宇梶剛士「人間は見つめあい、未来に臨む。その強さを描きたい」 劇団PATHOS PACK『永遠ノ矢=トワノアイ』取材レポート

レポート
舞台
2019.7.30
劇団PATHOS PACK

劇団PATHOS PACK

画像を全て表示(5件)

 

2019年8月8日(木)から東京・静岡にて上演される、宇梶剛士主宰の劇団PATHOS PACK(パトスパック)による『永遠ノ矢=トワノアイ』。宇梶が作・演出を務め、自身のルーツのひとつである北海道、そしてアイヌをテーマに描かれる作品だ。タイトルにある“アイ”は、アイヌ語で矢を意味する言葉。遠い昔、北の大地がアイヌモシリと呼ばれていた時代に思いを馳せながら、現代を生きる青年の物語だ。

開幕に先駆けて、7月25日(木)に公開稽古と囲み取材が行われ、宇梶剛士と劇団員の金井良信と平野貴大が意気込みや作品にかける思いを語った。


まずは公開稽古。東京に住む主人公である海(カイ)が亡き父のルーツをたどりながら、失踪した兄を探しに北海道を初めて訪れるシーンを10分ほど演じた。北海道の方言、アイヌ言葉。「イクアンロ(乾杯の意)」と言い酒を酌み交わし、「ハプンノシニヤン(おやすみなさいの意)」と言い床に向かうというように、細かく方言の指導を受け、まるで、その土地の人たちがそこにいるように芝居は進んだ。

劇団PATHOS PACK

劇団PATHOS PACK

とはいえ、芝居の最中にもこの作品の作・演出を手がける宇梶のダメ出しが行われる。
「嘘に見えないように。本当は人は驚いて魅入る時は、力が入るよりは力が抜け放心状態になるのでは?」
「振りつけのように台詞を言っているだけ。もっと気持ちで台詞のやり取りをしてほしい」
一人一人の芝居に対して、細かい演出が続いた。

劇団PATHOS PACK

劇団PATHOS PACK

稽古が終わり、宇梶、金井、平野が囲み取材に臨んだ。

ーー意気込みは?

宇梶:公演が近づいてくると、自然に俳優陣は皆、勢いがついてきて、己の不安を跳ね返そうとする。仲間を信じて、噛み締めて舞台に立ってほしい。いまは頑張っていきたいという気持ちが大きい。

ーー思い入れのある作品だと思いますが、宇梶さんの思いは?

宇梶:今まで、もちろんすべての作品に対して、思い入れをもってきたが、アイヌの血を持つという「自身」に触れていることはなかったので、そして、本当にあった事実も含まれているから、迷いなく台本を書き上げることができた部分もあるし、反対に慎重になりすぎて筆が進まなくなってしまったこともあった。

ーー稽古を拝見して、きめ細やかな演出に驚きました

宇梶:舞台自体は35年出演している。そして、作・演出は30年近くやってきているので、自分は冷静にやっているつもりで・・・

平野:だいぶ、抑えめになってきました。昔は、千本ノックみたいな稽古がありましたね。

宇梶:今回もあるかもよ(笑)。劇団PATHOS PACKを結成して12年経っているので、いろいろと積み重ねてきた部分はあるので。ただ、劇団員への関係を築くために、自分への問いかけは忘れないようにしたい。例えば、若い劇団員に対しても、例えば、後輩が先輩に対して、お茶を出すことにしても、やってもらって当たり前思い始めると、関係が乾いていく。これが繰り返されると、元々は慕ってくれていた後輩が、事務的にしか行動しなくなる。人間関係に「問いかけ」がなくなると関係が乾いていく。だから自分への問いかけが大切だと思う。人って、他人には問いかける。なぜなら、自分と違うから。でも、人間は自分へは問いかけなくなっていく。気持ちが通じあわなくなる。乾いた関係にならないようにして、瑞々しさを持ちながら舞台にあがってもらわないと。瑞々しい俳優に舞台に立ってもらえないと、それは演出である自分の責任である。乾いた関係にならないように、何よりも大切に考えていかないとならない。

左から 金井良信、宇梶剛士、平野貴大

左から 金井良信、宇梶剛士、平野貴大

ーー今回作品で伝えたいことは?

宇梶:トワです。トワとは永遠ということですが、永遠に問い続けなくてはならないこと、芝居を見て、見てもらうだけでなく、自分に置き換えて、持ち帰ってもらいたい。そんな作品を作る事が自分のテーマでもある。

ーーご自身のルーツであるアイヌ。このタイミングでアイヌをテーマだと思った理由は?

宇梶:偶然が重なった。昨年、沖縄が舞台の芝居を書いた。沖縄の芝居を書きたいと思いついたが、沖縄を知れば知るほど、問題が複雑で、どこから書けばよいのか・・・偏った思考ではいけないし、取材を重ね、結局、9年間、悩んで、ようやく沖縄の話を書き上げて上演した。いま書かないと一生書けないと自分に言い続けて、この芝居を書き上げたのが大きかった。そんな矢先に『北海道』と名付けた松浦武四郎さんの生誕200年の式典に出席した。松浦さんの思いを感じて、沖縄の芝居を書き上げたから、次はアイヌの芝居を書くと言える自分がいた。自分の血に流れているアイヌ民族。弾圧と搾取、偏見と差別。そういうことを避けるわけにはいかない。人間は見つめあい、未来に臨むのだということ。自分が知っているウタリは、何があっても前を向き続ける強い人たち。常に未来を見ていく、そのあたりを書きたいと思いました。

宇梶剛士

宇梶剛士

公演は、2019年8月8日(木)〜8月12日(月)まで座・高円寺にて東京公演、その後、2019年8月21日(水)〜8月22日(木)まで清水文化会館マリナート小ホールにて静岡公演が行われる。

公演情報

劇団PATHOS PACK Vol.21
『永遠ノ矢=トワノアイ』
 
【東京公演】座・高円寺 2019年8月8日(木)〜8月12日(月)全7公演
【静岡公演】清水文化会館マリナート小ホール 2019年8月21日(水)〜8月22日(木)全2公演
 
料金:一般4,500円 学生2,500円(※一部のみで取り扱い/要学生証)
 
キャスト:
宇梶剛士、金井良信、平野貴大、オバタアキラ、仲道和樹、三崎栞(以上、劇団PATHOS PACK)
鴫原桂(劇団新派)、下畑博文(パタパタママ)、杉本凌士(劇団メンソウル)、岩戸秀年、菅川裕子(バッカスカッパ)、並木秀介(大人の麦茶)、村上コウキ、蒼木まや
 
公式HP:https://pathospack.com
シェア / 保存先を選択