春風亭一之輔インタビュー~「らくご DE 全国ツアーVOL.10~春風亭一之輔のドッサりまわるぜ 2022」がスタート

インタビュー
舞台
2022.6.13
春風亭一之輔  (撮影:中田智章)

春風亭一之輔 (撮影:中田智章)

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 年間の高座数約900席と驚異的な人気を誇る落語家・春風亭一之輔が、毎年続けている落語会ツアー「らくご DE 全国ツアー~春風亭一之輔のドッサりまわるぜ」が、今年(2022年)で10年目を迎える。北海道から沖縄まで全国津々浦々――今年の意気込みを聞いたインタビューに、6月3日に東京・亀有でスタートしたツアー初日の盛り上がりの模様を織り混ぜて送る。

(撮影:山田雅子)

(撮影:山田雅子)


 このツアーが始まったのは2013年。初年度は13カ所だった会場も年々増え、今年はなんと、過去最多の33カ所を回る。

「このツアーでしか行ったことがない場所もありますし、毎年足を運んでくださるお客さんもいらっしゃって、楽しみに待ってくださる雰囲気が嬉しいですね。いつも来るお子さんもいるんです。この公演では毎回オープニングトークをしますが、見覚えがある子の顔を客席に見つけると『あれ、去年も来たでしょ?』なんてすぐに話しかけちゃう。客いじりです(笑)」

 ツアー初日のオープニングトークでも、客席にいたちびっ子に気さくに話しかけ、その会話に会場がほっこりする一幕も。しかもこの日は“客いじり”のみならず。遅れて入った観客を案内し、身をかがめて階段を歩くホールスタッフにまで「(39段の階段落ちで知られる映画)蒲田行進曲にならないようにね」と声をかけた瞬間は、思わず吹き出して笑ってしまった。ゆるゆるとしたお喋りにすっかり油断していると、ふっと飛び出すユーモラスな一言。あっという間に会場がフワッと一体化されてしまう。

 筆者は偶然、2013年のツアー初回にもインタビューをしたが、その時聞いた「地方だからといって特に意識しません。東京で喋るのと一緒です」と語った言葉が印象に残っていた。そのフラットなスタンスは今も同じのようで……。

「東京でやっている落語を、普段通り喋るだけです。地方の方だから、初めて聞くお客様だからと、ヘンに説明したり、わかりやすくなんてことは考えません。お互い無理しないのがいいんですよ(笑)。まあそもそも、僕がやっている落語自体がわかりやすいですから。『渋いなぁ〜』って芸風でもないんでね」

 (撮影:中田智章)

(撮影:中田智章)

 この気負いのない温度が、観客にはこの上なく心地いい。一之輔の十八番というと底抜けに楽しい滑稽話が真っ先に頭に浮かぶが、持ちネタも多く、その幅もますます広がっている。

「(今持っているネタは)200ちょっとですかね。若い時はイマイチ面白さがわからなかった噺でも『とりあえずやってみよう』と覚えてやってみる。おろしたばかりの演目は、お客さんに、“試させてもらっている”感覚です。滑稽噺、人情噺、芝居噺と、ツアーではいろいろできればと思っていますね。演目は、その日になってみないとわからないですけど」

 クサくやられると興醒めしてしまう人情噺も、この人が演ると絶妙のバランスで軽妙に。昨年は、門閥外の役者の苦労、情熱を描いた『淀五郎』をネタおろしした。芝居噺を得意とする春風亭一朝が師匠だけに、このジャンルの掘り下げは嬉しく楽しみなところだ(撮影中の雑談でも歌舞伎の話をするぐらい、本人も相当な芝居好きである)。

 東京の寄席でトリをとる時期は、日中地方で喋って連日日帰り……なんてハードスケジュールもこなす。なんせ落語は演劇と違って、たった一人でできてしまう身軽な芸能だ。着物と扇子と手拭いを持って旅から旅へ。なんとしゃれた仕事だろう。

「でも、お芝居みたいに大勢で移動するのも楽しそうじゃないですか。ミュージシャンもバンドやダンサーと一緒でしょう? カッコよくて羨ましい。でも人がいっぱいいると気をつかってめんどくさいかな(笑)。独演会なら荷物一つ、同行者も大概、弟子か後輩だけ。地味なもんですよ。そういう意味では、随分と呑気な商売かもしれませんね」

 (撮影:中田智章)

(撮影:中田智章)


 

10周年、誠心誠意ふざけたい

 演じながらアドリブでギャグを加え、進化させてしまうヒラメキも天才的。お馴染みのネタも新しいフレーズが加わることによって、どんどん面白さが更新されていく。

「『バカだなぁ、面白いこと言ってんな俺は』って、自分で自分の発言に笑っちゃうこともあります。だからそういう時は、登場人物まで笑っちゃうことに(笑)。お客さんにノせられているんでしょうね。もし僕が客席にいたら、『ちゃんとやれよ』って思いますよ。でも落語はお喋りの芸ですから、その場限りのゆる〜い感じがあってもいいんじゃないかと思っているんです。『町内に面白いおじさんがいるから聴きに行こうよ』という感覚で足を運んでください」

 こんな力の抜けた発言に騙されることなかれ。2020年4月、新型コロナウイルス感染症による緊急事態宣言下でYouTube『春風亭一之輔チャンネル』を立ち上げ、4月に10日間、5月に10日間、寄席と同じスケジュールで落語を生配信もした。連日リアルタイムで1万人を超える視聴者を集めて大きな話題を呼び、寄席が休業を余儀なくされた苦しい時期に、新しい落語ファンの裾野を広げる画期的な企画はすごかった! そんなトップランナーに、全国に落語の魅力を届ける意気込みを聞くと、相変わらず飄々とした答えが返ってきた。

「ツアーへの気合いですか? 気合いを入れるとろくなことがないので、そういうものはないんです(笑)。でもコロナも少しずつ落ち着いてきて、お客さんもライブを見て笑いたい欲求が出てくる頃でしょうし、まあ10周年ですから……誠心誠意ふざけたいと思います」

 (撮影:中田智章)

(撮影:中田智章)

 さてこの夜、亀有で聴いたのは全部で3席。『代書屋』『反対俥』では、クセ強目な登場人物たちが繰り広げるノンストップな会話に客席がわき続けた。最後は『抜け雀』。一文無しの絵師が宿代がわりに描いた雀が、朝になると衝立から抜け出て飛び回り……というファンタジーだ。一之輔は細部にアレンジを効かせ、旅籠の主人と女房、絵師とその父親の間ににじむ愛情を、カラッとした笑いの中に浮かび上がらせた。ぼんやりした主人を尻に敷く女房を、「おみっちゃん」と呼ぶ夫のかわゆさ! 

(撮影:山田雅子)

(撮影:山田雅子)

 一之輔は今年、真打になって丸10年を迎えた。じんわり温かい『抜け雀』の余韻にホクホクしながら帰る電車の中で、10年前の春、山梨の石和温泉に、真打祝いの落語会を観に行った記憶がふとよみがえった。あの日も、真打なりたてとは思えないほど堂々と、『茶の湯』でドッカンドッカン笑いをとっていたっけ。とびきり愉快な高座を思い返しながらの帰りの車窓には、桜と桃と菜の花が流れていた。落語がある人生は、いいもんですヨ。

 (撮影:中田智章)

(撮影:中田智章)

取材・文=川添史子

公演情報

らくごDE全国ツアー VOL.10
春風亭一之輔のドッサりまわるぜ2022

 
<東京>
■日程:令和4年06月03日(土) 開場18:30/開演19:00
■会場:かめありリリオホール
※公演終了

 
<兵庫>
■日程:令和4年06月05日(土) 開場13:30/開演14:00
■会場:アワーズホール明石市立市民会館 大ホール
※公演終了

 
<岐阜>
■日程:令和4年06月11日(土) 開場13:00/開演13:30
■会場:岐阜市文化センター

※公演終了
 
<静岡>
■日程:令和4年06月12日(日)開場12:45/開演13:30
■会場:長泉町文化センター

※公演終了
 
<宮城>
■日程:令和4年06月18日(土) 開場12:15/開演13:00
■会場:仙台電力ホール

 
<山形>
■日程:令和4年06月19日(日) 開場13:00/開演13:30
■会場:米沢市市民文化会館

 
<神奈川>
■日程:令和4年06月25日(土) 開場12:00/開演13:00
■会場:鎌倉芸術館

 
<群馬>
■日程:令和4年06月26日(日) 開場12:45/開演13:30
■会場:高崎芸術劇場
※完売御礼

 
<東京>
■日程:令和4年07月02日(土) 開場12:00/開演13:00
■会場:よみうりホール

 
<沖縄>
■日程:令和4年07月09日(土) 開場12:30/開演13:30
■会場:那覇文化芸術劇場 なはーと

 
<埼玉>
■日程:令和4年07月16日(土) 開場12:30/開演13:30
■会場:志木市民会館 パルシティ

 
<長野>
■日程:令和4年07月17日(日) 開場13:30/開演14:00
■会場:東御市文化会館 サンテラスホール

 
<新潟>
■日程:令和4年07月18日(月) 開場13:30/開演14:00
■会場:りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館

 
<千葉>
■日程:令和4年07月31日(日) 開場13:30/開演14:00
■会場:千葉市文化センター アートホール
※完売御礼

 
<北海道>
■日程:令和4年08月05日(金) 開場17:45/開演18:30
■会場:帯広市民文化ホール 小ホール

 
<北海道>
■日程:令和4年08月06日(土) 開場13:15/開演14:00
■会場:道新ホール

 
<北海道>
■日程:令和4年08月07日(日) 開場12:15/開演13:00
■会場:道新ホール

 
<福島>
■日程:令和4年08月11日(木) 開場12:30/開演13:00
■会場:いわき芸術文化交流館

 
<大阪>
■日程:令和4年08月13日(土) 開場12:30/開演13:00
■会場:大阪国際交流センター

 
<東京>
■日程:令和4年08月14日(日) 開場12:30/開演13:30
■会場:立川市市民会館(たましんRISURUホール)

 
<神奈川>
■日程:令和4年08月20日(土) 開場12:00/開演13:00
■会場:横浜・関内ホール

 
<石川>
■日程:令和4年08月21日(日) 開場13:30/開演14:00
■会場:北国新聞赤羽ホール

 
<広島>
■日程:令和4年08月27日(土) 開場12:45/開演13:30
■会場:はつかいち文化ホール

 
<静岡>
■日程:令和4年08月28日(日) 開場12:45/開演13:30
■会場:浜松市福祉交流センター

 
<千葉>
■日程:令和4年09月4日(日) 開場13:00/開演14:00
■会場:君津市民文化ホール 大ホール

 
<熊本>
■日程:令和4年09月10日(土) 開場13:15/開演14:00
■会場:益城町文化会館

 
<福岡>
■日程:令和4年09月11日(日) 開場12:30/開演13:00
■会場:アクロス福岡イベントホール

 
<滋賀>
■日程:令和4年9月24日(土) 開場12:30/開演13:00
■会場:守山市民ホール 大ホール

 
<愛知>
■日程:令和4年10月6日(木) 開場18:00/開演18:30
■会場:日本特殊陶業市民会館・ビレッジホール

 
<東京>
■日程:令和4年10月8日(土) 開場13:00/開演14:00
■会場:サンパール荒川

 
<福井>
■日程:令和4年10月22日(土) 開場14:30/開演15:00
■会場:ハートピア春江

 
<富山>
■日程:令和4年10月23日(日) 開場13:00/開演14:00
■会場:富山県高岡文化ホール

 
<東京>
■日程:令和4年11月23日(水・祝)
■会場:よみうりホール

 
■公式サイト:http://s-ichinosuke.com/
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