幽霊と独身男性が暮らす部屋での密室的な会話劇~ピンク・リバティ『とりわけ眺めの悪い部屋』座談会~

インタビュー
舞台
2021.11.5
山西竜矢、大西礼芳、湯川ひな、長友郁真

山西竜矢、大西礼芳、湯川ひな、長友郁真

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脚本家を目指す男に、雑誌記事の仕事が舞い込んだ。ライター業を請けることになった青年・一郎の自宅には、編集者やカメラマンなど、仕事仲間がたびたび訪れるようになった。その部屋には地縛霊の夏子がいる。一郎は夏子の存在を受け入れ、会話も交わす間柄だが、この部屋にやって来る人たちは夏子の存在に気づかない。編集者の琴子も、一郎の部屋を訪ねるようになった仲間のひとり。琴子は、なんとなく夏子の存在を感じるが、どうにも確証はなかった。一郎の部屋で、ここに関わる人たちの恋愛問題が現実化する。部屋を提供し、いつも受け身でいる一郎。夏子との関係にも、亀裂が生じ始める――。

ピンク・リバティの山西竜矢が新たに書き下ろした会話劇。存在が不確かな若い女の霊と、そこに暮らす男をめぐる物語。映画『彼女来来』で長編作品の監督を担い、映像分野でも高く評価される山西が演出を手がける本作。稽古が佳境を迎えた某日、夏子役の湯川ひな、一郎役の長友郁真、琴子を演じる大西礼芳が座談会に加わった。

◆虚構の前提で認識できる「幽霊」の存在

――ひとりで暮らす男性の部屋に幽霊がいるという設定は、どのようにして着想したのですか?

山西:幽霊が主人公の話は、ずっと前からやりたかったんです。映画にしても演劇にしても、いわゆるフィクション作品と幽霊の存在は相性がいいと思います。はっきり見ることのできない存在を虚構の前提で観客が認識できるんですよね。映画だと、幽霊としてそこに映し出されている。舞台では、生身の俳優が現実的にいるけど、幽霊としてとらえられる。どう考えても見えている存在なのに、見えないものとして受け取り手が認識できることが面白いと思っていました。

山西竜矢

山西竜矢

――幽霊の夏子は、モノローグの台詞もたくさんありますね。

湯川:そうですね。舞台に立っているときに、夏子はほかの登場人物たちと違って見えるような存在になりたいと思って取り組んでいます。たぶん、そこにこの作品の面白さがあると思います。山西さんには「あんまり笑顔を見せないで」と言われました。あと、動きのニュアンスを変えたりして、実際に生きている人たちとの違いを見せたい。より幽霊に見えるためには何が必要かを考えるのが楽しいです。

長友:一郎という役は、普段の僕にすごく近いんです。山西さんは一人ひとりにあて書きしたので、それぞれその人らしさがあります。実際の僕よりもコミュニケーション能力がなく、たまたま生きてしまっているようなキャラクターで演じたほうがいいのかと思いましたが、僕の風体でそのまま山西さんの書いた台詞を口にすれば、説得力が出てくるような気がします。

大西:琴子は、幽霊を見ることはできないけど感じることができる女性で、あちら側の世界に半分足を突っ込みながら生きている人。一郎は夏子の存在を認識して会話もできるけど、どこか現実社会に身を置いている人に見えます。琴子のほうがむしろ幽霊の世界に近い人間のように思うんです。

――みなさんには、霊的な体験はありますか?

湯川:自宅で母と眠っていたとき、何かを感じてパッと起きたら、となりの母も同時に起きて、互いに「何かいたよね」って、気配を感じたんです。そしたら部屋のなかにあった箱の取っ手が、いきなりバーンって外れたんですよ。

一同:えええっ!

湯川ひな

湯川ひな

湯川:硬い段ボールのような素材に金属製の取っ手がついていて、それが勢いよく外れました。母も私もキャーと叫んで、そのあとすぐ寝ました。

山西:それですぐ寝られるんや(笑)。

◆あて書きされた本人が読むと抜群に面白い

――稽古場の様子はいかがでしょうか。

湯川:私は、以前に参加したワークショップのときから、感覚的なことを言葉にするときの山西さんにすごく共感します。稽古場でもその信頼感がずっとあります。

大西:稽古が始まる前のウォーミングアップでバレーボールをやるんです。なかには絶対にあきらめない人がいて、その人がチームに加わると必ず勝つんですよ。そういうみんなの素の部分を見ることは、芝居で信頼関係を築くうえで、大切だなと思いました。私はみなさん全員と初めましてなので……。

大西礼芳

大西礼芳

長友:あて書きされた本人が台本を読むと、ひとりで読んだときよりも抜群に面白いです。山西さんは相当にキャストのことをイメージして、みんなのことを理解したうえで書いているんだと思います。演出でも、「この人にこういう動きをしてもらったら面白い」というポイントをものすごく早く察知する。

大西:「なんで私にこういうセリフを書いたんやろう?」と思っちゃいますよね。なんか、見透かされとるなと。

湯川:私もそう思います。自分について書かれているようでドキッとする台本でした。具体的にどこでドキッとしたかは忘れちゃったんですけど(笑)。

山西:どこでそう思ったかはわからないんや(笑)。

◆役者の力に支えられ書いた台本

――舞台は、一郎の部屋で進行します。自宅に人を招き入れることはありますか?

大西:嫌ではないですが、たくさん来たりはしないです。でも来てほしいとは思います。家をきれいにしなくてはならないから、掃除で部屋の空気が循環して、家の運気が上がると思うので(笑)。

山西:僕も仲のいい役者さんを家に招くことがありますね。芝居を書くうえでは、他人が入り込んでいく話を好んでいる面があります。自分のテリトリーを侵される話が好きなんですよね。

長友:一郎の心情で言うと、仕事関係の仲間たちが家に来て、人間関係が深まるかと思ったら、いろんな人たちの色恋沙汰に巻き込まれて困惑してしまう。せっかくいろんな人が自分の家に来てくれるのに、トラブルが生じて、そこから逃げ出したい気持ちになる。ずっと家にいる幽霊の夏子に原因があると思うようになるのが、少し悲しいというか……。

長友郁真

長友郁真

山西:今回の作品はモノローグもダイアローグもたくさんあります。言葉の多い作品です。『彼女来来』という映画を監督したときは、できる限り言葉を削り取って画で見せることを意識していたので、その反動で会話のたくさんある作品をつくりたかったのかもしれません。役者さんの力に支えられて書いた台本ですから、キャストの魅力が溢れた舞台にしたいです。

湯川:舞台上で描かれないことをモノローグで語るシーンがあるんですけど、どれだけお客さんが想像できるかを探っています。山西さんの書かれた一文字一文字をちゃんと届けたい。かつ、自分は幽霊だということを、奥行きをもって表現するにはどうすればいいか、積み上げていくのが楽しいです。

長友:夏子は19歳で亡くなった霊。大人と子どものあいだの不安定さがあります。一郎は29歳。何も成し遂げられていない30歳手前の男の不安定さ。この不安定なふたりの居場所で起こる人間たちの愛おしい感情の起伏を、どうお客さんに受け止めてていただくか。プレッシャーを感じていますが、そこが楽しみですね。

大西:終盤で、夏子と一郎と琴子3人だけのシーンがあります。間接的なコミュニケーションになるんですけど、その表現しづらいやりとりを面白く見せるには何が必要なのかと考えています。琴子には、夏子の声が聞こえない芝居が必要で、これまでこういう役を演じる体験がなかったので、繊細にお芝居できるようにしたいです。

山西竜矢、大西礼芳、湯川ひな、長友郁真

山西竜矢、大西礼芳、湯川ひな、長友郁真

取材・文=田中大介 撮影=敷地沙織

公演情報

ピンク・リバティ『とりわけ眺めの悪い部屋』
 
■脚本・演出:山西竜矢
■音楽:渡辺雄司(大田原愚豚舎)
■出演:
湯川ひな 長友郁真(ハイバイ) 大西礼芳 北村優衣 斎藤友香莉 稲川悟史(青年団) 古野陽大(子供鉅人) 葉丸あすか(柿喰う客) 富川一人(はえぎわ)
 
■日時・会場:2021年11月10日(水)~11月14日(日)@浅草九劇
■料金:前売4,000円 当日4,200円
※全席自由・整理番号付

■問い合わせ:ピンク・リバティ kodomo.pinkliberty@gmail.com
■公式HP:https://www.pink-liberty.com/
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