女性メインキャストでガラリと雰囲気を変えて再出発 『「オープニングナイト」〜桜咲高校ミュージカル部〜』team Red ゲネプロレポート
「オープニングナイト」〜桜咲高校ミュージカル部〜
横山だいすけを主演に迎え、2021年7月2日(金)から男性メインキャストの公演を行っていた『「オープニングナイト」〜桜咲高校ミュージカル部〜』。7月8日(木)からは、ミュージカル部設立を目指す生徒たちのキャストが女性に変わり、再び熱い青春の物語が描かれる。
女性メインキャストであるteam Red(星名美怜(私立恵比寿中学)、河村花、小泉遥香(超ときめき♡宣伝部)、前田悠雅(劇団4ドル50セント)、竹内夢、杏ジュリア(超ときめき♡宣伝部))のゲネプロの様子をお伝えしよう。
先日まで行われていたteamBlueとストーリーやキャラクターは同じだが、台詞や曲のマイナーチェンジもあり、同じ物語でここまで全体の印象が変わるのか、と驚くほど新鮮なイメージに。
天真爛漫・猪突猛進なマイと世話焼きなヒロミは、等身大の女子高生といった雰囲気が微笑ましい。マイを演じる星名は、よく通る声と笑顔が明るい笑顔が主人公然としており、周りを次々巻き込んでいく勢いを感じさせる。河村は冷静さと包容力のある立居振る舞いで、マイをしっかりとサポートする姉のような幼なじみを演じていた。
理事長の娘・レイコは、父への反抗というより自分の立場への諦めが強く見え、やりきれない思いの中で悩む姿が印象的だった。マイをはじめとするミュージカル部メンバーに心を開いていく中で見せる笑顔も魅力的だ。
シスコンの不良・ランは、妹だけではなく部のメンバーにとっても姉御のような立ち位置。パワフルな歌声もグッとくる。ナオはマイペースな雰囲気の中で時折見せる冷めた態度に引き込まれた。ハーモニーを支える歌唱力も見逃せない。いじめられっ子のエリカは、ちょっとズレた不思議ちゃんといった雰囲気が愛らしい。ミュージカル部のメンバーにすっかり馴染み、楽しそうに踊る姿に胸があたたかくなった。
同じ役を男女それぞれが演じるということで、team Blueとはビジュアルや歌唱の印象、パフォーマンスが異なり、Wキャストやトリプルキャストとはまた違う面白さが感じられるのも魅力。team Blueを観た方であれば、違いを探し、見比べてみるのもいいのではないだろうか。
また、脇を固めるアンサンブルと大人キャストはteam Blueと同様。本番を重ねたことで、いい意味で肩の力が抜け、緊張感は保ちつつ余裕や遊びが出ているのが印象的だ。彼らが作る安定した土台のもと、team Redのキャスト陣が初々しい演技とパフォーマンスを披露している。既に公演を重ねてきたアンサンブル・大人チームへ合流することもあってか、ミュージカル部を演じる6人には多少緊張が見られたが、真剣に自らの役に向き合う姿に魅力を感じた。
テッペイ先生を演じる横山は、あたたかさと力強さの増した演技で、少し頼りないが魅力的な教師像をイキイキと描き出す。苦手としている歌への拒否反応を示すシーンやミオ先生にときめくシーンはコミカルさに磨きがかかり、客席から笑いが起きていた。
三倉演じるミオ先生と生徒たちの距離感の微妙な変化も楽しい。ミュージカルが好きだと語るシーンや、設立したばかりのミュージカル部でカラオケに行くシーンなどは、女子会のような和気藹々とした雰囲気に。
また、女性メインのキャストになったことで湖月演じる校長の凛々しさがより際立っていたのも印象的。凄みを感じさせる歌声と堂々とした佇まいで、ミュージカル部の前に立ちはだかる壁としての存在感を見せ付けていた。
野々村演じる教頭や福田演じる理事長も、シリアスとコミカルの緩急でしっかりと物語を引き締め、生徒たちの勢いや情熱を際立たせている。
生徒のキャストが変わったことで全体の印象も変化し、新たな魅力が引き出されたteam Red公演。キャストによるバリエーションの面白さや作品のポテンシャルが改めて感じられた。team Red公演から観る方はもちろん、team Blueを観た方も、まっさらな気持ちで楽しめるのではないだろうか。
本公演は7月11日(日)まで、日本青年館ホールにて上演される。
取材・文=吉田沙奈 撮影=かしわだにたかし アークスインターナショナル