マルチメディアパペットショー 『NUFONIA MUST FALL』のプロデューサーに聞く～革新的なライブ体験へと誘う極上エンターテインメント日本初上演

 

カナダのモントリオールに拠点を置く世界的なDJ、音楽プロデューサー、作曲家、グラフィック小説家のkid koala（キッドコアラ）と映画『her/世界でひとつの彼女』（2014）で米国アカデミー賞美術賞にノミネートされたプロダクションデザイナーのK・K・バレットが手がけるマルチメディアパペットショー『NUFONIA MUST FALL』が、2020年1月12日（日）～13日（月・祝）大阪・IMPホール、同年1月18日（土）～19日（日）東京・渋谷区文化総合センター大和田 さくらホールで開催される。それに先立ちプロデューサーのライナ・トンプソンが来日し、取材を行った。

■ライブ表現で新たなチャレンジ

『NUFONIA MUST FALL』は舞台上に設置された12を超えるミニチュアステージと40体の人形を操り展開される物語で、演劇、撮影、編集、ターンテーブル、弦楽四重奏楽団の要素が合わさり、15人の出演者によってリアルタイムで進む。「孤独なOLと都会の喧騒の中で自身の声をみつけようとしている古びたロボットの運命のラブストーリー」だ。まずはオフィシャルムービーをご覧いただこう。

トンプソンはkid koalaとは大学時代から26年の付き合いで20年間共に仕事している。『NUFONIA MUST FALL』を一言で表せばどうなるかを問われ「グラフィックノベルに基づいたライブフィルムです」と答えた。そして「パペットを操作してプロジェクターに投影し、それに合わせてターンテーブルやエレクトリックミュージックを付けています」と説明する。またライブフィルムという形態にした理由を聞かれると「kid koalaはライブ表現が好きです。オーディエンスにアーティスティックなことを伝えることにはリスクもあるので彼にとって難しいチャレンジですが、それを楽しんでいます」と話す。

■鬼才たちによる進化するコラボレーション

これまでに5年間世界ツアーを行ってきたが日本初上陸。「日本でやりたかったので凄くうれしいです。kid koalaはDJとしては日本に来ていますが、今回の公演はグラフィックノベルに基づいてパペットを使いライブフィルムにしています。ですから、ライブにこだわる彼の魅力のすべてをお見せできます」と意気込む。

kid koalaはグラフィックノベル以外にも活動の幅を広げたいと考えていたが映像や映画を作ったことがなかった。そこでコラボレートしたのがK・K・バレットだ。「物語を提示し具現化することを手伝ってくれました。彼がいるからツアーがどんどん進化していきます。新しいアイデアにもオープンで、新しいことを生み出していきます」と絶大な信頼を寄せる。

■万国共通の「感情」に共感したい

パペットで上演する面白さ・意義を問われると「世界中の誰にでも共感を得られ、感情を反映させることができます。自分の感情であったりオーディエンスの感情であったりといったもののすべてを映し出すことができるのです。ましてや今回は使うパペットがロボットで、男性でも女性でもないのであるのは感情だけです。"誰でもない何か"に映し出して、それを皆に共感して欲しい」と熱を込めて語った。

40体の人形と15人の出演者が舞台上に登場し同時進行することの難しさ・やりがいについて質問がおよぶと「たくさんのものが同時に動いているので、一つのエラーがショー全体に影響し得るリスキーなものです。でも、そこが人間的でもあって、スリルがありワクワクしています」と明かす。出演者のほとんどがモントリオール在住のカナダ人で「5年間ツアーをしているのでチームプレイヤーとして一緒にやっている意識があります。お互いをよく理解しているからこそできるようになってきました」と絶妙のチームプレーがなせる技であると胸を張った。

■新しい出会いを求めて

日本での楽しみはオーディエンスのリアクション。「終演後、オーディエンスに舞台に上ってもらってパペットがどうなっているのかを見てもらいたい」と話す。「今回、日本で公演を行うことによっていろいろなことにつながります。たとえば他のアーティストとコラボレーションしたりして、新しい扉を開き次の機会につなげていきたい」と希望も語った。

kid koalaはこのほど新作『The Storyville Mosquito』を発表し、オーディエンス参加型のショー『Satellite Turntable Orchestra』も行うなど活発に活動している。最後に『NUFONIA MUST FALL』来日に向けて日本の観客へのメッセージを聞かれると「プリーズ、カム！」と笑わせた後、「日本にはずっと行きたかったから楽しみですし、凄く素敵な国なので、自分たちがショーでどういうことをやっているのかを見てほしい」とアピールした。

取材・文＝高橋森彦　写真＝オフィシャル提供