熱量高い男たちの“三つ巴”舞台『エダニク』、浅草九劇で上演中~横山拓也(iaku)の人気戯曲を鄭義信が演出

レポート
舞台
2019.6.23
左から大鶴佐助、稲葉友、中山祐一朗(撮影:加藤孝)

左から大鶴佐助、稲葉友、中山祐一朗(撮影:加藤孝)

画像を全て表示(6件)


2019年6月21日、17時過ぎ。季節柄まだ陽は落ちず、街灯がともるまではもう少し時間を要する。観光客の運ぶキャリーバッグが往来する東京・浅草の街も同様で、日暮れが迫っているとは思えない明るさが、この街の華やかさに一役買っているかのようだ。花やしきのはずれに位置する浅草九劇は、いよいよこの街のシンボリックな存在になりつつあるような気がしてならない。こけら落とし公演『あたらしいエクスプロージョン』以降、話題の作品を打ち続け、演劇ファンの動線が浅草に向き始めているからだ。この日おこなわれた舞台『エダニク』のゲネプロ(総通し稽古)に向かいつつ、そんなことを思い浮かべていた。

6月22日から上演されている『エダニク』は、2009年にiaku(イアク)の横山拓也が手掛けた人気作だ。屠場を舞台に、食肉に関わる男たちによる3人芝居が繰り広げられる。軽妙でありながら本質を突く会話の応酬。この優れたテキストが演劇界で支持され、多くのカンパニーで上演されてきた。本作が、鄭義信の演出で装いを新たに舞台化された。

左から大鶴佐助、中山祐一朗、稲葉友(撮影:加藤孝)

左から大鶴佐助、中山祐一朗、稲葉友(撮影:加藤孝)

舞台となるのは、東京近郊にある屠場。「ミートセンター丸元」で働く沢村(稲葉友)は、若いながらもこの道10年以上の中堅社員だ。一見するに元ヤンのような男だが、妻と子のために一生懸命働くよきパパでもある。大阪の屠場からミートセンター丸元に移ってきた玄田(中山祐一朗)は、沢村より会社では後輩だが、年齢や職歴では先輩にあたる。そんなふたりが休憩をとっていた別屠室に、突然訪れる取引先の新入社員・伊舞(大鶴佐助)。この日、厳重に管理しなければならないはずの牛の延髄が紛失するという事件が起こる。そこから3人の関係性が微妙に変化していく――。

食肉にまつわる職業格差や雇用問題など、本作の背景には根深いものが横たわっており、作品のなかでも、「生き物」が「モノ」になる現実について語られるシーンがある。解体作業をおこなう沢村や玄田と取引先の伊舞のあいだには、明確な温度差がある。それにより男たちの会話がさらに濃厚になり、突然やってきた闖入者である伊舞が、次第に劇全体の当事者として絡み合っていく。3人が、会話によって深く関係するようになるのだ。そのプロセスがダイナミックに描かれており、そこに演劇的なジャンプ力を秘めているように思う。

左から中山祐一朗、稲葉友、大鶴佐助(撮影:加藤孝)

左から中山祐一朗、稲葉友、大鶴佐助(撮影:加藤孝)

演出の鄭義信は、『エダニク』を社会問題に寄った作品にはしないように考えていたという。横山拓也と同じく関西出身の鄭は、戯曲が持つ笑いの要素に注目し、エネルギッシュな会話劇に仕上げている。熱量ある3人の演技も本作の見どころのひとつだ。

誠実な演技を見せる稲葉、余人に代えがたい個性を放つ大鶴、手練の技で劇の空気を作り上げる中山。キャリアもキャラクターも異なる男たちの“三つ巴”に目が離せない。

【演出家、出演者による初日コメント】

◆鄭義信コメント
この作品の中には「人が生きるために、肉を食べなくてはならない」という大きなテーマが隠されているのですが、そのことが笑いの中から少しずつ染みていく形で、最後に観客にどう伝わっていくのか、今からとてもドキドキしています。脚本自体がとてもしっかり書き込まれている作品なので、その中で役者がどれだけ自由にのびのびと遊べるかというのが、今回の演出の大きなテーマでもあります。三人三様の丁々発止のやり取りを、観客の皆様にも楽しんでいただければ幸いです。

◆稲葉友コメント

稲葉友(撮影:加藤孝)

稲葉友(撮影:加藤孝)

いろいろなところで上演されている「エダニク」という作品を、新たな形でお客様にお届けできることを嬉しく思います。男三人の丁々発止なやり取りと鄭義信さんならではの演出がギッシリと詰まった劇を楽しんでいただけたら嬉しいです。多面的なテーマを持った演劇ですので何がどこでどうお客様に響くのかこちらも楽しみにしております。

◆大鶴佐助コメント

大鶴佐助(撮影:加藤孝)

大鶴佐助(撮影:加藤孝)

3人の登場人物が持つそれぞれの思いや願いが交差し合い濃密な空間が舞台上を支配すると思うので、そこにお客さんも巻き込み、汗だくになって帰ってもらいたいです。ジェットコースターのような展開の中、3人それぞれの真実を見逃さないで欲しいです。

◆中山祐一朗(阿佐ヶ谷スパイダース)コメント

中山祐一朗(撮影:加藤孝)

中山祐一朗(撮影:加藤孝)

のんべえの方はやきとん屋さんとかで「芝浦直送の新鮮な肉」という様なフレーズを聞いた事あると思いますが、そういう屠場という牛や豚を解体する場所での劇です。そこによくわからない兄ちゃんが入ってきて、帰ってほしいのに全然帰ってくれないというなかで色々な事件が起こる仕掛けとなっていて、元々の会話劇の面白さにアングラの鄭さんの演出が加わりパワフルなコメディとなっていますので大変観やすくて誰にもオススメです、観に来たら絶対に損はさせませんので、まずは観にきてもらって、帰りは浅草でホッピー飲んで楽しんでもらえたらと思います。

文/田中大介

公演情報

『エダニク』
 

 
■作:横山拓也(iaku)
■演出:鄭義信
■出演:稲葉友、大鶴佐助、中山祐一朗(阿佐ヶ谷スパイダース)

 
■日時&会場:2019年6月22日(土)~7月15日(月・祝)◎浅草九劇
■チケット料金:4,500円(全席指定)
■問い合わせ
TEL:03-5759-8009(受付時間/平日11:00~19:00)
MAIL:info_kyugeki@lepros.co.jp(※件名に「エダニクに関して」とご記載ください)
■公式HP:https://asakusa-kokono.com/

ワークショップ情報

鄭義信ワークショップ「わくわくする稽古がしたい!」
 

 
■講師:鄭義信
■期間:2019年9月21日(土)~10月1日(火)
■編成:4クラス制/4時間×4回
■参加費:32,400円(税込)
■定員
各クラス最大20名
※定員に達し次第締め切ります
※締め切り日に定員を超えた場合は選考があります
※16歳以上の役者、または目指す人(18歳未満の方は保護者の了承を得ていただきます)
■問い合わせ先
銀座九劇アカデミア
公式HP:https://asakusa-kokono.com/academia/
MAIL:info_academia@lespros.co.jp
シェア / 保存先を選択