初開催! 立川志の輔と弟子8人をイッキ見する落語会『ふきよせの会』~志の八×志の太郎に意気込みを聞く

インタビュー
舞台
2022.9.6
(右から)立川志の八、立川志の太郎

(右から)立川志の八、立川志の太郎

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『立川志の輔一門・ふきよせの会〜全員参加の3時間』が、2022年10月4日(火)に昭和女子大学・人見記念講堂で開催される。立川志の輔とその弟子全員が揃う、初めての落語会だ。二番弟子で真打の立川志の八と、六番弟子で二ツ目の立川志の太郎が思いを語った。

■志の輔一門、初の全員参加落語会

ーー『ふきよせの会』の見どころをお聞かせください。

志の太郎:志の輔一門では、これまでにも年1回の一門会をしてきました。そちらは昼夜の2公演に、弟子が分かれて出演して師匠がトリをとる会でした。今回は1回の公演に、全員が出演します。

志の八:一番弟子の晴の輔兄さん、僕、そして志の春、志のぽん、志の彦、志の太郎、志の麿、前座の志の大も含めた弟子8名。そして師匠がトリです。

志の太郎:休憩含めて3時間。

志の八:師匠に辿り着くまでが長い!

志の太郎:そこをお客様に飽きずにご覧いただけるよう、並びを考えました。各々が自分の色を出しつつ、寄席のようにバトンを渡していきます。

志の八:トリの師匠に気持ちよくやっていただけるように。それがお客様にも、気持ちよくご覧いただくことに繋がる。僕と志の太郎の出番は前半のブロックなので、会場を温めておかなくてはいけません。その責任はあります。とは言え、皆さんが師匠の噺を聞く頃には、きっと僕らのことは覚えていないでしょう? いい意味で思い切りできますし、爪痕は残したい! という気持ちもありますので。

「志の太郎の顔だけ、ちゃんと描かれてる気がする」と志の八。「すみません」と余裕の笑顔の志の太郎。

「志の太郎の顔だけ、ちゃんと描かれてる気がする」と志の八。「すみません」と余裕の笑顔の志の太郎。

志の太郎:ネタがかぶることも気にせず……多少時間をこぼそうが……。

志の八:やりたいのを先にやっちゃえばいいんですよ!

立川志の八

立川志の八

ーー2020年10月に、同会場で開催された『ふきよせの会』は、全員参加ではありませんでしたが、一門の皆さんが出演されて、志の輔師匠がトリをとられました。その時のネタが『茶の湯』でした。いわゆる大ネタと呼ばれるような、どっしりとした噺を選ばれるのかな? と想像していたので意外でした。

志の太郎:『茶の湯』は笑かすネタですからね。

志の八:前回僕は参加できなかったのですが、あらゆるイベントがなくなったコロナ禍から、ようやく手探りで動き出した時期でしたよね。きっと師匠は「この会を明るく終わらせたい。泣かせる噺もいいけれど、皆でワッと笑って、お祭りの後のような気持ちで帰っていただきたい」という考えがあったんじゃないかな。

ーーたしかに、体で覚えているくらい客席がドッと笑った一席でした。終演後は、いい運動のあとのような疲労感があるくらい笑いました。

志の太郎:あまり感じなかったと思うのですが、あの『茶の湯』、ゆうに50分はあったんです。

志の八:50分! 一体何回、お茶を飲まされたんだよ!?(笑)

志の太郎:今年も、たっぷりと聞かせてくださると思います!

立川志の太郎

立川志の太郎

ーー会場は、前回の『ふきよせの会』と同じく、昭和女子大学の人見記念講堂です。

志の太郎:前回は、初めて使わせていただきましたが、お客さんの反応をダイレクトに感じられる、とても良い会場でした。感染症対策で、2,070席の会場を約半数で販売しました。それでも、笑いがまとまってかえって来る感覚があって。全国のホールを知っている師匠も、こちらは初めてでしたが、めちゃくちゃ気に入ってましたね。

ーー会場により、それほどに違いがあるものですか?

志の八:まるで違いますね。会場が小さければ一体感が出るとか、大ホールで満員なら良いとか、そういうものではありません。僕らはお客さんの反応をみながら落語をやりますので、皆さんの反応が素直に返ってくるホールだと、お客さんとの間に良いリズムができるんです。弟弟子(おとうとでし)たちも皆「このホールは良かった!」というので、期待してしまいます。

■師匠の言葉が、今を支える

ーー志の輔師匠と同じ会に出る時は、緊張されますか?

志の八・志の太郎:します。

志の八:師匠が楽屋で僕の落語を聞いていると思うと、自分の独演会とはまるで違う緊張感があります。真打になるとご一緒する機会は減るのですが、二ツ目の志の太郎は、僕よりは師匠と同じ会に出ることが多いよね?

志の太郎:それでも年10回はないくらい。やはり緊張しますね。

(右から)立川志の八、立川志の太郎

(右から)立川志の八、立川志の太郎

ーーそのような会では、師匠から何かコメントがあるのですか?

志の太郎:先日の一門会で僕は、『あくび指南』という、ゆったりとしたネタをやりました。その時に「あれを二番手でやるのは、むずかしいんじゃないか? やりたい気持ちはわかるけれど、ネタ選びも重要。自分が損をしてしまうぞ」と。言われて気がついたんです。その日、僕は師匠にひさしぶりに聞いてもらえる! と気合が入っていて、やるべきネタではなく、やりたいネタをやっていた。師匠への思いが強くて、空回りしたパターンですね。全体の流れや目の前のお客さんの層も考えないといけないのに。

志の八:師匠の言葉には「お客様第一」の精神が根底にあると思うんです。媚びを売るということではなく。ちなみにその日、僕のネタについては何のコメントもありませんでしたが……。

志の太郎:兄さん、暗い顔をしないでください。何も言われないのは「良かったぞ」ってことでしょう!?(笑)

(右から)立川志の八、立川志の太郎

(右から)立川志の八、立川志の太郎

ーーでは、今までで一番うれしかった言葉は何ですか?

志の八:ちょっと考えさせてください(まだ暗い顔)。

志の太郎:僕は、前座時代最後の旅公演の帰りに、いただいた言葉ですね。新幹線で、ふと「世の中には、無数の星と太陽と月がある、という言い方がよくあるだろう? その中で、お前はどれになりたいんだ。お前なら、なりたいものになれるぞ」と、言ってくださったんです。

ーーがんばり次第では、月にも太陽にもなれる、と受け取れます。

志の太郎:太陽にもなれる。師匠がそう思ってくださっているんだと思いました。あの時の言葉を、ずっと心の支えにしています。兄さんは、いかがですか?

志の八:真打にあがる直前ですね。師匠の会に出させていただいたときなんですが、出演料を師匠からではなくマネージャーさんから渡されたんです。その封筒に「その調子で行け」って書いてました。入門して以来、僕はずっと怒られてばかりで、褒められたことなんてありませんでした。だから本当に嬉しくて。中身は、速攻使いましたが、その封筒は今でも大切にとってあります。

(右から)立川志の八、立川志の太郎

(右から)立川志の八、立川志の太郎

志の太郎:そんな良いエピソードがあったんですね。作り話ですか?

志の八:作ってないよ! ただ、あのメッセージを書いたのが、マネージャーさんだった可能性は、ある。

志の太郎:ははは! ……で、その調子でいって今の兄さんなんですね。

志の八:そう、ちょんまげのね。

■猛スピードで突破してきた師匠のもとで

ーー志の八師匠は、ご自身の独演会『しのはちの覚悟2022 宮戸川(全)』で、ちょんまげになられたのでしたね(※詳しい経緯は別記事 https://spice.eplus.jp/articles/302088 をご覧ください)。

志の八:真面目な話をすると、コロナ禍にお客さんと会う機会がなくなったでしょう。「次に会う時には、僕はちょんまげです!」と宣言することが、お客さんのちょっとした楽しみになるんじゃないかと思ったんです。僕なりの「お客様第一」の精神が根底にはあるということは言わせて下さい!

立川志の八

立川志の八

志の太郎:師匠も若いころは、実験的なことを色々なことをされましたよね。ひとり芝居をしてみたり、テレビモニターを積み上げて、映像の自分と本人でやりとりをして見せたり。

志の八:文楽や狂言など色々なジャンルの方とコラボしたり、ジャズを唄ったり。師匠も僕らと同じように、いろいろ悩み、挑戦し続けてこられたのだと思います。ただし、僕らが抱える悩みや、ぶつかる壁は、とっくに突破してきた方ですからね。同じ道と言ったらおこがましいですが、今僕らが歩いている道はひょっとして師匠も歩いてたんじゃないかな? と感じるときはあるんです。

志の太郎:次元が違い過ぎて、偉いお坊さんと弟子みたいな関係ですが、そんな師匠にも若手の頃があった。客席にお客さんが3人しかいなかったという時期があったと、よくマクラでも話しています。だから僕は、「師匠がいま、僕と同年代、同じくらいのキャリアの二ツ目の落語家だったら何をどうしているか」を想像することがよくあります。いつか機会があれば、この時代に師匠が二ツ目だったら、どういう勝負をしていたと思いますか? って聞いてみたいです。

立川志の太郎

立川志の太郎

志の八:TikTokとか、やってたりしてな。

志の太郎:やるでしょうね。SNSをフル活用して。でも、ちょんまげは……。

志の八:やらないだろうな。

ーーおふたりとも、常に志の輔師匠の存在を意識しながら、落語に向きあっているのですね。

志の太郎:僕や兄さんがそうであったように、弟子全員、それぞれに師匠への思いがあり、師匠の言葉に支えられて今がある。師匠の独演会にいらっしゃるお客様は、もしかしたら僕ら弟子にご興味がないかもしれません。でも師匠の志の輔とすべての弟子が揃う『ふきよせの会』にお越しいただけたら、「この子は、師匠のこういうところを受け継いでるね」といった見方、楽しみ方をしていただけるように思います。

志の八:でもさ、受け継いでるというか、自分の落語を見返したとき、ちょっとした仕草やふとした台詞が師匠に似ているって気がついた時「ウワッ、同じだ! 気持ちワル!」ってならない?

志の太郎:いいえ、なりません。僕はうれしいです。

志の八:そういう奴だよ、お前は!

(右から)立川志の八、立川志の太郎

(右から)立川志の八、立川志の太郎

『立川志の輔一門・ふきよせの会 全員参加の3時間』は、2022年10月4日(火)15時開演。

取材・文・撮影=塚田史香

公演情報

『立川志の輔一門・ふきよせの会~全員参加の3時間~』
 
■日時:2022年10月4日(火) 15:00開演(14:15開場)
■会場:昭和女子大学 人見記念講堂(三軒茶屋)
 
■出演:立川志の輔
立川晴の輔 / 立川志の八 / 立川志の春 / 立川志のぽん / 立川志の彦 / 立川志の太郎 / 立川志の麿 /
 
発売日:2022年8月4日(木) 10:00
■全席指定:¥4,000(税込)
※年齢制限:未就学児入場不可

■主催:サンライズプロモーション東京
■後援:TBSラジオ
■お問い合わせ:サンライズプロモーション東京 0570-00-3337(平日12:00~15:00)
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