SCANDAL “いちばん激しいセットリスト”で挑んだツアー最終日に見た、どんな逆風にも負けないロックバンドへと進化した姿とかけがえのない瞬間
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SCANDAL 2019.7.11 Zepp Tokyo 撮影=ヤオタケシ
SCANDAL TOUR 2019 “Fuzzy Summer Mood”
2019.7.11 Zepp Tokyo
2,000人以上を収容するZepp Tokyoのフロアに満員のお客さんが詰めかけ、開演前にも関わらず、会場はむせかえるような熱気に満ち溢れていた。SCANDALが今年6月から開催した全国ツアー『SCANDAL TOUR 2019 “Fuzzy Summer Mood” 』のファイナル公演だ。全15ヵ所のライブハウスをまわった今回のツアーに、SCANDALは全会場でまったく違うセットリストを組むという挑戦的な内容で臨んだ。Fuzzy=曖昧が意味するとおり、選曲はその日の気分次第。だからこそライブバンドとしての真の実力が問われた今回のツアーのファイナルを飾ったZepp Tokyo 2日目は、メンバーが「今ツアーいちばん激しいセットリスト」と明かしたとおり、始まりから終わりまで熱狂が渦巻く灼熱の一夜になった。
SCANDAL 2019.7.11 Zepp Tokyo 撮影=ヤオタケシ
“Fuzzy Summer Mood”というツアータイトルにちなんでか、海鳥の鳴き声が会場に響きわたり、それが次第に不穏な音像へと変わるなか、HARUNA(Vo,Gt)、MAMI(Gt,Vo)、TOMOMI(Ba,Vo)、RINA(Dr,Vo)の4人がステージに現れた。それだけで会場の体感温度が上がるような期待感と熱狂に包まれて、「マスターピース」からライブはキックオフ。昨年メジャーデビュー10周年を経て、自身のプライベートレーベル“her”を立ち上げた彼女たちの新たな旅立ちを告げるエネルギッシュな楽曲が、いきなりZepp Tokyoを震撼させた。MAMI とTOMOMIがHARUNAに絡み合うように楽しげに演奏した「お願いナビゲーション」、RINAが叩き出す軽快なドラムがフロアを踊らせた「テイクミーアウト」。ソリッドで骨太な、爆音のバンドサウンドのなかで、ロックボーカリスト然としたHARUNAが紡ぐ、人懐こいグッドメロディが集まったお客さんの心を鷲掴みにする。
SCANDAL 2019.7.11 Zepp Tokyo 撮影=ヤオタケシ
「すでに最高なんですけど! これがピークじゃないよね?」。最初の4曲を終えた時点で、これ以上ないほどの盛り上がりに達していたフロアを見渡して、うれしそうに声を弾ませたHARUNA。衝動的にギターを掻き鳴らして突入した「プラットホームシンドローム」から、情熱的なメロディが夏を先取りするように駆け抜けた「太陽スキャンダラス」へと、お客さんの掛け声も巻き込みながらライブは進んだ。大がかりな演出で魅せるアリーナ公演とは違い、スクリーン映像も派手な舞台装置もないシンプルなライブハウスは、4人のロックバンドとしてのしなやかな強さが剥き出しになって伝わってくる。「暑い! クーラーつけて!」「みんなが熱すぎてクーラーが効いてない(笑)」と会場のあまりの暑さに、笑い合うTOMOMIとHARUNA。そんな序盤からの熱狂を少しクールダウンさせたのは、歪んだギターにクレイジーな色気を漂わせたグランジ直系のナンバー「ヘブンな気分」だった。スタイリッシュな打ち込みのトラックを取り入れた「窓を開けたら」では、ポップなメロディが優しくフロアを揺らし、冒頭の「マスターピース」に続き、最新両A面シングルのもう1曲でもある「まばたき」では、RINAが叩くエレドラの軽やかなリズムにのせて、フロント3人のハーモニーが美しく重なる。そのアウトロでは、HARUNAとMAMIが頷き合いながら、楽しげに演奏をする姿も。泥臭く、激しいバンドマンとしての佇まいのなかに、時折見せるチャーミングな一面も彼女たちの魅力だ。
SCANDAL 2019.7.11 Zepp Tokyo 撮影=ヤオタケシ
最後のMCでは、「今回のツアーはめちゃめちゃ楽しかったです。1本1本がいままで以上に刺激的でした」と振り返ったHARUNA。さらに、今回のライブハウスツアーでは、お客さんがしっかりとマナーを守りながら、ライブを楽しんでくれたことにも触れて、「こういうお客さんにライブを見てほしくて、ずっとライブをやってきたんだと思いました。マジで安心して(SCANDALに)ついてきてください。今回のツアーで思ったの。みんなの人生を背負ってもいいって」というフロントマンとしての覚悟のこもった熱い言葉を伝えると、フロアからはひときわ大きな歓声があがった。続けて、今回のツアーでは初日から新曲として演奏し続けてきた「Fuzzy」を披露。開放感のあるサウンドのなかで、どこか夏特有の切なさが滲むナンバーが会場の喝采を呼ぶ。フィナーレに向けて、会場のボルテージが加速。TOMOMIがお立ち台に腰を下ろして、盛り上がるフロアのお客さんを愛おしそうに眺めた「瞬間センチメンタル」から、HARUNAの左右で、MAMIとTOMOMIがいたずらっぽく寄り添った「Image」を畳みかけて、何度も何度も最高の瞬間を更新していくと、ラストナンバーは巨大なミラーボールが会場に美しい光の景色を描いた「恋するユニバース」で、終演。最後にHARUNAは「東京サイコー!」と、渾身の力を込めて叫んだ。
SCANDAL 2019.7.11 Zepp Tokyo 撮影=ヤオタケシ
アンコールでは、「私たちは最初のほうで死ぬかと思ったけど、よくついてきたね(笑)」と、完全燃焼の本編を終えて、達成感に満ちた表情を見せたHARUNA。そこから、MAMIがボーカルをとった「声」を皮切りに、アンコールでも、“今回のツアーでいちばん激しいセットリスト”というテーマを貫徹する容赦ないアップナンバーを連発した。ダンサブルなリズムにのせて、ハンドクラップを煽った「STANDARD」から、MAMIがキスするほど、HARUNAに大接近するパフォーマンスでも湧かせた「SCANDAL BABY」。4人が鳴らす音に全身で感情を爆発させ、フロアとステージが心と心をぶつけ合って迎えた汗ダクのフィナーレは、SCANDALのライブでしか生まれない、かけがえのない瞬間だった。
SCANDAL 2019.7.11 Zepp Tokyo 撮影=ヤオタケシ
なお、SCANDALは今夏もフェスシーズンを駆け抜けたあと、11月から対バンツアーをまわる。いまのSCANDALならば、対バン相手のファンにも、きっと“かっこいい!”と思ってもらえる。そんな自信があるからこそ組んだツアー。対バンアーティストの発表は少し先になるが、RINAによると、「対バンは男のバンドです」とのことだ。結成から13年、男社会と呼ばれることが多いロックシーンのなかで、“女だから”という理由で舐められたり、傷ついたりしながら、どんな逆風にも負けないロックバンドへと進化して、新たなスタートを切ったSCANDAL。彼女たちは、いまもっとも見るべきロックバンドの1組だと思う。
取材・文=秦 理絵 撮影=ヤオタケシ
SCANDAL 2019.7.11 Zepp Tokyo 撮影=ヤオタケシ