地球ゴージャス『The Love Bugs』会見&城田優インタビュー!@大阪
左から、寺脇康文、城田優、岸谷五朗
シリーズ史上最多数の楽曲で彩る、虫たちの胸キュンストーリー!
結成21年目を迎える岸谷五朗と寺脇康文による演劇ユニット、地球ゴージャスが第14弾となる新作舞台『The Love Bugs』を2016年1月から3月末まで、全国4都市で上演する。タイトルが「胸キュンする!」というスラングとしても使われる最新作は、シリーズ史上最多数の楽曲で彩る昆虫たちの命と愛を巡る物語だ。公演に先駆け大阪で開かれた取材会に出席した岸谷と寺脇、主演の城田優のコメントと共に、後半で城田優の単独インタビューをお届けする。
あらすじ:ここは虫たちが主役の小さな世界。今宵、種の誇りを背負った強者たちが伝説の祭典へと集結する。誰もが憧れる孤高のスター、涙を知らぬ男殺しの美女、光り輝く気弱な少年、初めて大人の世界を知る唄と生きる少女。そこに、怪しい振付師や世界を股にかける謎の女、さらに祭典の中目覚めたひとつの魂までが加わりカーニバルは最高潮に盛り上がる。一方、喧騒の裏では、宿命に翻弄される一つの恋が動き出そうとしていた……。
◎岸谷五朗:コメント
作・演出・出演の岸谷五朗
―――虫の世界という発想はどこから?
理由は3点あります。今回オーディションを通過した34名の飛びぬけた才能を持ったメンバーも参加していますが、例えば劇中でバク宙、バク転をするには人間だと説明がいるんです。でも虫ならしゃべりながらバク転していても成立するなと。よりエンタテインメントとして肉体の力を魅せていくには、虫の世界はもってこいだった。
2点目は、地球ゴージャスの新作はその時々で、今しか描けない作品であることを重視しています。その中で、今年も世界中で悲惨な事件がたくさん起こりました。これはもう人間から人間にものを言っても成立しないのかなと。だったら、人間以外のものから人間にものを言わせようと。
3点目は、城田優、蘭寿とむ、寺脇康文など日常生活において「大きいね」といわれる出演者が「小さいね」と言われる世界はどうだろうと思いつき、小さな虫にしてやりました(笑)!
―――城田優さんを主役に抜擢された理由とは。
城田優はたくさんの魅力の箱をもっている。これまで彼が『エリザベート』や『ファントム』など新作ミュージカルに主演すると聞くたびにドキドキしていたんですが、じつはまだ僕が開けたいなと思っていた箱は、誰にも開けられていないんです。だから今「イーッヒッヒ、地球ゴージャスで開けてやるぞ!」と思っている(笑)。歌、芝居、ダンス、すべてを任せられる数少ない俳優の一人なので、ぜひ今までにない城田優の魅力を楽しみにご覧頂けたらと思います。
―――ユニット結成21年目の意気込みを改めて。
この作品は僕のなかで一皮むける、次のステップのきっかけになる作品だと思えて仕方がない。観客の皆様には、そんな地球ゴージャスの変化、生きている劇団の進化を見届ける証人となって欲しいですね。
◎寺脇康文:コメント
演出補・出演の寺脇康文
―――見所を教えてください。
シリーズ史上、過去最大級のエンタテインメント作品になると予測しています。楽曲数も一番多いですし、そのために城田優という”神の声を持つ男”を迎えてやっております。ダンス、アクション、コメディもふんだんに取り入れつつ、同時に紛争や戦争といった真剣なテーマもバランスよく取り入れて、みなさんと共有できれば。大千秋楽の大阪公演では2700人という劇場のキャパシティーに負けないよう、スケールの大きな作品に仕上げて参りたいと思います。
◎城田優:コメント
主演の城田優
―――念願だったという、地球ゴージャスへの主演が決定しました。
とてつもなく素敵な作品を作っているという実感と同時に物凄いプレッシャーも感じていて、今幸せと不安のバランスが絶妙な状態です(笑)。稽古場では岸谷さんと寺脇さんの二大巨頭が中心にいることで、とにかく毎日笑ってる。こんなにアットホームで楽しい稽古場はなかなかないんじゃないかな。歌って素敵、ダンスって面白い、殺陣ってかっこいい! と僕が稽古場で日々感じているエンタテインメントのすばらしさや、誰の胸にも届くであろう愛の物語を一人でも多くの方に持ち帰って頂けるよう、精いっぱい頑張ります。
◎城田優:単独インタビュー
「“孤高のスター”らしからぬ、得意技も披露します!」(城田)
―――会見では、岸谷さんから「新たな魅力の箱を開花させる」とのコメントがありました。
確かに、この箱は開いたことがなかったなと思いながら稽古しています。ただ、仮に僕が何か魅力を持っていたとして、本番の舞台で発揮できなければ何も開花しないので。実際にそれが城田優の魅力として輝くかどうかは、稽古の努力次第かなと思います。
―――また「すべてを任せられる役者」との太鼓判も頂きました。文字通り歌って踊って全部やる感じですか?
そうですね。五朗さんには事前に「全部やってもらうから」と言われてドキドキしながら蓋を開けてみたら、ほんとうに全部だったので。これから渡される楽曲もあるんですが、すでに頭がパンパンです(笑)。殺陣やダンスなど経験のある分野も、はるかにレベルの高いことをやらせてもらってるので、成長するしかないなと思っています!
―――役柄は、誰もが憧れる“孤高のスター”です。
種族としての運命にコンプレックスがあり、それに抗えば抗うほど、孤高のスターになってしまったのかなと。決してそこを目指したのではなく、まったく正反対の感情からスタートしている。そんな悶々とした思いを抱える一方で、孤高のスターらしからぬ得意技も披露します(笑)。虫の種類までは明かせませんが、そういう意外な一面が垣間見えるところも魅力の一つかな。
―――ズバリ、岸谷作品の魅力とは?
五朗さんの本が素晴らしいのは、当て書きによって役者それぞれの魅力が役柄に活かされているところ。平間(壮一)くんはダンスが上手で、お芝居でも独特のキャラクターを個性的に楽しく演じてる。大原櫻子ちゃんは努力家で今回が初舞台ですが、きっと誰もそのことに気づかないほどポテンシャルの高さを見せつけてくれると思います。蘭寿とむさんはやっぱりカリスマ性があって、彼女も劇中でスター性をもった役柄を演じている。そして、マルシアさんは国籍を超えたパッションが伝わる人。彼女はブラジル、僕も半分スペインの血が入っているので凄く感覚も近くて、よくお話しさせて頂くんですが、今回マルちゃんの謎めいた異質な部分が良く出ていると思う。そこにカンパニーを代表するお2人が加わって、主要キャスト7人が出揃う場面は圧倒的に華やかだし、面白いシーンになっています。
◎「若いパパになるはずが、予想外の30歳となりました(笑)」(城田)
―――2016年は主演作に引き続き、演出家デビューが決定しました。演目は『屋根の上のヴァイオリン弾き』の作曲家・脚本家コンビによる66年初演のブロードウェイミュージカル『アップル・ツリー』。作品選びからキャスティングまで関わられたそうですね。
作品については、会場が150人規模という制約がある中で、少人数でできるシンプルな題材がいいよねと言う話になり、候補作の中から自分が一番面白いと感じたのが『アップル・ツリー』だった。誰もが知っているであろうアダムとイブの物語もあって分かりやすいだろうと。3幕構成でボリュームもあるので、1、2幕ではコメディ要素も入れつつ、3幕では打って変わって面白い変化が出せる作品なのかなと。まだ漠然としたイメージですが、切なくて温かくて泣ける物語になるのではと思います。
―――演出への興味や、きっかけとなった作品は?
昔から物語を書いたり、監督や演出することには興味があったんですけど。しいてきっかけをあげるなら、2011年に主演した『ロミオ&ジュリエット』かな。当時ジュリエットの2人が新人で、僕は彼女たちの教育係的な面もあった。単純に教えることが好きだったし、彼女たちが吸収して表現したことが演出家に褒められたりするのを見るのも嬉しかった。それと同時に演出にも興味があって。セットってどういう風に作るのかなとか、要は順番ですよね。
―――順番、ですか。
まず台本があって、そこから芝居をどうつけていくのか。芝居をつけるには周りがどういう環境か知る必要がある。ソファ、椅子、ベットがあるのか、もしくは何もないのか。小道具によって体の使い方も変わるので。そういう意味で舞台上に何があるのかを決めるのも演出家の仕事。『ロミオ&ジュリエット』で言えば、演出家の小池修一郎さんはどのタイミングでこういうセットや小道具の配置を思いついたんだろうと考えるようになった。イコールそれは、演出に興味があるってことなんですね。そこから、照明のタイミングだったり、芝居の骨組みを意識するようになりました。
現時点で自分はどういう演出をするのかは、やってみないと分からない。今はとにかく自分が今まで経験して培ってきたことを全部頭の中に戻して、混ぜてぶつけていく。結局は『感性』で挑まないと。誰かのマネはしたくないですし、ルールブックにのっとってやったところで、何も面白いものは生まれない。そこは五朗さんにも「自分が感じるままに演出して欲しい」という言葉を頂きました。
―――『The Love Bugs』主演も『アップル・ツリー』演出も、30歳になっての挑戦です。年齢的な節目も意識されますか?
実は小さいころから思い描いていた30歳像があって。僕の中では20歳でも40歳でもなく、30歳が一番大きかった。要は大人になる年齢。若いパパになりたくて、30歳で結婚していると、15歳のころから思っていました。結果あと(取材時から)2週間で30歳になるんですが、現実は想像と全く違ってた(笑)。でも、大人としての節目になることには変わりはないので、『The Love Bugs』は新たな自分をお見せできる節目の作品になると思います。全身全霊で稽古に挑んでいますので、大千秋楽の大阪公演では有終の美を飾りたいですね。
理路整然とした話しぶりに共演者を気遣うコメント、さらに想いを語りだしたら止まらない感じとか。わずかなインタビュー時間の間にも、聡明で心優しく熱い一面を煌めかせた城田優。他にどんな魅力の箱が開かれるのか、まずは主演舞台から見届けて!
■作・演出:岸谷五朗