奈緒・風間俊介ら出演で『恭しき娼婦』(作:J.P.サルトル/演出:栗山民也)を上演
ジャン=ポール・サルトルの『恭しき娼婦』が、2022年6月4日(土)より19日(日)まで紀伊國屋ホールで上演される(その後、兵庫・愛知を巡演)。岩切正一郎の翻訳で、演出は栗山民也、出演は奈緒、風間俊介ほか。
『恭しき娼婦』(原題:La putain respectueuse)は、ジャン=ポール・サルトル(1905年~1980年)が1946年に発表した戯曲(パリのアントワーヌ・シモーネ・ベリアウ劇場で初演)。フランスが生んだ20世紀最大の思想家の一人・サルトルは、実存主義を牽引した哲学者として世界に大きな影響を与えただけでなく、小説や映画脚本の執筆にも取り組み、劇作家としても数々の戯曲を世に残した。中でも、アメリカの人種差別が招いた冤罪を描く本作『恭しき娼婦』は、非情な世界における人間の“権利”、“尊厳”、そして“自由”といった、いつの世も人類が向き合う問題に正面から取り組み、最も完成度が高いと評されてきた。
今回そんな戯曲に立ち向かうのは、本作の上演をかねてから熱望していたという栗山民也。常に冷静かつ、研ぎ澄まされたまなざしと並外れた手腕で、その時代の世相を作品に反映させてきた演出家だ。
舞台はアメリカ南部。冤罪を被せられて逃走する黒人青年をかくまう娼婦リズィー。だが、その街の権力者の息子であるフレッドはリズィーに虚偽の証言をさせようと、その黒人青年と由緒ある家系の白人の男どちらを救うか選べと迫る。街全体で黒人が犯人と決めつける状況の中で、リズィーが下した決断は……。
物語を大きく動かす重要な決断を迫られることとなる娼婦のリズィーを演じるのは、映画・ドラマ・CMで活躍中の若手実力派女優・奈緒。2018年のNHK連続テレビ小説「半分、青い。」でヒロインの親友役を愛嬌たっぷりに好演し注目を集めたかと思えば、翌年放送されたドラマ「あなたの番です」(NTV)では一転して主人公に執着する狂気じみた隣人を熱演、その演技力の高さを世に知らしめた。
一方、街の権力者の息子でリズィーに虚偽の証言を迫る白人のフレッドを演じるのは、ジャニーズ事務所きっての演技派俳優として確かな実績を積み上げてきた風間俊介。「3年B組金八先生」(99・TBS)で二面性を持つ人物を演じて話題を集めると、以降もどこか闇をもった個性的な役柄を見事に演じ上げ地位を確立。近年は「監察医 朝顔」(19-20・CX)での主人公の夫役など、爽やかな好青年を演じることも増加し、豊かな表現力で人々を魅了し続けている。
この実力派二人が、18年放送のドラマ「サバイバル・ウェディング」(NTV)以来となる共演で、人間の深層心理を炙り出す意欲作に挑む。さらに、冤罪を被せられ逃走している黒人役に野坂弘、ジョン役などに椎名一浩、ジェイムズ役などに小谷俊輔、フレッドの父で街の権力者である上院議員役に金子由之と、演技力に定評のあるキャストが集結する。栗山と、卓越した演技力をもつキャスト陣で創り上げる舞台に期待したい。
栗山、奈緒、風間から届いたコメントを以下に紹介する。
■栗山民也(演出)
サルトルのとても短かな、とても感情的な劇
学生の頃から、サルトルのこの劇のことは気になっていた。あの当時は、ヌーヴェル・ヴァーグと呼ばれたゴダールやトリュフォーなどの革新的な運動に理屈なく嵌っていたから、サルトルやカミュは、その思想的先駆者だった。そのサルトルが観念ではなく、アメリカの地を自分の足で歩いて描いたレイシズムを扱った劇「恭しき娼婦」は、他の作品とは確かに違っていた。妙に生々しく感情が裸だ。テーマは勿論、人種差別だけではないが、アメリカという資本主義国家のこれからの行方を、全身でしっかりと受け止めようとしていたかのようだ。
「8分46秒」とは、米ミネソタ州で、あのジョージ・フロイドが白人警察官に膝で首を押さえつけられていた時間だ。「今」もあり、「昔」から何も変わらず、どこにでもある人間の差別。この劇のレイシズムは、現代の人種問題だけではなく、人間のすべてに対する「差別とは何か」を照射するかのようだ。静かに当たり前のように世界の底を重く流れ続ける疎外。
ずっと気になっていた劇だった。稽古が始まり、一つひとつの言葉がどんな響きで相手役と絡み合うのか、その瞬間に出会うことに今から心躍る。
■奈緒(娼婦リズィー役)
出演のお話をいただき、自分にとっても本当に大きな挑戦になるなと思いました。自分にはまだ早いのではないか、という気持ちもあったのですが、栗山さんともいつかはご一緒させて頂きたいと思っていましたし、決まったからには一生懸命お稽古を重ねて、成長できるようにがんばりたいと思います。
この作品は、登場人物がそれぞれの決断をしていく中で、正義とは、人が持つ権利とは、ということを考えさせられますし、自分の信念や曲げたくないものを貫いて生きていくことの難しさを感じることになると思います。ただ、そこには絶対に希望が残ってほしいと感じましたし、現代の状況に置き換えて、これからも皆で手を取り合って戦っていこうという強い気持ちを伝えられる舞台にもなっていると思います。ぜひ劇場でご覧ください。お待ちしています。
■風間俊介(フレッド役)
不条理なことが多い今の世の中で、こういった楽しいだけではない色々な困難に立ち向かう物語を、栗山さん、奈緒さんはじめ、このメンバーと一緒に創れることを嬉しく思います。栗山さんの作品は以前から拝見していますが、毎回、根幹、真理のようなものが炙り出されていくような、楽しかっただけで終わらない、帰り道に自問自答するような作品だなと思っていました。今回も、過去の時代を振り返りながら今の時代を見て、これからの未来を考えるような作品を創っていけるだろうと楽しみにしています。演劇を上演することも、観に行くことも、難しいと感じるこの世の中で、それでもこの作品に興味を持ち、観たいと思ってくださり、足を運んでいただけることに感謝して、良い作品をお届けすることを胸を張って約束したいと思います。ぜひ劇場にお越しください。
公演情報
■翻訳:岩切正一郎
■演出:栗山民也
奈緒 風間俊介
野坂弘 椎名一浩 小谷俊輔 金子由之
■公式HP:https://www.tbs.co.jp/uyauyashiki_shofu/
■公式Twitter: @uyauyashiki
■日程:2022年6月4日(土)~6月19日(日) (全20公演)
■会場:紀伊國屋ホール
■料金:全席指定9,500円(税込)※未就学児入場不可
■問合せ:サンライズプロモーション東京 0570-00-3337(平日12:00~15:00)
■主催:TBS/サンライズプロモーション東京
■日時:2022年6月25日(土)12:00/17:00、26日(日)13:00 (全3公演)
■会場:兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
■料金:A席8,500円 B席5,500円(全席指定・税込)※未就学児入場不可
■問合せ:芸術文化センターオフィス 0798-68-0255(10:00~17:00 月曜休/祝日の場合翌日)
■主催:兵庫県/兵庫県立芸術文化センター
■日時:2022年6月30日(水)13:00/18:00 (全2公演)
■会場:日本特殊陶業市民会館ビレッジホール
■料金:全席指定9,500円 車いす席9,500円(税込)※未就学児入場不可
※車いす席はメ~チケ(電話のみ)にて一般発売より取り扱い
■問合せ:メ~テレ事業 052-331-9966(祝日を除く月-金10:00~18:00)
■主催:メ~テレ、メ~テレ事業