ジャニーズWEST・小瀧望「僕の俳優人生のターニングポイントになる作品」と力を込める  舞台『エレファント・マン』が開幕

レポート
舞台
2020.10.28
(左から)森新太郎、高岡早紀、小瀧望、近藤公園、木場勝己/ 世田谷パブリックシアター×東京グローブ座『エレファント・マン』取材会(撮影:篠塚ようこ)

(左から)森新太郎、高岡早紀、小瀧望、近藤公園、木場勝己/ 世田谷パブリックシアター×東京グローブ座『エレファント・マン』取材会(撮影:篠塚ようこ)

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1880年代の産業革命後のロンドンで、「エレファント・マン」と呼ばれた異形の青年ジョン・メリックと彼に関わる人々を描いた舞台『エレファント・マン』が2020年10月27日(火)、東京・世田谷パブリックシアターにて初日を迎えた。

演出の森新太郎のもと、ジョン・メリック役に挑むのは小瀧望(ジャニーズWEST)、メリックと対峙することで己の醜い部分にも向き合うことになっていく複雑な心理をたどる医師トリーヴズに近藤公園、彼の勤める病院の理事長に木場勝己、またメリックに初めて女性の愛らしさを伝える女優ケンダル夫人に高岡早紀、そして貴族から使用人まであらゆる階層の人々を、花王おさむ、久保田磨希、駒木根隆介、前田一世、山﨑薫が演じる本作のゲネプロ(通し稽古)が初日前日に公開された。

この模様をレポートする。

世田谷パブリックシアター×東京グローブ座『エレファント・マン』舞台写真 (撮影:細野晋司)

世田谷パブリックシアター×東京グローブ座『エレファント・マン』舞台写真 (撮影:細野晋司)

 
【あらすじ】
19世紀のロンドン。その外見により「エレファント・マン」として、見世物小屋に立たされていた青年ジョン・メリック。肥大した頭蓋骨は額から突き出し、体の至るところに腫瘍があり、歩行も困難という状態だった。ある日、見世物小屋で彼を見かけた外科医フレデリック・トリーヴズは、研究対象として彼を引き取り、自身が務める病院の屋根裏部屋に住まわせることにした。メリックにとっては、その空間が人生で初めて手にした憩いの「家」となった。

はじめは白痴だと思われていたメリックだったが、やがてトリーヴズはメリックが聖書を熱心に読み、芸術を愛する美しい心の持ち主だということに気付く。当初は他人に対し怯えたような素振りを見せていたメリックも、トリーヴズと接するうちに徐々に心を開きはじめ、トリーヴズもまたメリックに関わることで、己の内心を顧みるようになっていく。
穏やかな気質のメリックには上流社会の人々の慰問が続いた。その中に、舞台女優のケンダル夫人もいた。メリックはケンダル夫人に異性を感じ、ときめく。そして普通の人間のように振る舞いたいという思いに駆られていく……。

 

世田谷パブリックシアター×東京グローブ座『エレファント・マン』舞台写真 (撮影:細野晋司)

世田谷パブリックシアター×東京グローブ座『エレファント・マン』舞台写真 (撮影:細野晋司)

ステージの上にはドアがついている大きな白い壁がそそり立つ。壁の一部はすりガラスのように向こう側がうっすら透けて見える仕様になっていた。その壁が、盆舞台の上で回るごとにある時はメリックがいた見世物小屋や病院内のメリックの部屋、そしてその部屋の外に当たる廊下などに姿を変えていた。

そこに登場した小瀧は当初普通の青年姿だったが、みるみるうちにステージ上でエレファント・マンに変貌していった。決して特殊メイクなどには頼らず、ただ己の肉体のみで異形の男を表現する手法に思わず目と心を奪われる。この肉体表現を会得するまで、小瀧はどれだけの苦労と努力を注いだのだろう、と考えてしまうほどだった。
エレファント・マン=メリックはその姿で誤解されがちだが、純粋で傷つきやすい心をもっている。そんなメリックの心も小瀧は限られた身体の動きから絞り出すような声音で、痛々しいくらいピュアに演じきっていた。

世田谷パブリックシアター×東京グローブ座『エレファント・マン』舞台写真 (撮影:細野晋司)

世田谷パブリックシアター×東京グローブ座『エレファント・マン』舞台写真 (撮影:細野晋司)

メリックを保護するトリーヴズ役の近藤からも目が離せない。一見心優しく正義感に溢れる医師の心がメリックとのやり取りではぎとられ、本当の自分が露呈する。露呈した瞬間の心の叫びは非常に切なく胸を突き刺すものだった。

ケンダル夫人を演じる高岡は、女優としての仮面を脱ぎ捨て、一人の友人として、さらには母のような存在でメリックに接する。その存在はメリックにとって太陽のような明るさとあたたかさをもたらし、また病院の理事長役の木場は神の教えより現実に重きを置くタイプの人間として、メリックの支えとなり、時には厳しい現実を見せていた。この二人の存在はメリックそしてトリーヴズにどのような影響をもたらすかも見どころだろう。

芝居自体はメリックが受けてきた苦悩や環境をあらわすかのように終始重たい空気が流れていた。メリックが少しずつ自分の本音=普通の人間のように生きたいという想いを強くするたびに、暗闇の中にほんのりと光が差す。その光に想い駆られる一方で光が生み出す影の存在も無視できず……。人間の生々しい感情や本音、人生そのものを見せつけられているような2時間40分だった。

ゲネプロ後には取材会が開かれ、小瀧、高岡、近藤、木場が森と共に登壇し、今の心境を語った。

小瀧望/ 世田谷パブリックシアター×東京グローブ座『エレファント・マン』取材会(撮影:篠塚ようこ)

小瀧望/ 世田谷パブリックシアター×東京グローブ座『エレファント・マン』取材会(撮影:篠塚ようこ)

小瀧は「森さんとキャストの皆さんと何か月も稽古をしてきました。そしてこれから1ヶ月くらい本番が続きますが、ケガなく最後までこの作品に挑みたい」と素直な心境を口にしつつ、実在の人物であるジョン・メリックを演じる事については「凄く緊張しますし、ジョン・メリックさんに失礼のないように、と意識しながら演じています」と真摯に語る。

記者からはメリックを演じる上での身体表現について質問が集中する。「いただいた台本や戯曲に『このジョン・メリックを演じる役者は必ず医師やトレーナーの相談を受けてほしい。何故なら腰に病気を持つ者は腰がダメになるから』というようなことが書かれていたんです。まずそれに驚かされ、実際にトレーナーや森さんと相談しながら体勢を作っていきました。その後、稽古に向けて口を歪めたり、身体をもっと歪めよう、左肩だけは上がっているように……など、細かい微調整をしていきました」と小瀧。「今のところ四肢全体が厳しいです(笑)。芝居をしている時は気にならないんですが、終わった後で『いたたた……』という事になっています」と本音を口に。「僕の次にこの役をやる人がいたら『(厳しいのは)腰だけじゃないよ。首、僧帽筋、肩関節、膝、腿、腰です』と言ってあげたいです」と笑っていた。

森新太郎/ 世田谷パブリックシアター×東京グローブ座『エレファント・マン』取材会(撮影:篠塚ようこ)

森新太郎/ 世田谷パブリックシアター×東京グローブ座『エレファント・マン』取材会(撮影:篠塚ようこ)

森はそんな小瀧に「まぁたいしたものですよ。今日もよくここまで来たなぁと。身体だけでなく彼の台詞のリズム、発語について昨日の通し稽古の時に『周りがタタタタと話していてもお前は自分のリズムでやってくれ』と言ったら今日はしっかりそれが出来ていました。小瀧、えらいな!」と絶賛していた。

近藤公園/ 世田谷パブリックシアター×東京グローブ座『エレファント・マン』取材会(撮影:篠塚ようこ)

近藤公園/ 世田谷パブリックシアター×東京グローブ座『エレファント・マン』取材会(撮影:篠塚ようこ)

近藤は「メリックとの出会いのシーンですが、お客さんはトリーヴズの目を通してメリックと初めて出会う事になるのでその瞬間を大事にして、一緒にメリックを感じていただきたい」とコメント。

高岡早紀/ 世田谷パブリックシアター×東京グローブ座『エレファント・マン』取材会(撮影:篠塚ようこ)

高岡早紀/ 世田谷パブリックシアター×東京グローブ座『エレファント・マン』取材会(撮影:篠塚ようこ)

舞台女優のケンダル夫人を演じる高岡は「メリックは私を通して女性と感じさせる女性をやらせていただきます」と語りつつ「小瀧くんは私の長男と一歳違いなので、そういう面では“お母さん”と見られないように(笑)、女性として見られるように心がけていましたが、どうしてもお母さんに見えてしまう」と苦笑しながら話すと、隣から小瀧が「(お母さんなんて)言った事ないじゃないですか。お美しいと思っています」と力説していた。

木場勝己/ 世田谷パブリックシアター×東京グローブ座『エレファント・マン』取材会(撮影:篠塚ようこ)

木場勝己/ 世田谷パブリックシアター×東京グローブ座『エレファント・マン』取材会(撮影:篠塚ようこ)

木場は「僕はどんなお芝居も恋愛劇だと思っていて、この芝居でも何組かの恋愛劇が見え隠れしています。私もその一組に入っていると自分で思っています。他の組が誰の事かは秘密です」と意味深に語ると小瀧は声を上げて笑いだし、森も下を向いて苦しそうに笑いを堪えていた。ちなみに芝居の大先輩から見た小瀧の演技について「ナイーブでとてもいいと思います」とニッコリ。その上で「彼と普通の会話ができるのはある一か所だけなんですが、照明が薄暗めでもう少しはっきり(小瀧の顔を)見たいと思いながらやっています……僕は小瀧くんが好きです」と真顔で告白すると小瀧がまた大笑いしていた。

森は皆のコメントを聴いたうえで「本当にいいチームだった。コツコツという言葉が似合うくらい、本当にコツコツ小さい事から立ち上げて今日のゲネプロが今までで一番いい出来だった」とキャスト陣を褒め「今までいろいろな現場を経験したが、これまでに感じた事がない確かなもの=信頼を感じた。演出家冥利に尽きます」と笑顔を見せた。

なお、この日笑顔が絶えない森だったが、これまでに稽古を受けた役者たちからは「森の稽古は厳しい」ともっぱらの噂。小瀧も「以前森さんとお仕事をご一緒したSexy Zoneの菊池風磨や中山優馬からも聴いてました。僕は二人と仲が良いんですが(森と仕事をする事を伝えると)『そうか……じゃあ頑張れよ……』と、それ以上何も言わないのでちょっと怖いなと思っていたんですが(笑)、実際は理不尽な言い方はしない人ですし、役者が皆納得するように言ってくださるので優しいし親切、そして面白い人です」と説明すると森は困ったような表情を見せつつ笑っていた。

この笑顔に癒されますね! 世田谷パブリックシアター×東京グローブ座『エレファント・マン』取材会(撮影:篠塚ようこ)

この笑顔に癒されますね! 世田谷パブリックシアター×東京グローブ座『エレファント・マン』取材会(撮影:篠塚ようこ)

「ジャニーズWESTのメンバーは観に来るか?」という質問が飛ぶと、小瀧はうなずき、「なかでも濵田崇裕は凄い楽しみにしています。『〇日に観に行くわ!』と既に言われました。濵田は2回観に来ると言っていました。最初の方と最後の方に。『どんな変化があるか楽しみにしている』って」と嬉しそうに語っていた。

「この作品は間違いなく僕の俳優人生のターニングポイントになると思う」と力を込める小瀧は最後に「ロングスパンになりますが、キャスト、スタッフの皆と一緒に走り抜けたい」と力強く宣言して会見を締めた。

本公演の配信が決定!
2020年12月5日(土)18:00からJohnny'sオンラインにて本公演が配信される事が決定した。詳しくは下記をご参照ください。

取材・文=こむらさき

公演情報

世田谷パブリックシアター×東京グローブ座
『エレファント・マン THE ELEPHANT MAN』
 
【日程】2020年10月27日(火)~11月23日(月・祝) 
【会場】世田谷パブリックシアター
 
【作】バーナード・ポメランス
【翻訳】徐賀世子
【演出】森新太郎
【出演】
小瀧望(ジャニーズWEST)
近藤公園 花王おさむ 久保田磨希 駒木根隆介 前田一世 山﨑薫 /
高岡早紀 木場勝己
 
【料金(全席指定・税込)】 
一般:S席(1階&2階)8,500円 A席(3階)5,000円 ほか各種割引あり
 
【お問い合わせ】世田谷パブリックシアターセンター 03-5432-1515(10:00~19:00)
【主催】公益財団法人せたがや文化財団・東京グローブ座 
【企画制作】 世田谷パブリックシアター・東京グローブ座 
【後援】 世田谷区
【協賛】東邦ホールディングス/トヨタ自動車/ブルームバーグ 
【協力】東急電鉄株式会社
【助成】文化庁文化芸術振興費補助金(劇場・音楽堂等機能強化推進事業)独立行政法人日本芸術文化振興会
 

■配信情報
【配信日】2020年12月5日(土)18:00~ 見逃し配信:12月6日(日)18:00まで
販売開始日】2020年11月20日(金)
代金】4000円(税込み)
【配信サイト】Johnny'sオンライン https://online.johnnys-net.jp/ ※国内配信のみ
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