瑞希インタビュー トーナメントV2の実績でパートナーの王者・坂崎ユカに万感の挑戦!「人生で出逢えてよかったユカさんに、私の全部をぶつけて超えたい!」
東京女子プロレスが2013年12月の旗揚げ以来最大のビッグマッチを開催する。舞台は11月7日(土)、東京・TOKYO DOME CITY HALLだ。
メインは“魔法少女”坂崎ユカが保持するプリンセス・オブ・プリンセス王座の防衛戦。挑戦者は「東京プリンセスカップ」を勝ち抜き挑戦権を得た瑞希である。フリー参戦の瑞希はアイドルタッグユニット、ブリリアントバトルガールズ(ブリバト)のひとりとして12年12月にLLPW―Xでデビュー(パートナーはSAKI)。東京女子には17年3月から参戦しているが、シングルではまだ団体最高峰のタイトルには届いていない。
しかし今回、トーナメント制覇の実績をひっさげタッグパートナー・坂崎ユカへの挑戦が決定。キャリア最大のビッグチャンスを前に、チャレンジャー瑞希はなにを思う?
<プリンセス・オブ・プリンセス選手権試合>
[王者]坂崎ユカ vs 瑞希[挑戦者=第7回東京プリンセスカップ優勝者]
※第7代王者4度目の防衛戦。
――シングルトーナメント「第7回東京プリンセスカップ」を優勝したことでプリンセス・オブ・プリンセス王座への挑戦が決定しました。
「トーナメントしている最中は優勝することしか考えていなくて、その先のタイトル挑戦ってことを忘れていたんですけど、優勝してハッとしたというか、そうだ先があったんだという感じでした」
――優勝がゴールではありませんでした。
「そうです。勝った瞬間は、優勝者が挑戦できるってことも忘れていたんですけどね」
――優勝は今回が初めてではなく、2年連続。東京女子では初めてのことでした。
「そうですね。なんか、自分自身ではシングルマッチがすごく苦手な意識が大きくて、(シングルの)トーナメントとか苦手だなって感じるんです。でも、シングルのトーナメントで個人としてどこまでできるんだろうとか、1人で闘ったときに自分はどれだけできるのかとか、それが一番わかる場所、一番感じられるところなので、自分自身と闘いつつ、精神的にも鍛えられたという感じがありますね」
――どうしてシングルが苦手なのでしょう?
「デビューしたときからずっとタッグチームでやってきて」
――ブリバトでしたね。
「ハイ。ずっとタッグでやってきて、シングルよりもタッグでということが多かったので。1人だとあまり自分のことが信じられないんですけど、やっぱり2人でいるとパートナーに対する信頼感とか、パートナーがいることで自分を信じてくれるのでそれも力になるというか。そういうこともあってシングルよりもタッグの方が慣れてる。そう言ったらおかしいんですけど」
――ずっとタッグとして活動していたし、タッグのイメージの方が大きかったですね。そこから東京女子に参戦。ひとりでやってきたわけですから、そこにいままでとは違う違和感を覚えたわけですか。
「すごいドキドキしました。いままで人についていくと言ったらおかしいですけど、誰かといっしょにみたいな、あまりなにかを自分で決断するとか、そういうことがあまりできなかったので、甘えていたと言ったら甘えていたんですけど、入ってきたときにはやっぱりすごい覚悟を持って入りましたね」
――プリンセスカップ2連覇は瑞希選手が初めてでした。これはもうシングルでの自信につながったのではないですか。
「そうですね。苦手意識も薄くなったし、苦手なんてもう言ってられないなと感じました。それまで東京女子に来てから自分はなにも残せていないとずっと思っていたので、東京女子で2連覇というのは自分が初めてだったのでやっとなにか残せたかなと。今年のトーナメントで2連覇できる権利を持っているのは自分しかいないので、なにか残したいという強い気持ちで挑めたんだと思います」
――昨年は優勝後に中島翔子選手のベルトに挑戦し敗れました。今年は決勝戦で中島選手に勝って優勝した。前年と比較してどうでしたか。シングルに関して昨年と比べ成長、進化したというのはありますか。
「気持ちがやっぱり強くなれたというのもあるし、お客さんの2連覇への期待とかもすごい感じてて、いまあまり大会とかできないなかでも応援に来てくれる人たちがいるというのはすごい力になったので後押しをすごいしてもらったというか、恩返ししたいなと思って闘えました」
――11・7TDCでプリンセス王座には通算3度目の挑戦になります。3度目の正直にしないといけないですよね。
「そうですね! そろそろ結果を出したいというのはやっぱりありますね」
――瑞希選手はまだ団体最高峰のシングル王座を手にしたことはないですよね。
「取ったことないですね。なんかあまりシングルのベルトにあまり興味がなかったというのが正直なところで。それは去年、翔子さんとの対戦で気持ちが変わったというのもあるんですけど、やっぱりチャンピオンになる人って器も大きいし強さもあるし、いろんなものを兼ね備えていないとなれないなってすごい感じてて、挑戦させてくださいと軽い気持ちで言えるもんじゃないなというのは自分のどこかにありました。なので、このトーナメントに優勝して挑戦というのは、ホントに自分のなかではひとつの後押しになってると思います。シングルのベルトをかけて闘う、挑むというのはすごいすごい大きなことで、ホントは自分でいいのかなというような気持ちにはなるんですけど、そう言ってられないなというのもすごくあって、好きな団体のベルトを一度は巻きたいなって思ってます」
――挑戦させてくださいとお願いするよりも、優勝によって挑戦権を文句なしに獲得したわけですよね。堂々の挑戦ですよ。
「そうですね。やっぱりなにか結果を残してからじゃないと、という気持ちもすごくあって。私が!私が!というタイプじゃないので、トーナメントに優勝できたら挑戦できるというのはアタマのどこかにあったんだと思うんですけど、あったからなのかな…。優勝することしかそのときは考えていなかったので、ちょっと言ってることがおかしくなっちゃうんですけど(笑)」
――とにかく、優勝の先には挑戦があります。
「ハイ、ホントに後押しになったし自信になったというか、挑戦する権利をちゃんと得られたなという気持ちです」
――過去2回は大阪で挑戦しました。今回、3度目の挑戦はいままでとは場所が違いますよ。
「そうなんです! でっかすぎて(笑)」
――TDC大会は、東京女子史上最大のビッグマッチです。そこでメインを張るというのはどうですか。
「ユカさんにTDCで、と言われた瞬間になんかもういろんな気持ちがドバーッとなって、ホントにいいのかなというか、所属でもないし、みたいな気持ちにもなったし。みんな認めてくれるのかな、みたいな気持ちにもなったんですけど、そんなこと思ってるの自分しかいなくて、選手もお客さんもすごく温かい声をかけてくれるので、ホントにみんなでいい大会にしようと言っているなかでホントに余計なこと言ってられないなじゃないですけど、ホントに頑張らなきゃいけないというか、自分の全部を出し切りたいと思います」
――王者の坂崎選手はマジカルシュガーラビッツのタッグパートナーでもありますよね。パートナー対決となることについてはどう考えていますか。
「ウ~ン、ウ~ン、なんかいままで感じたことのない気持ちにはなったんですけど、なんか複雑というか、闘いたくないわけでもないし、ホントに表現しづらい気持ちにはなったんですけど、ずっと東京女子にきてユカさんのことを超えられなくて、タッグを組む前はずっと対戦相手だったんですよ。この人はずっと対角にいる人なんだと感じたというか、試合をしていてすごく楽しいし、負けて負けて次は絶対に超えてやるとすごい思ってたので、タッグを組むとなったときに一瞬あれ?って思ったんですけど、組んでみたらすごい息が合って自然と身体が動くというか、ホントに心が通じてるんだなと感じていたので。そうですね、昔ならすごい闘うことになんて言うんですかね、躊躇とかも正直あったんですよ。ユカさんと前哨戦をしてみて、すごく強くて、躊躇している場合じゃないというかメッチャ強いと思ったらやっぱり超えたいという、むかしにあった気持ちが戻ってきて。ホントに全部ぶつけて勝てるかどうかわからないなかでホントに私の全部をぶつけたいなと思いますね」
――パートナーとしても恥ずかしくない闘いをしたいという気持ちにもなったのでは? この人と組んでいるんだから、対戦したら互角、あるいはそれ以上にシングルでも闘えるようにならないと、という。
「そうですね!」
――トーナメントはすべてキューティースペシャルで勝ってきましたが。
「そうですね。こだわりというか自分の身体の柔らかさとか、力で押し切れないところが体格的にも自分にはあるので、柔軟さがあってこそ出せる技だと思うので、勝つためにやってますね」
――勝つために、今回なにか秘策とか考えていますか。渦飴(Whirling Cnady)という新技もあるとか。
「そうですね。変型のクロスボディーアタック。勝利をつかむ、流れをつかむきっかけになったらいいなと考えています、まだたぶんわかっていないと思うんですよ、ユカさんも。そこが一瞬の隙になると思う。とにかく自分らしく闘うことが一番で、なにがなんでもがむしゃらにいきたいですね」
――では、瑞希選手にとって東京女子とは、どういう場所ですか。
「東京女子はキラキラしてます、とても」
――外から来たから余計にそう見えますか。
「う~ん、来てわかったというのが一番ですね。やっぱり女の子がたくさんいるところに入るというのが最初はすごく怖かったというか、なんか受け入れてくれるだろうかとか、そういう気持ちも強かったし、仲良くできるかなとか、まあ仲良くできなくてもいいやくらいの気持ちで入ったんです。私は1人でいるという覚悟で入ったんですけど、みんながすごい優しくて、ホントにこんなにいい空気ってあるんだと思うくらいに優しくてビックリしたというか。ホントに写真とか見るとキラキラしてるなって思っちゃいます。親バカというか。親でもないからなんとも言えないですけど(笑)」
――親というほどではないでしょう(笑)。
「ハハハハ。なんて言うんですかね、客観的に見てそうでした(笑)。キラキラしてるなってすごい思ったし、個性豊かだし」
――立場としてはフリー参戦ですが、東京女子の一員だという意識はあるのではないですか。
「そうですね。途中から来たみたいな気持ちは常にどこかであるんですけど、ユカさんをはじめ、それはないよ!みたいなことをみんな言ってくれるので。仲間でしょ!みたいな感じで言ってくれるんですね。ホントにいい仲間を持ったなってすごく思います」
――ブリバトとしてのLLPW―Xでのデビューから現在まで、11・7TDCはキャリア最大の勝負だと思いますが。
「その意識はありますね! ユカさんとはホントにプライベートでも仲良くて、ホントになんでも相談するんですよ。すごい甘えちゃうというか、ワガママ言っちゃうというか、人としてもすごく尊敬してて、選手としてもすごく尊敬してて。タッグ組んでたとかそういうこともあっていろんなことが運命だなと思ってます。出逢えたこととかもすべて運命だなと思うし。ホントに人生で出逢えてよかったなと思える人だから。そういう人といま闘える、大会ができる、いろんなことが運命だなと思うので、私はなによりもここでユカさんを超えたいなと思いますね。いままでとは違う感情というか責任、プレッシャーとかもありますけど、なによりも超えたいなと思います」
――チャンピオンになったらどうしたいですか。
「それ、よく聞かれるんですけど、チャンピオンになるということをまだ考えてなくて。勝ちたい、ユカさんを超えたい、その先を確かに考えてなかったなって。ホントにTDCのタイトルマッチにしかいまは目が向いてなくて。でもその先と言われたらやっぱり私がいままで見てきたチャンピオン、ユカさんだったりとかベルトが似合ってるなとか、チャンピオンにふさわしい人間だなって、あの人がチャンピオンだからベルトをあの人から取りたいなと思うんですよ。ユカさんのベルトを持ってる姿がすごく大好きで、自分もそう思ってもらえるようなというか、自分が持ってきたような感情を持ってもらえるようなチャンピオンになりたいなと思います」
――坂崎選手にもそう思ってほしい?
「ユカさんだけじゃなく、みんなに思ってもらえるような」
――瑞希選手のデビュー戦を赤坂BLITZで見た者にとっては非常に感慨深いものがあります。
「ウフフ。なんかホントにあのときはプロレスというものを知らない状態で試合をしたというのも大きくて、勝つことに執着もなかったというか。だってどう考えても勝てないじゃないですか」
――どう考えてもあの相手(神取忍&井上貴子組)では無理です(笑)。
「ハイ。というのもあって、気持ち的な面ではすごく成長できてるんじゃないかなって思います」
――TDCはメイン。人間はこれだけ変わるというか成長するんだなと。
「ハハハハ。そういうことですよね!」
――決戦の舞台となるTDCはBLITZと雰囲気が似ていますよね。
「似てますね!」
――それだけに運命的なものを感じます。
「そうですね。当日緊張し過ぎちゃうかもしれない(笑)」
――いい大会になることを期待しています。
「ハイ、頑張ります!」
王者・坂崎ユカ同様、挑戦者・瑞希もパートナー対決には複雑な思いがあった。が、11・7TDCはお互いのすべてをぶつけるタイトルマッチ。私情は抜きにして白黒つけなくてはならないのだ。とはいえ、両者の関係を知れば知るほどこの試合は運命と感じざるを得ない。キャリアでは瑞希が一年上回るも、東京女子では常に坂崎の後塵を拝してきた。タッグパートナー同士でありながらも“旗揚げメンバーで東京女子ひと筋の坂崎”vs“遠回りして東京女子に辿り着いた瑞希”という図式もドラマティック。東京女子はもちろん、女子プロビギナーにも見てほしい、人間ドラマがここにある。
(聞き手:新井宏)