宇宙人(Cosmos People) シークレットゲスト・阿信(Mayday)も登場、初の台北アリーナ単独公演をレポート
-
ポスト -
シェア - 送る
宇宙人(Cosmos People)『你的宇宙YOUNIVERSE』
宇宙人(Cosmos People)『你的宇宙YOUNIVERSE』
2020.2.8 台北アリーナ
昨年デビュー10周年を迎えた台湾の人気バンド、宇宙人(Cosmos People)が、台北最大のコンサートホールである台北アリーナで初の単独公演「你的宇宙YOUNIVERSE」を行った。
会場に入ると、ひし形のメイン・ステージから長い花道がまっすぐ伸びており、花道の上にはずらりと照明が連なっていた。中央には電飾でかたどられた巨大な翼が存在感を放っている。開演予定時刻の1分前に会場が暗転すると、まるで観客全員が宇宙船の中にいるかのような映像とSEが流れ出し、間も無くスタートするライブへの期待が更に高まったところで、ステージの下からゆっくりと3人がせり上がりで登場。会場が割れんばかりの歓声に包まれ、記念すべき初の台北アリーナ公演は彼らの初期の代表曲「一起去跑步/一緒に走ろう」からスタートした。
宇宙人(Cosmos People)『你的宇宙YOUNIVERSE』
宇宙人(Cosmos People)『你的宇宙YOUNIVERSE』
軽快なサウンドに乗り、ボーカルの小玉(シャオユー)はハンドマイクで歌い、方Q(ファンキュー)はリズミカルにジャンプをしながら早くも花道の方まで行ってベースをプレイ。リズムを取りながらギターを弾く阿奎(アークェ)は、小玉の声にコーラスを重ねていく。
ステージ後方では、ドラムの小胖(シャオパン)がしっかりとリズムを刻んでいた。日本では基本的に彼を含めた4人でライブを行っているが、この日はキーボードとパーカッションのメンバーも加えた6人編成。いつも以上に音に重厚感と広がりが生まれ、この日のためにリアレンジされたサウンドが台北アリーナを包み込んだ。
宇宙人(Cosmos People)『你的宇宙YOUNIVERSE』
アップテンポな「沒感覺/Rudderless」では阿奎と方Qが観客を煽り、会場のボルテージは更にアップ。3人ともとてもリラックスしている様子で、心の底から楽しんで演奏しているのが伝わってくる。イントロのスラップ・ベースとギターのカッティング・リフが印象的な「你以為/Hello Princess」では、阿奎と方Qが向かい合ってプレイするシーンに会場が沸き、間奏では2人がお立ち台に乗って大フィーチャーされた。「那你呢/And You?」では阿奎が花道まで歩いていきギター・ソロを披露するなど、どの曲にも3人それぞれの”見せ場”があるのが、このバンドの特徴であり魅力のひとつではないかと思う。
宇宙人(Cosmos People)『你的宇宙YOUNIVERSE』
なかなかMCは入らず、立て続けに曲が披露される。この日初めて小玉がキーボードの前に座って歌ったのは、「現在就讓我走/Let Me Go」。それまでとガラッと雰囲気が変わり、宇宙船に乗って宇宙を彷徨っているかのような映像が曲と見事にマッチ。小玉の歌声は繊細さと力強さを併せ持ち、聴き手の心にスーっと沁み入ってくる。方Qは、阿奎のメロディアスなフレージングに寄り添うように静かに低音を奏でていた。
結構動きのある3人の姿を目で追っていたいが、曲ごとに変わるスクリーンの映像からも目が離せない。また、幾重にも交差するレーザーの光と、楽曲に合わせて時にダイナミックに、時に繊細に変化するムービングライトの演出がとにかく圧巻で、彼らのパフォーマンスをよりカラフルに、感動的に彩っていた。
宇宙人(Cosmos People)『你的宇宙YOUNIVERSE』
ゆっくりとうねるようなグルーヴが心地よい「一萬小時/10000 Hours」に続いて、この日初めてちゃんとしたMCが入った。思わず時計を見ると、開始から約45分が経過していた。「台北アリーナに来るまで、10000時間以上待たせちゃったね。初めて『春天吶喊』(『スプリング・ストリーム』という台湾の音楽フェスティバル)に出演した時は、お客さんが2人しかいなかったけど、初めての台北アリーナ公演では目の前に1万人いる。こんなにも長い間、僕たちについてきてくれてありがとう!」と、小玉が感謝を述べる。続いて方Qが「(台北)小巨蛋(アリーナ)〜〜!」と叫ぶとファンは大歓声でそれに応え、「最高なので、もう一回!(笑)」と再度叫ぶと、更に大きな歓声が会場を包んだ。「台北アリーナでコンサートを行った歌手はたくさんいるけど、バンドはとても少ないんだ。今日は、夢が叶う過程を楽しもうと思って、会場まで地下鉄(台北MRT)に乗って来た。次の曲は、高校時代に家の近所の楽器店で母親に買ってもらい、デビューした頃にも使用していたギターを使って演奏するよ」と語ったのは、阿奎。「この曲で僕らのことを知った人も多いんじゃないかな?」という振りから、2009年のデビュー・アルバム『宇宙人(Cosmos People)』収録の「要去高雄/高雄に行かなきゃ」が始まると、オーディエンスの興奮度がまた一気に引き上がった。
宇宙人(Cosmos People)『你的宇宙YOUNIVERSE』
シティ・ポップ・チューン、「禁止觸摸/Don't Touch」に続いてピアノのイントロが始まると、会場からは歓喜の声が上がった。曲は、これまでに数えるほどしかライブで演奏したことがないという「不孤島/Islands」(YouTubeで公開中)。その向こう側には宇宙への入り口があるのだろうか。スクリーンにはドアが映し出されている。後半、曲が壮大に展開していくところで、それまでキーボードを弾きながら歌っていた小玉が手にマイクを持ち、突如花道を走り出し、同時に紙吹雪が舞い、最後は大合唱が巻き起こった。あらゆる演出が完璧な相乗効果となり、心を揺さぶられた瞬間だった。
この後は、花道の途中にあるセンター・ステージで台湾語の「兩人雨天/Rainy Day」が披露された。方Qはダブル・ベースに持ち替え、ボーカルのメロディー・ラインにユニゾンするように阿奎がギターを奏でる。曲のアレンジはどこかジャジーで温かい。まるで雨が降っているかのようなレーザーによる演出も美しかった。
続く「想把你拍成一部電影/君を撮りたい」の後半では小玉がGoPro(アクションカメラ)を手に持ち会場を練り歩き、ファンやメンバーを撮影。最後に1人のファンをステージに上げるというサプライズ演出があり、会場が沸いた(YouTubeで公開中)。
宇宙人(Cosmos People)『你的宇宙YOUNIVERSE』
このあと、昨年発表されたファンキーなトラック「陪我玩/Play One」の途中では、なんと、シークレット・ゲストとして3人の兄貴分であるMayday(五月天)の阿信(アシン)が登場した。場内はメーターが振り切れるほどの大歓声に包まれる。さすが、台湾の国民的アーティスト。その人気は凄まじい。
メイン・ステージに戻ってくると、そのままMaydayの「離開地球表面/瞬間少年ジャンプ」へ突入。阿信と小玉がボーカルを分け合い、間奏では「14歳の頃、いつか阿信と共演したいと夢見てエア・ギターを練習していた」という阿奎が、阿信の背中に自身の背中を合わせて渾身のギター・ソロを披露した。
曲の後は、阿信を含めてのトーク・パート。共演できて「夢が叶った!」という阿奎は行くことが出来ず大切に保管していた「五月天の2000年のライブ・
宇宙人(Cosmos People)『你的宇宙YOUNIVERSE』
その後全員がステージから捌けると、花道の真ん中にあるステージに台湾のスーパー「全聯福利中心」のCMにでてくるイメージ・キャラクターで、以前宇宙人の「太空警察」、Maydayの「第二人生」のミュージック・ビデオに出演していた、(台湾では超有名人だという)“全聯先生(全聯さん)”が黒いスーツ姿で登場し、会場はまたもや大いに盛り上がった。”新しい宇宙人”を迎え入れるべく、彼が『メン・イン・ブラック』のエージェントのように、観客の記憶を消去するという演出に続き、3人のホーン・セクションを加えた”宇宙大楽隊”がステージに登場。
いよいよ後半に突入だ。再びステージに戻ってきた3人は、「真實朋友/Offline Friends」(YouTubeで公開中)でお揃いのステップを踏みながら花道を進んでいく。「太空警察」でうねるグルーヴに身を委ねていると、台湾の人気ラッパーで、3人の高校の後輩でもある、熊仔(Kumachan)がステージへ。2人目のシークレット・ゲストの登場、熊仔の高速ラップと小玉の高速ビートボックスのコラボに、会場は更にヒートアップした。
ゲスト・パートが終わり、ホーン・セクションとともに花道の中央にあるステージへ移動して披露されたのは、曲を作った阿奎がメイン・ボーカルをとり、最後に盧廣仲(クラウド・ルー)の「魚仔」へと流れていった新アレンジの「心向夏天/夏の憧れ」だった。自然発生的に会場中に灯ったスマートフォンのライトの美しさったら……。阿奎もポケットからスマホを取り出して撮影していたほどだ。
宇宙人(Cosmos People)『你的宇宙YOUNIVERSE』
ライブがクライマックスに近付く中、メイン・ステージの一部分がぐんぐんせり上がり、そこで力のこもったギター・ソロを披露した阿奎。方Qは、ファンキーなディスコ・サウンドに乗って天井からステージに向かって降りてきたベース————この日初披露の、日本で手に入れたオレンジ色のフェンダー「ジャズベース」————で、スラップ炸裂のソロを弾きオーディエンスを魅了した。
本編最後は、ファンキーなグルーヴが全開の「Hey」。ホーン・セクションを含む9人編成でのダイナミックな演奏は、会場中を興奮の渦に巻き込んだ。
宇宙人(Cosmos People)『你的宇宙YOUNIVERSE』
アンコールは、ピアノのイントロから壮大な音世界が広がっていく「往前/Move Forward」。実は初めてこの曲を聞いた時から、彼らがアリーナクラスの会場で演奏し、最後の「ラララ〜〜」を会場中で大合唱している絵が浮かんでいたのだが、この日のために作られた曲なのではないかと感じるほど、しっくりきた。
そしてラストは、小玉が涙をこらえながら紹介した「大志若魚/愚魚よ、大志を抱け」。方Q、小胖、阿奎、小玉と順番にリード・ボーカルを取り、最後はサポート・メンバーの5人がステージに再登場。記念すべき初の台北アリーナ公演を締めくくるのにふさわしい楽曲で、バンドと観客が一体となり、感動的なフィナーレを迎えた。
約3時間40分。この日のために考え抜かれたたくさんのアイデアや試みに溢れ、これまでのキャリアの総括でもありながら、彼らの”新しい章"を垣間見ることができた、本当に素晴らしいライブだった。ファンク、ソウル、クラシック・ロックといった、彼らのルーツがしっかりとベースにある、親しみやすいポップなサウンド。楽曲の素晴らしさと、彼らの音楽が持つ表情の豊かさを再確認した夜でもあった。
宇宙人(Cosmos People)『你的宇宙YOUNIVERSE』
本格的な演奏でスペクタクルなステージを繰り広げる一方、彼らは変わらず自然体で、MCでダジャレ対決をするなど遊び心も忘れない。また、何度も何度も感謝の気持ちを伝え、ファンとの別れを惜しみ、客電が点いた後もまたステージに出て行ってしまうほどファン想いの彼ら。宇宙人というバンドが、益々好きになった。
最後に「2020 COSMOSPEOPLE 005 COMING SOON!」と、嬉しいニュースがスクリーンに映し出された。ニュー・アルバムが心から待ち遠しい。大成功を収めた台北アリーナ公演のすぐ後に日本でライブを見ることは残念ながら出来なくなってしまったが、また良きタイミングで、更にパワーアップした姿を見せてくれることだろう。きっと新曲とともに!
なお、台北アリーナ公演の映像は、今後もYouTubeで公開予定とのことなので、お見逃しなく。
文=岡村有里子 撮影=翁偉中(Freefox Photo)、Y.Y photo 写真提供=相信音楽
セットリスト
2020.2.8 台北アリーナ
1. 一起去跑步/一緒に走ろう
2. 不用大腦/感じるままで
3. 沒感覺/Rudderless
4. 你以為/Hello Princess
5. 那你呢/And You?
6. 現在就讓我走/Let Me Go
7. 你的宇宙/YOUNIVERSE
8. 一萬小時/10000 Hours
9. 要去高雄/高雄に行かなきゃ
10. 踢踢他/ヤツを蹴っちゃえ
11. 禁止觸摸/Don't Touch
12. 不孤島/Islands
13. 兩人雨天/ Rainy Day
14. 想把你拍成一部電影/君を撮りたい
15. 陪我玩/ Play One ft.阿信(MAYDAY)
16. 離開地球表面/瞬間少年ジャンプ ft.阿信(MAYDAY)
17. 真實朋友/Offline Friends
18. 太空警察/ Space Cop+凶宅 ft.熊仔
19. BonBonBonBon ft.熊仔
20. 心向夏天/夏の憧れ
21. 浪費一整天/無駄な一日
22. Oh Girl
23. 這樣 那樣/This That
24. 方Q Solo
25. 這就是我愛你的方法/これが僕の愛し方
26. Hey
[ENCORE]
27. 往前/Move Forward
28. 如果我們還在一起/What If We
29. 大志若魚/愚魚よ、大志を抱け
你的宇宙YOUNIVERSE-台北アリーナ PLAYLIST