【訃報】女優・李麗仙さん 享年79

ニュース
舞台
2021.6.26
アルバム『情歌抄 ひとりぼっちの朝の鎮魂歌』ジャケット

アルバム『情歌抄 ひとりぼっちの朝の鎮魂歌』ジャケット


女優の李麗仙さんが2021年6月22日に肺炎のため都内病院で亡くなったことが、25日に明らかとなった。長男で俳優の大鶴義丹氏は所属事務所を通じて次のコメントを発表した。

「母、李麗仙は、2018年に脳梗塞を患いリハビリに励んでいましたが、今年の春に肺炎になったことから入院生活となり、今月22日に永眠しました。享年79歳。
私の父である唐十郎とともに劇団『状況劇場』を興し、60年代70年代のアングラ演劇シーン真っただ中を疾走しました。父、唐十郎とは離婚しましたが、最後まで盟友としての親交はありました。最後の舞台は、2017年の『六条御息所』でした。
唯一無二のアングラ女優人生を全うして、一片の悔いなき人生だったと思います。葬儀は今週末に、家族友人や演劇関係者だけで行う予定です」

李麗仙さんは1942年3月25日、東京・牛込で生まれた。在日韓国人3世で、韓国名は李初子、日本名は星山初子だった。舞台芸術学院在学中の1963年に、劇団発足直後の唐十郎と出会い、1964年、状況劇場(当時は「シチュエーションの会」)旗揚げ公演『恭しき娼婦』(サルトル作)にヒロイン・娼婦リッジー役で主演。1964年より唐と同居を始め、二人で金粉ショーダンスのキャバレー巡業で生活費を稼ぐ日々を送った。状況劇場では李礼仙と名乗り、1967年8月、新宿花園神社における『腰巻お仙ー義理人情いろはにほへと篇(月笛お仙)』で紅テント興行が開始されると、一躍“アングラの女王”として人気を博す。同年10月には唐と結婚、1968年4月に長男・義丹を産んだ。『二都物語』(1972年)、『ベンガルの虎』(1973年)、『唐版・風の又三郎』(1974年)等々、劇団看板女優として快進撃を続ける一方、映画『任侠外伝 玄界灘』(監督:唐十郎/1976年)やNHK大河ドラマ『黄金の日日』(1978年)にもメインのポジションで出演。さらにシンガーとして、アルバム『情歌抄 ひとりぼっちの朝の鎮魂歌』(1979年)も発表した。また、1975年に日本に帰化した。

状況劇場最後の公演となった『少女仮面』(再演/1986年)に出演後は、1987年2月に芸名を現在の李麗仙に改名し(瀬戸内寂聴からのアドヴァイスがきっかけだったという)、同年9~10月に自らの演出で李麗仙秘演会『愛の乞食』を上演。唐とは1988年3月に協議離婚した。1990年「うらら舎」を設立し、多くの舞台作品を上演。また、「3年B組金八先生」第4シリーズ(1995~1996年)で金八先生と対立する教頭・石川千春役を演じて強烈な存在感を打ち出した。映画は『ホテルコパン』(2016年/門馬直人監督)の舟木役、舞台は『六条御息所』(2017年/演出:笠井賢一)のタイトルロールが最後の出演作となった。

なお、NHK大河ドラマ『黄金の日日』は現在NHK BSプレミアムで毎週日曜日朝に再放送中(状況劇場からは故・根津甚八、唐十郎も出演している)。また、『状況劇場 劇中歌集』(1984年カセットブック/2011年CD化)や『唐十郎 四角いジャングルで唄う』(1973年/後楽園ホールでの実況録音盤)といった音源では、往年の状況劇場名曲を歌う李の声を聴くことができる。謹んでお悔やみ申し上げます。

シェア / 保存先を選択