「Dance Dance Dance @ YOKOHAMA 2021」オンライン記者発表会レポート~小林十市(ディレクター)らが語る、フェスティバルの展望
「Dance Dance Dance @ YOKOHAMA 2021」ロゴ
2012年に始まり4回目を迎える日本最大級のダンスフェスティバル「Dance Dance Dance @ YOKOHAMA 2021」が、2021年8月28日(土)~10月17日(日)に行われる。横浜市内全域を会場とし、横浜の「街」そのものを舞台に約200のオールジャンルのダンスプログラムを展開する。6月24日(木)オンライン記者説明会が行われた。登壇したのはディレクターを務める小林十市(元モーリス・ベジャール・バレエ団)、ディレクター補佐の山本康介(元英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団)、横浜アーツフェスティバル実行委員会事務局長の菊地健一。
はじめに菊地があいさつ。まず「withコロナでの安全・安心な開催に向けて着実に準備していることをお伝えさせていただきます」と話す。続いて、多くのイベントが中止・延期になっている現状に触れ「日本のダンスアーティストや団体が大きなダメージを受けているからこそ、また発表の場を失った市民の皆様の失意が大きいからこそ、3年に一度のダンスのフェスティバルの場を作ることが重要だと考えております」という旨を語った。そして、コンセプトを紹介した。
1 街じゅうがダンス空間 舞台は横浜の「街」そのもの。
2 クリエイティブ・インクルージョン あらゆる人にダンスの楽しさを。
3 クリエイティブ・チルドレン ダンスとの出会いが子供たちを待っている。
4 国際発信 横浜 “発”、世界へ
小林は20世紀バレエの大家モーリス・ベジャールの薫陶を受けた名ダンサーで、巨匠は彼のためにソロ作品(『東京ジェスチャー』)を創った。退団後もベジャール作品の指導を任される。記者発表会には居住するフランスから参加。コロナ禍における開催意義について、「アーティストを救う場ではないか。ダンサーたちは踊る場所を必要としている」「芸術に携わることは心の栄養。見る方もそうですし、ダンサーたちにとって本当に大きなことだと思う」と語る。
海外招へいが容易ではない現状を踏まえ「今回はオールジャパニーズでやってみようじゃないか」と思うに至った。「いま海外で活躍しているダンサー、本当に素晴らしいです。海外のカンパニーで経験してきた人たちが日本に戻ってくるのもとても増えていると思う。日本人のダンサーたちで、世界の振付家の数々の素晴らしい作品を上演できるんじゃないか」と話す。
小林十市
ディレクター就任を打診された際の気持ちを聞かれると「無理だと思いました(笑)。さまざまなプログラムがあるので、芸術監督として具体的に何をすればいいのかが分からなかった。もともとトップに立つタイプではないので、二番手、三番手あたりに落ち着いていたいんです」と胸の内を明かす。そこで、「フェスティバルの主軸となるトップアーティスト事業の公演を成立させるために」山本に補佐を依頼した。「自分の中では(山本を)裏芸術監督と言っていまして、お互い背中合わせ、2人で1つみたいな感じです」とユーモアを交えて語る。
山本は英国から帰国後、振付・指導に力を発揮し、ローザンヌ国際バレエコンクールのテレビ解説を務めるなどバレエの発展に力を注ぐ。小林の補佐役を「喜んで引き受けることにしました」という山本は「(コロナ禍で)やろうとしたことができなくなくなった時期もありましたけれど、いま形になりつつあるので、うれしく思っています」と述べる。
オープニングを飾る『横浜ベイサイドバレエ』や東京バレエ団『白鳥の湖』などトップアーティストによるプログラムの中でも、今回の象徴的存在になりそうなのが、9月18日(土)神奈川県民ホールで上演される『International Choreography × Japanese Dancers ~舞踊の情熱~』。ベジャール、ローラン・プティ、ウィリアム・フォーサイス、クリスタル・パイトら世界の大物振付家の名作を上野水香、中村祥子ら国内外で活躍する日本人ダンサーが踊る。山本は「振付家の流れを見て、バレエ/ダンスの発達をお客さんに理解していただく。それを日本のダンサーたちが難なく踊れる時代が来たことをテーマにするとおもしろい」と意図を説明した。
「Dance Dance Dance @ YOKOHAMA 2021」ポスターデザイン
小林が出演するプログラムも話題である。
9月23日(木)~26日(日)KAAT神奈川芸術劇場大スタジオで上演される『エリア50代』は、小林と近藤良平、それにもう1人50代のゲスト(安藤洋子、伊藤キム、平山素子、SAMの中から日替わり)のソロを上演するトリプル・ビル。50代のダンサーたちに焦点を当て異彩を放つ。
小林は「凄いことになっているなと感動しています。承諾してくれたアーティストが凄すぎて、巻き込んでしまった感じがあります。構成のヴィジョンははっきりしているんですけれど、その場に行ったらどうなるかはまだ分からない。ちょっと怖い気持ちと、アブ・ラグラさんという方にソロを振付していただいたので、自信をもって踊ってやるぞ!という気持ちがあります。日本で踊るのは6年半ぶりです。自信をもってお薦めできる企画です」と胸を張る。
10月16日(土)~17日(日)KAAT神奈川芸術劇場ホールで行われるクロージングプログラムNoism Company Niigata ×小林十市にも期待が高まる。りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館の専属舞踊団Noismを率いる金森穣は、ベジャールがスイスに創設した舞踊学校ルードラに学び、当時ベジャール・バレエで踊っていた小林と親交がある。
小林は「新潟市と横浜市には東アジア文化都市(に選ばれたことがある)という共通点がありまして、Noismはクロージングに相応しいのではないか」と述べる。「僕の頭の中には、前から穣くんと何かできたらいいなというのがありました。直接僕が穣くんに電話して振付をしてもらえないだろうかと言ったら、すぐにOKの返事をいただきました。既に一部の振付が出来上がってビデオが送られてきているんですが、大変だなと思って。自業自得なんですけれど。自主練をして鍛えております」と、やる気まんまんの様子。
また、小林の弟で落語家の柳家花緑による「柳家花緑独演会」が9月12日(日)横浜にぎわい座芸能ホールで行われる。花緑はバレエ『白鳥の湖』に取材した創作落語『鶴の池』ほかを披露し、そこに小林がゲストとして登場予定。なお、9月23日(木)神奈川県立青少年センター紅葉坂ホールにて『おさよ(落語版ジゼル)』 柳家花緑 × 東京シティ・バレエ団が上演される。これは2015年に初演され、バレエと落語のコラボレーションとして話題を呼んだ。小林は「実験的に行われて大成功しました。それを多くの方に見ていただきたいのでお願いしました」と話した。
【動画】Dance Dance Dance @ YOKOHAMA2021 ディレクター 小林十市 メッセージ
取材・文=高橋森彦
公演情報
会期:令和3年(2021年) 8月28日(土)~10月17日(日) <コア期間51日間>
(プレ期間5月1日(土)~8月27日(金)、ポスト期間10月18日(月)~11月30日(火))
会場:横浜市内全域 (横浜の“街”そのものが舞台)
ジャンル:バレエ、コンテンポラリー、ストリート、ソシアル、チア、日本舞踊、フラ・ポリネシアン、盆踊りなどオールジャンル
プログラム数:約200
ディレクター:小林十市
後援 :観光庁、神奈川県、公益財団法人神奈川芸術文化財団、公益財団法人横浜観光コンベンション・ビューロー、横浜商工会議所、 一般社団法人横浜青年会議所、神奈川新聞社、NHK横浜放送局、tvk(テレビ神奈川)、アール・エフ・ラジオ日本、FMヨコハマ、横浜市ケーブルテレビ協議会
助成:令和3年度 文化庁 国際文化芸術発信拠点形成事業、一般財団法人地域創造
協賛:日産自動車株式会社、三井不動産グループ、三菱地所グループ、コカ・コーラ ボトラーズジャパン株式会社、株式会社JVCケンウッド、スターツグループ、株式会社そごう・西武 そごう横浜店、株式会社髙島屋 横浜店、株式会社横浜銀行、上野トランステック株式会社、株式会社キタムラ、株式会社崎陽軒、クイーンズスクエア横浜、株式会社サカタのタネ、J:COM、凸版印刷株式会社、NEC、NTT東日本
協力:キリンビール株式会社、京浜急行電鉄株式会社、相鉄グループ、東急電鉄株式会社、富士フイルムビジネスイノベーション株式会社、横浜高速鉄道株式会社、横浜信用金庫