ヴァイオリニスト・諏訪内晶子が芸術監督を務める『国際音楽祭 NIPPON 2020』記者会見 ベートーヴェン生誕250年を祝うプログラムなど多彩に

レポート
クラシック
2019.9.14
来年デビュー30周年を迎え、円熟味が増したヴァイオリニストの諏訪内晶子

来年デビュー30周年を迎え、円熟味が増したヴァイオリニストの諏訪内晶子

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ヴァイオリニストの諏訪内晶子が2019年9月13日、芸術監督を務める『国際音楽祭 NIPPON 2020』の記者会見を東京・帝国ホテルで行った。東京、名古屋、釜石で、2月14日から3月15日まで開かれる音楽祭は、今年で6度目。恒例となっているオーケストラとの共演のほか、来年生誕250年を迎えるベートーヴェンにちなんだプログラムも準備。初開催される『室内楽プロジェクト』では、諏訪内が盟友らと共にブラームスの『ピアノ三重奏第3番』、ドヴォルザークの『ピアノ五重奏第2番』などの難曲に取り組む。

3会場で7つの企画、11公演を行うビックプロジェクト。幕開けの2月14日は東京オペラシティコンサートホールで、諏訪内が10年来共演しているピアニストのニコラ・アンゲリッシュと『オール・ベートーヴェン・プログラム』と題したプログラムで『ヴァイオリンソナタ・第5番「春」』など3曲を演奏する。

諏訪内は「ニコラさんとは、ヴァイオリンソナタの第7番と、第9番でレコーディング(2008年)をしていました。しばらく共演をしていませんでしたが昨年、『アルゲリッチ・フェスティバル』が、ハンブルグ(ドイツ)で始まり、そこで久しぶりに同じステージに立ち、『またやってみようか』という思いがお互いに生まれました。同じ演奏家同士、リハーサルで音を重ねると、『あぁ、この人は(会わなかった間に)こういう経験をされてきたのだ』ということが分かる。彼は今とても脂が乗っている時期。お互いに造詣を深めた今、10年前とはまた違った表現ができると予感しています」と声を弾ませた。

東京オペラシティコンサートホール:タケミツメモリアルで3月8日に開く『ベートーヴェン室内楽マラソンコンサート』では、国内外で活躍する演奏家たちが、二重奏曲「2つのオブリガート眼鏡付き」など演奏される機会が少ない曲を披露する予定。ピアノ三重奏、弦楽器のためのアンサンブルなど、アーティストたちのさまざまな表現で、ベートーヴェンの非凡な才能を堪能できる企画になっている。

オーケストラとのステージは3月10日にサントリーホールで開催。諏訪内が15年来共演しているジャナンドレア・ノセダの指揮で、過去2回共演している『ワシントン・ナショナル交響楽団』と共に、チャイコフスキーの『ヴァイオリン協奏曲』とドヴォルザークの『交響曲第9番「新世界より」』などを演奏する。2020年は、諏訪内が史上最年少で『チャイコフスキー国際コンクール』で優勝してから30年目の節目でもあり、諏訪内は「今からとても楽しみにしている」と笑顔を見せた。

さらに、今回初の試みとして取り組むのは3月11・13日に紀尾井ホールで行う『室内楽プロジェクト』だ。諏訪内は「室内楽のコンサートは3人のアドバイザーを迎え、お客様にどう聴いていただくか、どう表現するかを一緒に考えました。コンサートでは特に“対比”を聴いていただきたい」と意気込み。ブラームスの『ピアノ三重奏第3番』とドヴォルザークの『ピアノ五重奏第2番』などの難曲を、どのように表現するのか注目される。また13日は川上統による『甲殻』が諏訪内のため新構成され、世界初演される。

「クラシックを身近に感じて欲しい」と3月7日に徳川美術館の講堂、同日夜にはトヨタ産業技術記念館のエントランス・ロビーでミュージアムコンサートも展開。徳川美術館内ではヴァイオリンとチェロのデュオ。トヨタ産業技術記念館内では、チャイコフスキーの弦楽六重奏『フィレンツェの思い出』を情感豊かに届ける予定だ。

このほか、東日本大震災復興応援コンサートとして、震災翌日の3月12日に釜石市民ホール TETTOで無料公演も実施。諏訪内は「音楽を奏でることで、エネルギーを届けることを継続していきたい」と支援を続けていくことを誓っていた。

若手育成のため第1回から行っている『公開マスタークラス』を3月14・15日に東京音楽大学(池袋キャンパス)で開講。諏訪内とパリ国立高等音楽院の教授を務めたスヴェトリン・ルセフが実践的な内容を伝授する。

諏訪内は「私自身が、小学生の時に受けたマスタークラスで感銘を受けたので、同じ年代の子に学んだことを伝えたいと思って始めました。演奏家はいつも自分と向き合っていかなくてはいけないもの。常にベストの表現をするためにはコンディションを整えることも大切です。普段通っている教室などとは違うことを言われたりなどあるかもしれませんが、自分に制限を設けずに、2日間のクラスを通してまた違った飛躍の仕方をしてもらえたらうれしい」と現役の演奏家だからこと感じる思いを力説。第1回に参加した生徒の中には、国内外で活躍する若手もおり、すでに多くの実力者が輩出されている。

会見終盤の質疑応答で、30年のキャリアを振り返っての思いについて記者から質問を受けた諏訪内は、「日本人として育って、留学もしたことがなかった18歳の私にとって、(優勝は)世界が一変する出来事でした。音楽祭は40代を前に、自分自身が受けてきたものに対する社会への恩返しとして始めたもので、最初はどうなるのか、先が見えない所もありましたが、ソリストとして演奏するだけではなく、芸術監督を務めさせていただくことによって、アーティスティックな活動が総合的にできていると感じます。40代後半を迎え、今までにない充実感があります」と思いを込めていた。

また、今年6月17日から27日までロシアで行われていた『チャイコフスキー国際コンクール』のヴァイオリン部門で初めて審査員を務めたことにも触れ、「私が受けた当時、審査員長だったヴィクトール・トレチャコフさんから『こちら側の席にようこそ』と声を掛けていただき、とても意味が深い言葉だなと感じました。コンクールは国をあげての祭典。当時は何も分からず参加していましたが、今回審査員として参加をさせていただき、『ここで賞を獲るということは、本当にすごいことだ』と思いました。どんなコンディションでもベストを出せる人が結果を残している。その力量を問われているのだな。選ばれるべきして選ばれるのだ。誇りと責任を持って行かなくてはと感じました」と気を引き締めていた。

ャパン・アーツの二瓶純一代表取締役社長(左)は「さまざまな企画を楽しんで」とPR

ャパン・アーツの二瓶純一代表取締役社長(左)は「さまざまな企画を楽しんで」とPR

主催するジャパン・アーツの二瓶純一代表取締役社長は「東京、名古屋を中心に約1カ月をかけて行われる国際音楽祭。2020年は戦後75年や、諏訪内さんがチャイコフスキーコンクールでデビューしてから30年、ベートーヴェン生誕250年など節目が重なる年。さまざまなエッセンスを盛り込んだ企画内容になっているので、ぜひ楽しんで欲しい」とPRした。

公演情報

『国際音楽祭 NIPPON 2020』
 
「諏訪内晶子&ニコラ・アンゲリッシュ デュオ・リサイタル」
<日程・場所>
東京:2020年2月14日(金)19:00開演 東京オペラシティコンサートホール:タケミツメモリア愛知:2020年2月15日(土)14:00開演 三井住友海上しらかわホール
出演者:
諏訪内晶子(ヴァイオリン)
ニコラ・アンゲリッシュ(ピアノ)
 
「ジャナンドレア・ノセダ指揮ワシントン・ナショナル交響楽団」
<日程・場所>
東京:2020年3月10日(火)19:00開演 サントリーホール
出演者:
ジャナンドレア・ノセダ(音楽監督・指揮)
ワシントン・ナショナル交響楽団
諏訪内晶子(ヴァイオリン)
 
「諏訪内晶子プロデュース ベートーヴェン室内楽マラソンコンサート」
<日程・場所>
東京:2020年3月8日(日)
<第1部>13:00開演 <第2部>16:00開演 <第3部>19:30開演 
※終演予定 22:30 東京オペラシティコンサートホール:タケミツメモリアル
出演者:
諏訪内晶子(ヴァイオリン/国際音楽祭NIPPON2020芸術監督)
スヴェトリン・ルセフ(ヴァイオリン)
成田達輝(ヴァイオリン)
鈴木康浩(ヴィオラ/読売日本交響楽団ソロ首席奏者)
有田朋央(ヴィオラ)
アンリ・ドゥマルケット(チェロ)
上野通明(チェロ)
池松 宏(コントラバス/東京都交響楽団首席奏者)
吉井瑞穂(オーボエ/マーラー室内管弦楽団首席奏者)
金子 平(クラリネット/読売日本交響楽団首席奏者)
小山莉絵 (ファゴット/ドイツ・カンマーフィルハーモニー管弦楽団首席奏者)
日高 剛(ホルン/日本センチュリー交響楽団首席客演奏者)
ホーヴァル・ギムセ(ピアノ)
阪田知樹(ピアノ)
 
「諏訪内晶子 室内楽プロジェクト
Akiko Plays CLASSIC & MODERN with Friends」
<日程・場所>
Akiko Plays CLASSIC with Friends 東京:2020年3月11日(水)19:00開演 紀尾井ホール
Akiko Plays MODERN with Friends 東京:2020年3月13日(金)19:00開演  紀尾井ホール
出演者:
諏訪内晶子(ヴァイオリン)
スヴェトリン・ルセフ(ヴァイオリン)
佐々木亮 (ヴィオラ)
アンリ・ドゥマルケット(チェロ)
ホーヴァル・ギムセ(ピアノ)
 
「ミュージアム・コンサートⅠ」
<日程・場所>
愛知:2020年3月7日(土)13:00開演 (約70分休憩なし) 徳川美術館 講堂
出演者:
スヴェトリン・ルセフ(ヴァイオリン)
アンリ・ドゥマルケット(チェロ)
浦久俊彦(ご案内)
 
「ミュージアム・コンサートⅡ」
<日程・場所>
愛知:2020年3月7日(土)19:00開演 (約70分休憩なし) トヨタ産業技術記念館 エントランス・ロビー
出演:
諏訪内晶子(ヴァイオリン)
スヴェトリン・ルセフ(ヴァイオリン)
鈴木康浩(ヴィオラ)
有田朋央(ヴィオラ)
浦久俊彦(ご案内)
 
「東日本大震災復興応援コンサート in 釜石~諏訪内晶子&フレンズ~」」
<日程・場所>
岩手:2020年3月12日(木) 18:30開演 釜石市民ホール TETTO
出演者:諏訪内晶子(ヴァイオリン)
スヴェトリン・ルセフ(ヴァイオリン)
佐々木亮(ヴィオラ)
アンリ・ドゥマルケット(チェロ)
ホーヴァル・ギムセ(ピアノ)
 
「公開マスタークラス 『ヴァイオリン Violin】~次世代を担う若い才能を育てる」
<日程・場所>
2020年3月14日(土)・15日(日)東京音楽大学 池袋キャンパス
講師:
諏訪内晶子 
スヴェトリン・ルセフ 
 
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