日本初公開!絵師の手による浮世絵の世界『肉筆浮世絵-美の競艶』

2015.11.27
レポート
アート

肉筆浮世絵-美の競艶

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浮世絵といえば、木版で刷られた極彩色の版画を思い浮かべるが、この展覧会を訪れたらそのイメージは一変するだろう。2015年11月20日(金)〜2016年1月17日(日)上野の森美術館にて開催の『シカゴ ウェストンコレクション 肉筆浮世絵-美の競艶』展。絵師の手により生き生きとした線と色彩で描かれた、精緻な肉筆浮世絵の世界を堪能できる。

ロジャー・ウェストン氏(中央)、永田生慈氏(左)

肉筆浮世絵の魅力にこだわり見事なコレクションにまで育て上げたのは、アメリカ・シカゴの日本美術収集家であるロジャー・ウェストン氏。1000点以上にもおよぶ膨大な個人所蔵品の中から、本展のために厳選された129点が日本初公開となる。公開前日の記者内覧会にて本展監修・永田生慈氏は「これだけの肉筆浮世絵を年代別に一望できるチャンスはなかなかない。どれもウェストン氏の審美眼を通して集められた大変質の高い作品ばかりです。」と語った。

絵師のもてる力量すべてを注いだ最高級品の数々

肉筆浮世絵とは、絵師が絹や紙に岩絵具で直接筆で描いた一点ものであり、いわば大変な高級品。富裕層の顧客の発注に応え、絵師は自分のすべてを注いで制作に励んだ。江戸初期から明治にかけてを追ったコレクションからは、勝川春章、喜多川歌麿、歌川豊国、葛飾北斎、河鍋暁斎など50人を超える絵師たちの個性が、鮮やかに咲き誇っていたことがうかがえる(写真下)。

本展は年代別に作品を見られる7章構成となっており、浮世絵の成り立ちや発展が理解しやすい。風景画の中に小さく描かれていた「人物」というモチーフが、「美人画」という独立したジャンルにまで発展していく中で、時代ごとの風俗やファッションなどの違いを楽しめる点がみどころのひとつだ。

百花繚乱、個性ゆたかな美人たち

その美人たちもじつに個性ゆたかだ。浮世絵が百花繚乱の繁栄を見せたのは幕末。初代歌川豊国の「時世粧百姿図」では、正統派美人から庶民的な顔立ちの女性まで、様々な階層の女性たちがありのままの姿で描き出されている(写真下)。

溪斎英泉の美人画もひときわ目を引く。顔が大きく首をすくめた姿の女性たちは、それまでのプロポーションの整った美人とは違うが、そのアンバランスさがあだっぽい色気を放ち、当時大変人気があったという。このような多彩な作品に囲まれると、それまで同じ顔に思えていた「美人浮世絵」はまったく違う見え方をしてくる(写真下)。

また、今回の展示では最新の日本の技術を駆使し、薄い展示ケースが特別にしつらえられている。そのため、髪の生え際の精緻な筆づかい、着物の細かく描かれた模様まで、手に取るように至近距離で鑑賞できるのだ。

特別に作られた薄型展示ケースが並ぶ展示会場内

描いた瞬間の息づかいが感じられる肉筆浮世絵の世界に触れ、日本の美の繊細でユーモラスな一面を再発見できる展覧会。ぜひこれは間近で見て欲しい。
 

イベント情報

シカゴ ウェストンコレクション
肉筆浮世絵-美の競艶 
~浮世絵師が描いた江戸美人100選~

開催期間:開催中~ 2016年1月17日 (日) ※展示替えがあります。
    <前期展示>~12月20日(日)まで
    <後期展示>2015年12月22日(火)~2016年1月17日(日)
開館時間:午前10時~午後5時(金曜日は午後8時まで)※入館は閉館30分前まで
休館日:毎週月曜日、2016年1月1日(ただし1月11日は開館)
入場料:一般 1,500(1,200)円、高校・大学生1,200(900)円、小・中学生500(300)円 ※( )内は20名以上の団体料金
会場:上野の森美術館(東京都台東区上野公園1-2)