マルシィ、初の東京ワンマンで見せた感涙と笑顔 「自分に自信はないけど、作っている音楽にはすごく自信を持っています」

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2022.4.2
マルシィ 撮影=横山マサト

マルシィ 撮影=横山マサト

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マルシィ one man live 2022“START”
2022.3.27 渋谷WWW X

3月27日、渋谷WWW Xで、マルシィの東京初ワンマンライブを目撃した。マルシィはZ世代の女性リスナーを直撃するリアルで切ない恋愛ソングの若き名手として、SNSや動画サイトで一気に注目を集めてきた存在だが、活動開始早々のコロナ禍の影響もあり、生ライブを体験する機会は非常に貴重だ。は当然ソールドアウト、心地よい緊張感と期待感が交錯する中でのメモリアルライブ、いよいよ開幕。

吉田右京(Vo,Gt)

吉田右京(Vo,Gt)

「マルシィ、ワンマンライブ始めます。よろしくお願いします!」

ボーカル&ギター、うきょうの元気のいい挨拶から始まった、1曲目は「プラネタリウム」だ。ミラーボールの光がまぶしく降り注ぐ下で、サポートドラマーを加えた4人の演奏はどこまでも小気味よくストレート。ベースのフジイタクミは笑顔を絶やさず体全体でグルーヴを表現し、ギターのおさみぃはクールなたたずまいと正確な指使いで色を添える。うきょうの独特のエアリーな歌声はライブでも変わらず、力強いバンドサウンドの中からくっきり浮かび上がって聴こえる。

shuji(Gt)

shuji(Gt)

「オードトワレ」から「雫」へ、ミュージックビデオでよく知られる人気曲が登場するたびに、歓声の代わりに大きな身振り手振りで“待ってました!”の思いを伝えるオーディエンス。《友達じゃいられない》と歌う「オードトワレ」や、《薬指に嵌めた指輪》というフレーズが意味深な「雫」など、様々な恋愛シチュエーションを色鮮やかに歌う、うきょうの歌詞はとても映像的だ。エモーショナルなミドルロックバラード「遠吠え」では、おさみぃが最高にセンチメンタルなギターソロを決め、クライマックスではうきょうが叫ぶように歌う。ライブならではの感情の昂ぶりは、予想以上に激しく熱い。

「こんなにたくさんの人が来てくれて、本当に僕たちは幸せです。どうぞよろしくお願いします」

うきょうのMCがやや硬めなのが初々しい。だが曲に入ると緊張感を感じさせず、うきょうが初めて作った曲で、マルシィ結成のきっかけになった「Drama」に続き、初披露の新曲「牙」は、あやしく点滅する青赤の照明のもと、アッパーな四つ打ちのリズムに乗せてひたすらダイナミックに。さらにクリスマスモードの恋愛ソング「白雪」から、うきょうの渾身の歌声がせつなく響く、スローバラード「花びら」へ、物語が深まると同時に感情がぐんぐんと高まってゆく。マルシィの世界の核心を成す繊細なラブソングの歌詞を、オーディエンスは拍手するのも忘れて聴き入っている。音楽への集中力と一体感が、ステージの上と下を隔てなく一つにする。

フジイタクミ(Ba)

フジイタクミ(Ba)

「2曲バラードが続きましたが、みなさん楽しんでくれていますか?」

ライブ中盤でほっと一息、和気あいあいとしたMCの中で、おさみぃがshujiに、うきょうが吉田右京に、それぞれ名前の表記を変えることを発表した。早速タクミが「吉田さん」と呼びかけ、「吉田はやめてください」と右京が笑う。名前は変わっても関係は変わらず、マルシィはマルシィのままで同じ夢に向かって走ってゆくだけだ。「楽しむ準備はできてますか!」と右京が叫ぶ。ライブは後半、問答無用で盛り上がる時間。

明るいダンスロック「もしもの続きを少しだけ」は、サポートドラマーを加えた4人の溌剌とした演奏力が映える曲で、サビでは全員の手振りでフロアが揺れる。右京がハンドマイクで伸び伸び歌う「ワスレナグサ」では、今度は右京がリードしてフロアいっぱいに手振りの波が広がる。さらに、マルシィの数あるバラードの中でも特にドラマチックなストーリーを持つ「ピリオド」へと、盛り上がる時間と言いながらも感情がぐっとせつなく深くなってゆくのがマルシィらしい。クライマックスはもうすぐそこだ。

「次の曲で最後の曲になります。今日はありがとうございました」

ライブの最後を飾るのは、リリースされたばかりの新曲「最低最悪」だ。前作「ピリオド」に続く女性目線の歌詞が耳に残る、しかし「ピリオド」とは対照的にキャッチーでアップテンポのポップチューン。最低最悪な彼氏に振り回される、アンコントロールな自分を描く歌詞と、明るい曲調とのギャップが耳に残る。リアルでせつない恋愛ソングマスター、マルシィの世界のさらなる広がりを感じさせる、飛躍へのステップにふさわしい力強い1曲。

そしてアンコール。スクリーンに突然映し出された「マルシィ、ユニバーサルミュージックよりメジャーデビュー」という情報に、拍手と同時に悲鳴にも似た歓声が漏れてしまったのは、仕方がないだろう。あらためてステージに登場したメンバーによる、「メジャーデビュー」「6月1日、ファーストアルバムリリース」、そして「上京しました!」という右京の言葉に、再び湧き上がる盛大な拍手。ファンが待ちわびた、最高の瞬間。

「本当にたくさんの方がマルシィに力を分けてくれて、今があると思っています。そして、みなさんがライブを見に来てくれて、音源をたくさん聴いてくれたおかげなので、心の底から感謝しています。どうぞこれからもよろしくお願いします。僕は、自分に自信があるタイプではなくて、緊張もするし、すぐ心配になったりしちゃうんですけど……」

これまでのこと、そしてこれからのこと。すべての人への感謝を伝え、ファーストアルバムについて話していた右京が、ふと感極まって言葉を失った。つられてshujiも涙声になる。すかさず右京から「タクミ、繋いで」と託されたタクミが「ここで繋ぎを任されるのはしんどいね」と、笑顔で空気を和ませる。なんて素敵なチームワーク。右京が言葉を取り戻し、まっすぐに前を向いてオーディエンスに呼び掛ける。

「自分に自信はないけど、作っている音楽にはすごく自信を持っています。マルシィの歌詞に共感してくれるのは、本当に心優しい、いい人ばかりだなと思います。この先、素敵な人と出会って、幸せになって、その中に僕たちの音楽を、少しでいいので混ぜてもらえたら、うれしいなと思います」

今日はみなさんのおかげで、素敵な日を迎えられました――。この日の13曲目、壮大なロックバラード「絵空」に込めた悲しくも美しい激情がフロアいっぱいに響きわたる。せつなすぎる“さよなら”の歌だが、マルシィの新たな旅立ちへの言葉のあとに聴く「絵空」は、逆に力強く前向きにも感じられる。shujiがギターを思い切りかき鳴らす。タクミがどっしりと太いベースラインで支える。右京が、この日一番の感情的な歌声で“さよなら”を告げる。思い残すことのない、美しいフィナーレ。

涙のあとの笑顔は、いつもすがすがしい。ライブが終わり、オーディエンスと記念撮影するメンバーに笑顔が戻り、フロアは心地よい充実感と余韻で包まれる。『マルシィ one man live 2022“START”』、ここから始まる新たな物語に、決められた筋書きはない。マルシィと、マルシィを愛するファンたちが作り上げてゆく壮大なドラマを共に楽しもう。主役はマルシィ、そしてあなただ。


取材・文=宮本英夫 撮影=横山マサト

 

リリース情報

Major 1st ALBUM『Memory』
2022年6月1日発売
品番:UMCK-1713
価格:¥3,300(税込)
<収録内容>
・白雪
・ワスレナグサ
・プラネタリウム
・花びら
・ピリオド
・最低最悪 
・絵空(CDのみのボーナストラック)
※その他新曲4曲を収録
※曲順未定
※「絵空」はCDのみのボーナストラックとして収録

 
■マルシィ 1st ALBUM「Memory」 メンバー直筆サイン入りアナザージャケット付き
※UNIVERSAL MUSIC STOREで4月10日23:59までご予約受付中!
https://store.universal-music.co.jp/product/d2cs4244/
■マルシィ 1st ALBUM「Memory」特設サイト
http://marcy-memory.com
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