黒柳徹子が高橋克典・筒井道隆・吉川晃司と50年の時を綴る『ラヴ・レターズ』が開幕 藤田俊太郎(演出)「2人の魂の交流を見て欲しい」
朗読劇『ラヴ・レターズ』で初共演した(左から)高橋克典、黒柳徹子。演出家の藤田俊太郎
女優の黒柳徹子と俳優の高橋克典が初めてタッグを組んだ朗読劇『ラヴ・レターズ』が2019年10月7日(月)、EXシアター六本木(東京都港区)で幕を開けた。舞台は、今年上演30年目を迎える人気作。初日の開演前に行われた公開稽古と会見で、黒柳は「私は電話ができちゃったから、ラヴ・レターのやり取りをした思い出はないけれど、(劇の内容は)ロマンチックで素敵だと思う」とコメント。高橋は「幼なじみ、恋人、両親など、誰の中にも(手紙を送りたい)ど真ん中の人が居ると思う。それぞれ当てはめながら見て欲しい」と呼びかけた。
『ラヴ・レターズ』は米国の作家A.R.ガーニーが制作した朗読劇。二脚のイスとテーブルが置かれた舞台に登場するのは、幼なじみのアンディーとメリッサの二人きり。幼少期の出会いから約50年の間、重ねた往復書簡を約2時間かけて読み上げていく。
テーブルと、二脚のイスが置かれただけの舞台
手紙は、まだうまくアルファベットを書くことができない子ども時代に誕生日パーティーに誘われた感謝状や、バースデープレゼントのお礼などほほ笑ましいものから、思春期になり、ダンスパーティーで一緒に踊ることができなかった事への不満など、成長と共に内容が変化する。
本作品はアメリカ・ニューヨークで1989年に初演。日本では1990年8月に、渋谷・パルコ劇場で役所広司、大竹しのぶによって上演され話題になった。四半世紀以上の間に約500組が出演してきた本作品には、俳優、芸人、ミュージシャンなどさなどさまざまなジャンルからキャスティングがされている。
朗読劇『ラヴ・レターズ』
会見前に行われた稽古では、手紙のやり取りを重ねる中で、互いへの恋心を温めてきたアンディーとメリッサが、大学生になり初めてホテルに行き、結ばれるチャンスを迎えたが、うまくいかないという場面を公開。メリッサを愛しながらも、友だち以上になれなかったことに対してアンディーは「君は僕の肩越しに誰かを見つめていた」とがっかり。メリッサは「うまくいかなかった理由は手紙。私は現実のあなたではなく、手紙のあなたしか知らない。手紙が私たちを混乱させる。あの部屋には本当の私たちはいなかった。手紙を止めよう」と提案する。
イスから立つことはできないが表情や声などで、演技にアクセントを付ていく高橋
手紙のやり取りが途絶えた期間は、イスに腰掛けたままじっと沈黙するなど、「抑制がある中での表現は、やりがいがある」と高橋。「舞台では子ども時代から、56歳くらいまでの恋愛を描いていく。近づいたり、すれ違ったり。流れていく時も一緒に感じて欲しい」と話していた。
手元の台本を読み上げていく黒柳
演出家の藤田俊太郎は「徹子さんが稽古場に入ってこられた時、『メリッサがいる』と思いました。激動の20世紀を生きてきたメリッサと、徹子さんには重なる部分がたくさんあり、言葉の全てに徹子さんの魂、血肉が入っています。高橋さんも、知的でありながら情熱的な部分が同居しているところが、アンディーにピッタリ。手元に台本を置いて、読んでいくという制約があるからこそ、2人の優秀なアーティストが、多彩な表現を見せてくれる。豊かな空間がある。2人の魂の交流を見て欲しい」と絶賛していた。
演出家の藤田
中学生の時に大学生ぐらいの男性から、通学途中の電車の中で初めてラヴ・レターを受け取ったと思い出を語った黒柳は「『ふかしたてのサツマイモのような、あなたへ』という書き出しを見て、『何て失礼なんだろう!』とムッとしたの。でも今思うと、なかなかいい書き出しよね。当時は怒って、もちろん返事なんて書きませんでしたけど」と話し、高橋らを笑わせていた。
また2017年6月に死去した野際陽子さんと、FAXのやり取りをしていたと明かし、「野際さんはすごくキレイな、女性らしい字を書くのだけど、私は大きくて堅苦しい字でね。亡くなってやり取りができなくなってしまって、寂しいわよね。手紙のやり取りができる相手がいることは素晴らしいことだと思います」と故人をしのんだ。
さらに10月6日(日)に急性胆管炎による敗血症で急逝した元プロ野球投手・金田正一さんの訃報を受け、黒柳は「2年ぐらい前に、金田さんから突然『おいしい焼き肉をごちそうするから』って電話があって、銀座に行ったの。息子さん(金田賢一)が俳優だったりするから、いろいろな話しをしてね。『またね』と言って別れて、それが最後。あんなにお元気だったのに。すごく悲しい。肉体が失われてしまうことは、残念なこと」と声を詰まらせた。
30年目を迎えた舞台では高橋のほか、筒井道隆、吉川晃司が黒柳の相手役を交代で務める。3名との共演を熱望したという黒柳は「私よりも年上の人はもうあまりいらっしゃらないので、(役者として)一番いいと思う50代の方と共演ができてラッキーだと思います。3人それぞれ表現が違うので、ショックを受けたり、うれしく思う場面、悲しく思うところ、いろいろあります。相当面白いと思います」と笑顔。高橋については「情熱も分別もほどほどで、ちょうどいい年頃」と太鼓判を押した。
高橋とは10月8日(火)・9日(水)、以降は筒井が10月11日(金)・12日(土)、吉川が10月14日(月・祝)~16日(水)に出演する。10月16日(水)まで同劇場で。10月18日(金)~20日(日)は大阪・森ノ宮ピロティホールで上演される。
高橋、黒柳、藤田