高畑充希「かなりワクワクしています」 ミュージカル『ウェイトレス』初日前会見レポート

レポート
舞台
2021.3.10
浦嶋りんこ、宮澤エマ、高畑充希、宮野真守、LiLiCo(左から) (写真提供/東宝演劇部)

浦嶋りんこ、宮澤エマ、高畑充希、宮野真守、LiLiCo(左から) (写真提供/東宝演劇部)

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ブロードウェイミュージカル『ウェイトレス』の日本版初演が2021年3月9日(火)から日生劇場にて開幕した。映画『ウェイトレス~おいしい人生のつくりかた』(2007)をベースに製作された本作は、グラミー賞ノミネート歴を持ち、楽曲を手掛けたサラ・バレリスを始め、脚本、作曲、演出、振付の主要クリエイティヴを全て女性クリエイターが担当したことがブロードウェイ史上初の出来事として注目を集めた。

初日を前に、本作に出演する高畑充希宮野真守宮澤エマLiLiCo / 浦嶋りんこ(Wキャスト)が報道陣の取材に応じた。その様子をレポートする。

コロナ禍でも上演できる喜びを噛み締めて

高畑充希 (撮影:五月女菜穂)

高畑充希 (撮影:五月女菜穂)

−−初日を迎えられる心境と意気込みをお願いします。
 
高畑充希(ジェナ役):1月からお稽古してきました。マスクをしながら、どんな顔なんだろうと思いながら、みんなと一緒にお芝居をしてきました。海外スタッフも、来られるスタッフは来てくださったり、リモートで演出してくださったりしながら、どうなるか分からない中で、みんなで一生懸命やってきたので、やっとお客さんと一緒にこのミュージカルを楽しめるんだと、かなりワクワクしています。すごく楽しみです。

宮野真守(ポマター医師役):とても嬉しく思います。今までとは全く違う環境での作品作りになったので、稽古中はもちろん不安に思うことはたくさんあったんですね。だけど、カンパニーのみんなが本当に温かくて、こんな状況だからこそ一丸となって作品づくりができたんじゃないかな。やっとみんなの顔を見ながら芝居できたときに、なんて芝居って楽しいんだと思って。その僕らの思いも感じてもらえると思いますし、何よりお客さんがエンタメを求めてくれていると思うので。こんな状況下で来てくださるのは本当に嬉しく思っています。

宮野真守 (撮影:五月女菜穂)

宮野真守 (撮影:五月女菜穂)

宮澤エマ(ドーン役):たくさんの奇跡が重なり合って、初日を迎えられたと、キャスト・スタッフ全員が心から感じていることかなと思います。本当に数々のテクノロジーを駆使して、リモートで演出をつけてくださったり、音響やライティングを設定してくださったり。このコロナ禍じゃなかったら逆にできなかったんじゃないかなという、最先端のテクノロジーで、この舞台はいろんな人の力を使って初日を迎えられています。本当に嬉しいという気持ちです。

私はちょうどミュージカルは1年ぶりになります。去年はコロナ禍で舞台が公演中止になってしまったので。この1年を経て、リモートの中で演出をつけてくださっているアレックスから「全くまだ演劇が始められる見通しがついていない。だからあなたたちが先駆者となって、演劇、劇場界を盛り上げていってください」というメッセージを受け取ったと感じて、初日に挑みたいなと思います。

宮澤エマ (撮影:五月女菜穂)

宮澤エマ (撮影:五月女菜穂)

LiLiCo(ベッキー役/Wキャスト):本当にみんなに届けたい、本当に素晴らしい作品です。曲もセリフもキャラクターみんな。私50歳にして、きょうデビューいたしますので。本当にお稽古の時ポンコツだったので、それをみんながいろいろ教えてくれて。やっと歌詞を覚えたら、充希ちゃんみて「かわいい〜」と言って間違えちゃったりして(笑)。本当に大変だったんですが、今日は楽しく。

もちろんコメディなんですけれども、すごく感動できるところがいっぱい。Wキャストでいいのは、みんなより先に見られるというね。みんなより先に見たの、ごめんね(笑)。すごくいい作品なの。早くみんなに届けたい、そんな気持ちです。

浦嶋りんこ(ベッキー役/Wキャスト):私はLiLiCoさんとのWキャストなので、今日初日を客席から見せていただくという幸運なことになっております。今回はベッキーだけがWキャストということなので、いろいろと変則的な稽古の仕方だったんですが、スタッフの皆さんと海外のスタッフの皆さんと話し合いながら進めていただき、感謝でいっぱいです。お客様が入って、お客様の拍手が聞こえるなかでやれる喜びを本当に噛み締めたいと思います。客席で皆さんを応援したいです。

高畑充希「ずっと聞いていたい曲ばかり」

LiLiCo (撮影:五月女菜穂)

LiLiCo (撮影:五月女菜穂)

−−高畑さんはブロードウェイで本作を何回もみていらっしゃるそうですね。

高畑:そうですね。最初はニューヨークで拝見して、あまりに面白くて感激してしまって。曲も素晴らしいし。もう一回見たいと思って、次ロンドンに行って。もう一回見たらもう一回見たくなって、ニューヨークでまた見たんですけど。

何度見ても楽しい作品だし、それを日本語で、日本のキャストで上演できるってすごく幸せだなと思います。それに自分が出ているって、なんのこっちゃっていう感じですけど、いいカンパニーに恵まれたなと思いますし、お客さんが入ってやっと最後のピースが入る感じがして、めちゃくちゃわくわくしています。

−−そのときは自分がやるとは決まっていたんですか。

高畑:最初は全然決まっていなくて。見た時にやりたいという思いももちろんありましたけど、なんて楽しいミュージカルなんだというのが先にあって。日本に帰ったときに、こんな素晴らしいミュージカルがあって、チャンスがあったらやりたいなと言っていたら、叶った(笑)。

浦嶋りんこ (撮影:五月女菜穂)

浦嶋りんこ (撮影:五月女菜穂)

−−実際に作品のオファーが来た時はどう思いましたか?

高畑:いやぁ、やっぱりプレッシャーもすごくありましたし、本当に幸せ者だなぁと。ジェナという役には、私はまだ少し若くて。30代前半の役なので、どうかなと思ったんですけど、これもご縁かなと思いましたし、声をかけていただいてよかったなと思いました。

稽古場で歌稽古を聞いていても、歌っていても、この曲に触れられるだけで幸せというか、全く飽きないというか。ずっと聞いていたいと思う曲ばかりだったので。内容も向こうで見た時は英語だったので、理解を深められていなかったんですけど、読めば読むほど、「なるほど、そういうことか!」という発見もあって、それを深めていく作業がとても楽しい稽古場でした。

−−宮澤さんも見ていらっしゃるんですよね。
 
宮澤:
私もブロードウェイで2017年あたりに見ているんですけど、そのときも、本当に充希ちゃんと全く同じで、楽しいし、歌もキャッチーだし、でも話はものすごくディープだし。アメリカ南部のどこかの町のダイナーで働く女性たちが主人公なんですけど、別に何一つ共感するシュチュエーションじゃないのに、本当に大号泣ってこういうことかなというぐらい、嗚咽混じりに見て。

向こうではパイを貪りながら、泣きながら、劇場出ていくときは、浄化されて出ていくみたいな。宗教的な体験をして出てきたので、その時に私も、これ日本にいつか来るのであれば、何らかの形で関わりたいなとは思っていたんです。『ピピン』という作品に出た際に、ピピンの演出のダイアン(・パウルス)さんが『ウェイトレス』も演出されていて。ウェイトレスの話になったら、「あなた、ドーンにぴったりだと思うのよね」とぽろっと漏らされて。社交辞令かなと思っていたんですけど、本当にオファーをいただいたので、縁とはこういうことなのかなと、ゾワっとしました。

「お花畑のミュージカルじゃないです(笑)」

高畑充希、宮野真守、LiLiCo(左から) (撮影:五月女菜穂)

高畑充希、宮野真守、LiLiCo(左から) (撮影:五月女菜穂)

−−高畑さんと宮野さんは舞台で初共演ですよね。それで、役の間柄は不倫相手。
 
宮野:ディープな感じですよね。年に1回ぐらいは、バラエティで会っていたんですけどね。

高畑:そうですね、かなりアブノーマルなシチュエーションでいつも顔を合わせていたんですけど。まさかこんなにポップとはいえ、いろんなことが繰り広げられるミュージカルなので、最初は大丈夫かなと思ったんですけど……相談しながらいろいろなことを試しながら、稽古できて。すごく心強い存在でした。

宮野:お芝居していて、すごく楽しいです。やっとお芝居できたから(笑)。(高畑さんの芝居は)引き込まれますね。一方的に僕も舞台で拝見させていただいたときも引き込まれて、その時も充希ちゃんから目が離せない感じで感激していたんですけど、実際相手役となった時に、物語の登場人物に自然となれる。充希ちゃんと対面すると。それが楽しくて、しょうがなくて。

−−あらすじを見ると、夫のモラハラ、暴力、それに不倫と、なかなかな内容が出てくるようですが。

高畑:ポスターヴィジュアルはポップな女性を応援するミュージカルと書いてあるので、これ大丈夫なのかなと(笑)。間違ってはいないんですけど、「今度小学校の娘と行きます」とかインスタグラムにコメントくださった方がいて、「小学生か……これは止めるべきか止めないべきか」と思いながら。でも新しいものに触れられるタイミングになるのではないかなって(笑)。

宮澤:今までのミュージカル像って、きれいなお姫様とかキラキラなイメージがある方が多いかもしれないですけど、やっぱり『ウェイトレス』は現代が舞台なので、リアルなんですよ。出てくるキーワードは結構エグいワードなんですけども、ただそれを肯定するとかじゃなくて、これが現実だし、生活だし、人生だし、それどうやっていきていくみたいな。それをコメディで包んでね。

高畑:お花畑では全然ないです、このミュージカル(笑)。

−−ひどい夫なんですね。
 
高畑:
ひどいんですけどね、可愛いところはあるんです。一人一人がすごく愛せるキャラクターで、一応ジェナがストーリーの主人公ではあるんですけど、いろんな人の人生が切り替わって、いろんな場面で見られて。どのキャラクターも私はすごく好き。だからミュージカル自体が豊かになっているのかなと思っていて。どのキャラクターにも、もちろん酷い旦那にも注目してもらいたいし、みんなの素敵なナンバーを聞いてほしい。

−−ちなみにLiLiCoさん、夫があんな夫だったらどう思いますか。

LiLico:まぁね、私、なんでもいろんな経験あるから。

宮野:格好いい。

高畑:LiLiCoさん、めちゃくちゃ優しいんですよ。だからああいう夫が来ても、合わせちゃいそう(笑)。

LiLiCo:合わせちゃうんだろうね(笑)。

今の気持ちをパイに例えると......?

浦嶋りんこ、宮澤エマ、高畑充希、宮野真守、LiLiCo(左から) (写真提供/東宝演劇部)

浦嶋りんこ、宮澤エマ、高畑充希、宮野真守、LiLiCo(左から) (写真提供/東宝演劇部)

−−今回、パイがたくさん出てきますが、今の皆さんの気持ちをパイに例えると、どんなパイになりますか?

浦嶋:外見はばっちり甘いクリームで、中身はボリューミーなフルーツがたくさん入っている。そういうパイにして、お届けしたい感じがしますね。

LiLiCo:うーん、「なんで奥さんがミュージカルデビューするのに、名古屋で別の舞台やっているんだろうパイ」。

宮野:ただの今の状況じゃないですか(笑)。

LiLiCo:海外スタッフからも「当然、きょうご主人来るんでしょう?」と言われるんですけど、別の仕事していますって答えて。

−−でも公演期間中には見てくださるのでは?

LiLiCo:どうでしょう。私、(夫である小田井涼平が所属している)純烈のステージ、絶対行かないので(笑)。あれはマダムの皆さんのための空間。でも、(観劇に)来たらすぐ分かりますね。190センチあるので。

−−他の皆さん、どんなパイでしょう?

宮澤:「一口食べたら絶対ずっと健康パイ」が食べたいです。私たち何回PCR検査を受けたのかというぐらい、万全の体制で挑んでいるので。これ以上のことはできないというぐらいやっていると思うので、このパイを食べて完璧と言うパイを食べたいです。

宮野:「いろいろあったけど、今はパイ生地だけパイ」。これまでいろいろなことをいっぱい詰めてきたけど、お客さんが入って、やっと僕らの『ウェイトレス』が生まれるんだなと思っているので、まだパイ生地パイ。

高畑:何もつかないなぁ……。「みんなが楽しかったら、それでいいよパイ」。

宮野:座長!ありがとうございます!

高畑:マスク外して、みんなで喋れていることが奇跡みたいでうれしくて。ご飯会ももちろんいけないし、稽古中もアクリル板が立っていて。みんなとしゃべりたいという、みんなのうずうずが溜まっている中で、やっとマスクを外して、通し稽古した時に、キャストの方の顔を見られるのが超嬉しかった。それだけでいいなというか。見ていてすごく楽しくなれる作品なんです。この時代にこの作品をやれるありがたさ。すごくハッピーに感じているので、みなさん楽しみに、劇場に来ていただきたいです。

「ドロっとしたリアルを、美しいパイで包んだようなミュージカル」 

高畑充希 (撮影:五月女菜穂)

高畑充希 (撮影:五月女菜穂)

−−最後にメッセージをお願いします!

高畑:「ポップなコメディミュージカル、女性応援歌」という感じのテーマで受け取られている方が多いと思うんですけど、本当はかなりドロっとしているし、リアリティがある。みんなが一度は感じたことがある「かつてのあの自分ってどこいっちゃったんだろう?」とか「取り戻せなくなってしまった自分をどう取り戻すか」というテーマもある作品です。

曲はめちゃくちゃポップで素晴らしいですし、ストーリーも展開が早くて楽しいですけど、リアルなごちゃっとしたものを美しいパイで包んだような作品になっているので、ミュージカルを見慣れている方も見慣れていない方も、こういう作品があるんだと。みんなが見てどういう気持ちになるのか、興味深いです。小さい子連れはおすすめしないですけど(笑)、特に女性の方たちはみると、すごく楽しんでいただけるんじゃないかなと思います。

 

ミュージカル『ウェイトレス』 は、2021年3月9日(火)~3月30日(火)まで日生劇場にて東京公演、その後4月~5月上旬に福岡、大阪、名古屋にて公演予定だ。

取材・文=五月女菜穂

公演情報

ミュージカル『ウェイトレス』 
 
<東京公演>
日程:2021年3月9日(火)~3月30日(火)
会場:日生劇場

料金:S席14,000円  A席9,000円  B席4,500円(全席指定・税込)
 
<全国ツアースケジュール>
福岡公演:2021年4月4日(日)~11日(日)博多座
大阪公演:2021年4月15日(木)~19日(月)梅田芸術劇場メインホール
名古屋公演:2021年4月29日(木)~5月2日(日)御園座
※ツアー詳細情報は、各地へお問い合わせください。

脚本:ジェシー・ネルソン
音楽・歌詞:サラ・バレリス
原作映画製作:エイドリアン・シェリー
オリジナルブロードウェイ振付:ロリン・ラッターロ
オリジナルブロードウェイ演出:ダイアン・パウルス 
 
出演:
高畑充希  宮野真守  宮澤エマ  LiLiCo/浦嶋りんこ(Wキャスト)
渡辺大輔  おばたのお兄さん  勝矢  村井國夫
 
黒沼 亮  田中真由  茶谷健太  中野太一  藤森蓮華  麦嶋真帆  渡辺七海
 
製作・主催:東宝/フジテレビジョン/キョードー東京
共同制作:バリー&フラン・ワイズラー
 
公式サイト https://www.tohostage.com/waitress/ 
公式プロモーション映像 https://youtu.be/w4GAjNevvPY
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