梅若実玄祥が人間や自然への祈りを捧げる 3人の人間国宝が集結する公演『~祈り~』合同取材会レポート

レポート
舞台
2020.11.11
梅若実玄祥

梅若実玄祥

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2020年12月20日(日)に国立能楽堂にて「除災招福 疫病沈静 災害復興 国土平安平穏 祈念 三人の国宝 『~祈り~』」が開催される。

今公演ではいずれも重要無形文化財認定(人間国宝)である、能楽シテ方観世流・梅若実玄祥、横笛奏者・藤舎名生、能楽小鼓方大倉流 十六世宗家・大倉源次郎の3人が集い、2020年初旬から続く新型ウイルスによる疫病、長雨による水害などの天災、予期せぬ災害によって被害を受けた全世界の人類の救済、支援、応援のためにひとつとなって地球を救いたいという思いで臨む。

公演に先立ち、梅若実玄祥が合同取材会で意気込みを語った。

冒頭、プロデューサーの西尾智子氏からのコメントが代読された。
「新型コロナウイルス感染症拡大の影響で舞台ができない状況が続いており、2019年10月にパリで上演された現代能『マリー・アントワネット』以降、実玄祥自身による公演は行うことができなかった。夏以降は各方面での公演が徐々に再開している中で、私たちはこのたびの感染症の終息の願いと、被害に遭われた方々の鎮魂の意味を含めて祈りをテーマとした公演を開催させていただく運びとなった。演目は、“祈り”という題材から各々の出演者が選んでご披露いただく」といった内容で、これを受けて実玄祥は「今年は感染症拡大の影響で、仕事をする機会までなくなってしまった。役者や演奏者は仕事をする場がないとどうにもならない。今回集まった3人は日本の古典を背負っており、その思いから何かを発信できないか、そしてそれを長くやって行きたいという意図で本公演が立ち上がった」と思いを述べた。

質疑応答で、今回3人の国宝が集まるに至った経緯を問われると、「大倉くんとは一調(謡い手一人と小鼓・大鼓・太鼓いずれかの演奏者一人で演奏すること)の催しを小規模で行っている。お客様に「聞かせる」なんてとんでもない、「聞いていただく」という思いが2人に共通してある。名生さんは能が大好きな方で、昨年人間国宝に認定されたことをお祝いする席で「何かご一緒できないか」という話になり、ちょうど大倉くんとも何かやろう、と話していたところだったので、たまたま3人とも人間国宝という共通点もあるので、自分たちでしっかり責任を持つ会をやろうじゃないか、ということになった」と答えた。

梅若実玄祥

梅若実玄祥

創作舞「祈り」はどんな作品になるのか、という質問には、「まだはっきり決まっていないが、恐らく「アヴェ・マリア」の曲で舞うことになると思う。能の謡の歌詞に当たる詞章は使わず、ほぼ音楽のみになる。能は特にその時の思いを中心に演じるという芸能。各自の気持ちがあれば必ず成立すると思っている」と述べた。

今回は何に向かって祈るのか、と問われると「やはり人間や自然。自然は人間が勝てる対象ではない。能を舞っていて一番思うのは、人の思いというのは動かされやすいもので、誰にでも雑念はあるが、一瞬でも素直になれた時はこの上ない喜び」と答え、「これからは覚悟のないまま生きてはいけないのではないかと感じている。能を演じている中でほんの一秒でもいいから、お客様に何かを感じていただきたい、という気持ちでこれからも舞っていきたい」と能楽師としての決意を話した。

最後に公演への意気込みを聞かれると、「もしかしたらこれからのお客様というのは、以前のお客様と思いが少しずつ変わってくるのかもしれない。ちゃんとした気持ちで発信をすれば、必ずお客様もそれを返してくださる。古典芸能というものはせっかく何百年と続いてきたものだから、ここで途切れさせるつもりはない。人間は懸命になることによって新しい道は必ず開ける。能はあってもなくてもいいものだからこそ、一生懸命やらなくてはならない。能があるからこそ、一時のゆとりが出てくるのも確かだと思うし、それを担う人間がいなくてはならない。私自身はあと何年舞えるかわからないが、例えばあと3年だったら、30年分、300年分舞いたい。それによって皆様にお返しできるものがあるんじゃないか」と切実な思いを述べた。

公演では創作舞『祈り』のほか、3演目の上演が予定されている。

取材・文=久田絢子

公演情報

除災招福 疫病沈静 災害復興 国土平安平穏 祈念 三人の国宝 『~祈り~』
 
公演日時:令和2年 12月20日(日) 開場17:00 / 開演18:00 / 終演20:00(予定)
会場:国立能楽堂(東京都渋谷区千駄ヶ谷4-18-1)
出演者:
梅若実玄祥
藤舎名生
大倉源次郎
 
上演演目(予定):
一、 一管 『竹林の詩』
藤舎名生(横笛独奏)
一、 一管 『鞍馬』
藤舎名生(横笛独奏)
一、 一調一管『葛城』
謡・梅若実玄祥 / 小鼓・大倉源次郎 / 能管・竹市学
一、  創作舞『祈り』 三人の人間国宝
横笛・藤舎名生 / 小鼓・大倉源次郎 / 能舞・梅若実玄祥
※記載は上演順ではございません。
※上演演目は事前の予告なく変更になる場合がございます。予めご了承ください。
 
料 金:10,000円(税込)、全席指定(先着販売)
※購入制限枚数:2枚
※未就学児入場不可
 
一般発売日:2020年11月29日(日)10:00
 
主催:サンライズプロモーション東京
プロデュース:西尾智子
制作協力:ダンスウエスト

お問合せ:サンライズプロモーション東京 0570-00-3337(平日 12:00~15:00)
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