柿澤勇人、南沢奈央、須藤蓮、石井一孝が“人間の本質”を露わにする~『ハルシオン・デイズ2020』が開幕

レポート
舞台
2020.11.6
『ハルシオン・デイズ2020』舞台写真 撮影:田中亜紀

『ハルシオン・デイズ2020』舞台写真 撮影:田中亜紀

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2020年10月31日(土)東京・紀伊國屋ホールにて、鴻上尚史 作・演出の舞台『ハルシオン・デイズ2020』が開幕した。この初日の模様をレポートする。

本作は、四人の登場人物が妄想・幻影・虚構と向き合いながら、目まぐるしく展開していく物語。主演を務めるのは、ミュージカル『フランケンシュタイン』や現在放送中の連続テレビ小説「エール」で注目を集め、舞台だけでなくテレビドラマなど幅広く活躍している柿澤勇人。そして彼と共にこの物語を紡ぐメンバーとして南沢奈央須藤蓮石井一孝が出演した。

※以下、ネタバレを含みますのでご注意ください。
 

【あらすじ】
SNSで「一緒に自殺しませんか?」と一人の青年(柿澤)が呼びかけ集まった男(石井)と女(南沢)。男は死に場所を探していたので「どうやって死ぬか?」ばかり考えているが、女は「どうして死にたいのか?」と問いかける。というのも女は自殺を止めようとこの集まりに参加したスクールカウンセラーで、自分がケアしていた学生に自殺されてしまった過去を持っていた。そして自殺した学生(須藤)が今もなお亡霊のように女につきまとい、まるで生きている人間のように女に話しかけたりするのだった。
「どうせ死ぬなら楽しく死にたい」という願望から死ぬ道具の練炭と七輪を使って焼肉を始める3人(と1人)。
だが、ふとした瞬間に青年に異変が起き、気が付くとまるで別人のように変貌していた。青年は、勤務先の同僚がある感染病にかかり、勤務先や近所の人々から「近寄るな」「出ていけ」と責められた事がきっかけで「そんな自粛警察を倒したい」と高らかに宣言。元の記憶が飛んでしまっているため、目の前にいる男と女が自分の同志だと思い込んで、一緒に戦おうと呼びかける青年は、戦いの一つとして近所の保育園で子ども向けの劇「泣いた赤鬼」を披露し、それをマスコミに取り上げてもらい、さらに仲間を増やそうと考える。かくして3人(と1人)の芝居の練習が始まった……。


撮影:田中亜紀

撮影:田中亜紀


撮影:田中亜紀

撮影:田中亜紀


撮影:田中亜紀

撮影:田中亜紀

一人二役と言ってもいいくらい異なる人格を演じた柿澤の演技力に改めて驚かされた。柿澤は以前『フランケンシュタイン』で二人の人物を演じた事があるが、それは見た目からまるで異なる別人だった。が、今回は普通に暮らす一人の青年という“器”に、まるで異なる中身が注がれている。変貌を遂げた後の人格も一人の人間として喜怒哀楽や思考に筋が通っているため、演じる側としては難しい役どころだったに違いない。だが芝居中はそうとは感じさせず、ナチュラルに演じ、またどちらの人格についてもどこか傷つき痛々しいものを感じさせる柿澤から目が離せなかった。

撮影:田中亜紀

撮影:田中亜紀

撮影:田中亜紀

撮影:田中亜紀

撮影:田中亜紀

撮影:田中亜紀

撮影:田中亜紀

撮影:田中亜紀

カウンセラー役の南沢と、南沢に付きまとう死んだ学生役の須藤とのやり取りは時に笑いを誘い、時に真実を突き付けられ胸を締め付ける。南沢は当初自分の職業意識からこの問題を解決しようと奔走するが、やがて自分の本心に気づかされる。その心の動きは必見だ。

撮影:田中亜紀

撮影:田中亜紀


撮影:田中亜紀

撮影:田中亜紀

そして南沢に付きまとう須藤も面白い存在感を放っていた。当初は南沢についてくるめんどくさそうな一人の学生だったが、須藤の存在が南沢以外には見えていない、という事が把握できてから一気に須藤の存在が面白く感じられた。南沢の本心にずばっと斬りこんだり、彼が見えていない男たちに毒舌を吐いたりする言葉の数々は人の本質を突いており、その言葉は南沢だけでなく観る側にも刺さるものとなっていた。

撮影:田中亜紀

撮影:田中亜紀

撮影:田中亜紀

撮影:田中亜紀

石井が演じる男がいちばん自殺願望を口にしているが、その割にひょうきんでユーモアにあふれており、青年と女のどちらにも共感したり反発したり……。いい意味でにぎやかしい人物、だがどこかに闇を抱える男を石井の持ち味を十二分に活かして演じ切っていた。

撮影:田中亜紀

撮影:田中亜紀

 

劇中劇の「泣いた赤鬼」という物語がまるで4人それぞれの心情や環境とリンクする。芝居の稽古の様子に大笑いしながらも、ふとした瞬間に涙を誘う。本作のテーマは、“自殺”“自粛警察”といった現代が直面する悲劇や絶望と、そこからの救済、そして希望。まさにその言葉通り、最後は笑顔になれる作品だった。

撮影:田中亜紀

撮影:田中亜紀


撮影:田中亜紀

撮影:田中亜紀

配信決定!
11月21日(土)14:00~ 18:30~の回の配信が決定した。詳しくは文末の告知をご確認ください。

取材・文=こむらさき 写真=オフィシャル提供

公演情報

KOKAMI@network vol.18
『ハルシオン・デイズ2020』
 
作・演出:鴻上尚史
出演:柿澤勇人、南沢奈央、須藤蓮、石井一孝
 
制作協力:new phase 
企画・製作:サードステージ
 
【東京公演】
日程:2020年10月31日(土)~2020年11月23日(月・祝)
会場:紀伊國屋ホール
 
料金:8900円(全席指定/税込)
☆U-25:4500円(当日引換券/税込) 
※25才以下のお客様を対象とした枚数限定です。当日劇場にて開演30分前より指定席券とお引換え致します。(引換時、要身分証提示)
 
主催:サードステージ
 
【大阪公演】
日程:2020年12月5日(土)~2020年12月6日(日)
会場:サンケイホールブリーゼ
 
料金:8900円(全席指定/税込)
<ブリーゼシート>:6,500円(全席指定/税込/前売・当日共通)
※端のお席になります。シーンにより見づらい可能性があります。
☆U-25:4500円(当日引換券/税込) 
※25才以下のお客様を対象とした枚数限定です。当日劇場にて開演30分前より指定席券とお引換え致します。(引換時、要身分証提示)
 
主催:関西テレビ放送/サンライズプロモーション東京
 
公式HP: http://www.thirdstage.com/knet/halcyondays2020/

【配信情報】
日時:11月21日(土)14:00~ 18:30~の回
視聴金額:2,500円/1ビュー
詳しくは公式サイトでご確認ください。
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