知る楽しみが溢れ出す! 『君も博士になれる展 empowered by 博士ちゃん』内覧会レポート

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2021.10.30
『君も博士になれる展 empowered by 博士ちゃん』展示風景

『君も博士になれる展 empowered by 博士ちゃん』展示風景

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「テレビ朝日若葉台メディアセンター」が、この秋めでたくリニューアルオープン! その記念すべき1発目のイベント『君も博士になれる展 empowered by 博士ちゃん』が、2021年10月2日(土)から2022年5月8日(日)まで開催される。

本展は、ただ展示を眺めるだけではない参加型のイベント。“学び” を大きなテーマに据えているのに “お勉強感” が無く、子供も大人も、自然と体温が上がる仕掛けが散りばめられた展覧会なのだ。細かいことはさて置いて、とにかく行ってみよう!

myノートを手に、ハテナを集める旅へ

会場エントランス

会場エントランス

『君も博士になれる展empowered by 博士ちゃん』は、テレビ朝日の番組『サンドウィッチマン&芦田愛菜の博士ちゃん』から着想を得ている。同番組は、毎週マニアックな得意分野を持つ子供たち(博士ちゃん)が登場して、大人顔負けの知識と情熱を披露する、授業スタイルで進んでいくものだ。会場冒頭では、これまでに番組に登場した一人ひとりが写真付きで紹介されていて、博士ちゃんたちへのリスペクトを感じる。

用紙、ヒモ、デコレーションのスタンプを自由にカスタマイズして、自分だけのノートを作る

用紙、ヒモ、デコレーションのスタンプを自由にカスタマイズして、自分だけのノートを作る

入場時にリングファイル「はてなノート」が渡される。展示を通じて知ったことや、生まれた疑問を書き入れることで、このイベントをさらに深く楽しめるアイテムだ。これは、番組に登場した博士ちゃんたちそれぞれが、自分だけのノートを作って知識をまとめていたことに由来しているのだそう。会場内には筆記用具のある「わーくすぺーす」が各所に用意されているので、自分の興味のあることを見つけたら、すかさずメモメモ! である。

この人体のインパクトがすごい

ここは靴を脱いで体験するので、ブーツの方はお気をつけて

ここは靴を脱いで体験するので、ブーツの方はお気をつけて

会場内に順路は無く、どこからどう巡ってもいいようになっている。けれど……筆者がどうしても気になったところはここ。多くの説明は不要であろう「体内探検」のコーナーだ! 手指を消毒して、いざ出発。

おじゃまします

おじゃまします

これは巨大な人体内をツアーすることで、消化の仕組みを直感的に理解する試みだ。近くでよく見てみると、虫歯があったり、喉に魚の骨が刺さっていたりと芸が細かい。せっかくなのでノドチンコも触ってみたら、ペニョ〜ンとリアルな触感で驚いた。

あちこちに解説や豆知識メモが記されているので、きっと大人でも新発見があるはず

あちこちに解説や豆知識メモが記されているので、きっと大人でも新発見があるはず

胃を抜けて、肺と心臓のエリアへ。中央のセンサーに親指を載せると、自分の鼓動に合わせて巨大な心臓がドクドクと脈打ち、連動して頭上の肺も膨らむ心ニクイ仕掛けだ! 

十二指腸付近にて

十二指腸付近にて

ここで、大人は左手の “非常口” へ抜けて、ひと足先に体外へ。子供は右手の小腸へとわかれていく……。いよいよ体内探検のクライマックスだ。スポンジでできた繊毛に導かれて進んだ先には、バナナ状のぬいぐるみが詰まった大腸エリアが。そして巾着のように小さくすぼまった “出口” の向こうに光が見える。

子供たちとはお尻の前でふたたび出会えるので、大人はカメラを用意して待とう。ゴールはそう、トイレなのである。

自分の置かれた状況に気づくと狂喜する子供たち。うーん、これは禁じ手に近い……!

自分の置かれた状況に気づくと狂喜する子供たち。うーん、これは禁じ手に近い……!

子供たちが歓声を上げながら “お尻からコンニチハ” してくる姿は心底楽しそうで、見ているほうも「イヤだわ〜」なんて言いながらつい笑ってしまう。老若男女を笑わせるなんて、人体の消化活動はすごい。

好奇心こそ宝物

隣の一角では、テレビ番組『サンドウィッチマン&芦田愛菜の博士ちゃん』に登場した博士ちゃんたちの、多種多様な研究成果が展示されている。世界の楽器、整理収納、日本の城、深海魚など……。好きなものは人それぞれ違うし、夢中になる対象は何だっていいのだと改めて感じさせてくれる。

どのブースをのぞいても、研究の完成度に驚くばかりだ

どのブースをのぞいても、研究の完成度に驚くばかりだ

会場内の様々な場所にボックスが設置されているのも見逃さないでほしい。これをパカッと開けてみると……?

おおっ、まるで宝箱!

おおっ、まるで宝箱!

写真ありイラストあり、色とりどりのカードが詰まっていて心が躍る。カードの裏面には、絵柄に対応するような「何だろう?」「なぜだろう?」といった疑問がひとつずつ記されている。この「はてなカード」は全部でおよそ150種類あるそうで、好きなものを選んでノートに収め、持ち帰ることができるのだ。

「きになることはしらべてみよう!」と添えられている通り、これらの疑問への回答は、会場内には敢えて用意されていないのだという。ちなみに筆者が選んだカードには<今までの地球最大の音は、172dB! なんの音だろう?>という問いかけが……。はい、気になったので調べました。調べてよかったです。こういう何気ない「?」と「!」の繰り返しが人生を豊かにするのだろうし、誰かとのコミュニケーションのきっかけにもなるのだろう。

スローなハントにしてくれ

続いては、東南アジアに生息するリスのようなサルのような動物スローロリスの超低速な狩りスタイルを体感する「スローハント」のコーナーへ。やり方はいたってシンプルで、画面上のカワイイ虫に気づかれないようゆ〜っくりと近付いて、タッチできれば狩り成功。これが、信じられないくらい難しい。

このエリアをゆっくり進もう

このエリアをゆっくり進もう

ほんの1mほどの距離なのに、どうしても逃げられてしまう。自分の思う “ゆっくり” が自然界で全く通用しないのだと突きつけられるようだ。意外な奥深さに、大人の方が熱くなってしまうかも?

4度目でやっと成功した時には、思わずガッツポーズが出た

4度目でやっと成功した時には、思わずガッツポーズが出た

絶滅動物はロマンです

すでに絶滅した動物に会ってみたい、そんなふうに思ったことはないだろうか。なんと続いてのコーナーではその無茶な夢が叶う。その名も「絶滅動物の墓場」である。

左から、ワライフクロウ、スミロドン、ギガントピテクスの墓

左から、ワライフクロウ、スミロドン、ギガントピテクスの墓

墓標風のパネルには、絶滅動物のイラストとデータ、絶滅に至ったストーリーなどが記されている。そして自分のスマートフォンで、QRコードを読み取ると……

いきなり目の前に現れたギガントピテクスにびっくり!(スマートフォンにて撮影)

いきなり目の前に現れたギガントピテクスにびっくり!(スマートフォンにて撮影)

それぞれの動物がARで出現! 回転させて観察したり、一緒に写真を撮ったりすることができるのだ。

想いを伝える踊りと音楽

続いては「やりすぎ求愛ダンス」のコーナーだ。鳥や虫の求愛ダンスのお手本映像にならって、画面に向かって思いっきりそれを再現しよう。種の保存がかかっているのだから、恥ずかしがっている場合ではない。求愛に成功すると、目をハートにしたお相手の生き物が「あいしてる(ハート)」と近寄って来てくれるので妙な達成感がある。

全力でダチョウに求愛しているのは、本展のアートワークを担当したアーティストの大河原健太郎氏だ

全力でダチョウに求愛しているのは、本展のアートワークを担当したアーティストの大河原健太郎氏だ

隣には、シアター風にやや奥まった空間が。この「博士ちゃんカルテット」のコーナーでは、『サンドウィッチマン&芦田愛菜の博士ちゃん』の番組テーマソングの演奏映像が1時間に4回のペースで上映される。

防音材として壁に貼られているのは卵のパックなのだとか……

防音材として壁に貼られているのは卵のパックなのだとか……

奏者は、作詞作曲を担当した葉加瀬太郎と楽器が得意な博士ちゃん3名、すなわちハカセさんとハカセちゃんの共演だ。このアレンジは会場でしか聴けないそうなので要チェックである。

音と光で科学してみる

さて、ここで会場の雰囲気はちょっと変わり、音と光を使った “物理っぽさ” を感じるエリアに入る。とはいえ、身構えることなく直感的に楽しめる仕掛けが用意されているのでご安心あれ。

見た目もクールな「サウンドビジュアライザー」は、音が空気の振動だということを視覚的に理解できる仕掛けだ。マイクに向かって音を出すと、レーザーやマイクロビーズが揺れて棒グラフのようなカタチを描く。往年のミニコンポに付いていたグラフィックイコライザーみたいでかっこいい。

人の声と楽器の音の振動の違いも試してみよう

人の声と楽器の音の振動の違いも試してみよう

お隣は「ビートシーケンサー」。マスの上の障害物(白い円柱や人)に光の波がぶつかると、音やリズムが生まれる。物や人を動かすことで、音がどんどん変化していくのを楽しむコンテンツだ。

取材陣のために「ビートシーケンサー」を実演して見せてくれたのは、本展のクリエイティブ・ディレクションを務めた福田哲丸氏(CEKAI)だ

取材陣のために「ビートシーケンサー」を実演して見せてくれたのは、本展のクリエイティブ・ディレクションを務めた福田哲丸氏(CEKAI)だ

法則性を見つけるもよし、理屈は置いておいて、めちゃくちゃに動き動かすもよし! 障害物が多い方が複雑な音が生まれるので、積極的にフロアに参入していくのがおすすめだ。

気分はダンスフロア。時間を忘れて没頭する子供もけっこういるのだとか

気分はダンスフロア。時間を忘れて没頭する子供もけっこういるのだとか

ハテナは続くよどこまでも

ふたつの木は幹の部分でつながっている。なるほど。

ふたつの木は幹の部分でつながっている。なるほど。

出口付近にある「ふし木とちし木」は、来場者それぞれが「ふしぎに思ったこと」と「みんなに教えたいこと」を付箋に書き残していくコーナーだ。ほかの誰かが抱いた不思議を見ていると、共感したり、ハッとさせられたりすることも多い。

「なぜお母さんはあんなにこわいのだろう?」(なんでだろうね)

「なぜお母さんはあんなにこわいのだろう?」(なんでだろうね)

気がつけばだいぶ長い時間を過ごしていた。見どころ&映えどころ満載の本展で、個人的に最もグッと来たのは、意外にも「出口の壁」だった。「あ〜楽しかった〜」と勢いで見落としてしまいそうなポイントなのだが、アリの行列のように細く長く、子供たちへのメッセージが記されている。

来場への感謝に続いて、優しく語りかける言葉が続く

来場への感謝に続いて、優しく語りかける言葉が続く

学びとは、自分が大好きな何かを追いかけること。その対象は無限にあるから、ここで出会えたかもしれないし、もしかしたら出会えなかったかもしれない(その可能性まで丁寧にフォローする姿勢にちょっと感動した)。それでも世界はハテナに満ちていて、夢中になれるものはきっと見つかる。その心に従う限り、どんな誰でも、博士ちゃんになれるはずだーーそんな大きく暖かいエールで本展は終わる。たくさんの子供の心に響いてほしい言葉だ。大人でも胸が熱くなった。

『君も博士になれる展 empowered by 博士ちゃん』は、2021年10月2日(土)から2022年5月8日(日)まで、「テレビ朝日若葉台メディアセンター」にて開催中。本展は面白いモノを見せるだけではなく、世界が面白いということを全力で教えてくれる意義深いイベントだ。そして何より、楽しい!


文・写真=小杉美香

展覧会情報

『君も博士になれる展 empowered by 博士ちゃん』
開催期間:2021年10月2日(土)~2022年5月8日(日)
※月曜(祝祭日除く)、年末年始(12/30~1/3)休館(予定)
開館時間:平日10:00~17:00、土日祝10:00~18:00 ※予定
会場:テレビ朝日 若葉台メディアセンター(東京都稲城市若葉台2-10-1)
アクセス:京王相模原線 若葉台駅北口より314m(新宿から若葉台まで電車で約30分)
主催:株式会社テレビ朝日
企画:株式会社テレビ朝日、Panoramatiks
演出:CEKAI
制作:Rhizomatiks、株式会社xpd、株式会社オーク、株式会社アートビークル―
協力:京王電鉄株式会社
オフィシャルホームページ:https://lab-wakabadai.com/kimimohakase/
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