フィリップ・グラスによるオペラ作品『アクナーテン』『サティアグラハ』をスクリーンで2作品特別上映
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『アクナーテン』 (C)Karen Almond _ Metropolitan Opera
2022年7月16日(土)神奈川県民ホールにて、過去にMETライブビューイングで上映されたフィリップ・グラスのオペラ2作品、『アクナーテン』(2019-20シーズン/本年のグラミー賞最優秀オペラ録音賞受賞作品)と『サティアグラハ』(2011-12シーズン)を、連続で特別上映する。
本上映は、ミニマル音楽の巨匠フィリップ・グラスと舞台芸術の鬼才ロバート・ウィルソンの共同制作により1976年に初演された伝説的オペラ『浜辺のアインシュタイン』の新制作上演(2022年10月)の関連イベントとして企画された。
『アクナーテン』 (C)Karen Almond _ Metropolitan Opera
1960年代後半からミニマル音楽の世界で活動を始めたフィリップ・グラスにとって、科学者アインシュタインを4時間超に渡り詩的に表現したオペラ『浜辺のアインシュタイン』は、大きな転機となった作品。本作の反響を受け、グラスは、インドを独立に導いた指導者ガンジーの生涯を描いた『サティアグラハ』(1979年初演)、史上初めて一神教を唱えた古代エジプト王アクナーテンの栄光と悲劇の物語『アクナーテン』(1984年初演)を生み出した。科学、政治、宗教のそれぞれの歴史で足跡を残した偉人を描いたこれら3つの大作オペラは、「ポートレート3部作」と呼ばれ、その後のグラスは、オペラ音楽のほか、『めぐりあう時間たち』をはじめ映画音楽などでも多彩な作品を発表し、現在も精力的に活動している。
『サティアグラハ』 (C)Ken Howard_Metropolitan Opera
今回の7月の上映会と、10月の新制作上演は、グラスの「ポートレート3部作」を一挙に楽しめるまたとない機会。カウンターテナーのアンソニー・ロス・コスタンゾが主演し、本年のグラミー賞最優秀オペラ録音賞を受賞した『アクナーテン』、そして、名テノール リチャード・クロフトが歌い上げる美しい調べとガンジーの平和への思いが胸を打つ『サティアグラハ』。
『サティアグラハ』 (C)Ken Howard_Metropolitan Opera
大迫力のMETライブビューイングで、他の誰にも真似できないグラスの作品世界をたっぷりと堪能しよう。
上映情報
MET ライブビューイング
フィリップ・グラス『アクナーテン』『サティアグラハ』上映会
『アクナーテン』12:00(11:30 開場)上映時間:約3時間58分(休憩2回)
『サティアグラハ』17:00(16:30 開場)上映時間:約3時間39分(休憩2回)
【料金】全席指定 各回一般 3,200円 学生 2,100円(24歳以下)2演目セット券 5,900円
【発売日】2022年5月28日(土)一般発売
電話:0570-015-415(10:00-18:00)
WEB:https://www.kanagawa-arts.or.jp/tc/(24h)
窓口:神奈川県民ホール(10:00~18:00)/神奈川芸術劇場(10:00~18:00)
神奈川県立音楽堂(13:00~17:00 月曜休)
公益財団法人ローム ミュージック ファンデーション
※就学前のお子様は、ご入場いただけません。
※やむを得ない事情により、中止・変更になる場合があります。
【上映時間】約3時間58分(休憩 2 回)
ニューヨーク・メトロポリタン歌劇場
上演日:2019年11月23日
【指揮】カレン・カメンセック
【演出】フェリム・マクダーモット
【キャスト】
アクナーテン:アンソニー・ロス・コスタンゾ(カウンターテナー)
ネフェルティティ:ジャナイ・ブリッジス(メゾソプラノ)
太后ティイ:ディーセラ・ラルスドッティル(ソプラノ)
アメンホテプ 3 世:ザッカリー・ジェイムズ(バス)
ホルエムヘブ:ウィル・リバーマン(バリトン)
●第1幕
アクナーテン治世元年、すなわち紀元前 1352 年頃、古代エジプトのテーベ。先代のアメンホテプ3世の葬儀を終えた息子アメンホテプ4世が、新たなファラオとして王座に就く。アメンホテプ4世は、自分の名前を「アモン神の魂」を意味する「アメンホテプ」から、「太陽神アテンの魂」を意味する「アクナーテン」に改名すると宣言。妻のネフェルティティ、母のティとともに太陽を高らかに讃える。
●第2幕 タゴール
治世第5年から第15年、テーベ。アクナーテンとティは宗教改革に着手し、それまで実権を握っていた神官たちを寺院から追放する。さらにアクナーテンは、新たな秩序を打ち立てるべく、「アテン神の地平線の都市」すなわちアマルナを新たな首都として遷都すると、「空の地平線より美しく現れ出ずる汝、太陽よ/おお、生けるアテン、生命の源たる太陽よ/東の地平線から昇る時、汝は目も眩むほど明るく輝き/どんな地表よりも高く、汝が創り上げた大地の隅々まで光で覆い尽くす」とアテン讃歌を歌う。
●第3幕
治世第17年および現代。アクナーテンのネフェルティティは6人の娘を授かるが、母ティは、アクナーテンの改革に不満を覚えた民衆の不穏な動きを察知する。宮殿の扉を破壊した民衆の中からアモン神の神官たちが現れ、アクナーテンを殺害。死後の世界から、父アメンホテプ3世が息子の死を悲しむ。新たなファラオとしてツタンカーメンが即位し、従来の多神教を復活。時間が飛んだ現代。死後の世界からアクナーテン、ネフェルティティ、ティの歌声が聴こえてくる。
本作は演出の意図を尊重し、各場面の題名と 一部の歌詞のみ字幕が表示されます。物語・場面を説明する英語のセリフや歌詞のみ字幕が表示され、古代エジプト語やヘブライ語を含むその他の歌詞は、反復的な表現で断片的で儀式的なものとして表され、演出上、字幕が表示されません。予めご了承ください。
【上映時間】約3時間39分(休憩2回)
ニューヨーク・メトロポリタン歌劇場
上演日:2011年11月19日
【指揮】ダンテ・アンゾリーニ
【演出】フェリム・マクダーモット&ジュリアン・クローチ
【キャスト】
ガンジー:リチャード・クロフト(テノール)
シュレセン:ラシェル・ダーキン(ソプラノ)
カレンバック:キム・ジョーセフソン(バリトン)
ルストムジ:アルフレッド・ウォーカー(バスバリトン)
●第1幕 トルストイ
第1場 クル族の『義』の戦場
クル族とパーンドゥ族の2つの王家の間で大戦争が始まろうとしていた。クリシュナ神は王子アルジュナに「生と死に対し賢明であれ」と説く。ガンジーは神話での対決と現在の対決とを照らし合わす。
第2場 トルストイ農場(1910年)
ガンジーは南アフリカのインド人移民と共に、初めての集団行動としてトルストイ農場を起こした。そこはすべての家族が簡素な生活を送り、互いに仲良く暮らす場所。ガンジーは、欲を捨て労働に従事するのが望ましい、と公言する。
第3場 誓い(1906年)
英国政府はインド人全員に対して、移民登録と指紋採取を義務づけるブラック法を提出した。それを受けて開かれた公開集会で、死ぬまでこの法案に抵抗するという決議が採択される。これによりサティアグラハ運動は転機を迎えこととなった。生死を賭した決議であることから、普段の多数決で採決されること以上の覚悟が必要だからだ。神の名においての誓いのみが、個人の不屈の精神を支えるのである。
●第2幕 タゴール
第1場 対決と救助(1896年)
インドに滞在した6カ月の間、ガンジーは南アフリカにおけるインド人移民の現状を人々に伝えた。その後、再び南アフリカのダーバン港に降り立つと、ヨーロッパ人たちの激しい抗議の渦に包まれる。群衆は次第に暴力的になり、ガンジーを市中追い回す。するとガンジーの支持者が現れ、傲慢と偽善で堕落した愚か者の集まりだと群衆を非難し、ガンジーを安全な場所へ導く。
第2場 『インディアン・オピニオン』紙(1906年)
抵抗運動の核となったのは、『インディアン・オピニオン』という週刊新聞である。その内容にはサティアグラハ理念の成長が反映されていく。そしてしっかりとした規定を内部に設けることで、同紙は闘争における有力な武器となっていった。ガンジーの妻と同志たちは、個人的な満足を得るためではなく、大義のために行動することの大切さを強調する。
第3場 抗議(1908年)
抵抗運動のリーダーたちは、南アフリカからの退去命令に背いたとして投獄された。そこでインド人はさまざまな違反行為を犯すことによってわざと逮捕されるように仕向け、刑務所を満杯にすることで政府に抗議する。政府は、自主的に登録を行なえばブラック法を撤回するという和解案を提示するが、法案はそのまま通されてしまう。サティアグラハ運動の同志たちは「法案を撤回しないなら、登録証はインド人の手で集めて燃やす」という最後通告を政府に突きつける。そして政府がそれを拒否すると、登録証は次々と大釜に投げ込まれ炎に包まれる。その中でガンジーは、人に対しては憎しみを抱いてはいけない、と説く。
●第3幕 キング
ニューキャッスルの大行進(1913年)
人種差別的な2つの法律を撤回するという公約を政府が破ると、炭坑労働者たちのストライキが起こる。ガンジーを先頭に、炭坑労働者たちとその家族らは、サティアグラハ運動の同志たちと合流してトランスヴァールの国境まで 58キロにおよぶ道程を行進した。もしこの検問所で逮捕されれば、5,000人もの集団が刑務所に押し寄せることになる。一方、逮捕されなければトルストイ農場まで大行進を続け、ストを長引かせることができる。ガンジーは、抵抗することなく試練に耐えるよう人々に指示する。そして、魂はいずれブラフマー神の元へ帰るというバガヴァッド・ギーターの教えを引用して次のように公言する。「神は言う:私もあなたも幾度もの生を経験している。私はす
べてを覚えているが、あなたは何も知らない。正しき者が衰退し、非なる者が繁栄する時、私はこの地に誕生する。非なる者を倒し、再び『善』をその座につかせるために」
※字幕について
『サティアグラハ』の字幕は最小限に抑えられています。歌詞は、サンスクリット語によるヒンドゥー教の聖典『バガヴァッド・ギーター』の言葉が使われます。そのため歌詞と舞台上の出来事には関連性がありません。これは、「意味にとらわれず音として体感される歌詞と、歌詞の影響を受けずに語られる物語」という作曲家フィリップ・グラスの意図を尊重したためです。彼の意向をご理解のうえで、お楽しみください。
公演情報
フィリップ・グラス/ロバート・ウィルソン『浜辺のアインシュタイン』
〈一部の繰り返しを省略したオリジナル・バージョン/新制作/歌詞原語・台詞日本語上演〉
【会場】神奈川県民ホール大ホール【
出演:松雪泰子、田中要次、中村祥子、辻彩奈(ヴァイオリン) ほか ※辻のシンニョウは点1つ
電子オルガン:中野翔太、高橋ドレミ
フルート:マグナムトリオ[多久潤一朗 神田勇哉 梶原一紘]
バスクラリネット:亀居優斗
サクソフォン:本堂誠、西村魁
合唱:東京混声合唱団