熊川哲也 Kバレエ カンパニー『海賊』は空前のスペクタクルにして胸が熱くなる人間ドラマ～映画館ライブビューイング、オンラインライブ配信も

熊川哲也 Kバレエ カンパニーが8か月ぶりの公演となる『海賊』を2020年10月15日（木）～10月18日（日）Bunkamuraオーチャードホールにて上演する。またKバレエ初の試みとして、映画館でのライブビューイング、オンラインライブ配信も行う（イープラスのライブ・ストリーミング・サービス「Streaming+」でも配信）。

Kバレエの『海賊』初演は2007年。熊川は全幕上演の機会が少なかった古典名作を“バレエ史上空前のスペクタクル・アドベンチャー”（チラシより）としてよみがえらせた。コンラッドやアリといった海賊たちが活躍し、メドーラ、グルナーラら美しき女性たちも物語の鍵を握る。スリリングな物語に興奮し、ハーレムをはじめとする豪華な舞台美術に息をのむこと必至だ。

熊川は、このバレエの代名詞として名高い奴隷アリをより重要な存在として造形するなど独創を凝らす。他に類を見ない一大スペクタクルであると共に愛や忠誠、裏切り、友情が入り乱れる人間ドラマとして胸が熱くなるのが熊川版『海賊』の真髄である。

このたびの3年ぶりの上演では、中村祥子、遅沢佑介、宮尾俊太郎らベテランに加え、熊川の薫陶を受ける若いダンサーに注目したい。熊川の十八番であるアリ役において上り調子の山本雅也、関野海斗が競演するほか、主要配役に若手気鋭たちが抜擢されている。

Kバレエ カンパニーの熊川版『海賊』は観る者に極上の時間を約束してくれる。Kバレエの新たな出帆を、劇場で、映画館で、配信で存分に楽しみたい。

文＝高橋森彦