計画していないんですよ。
──まぁまだちょっとありますからね。
江沼:どうしたらいいですかね?(笑)
──どうしましょうね?(一同笑) 実際にライブでやったことで手応えはあったと思うんですけど。
江沼:そうですね。でも、もうちょっとアレンジを詰め直さないとなとは思っていて。今は課題だけが目の前にドンってある感じですね。
新田:良いアルバムが出来たので、それをしっかり見せたいのもあるし、ライブはライブとしてのアレンジでやると思うので、またひと味違った感じで楽しませたいなとは思ってます。
中村:『いのちのかたち』は、方法を選ばずに良いものを作ることに集中してたんですよ。ギターを重ねたり、いろんな楽器をいれたり、手段を選ばずにとにかく良い音楽を作ろうっていうコンセプトで作っていて。そのツアーだからというわけでもないんですけど、ライブでも良い音楽でありたいんです。でも現実、やっぱり僕らには手2本、足2本しかないですからね(笑)。それを踏まえて、方法を選ばずに良いライブを見せれるようにしていきたいなと思いますね。
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2016.01.14 (木) 吉祥寺 WARP
OPEN/START:18:30/19:00
2016.01.16 (土) 新潟 LOTS
OPEN/START:17:30/18:00
2016.01.17 (日) 仙台 darwin
OPEN/START:16:30/17:00
2016.01.22 (金) 福島 club SONIC iwaki
OPEN/START:18:30/19:00
2016.01.24 (日) 札幌 PENNY LANE24
OPEN/START:16:30/17:00
2016.01.30 (土) 福岡 DRUM LOGOS
OPEN/START:17:30/18:00
2016.01.31 (日) 大阪 なんばHatch
OPEN/START:16:30/17:00
2016.02.02 (火) 長崎 DRUM Be-7
OPEN/START:18:30/19:00
2016.02.04 (木) 熊本 DRUM B.9 V1
OPEN/START:18:30/19:00
2016.02.06 (土) 高松 DIME
OPEN/START:17:30/18:00
2016.02.07 (日) 広島 CLUB QUATTRO
OPEN/START:16:30/17:00
2016.02.10 (水) 金沢 AZ HALL
OPEN/START:18:30/19:00
2016.02.11 (木・祝) 名古屋 Electric Lady Land
OPEN/START:18:30/19:00
2016.02.13 (土) 東京 EX THEATER ROPPONGI
OPEN/START:17:15/18:00
料金:¥3,800 (税込) /ドリンク代別
※6歳未満入場不可
プレイガイド最速先行(イープラス):2015.11.17(火)12:00 ~ 23(月)23:59(先着)
※1/14(木)吉祥寺WARP公演の先行受付はございません。
3rd album『いのちのかたち』
2015年10月7日 (水)発売
XQFQ-1214 ¥2,700 (税込)
<収録曲>
1.心には風が吹き 新しい朝をみたんだ
2. シャララ
3. 子どものように
4.体温 5.above
6.ドーナツの真ん中
7.よい朝を、いとしいひと
8.口をむすんで
9.Laundry
10.夜の雨
11.さよならより、優しいことば
12.愛のかたち
アナログLP『いのちのかたち』
2015.11.03 Release
FMER-1214 / ¥3,500(税込)
<収録曲>
SIDE-A
01.心には風が吹き 新しい朝をみたんだ
02.シャララ
03.子どものように
04.体温
05.above
06.ドーナツの真ん中
SIDE-B
01.よい朝を、いとしいひと
02.口をむすんで
03.Laundry
04.夜の雨
05.さよならより、優しいことば