「ももいろクリスマス2015 ~Beautiful Survivors~」参戦記 ももクロの前代未聞 スキー場ライブ
待機場所でライブに向け備えるモノノフ 筆者撮影
「ももいろクリスマス2015 ~Beautiful Survivors~」参戦記
人気アイドルグループ「ももいろクローバーZ」が「ももいろクリスマス2015 ~Beautiful Survivors~」と題し12月23~25日の3日間にわたりスキー場「軽井沢スノーパーク」のゲレンデでライブを開催した。恒例の冬のライブが「ももいろクリスマス(略称・ももクリ)」である。2010年にグループ(当時はまだ早見あかりも含むももいろクローバー)にとって記念すべき最初のホールライブとして日本青年館で行われ以来、毎年この時期に開催されてきた。いわばその年の総決算の意味合いもあり、ももクロにとって非常に重要なライブなのだ。
今年のももクリは例年とは一味も二味も違った。それはまず先ほども書いたように会場がスキー場だということだ。「スキー場でライブ」といえば誰もが松任谷由美の苗場を思い起こすが、あちらはあくまでホテルにある施設内での開催。確かにももクロはこれまでもZeppTOKYOでの2時間×3回のマラソンライブ、ももクリに限っても自ら極寒ライブと名づけた吹きさらし西武ドームでの冬ライブなど演者にも観客にも過酷なライブを敢行してきた。しかし、場合によっては零下になりそうなスキー場ゲレンデの野外ライブというのは前代未聞。本当にそんなことが可能なのだろうか。さらに今回は紅白歌合戦への落選から卒業宣言をへての初の大規模ライブにもなる。「今回はどうしても現地に出かけて実際に目撃しなくてはならない」と老体に鞭打ち24日に現地に出かけた。
東京駅から新幹線に乗り軽井沢駅で下車するとそこにはすでに赤緑黄桃紫とカラフルな服装に身を包んだモノノフ(ももクロファンの通称)が集まっていた。いつもと違うのは彼ら(彼女ら)はスノーブーツにスキーウエアとほぼ全員が到底これからライブに行くとは思えない重装備で身を固めていることだ。私もネット販売で手に入れたスノーブーツに断熱性の高い服装の重ね着の重武装でライブに臨んだ。実はこの日は予想外に天気がよく日差しも強く、軽井沢駅から約40~50分ほどでスキー場の待機場所についた時には逆に通気性の低い服装で内側に熱がこもって強い日差しも相俟って熱射地獄の様相を呈していた夏のライブ「桃神祭」のことを思い起こしたほどだった。
Momoiro Clover Z Channelの一般公開動画
シャトルバスでスキー場に着き、列に並ぶ。ここではまだそれほどスキー場でのライブという実感はない。だがブロックごとに誘導されゲレンデのライブ会場に到着するとメインの舞台の上手にはすぐにスキー場のゲレンデが広がる。これはちょっと「普通ではないことが起こりそうだ」という予感がひしひしと感じられる。
ももクリ恒例「PRIDEのテーマ」からライブはスタート。引き続き上映されたオープニング映像でいきなり玉井詩織が「紅白には出れなかった……」と紅白歌合戦のことを語った。紅白出場はずっと以前からのももクロの夢で「いつか紅白に出たい」を目標に掲げて活動を続けてきた。それだけに今年の紅白落選はメンバーにとってもファンにとっても大きなショックであったはずだ。落選後一部の人から落ち目だからなどと揶揄されたが、10万枚を超えるCD販売を記録するヒットはなかったものの静岡エコパでの夏ライブでは平日金曜日こそ若干数の空席があったものの、2日目はを完売。会場が不便な地方都市であることを勘案すれば依然ライブでの動員力は顕在であることを証明し、前半に力を入れた映画、舞台の「幕が上がる」も内容的に高い評価を受けるなど、紅白落選の予兆はほとんど感じられなかったからだ。
それだけに触れなくてスルーしてもかまわないはずの「紅白」の文字をここにあえて出し「自分たちの道を進んでいく」という決意を宣言したこの映像で語られたこと、ライブで明確な形で繰り返されることはなかったが、「紅白卒業」が今回のももクリの大きな主題だったのではないか。この日上演された曲を聞きながらそんな思いを次第に強くしていった。
最初の曲は広瀬香美提供によるももクリ曲「泣いちゃいそう冬」だった。ももクリでは毎回その年のライブのための新曲が用意されて、「泣いちゃいそう冬」もそんな曲のひとつだ。曲を提供した広瀬は「ロマンスの神様」をはじめスキー用品のCMソングでヒットを飛ばしたことで知られる。スキー場のライブにこの曲が置かれたことがむしろ自然なことだったかもしれない。
ただ、私の心境としては「永遠のその先へ 限界のその果てへ/3歩進んで 2歩下がってて 届くかな?/ 一人じゃないもんBaby キミと一緒だもんBaby/大丈夫大丈夫 でもでも心配 心配 心配だ/う・ふ・ふ・ふ・ふ 冬」などこの曲の歌詞には紅白落選後の今のももクロを思わせる歌詞が散見される。続いての曲が「My Dear Fellow」。もちろん、昨年紅白で歌ったがインフルエンザによる欠席で有安杏果が歌えなかった無念さがこもった曲である。
もちろん、この並びはこの日だけのこと。意味がこめられていたとしてもあくまで隠し味程度。見る側の思いが見せる幻であるといわれても仕方ないかもしれない。今年のももクリのセットリスト全体を振り返ってみた時に感じられるのはむしろ来年2月発売の2枚の新アルバム「アマランサス」「白金の夜明け」の発売とそれを受けての5大ドームツアーを前にこれまでの曲の集大成をしたいという意図があったのではないか。
今回は3日間でセットリストを大きく変更して「Z伝説 ~終わりなき革命~」「きみゆき」など最近あまり歌われることがなかった曲を入れてきた。もうひとつは「ももいろクリスマス」というライブの特性もあるものの、月1で放送されているCSの番組「ももいろフォーク村」の経験などを通じてメンバーの歌唱力が上がっていることを反映してか、いつもよりバラード系の曲を数多く入れてきていることだ。
この日聞いたなかでもっとも驚かせられたのは「白い風」である。もともとももクロ曲の中ではバラードの代表的名曲でもあり、特にももクリではこれまでも重要な役割を果たしてきた曲ではあったが、今年は全体に歌唱のレベルが格段に向上。特に有安杏果の絶唱からそれのさらに上を乗せるような百田夏菜子の大サビの部分は技術的な改善ももちろんあるのだが、そうした範疇を超えるような圧倒的な「歌の力」を感じさせられた。
ももクロの魅力はもちろん限界ぎりぎりで歌う激しいダンスと歌が生み出す独特の高揚感にあるのは間違いないが、この日は「白い風」以外にも「きみゆき」「月虹」「空のカーテン」といったバラード曲にこれまでと比べて成熟した魅力が感じられた。
もっとも例えば今秋開催された「男祭り」ではアンコールで太宰府天満宮の本殿特設ステージで歌を奉納するなど毎回会場に合わせた演出をライブに持ち込んでくるのもももクロのライブの魅力。今回はステージの後ろ側にジャンプ台を設営、そこでプロのスキーヤー、スノーボーダーがさまざまなジャンプの技を披露してくれたほか、メンバーの衣装着替え時間を兼ねた幕間を利用してビッグエアーコンテスト「ももいろクリスGAME 2015 in 軽井沢スノーパーク」も開催された。プロスキーヤー、プロボーダーらが参加したこのコンテストは23日・24日に1回戦を、25日に準決勝、決勝戦FINAL BATTLEを開催しスキーの兼高典生選手が初代王者に輝いた。
スキー場という特性を考えてか、今回のライブは極力ギミックを廃し、歌とダンスの本来の魅力に徹したものとしたのも特色。気温が低くてライブの動きが止まってしまうと観客の集中力が保ちにくいのも配慮して、MCは自己紹介と最後に入るぐらいで残りはあってもできるだけ短く、次から次へと曲を披露する流れになっている。こうした流れになればバラード曲の扱いが気になるところだが、新曲の「今宵、ライブの下で」から「空のカーテン」、そして「JUMP!!!!!」と決して激しい曲想ではない楽曲を並べても十分聞きごたえを感じられるだけの力量をももクロが見に付けつつあることを確認できたし、雪面に吸収されるのか残響音の少ない今回の会場ではソロないしユニゾンがきわめて透明感を持つ声として感じられそれがいつも以上にバラードが魅力的に感じられる一因となっていたこともあるかもしれない。
そして、最後に特筆すべきだったのはホールのライブでは決して得られないこのロケーションが生み出した「ここならでは」の場の持つ力だ。私が参加した24日には夕暮れとともにゲレンデ上方の木々の上にまん丸な月が浮かび上がってきわめて幻想的な雰囲気を醸し出していた。行くことができなかったのでこちらは伝聞ではあるが初日には最後の曲「走れ!」がはじまるとそれまでは降っていなかった粉雪が急に空から舞い降りてきた。
実は2日目の月を見てモノノフの中にこれは「雪・月・花」だなと言い出した人がいた。とはいえ、季節外れに花が舞うこともあるまいし、雪華という言葉はあるにしてもと考えていたらLVで3日目のライブの最後を見て思わずはっとさせられた。例年のことではあるとはいえライブのフィナーレを飾る花火が充実のライブに彩りを添えていたからだ。
ただ、さすがにスキー場を甘く見てはいけない。ライブが終わって規制退場を待つまでじっとたっていると踏み固めた雪からライブ中には感じなかった冷たさが這い上がってくるように感じられ、それとともに全身が凍てつくような冷たさに。それでも24日はまだ零度以下には下がらず比較的ましだったようだが、聞くところによると氷点下数度の世界に。天国から地獄を地でいく状態だったようだ。それでも土砂降りの日産競技場も灼熱のエコパスタジアムも今になればよき思い出にと記憶がとすり替わっているように次にとんでもない状況でのライブがあればまた喜んで駆けつけるんだろうなと思う。そしてそれが他のアイドルにはないももいろクローバーZならではの魅力だとも思うからだ。
軽井沢スノーパーク セットリスト
02. 猛烈宇宙交響曲・第七楽章「無限の愛」
03. Z伝説 ~終わりなき革命~
04. 労働讃歌
05. 『Z』の誓い
06. ミライボウル
07. 泣いちゃいそう冬
08. きみゆき
09. 鋼の意思
10. サラバ、愛しき悲しみたちよ
11. サンタさん
12. BIONIC CHERRY
13. 白い風
14. 僕等のセンチュリー
15. オレンジノート
16. 今宵、ライブの下で
17. 一粒の笑顔で…
18. 黒い週末
<アンコール>
SE. overture ~ももいろクローバーZ参上!~
19. スターダストセレナーデ
20. 空のカーテン
21. 走れ!
02. My Dear Fellow
03. Chai Maxx ZERO
04. Link Link
05. 白い風
06. 仮想ディストピア
07. きみゆき
08. Z伝説~終わりなき革命~
09. Chai Maxx
10. 月虹
11. Neo STARGATE
12. words of the mind ~brandnew journey~
13. 5 The POWER
14. 『Z』の誓い
15. サンタさん
16. 今宵、ライブの下で
17. 空のカーテン
18. JUMP!!!!!
<アンコール>
SE. overture ~ももいろクローバーZ参上!~
19. 僕等のセンチュリー
20. 一粒の笑顔で…
21. サラバ、愛しき悲しみたちよ
02. 夢の浮世に咲いてみな
03. 猛烈宇宙交響曲・第七楽章「無限の愛」
04. MOON PRIDE
05. BIONIC CHERRY
06. 泣いちゃいそう冬
07. 空のカーテン
08. 一粒の笑顔で…
09. ミライボウル
10. きみゆき
11. DNA狂詩曲
12. オレンジノート
13. 僕等のセンチュリー
14. 行くぜっ!怪盗少女
15. 灰とダイヤモンド
16. 今宵、ライブの下で
17. スターダストセレナーデ
18. コノウタ
<アンコール>
SE. overture ~ももいろクローバーZ参上!~
19. JUMP!!!!!
20. 黒い週末
21. 白い風