YONLAPA、タイ・チェンマイ発のニュージェネレーションバンドをDJ竹内琢也が深掘り「インディー・シーンはどうなっている?」

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2022.9.3
YONLAPA 撮影=高村直希

YONLAPA 撮影=高村直希

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タイのチェンマイを拠点に活動するインディーバンドYONLAPA。ソロシンガーとして活動していたノイナ(Noina)を中心に2018年に結成され、2019年リリースの「Let Me Go」のミュージックビデオはタイのみならずアジアの多くの国で再生されるなど、タイのインディーシーンでここ数年頭角を現しているバンドだ。日本人クリエイターがMVを制作するなど日本との繋がりも深い。今回は初来日ツアーとして、東京ではnever young beach、大阪ではDYGLを迎えた対バンライブのほか、兵庫県三田市で開催された『ONE MUSIC CAMP 2022』を含む5公演を開催。そんなYONLAPAに海外音楽情報専門の『speakeasy podcast』や『New Music Wednesday [Music+Talk Edition]』のMCを務める竹内琢也がインタビューを行った。結成の経緯、音楽的影響といったバンドの事から、バンコクやチェンマイのインディーシーンの話までを掘り下げる。

ノイナ

ノイナ

ーーYONLAPAの結成の経緯について聞かせてください。

ノイナ(Vo.Gt)​:元々は私がチェンマイで一人で活動していました。カバー曲を中心に演奏するスタイルで活動していたのですが、タイのインディペンデント・レーベルのMinimal Recordsにスカウトされて。本格的にアーティスト活動をするならバンドとしてやりたかったので、そこからメンバーを探しました。

ーーMinimal Recordsがバンドメンバーを探してくれたということですか?

ノイナ:メンバー集めは全て自分でやりました。まず最初に声をかけたのはベースのナーウィン(Nawin)でした。大学を卒業した後、就職をせずに焼肉屋でアルバイトをしていて、そこで一緒だったんです。飲みに行った時にナーウィンがベースをやっていることが分かったので、バンドに誘いました。そして私がチェンマイで演奏していたミュージック・バーでギターを演奏していたガン(Gun)も、おもしろそうだったので声をかけました。ドラマーが中々決まらず困っていたのですが、先輩からフュー(Few)を紹介してもらって全員が揃ったのが2018年の11月ですね。その後タイのビールメーカーのチャーンビールが主催をするフェスティバルがあり、そこでバンドとして初めて演奏しました。

YONLAPA(奥からノイナ、フュー、ガン、ナーウィン)とインタビュアーの竹内琢也(右)

YONLAPA(奥からノイナ、フュー、ガン、ナーウィン)とインタビュアーの竹内琢也(右)

ーーそして2019年になって初めての楽曲「U」をリリースしたと。

ガン:2019年になってすぐにレーベルのイベントがあり、そこでは最低1曲はオリジナル楽曲を演奏しなければいけませんでした。そのライブ用に制作したのが「U」ですね。

フュー:ちなみに当時、チェンマイでは女性がギターボーカルを務めているバンドというのが非常に珍しく、もしかしたらチェンマイの中では初めてだったかもしれません。

YONLAPA - U [Official Lyric Video]

ーーチェンマイのインディーシーンはどれくらいの規模感なのでしょうか?

ガン:タイのバンドは大きく分けて活動の仕方が2種類あり、ほとんどがミュージック・バーで演奏するバンドです。タイには数多くのミュージック・バーがあり、チェンマイはタイの中でも大きな観光地なので、欧米のポップスをカバーしたり、ロック、ジャズ、ブルースを演奏したりしていますね。そういった形ではなくオリジナル楽曲を作り、アーティストとして活動をしているのは、チェンマイでは大体10から20バンドくらいですかね。そこまで大きなシーンではないです。

フュー:レーベル主導などで定期的なイベントもあります。新型コロナウイルスのパンデミックで一時期は減っていましたが、最近はまた開催されるようになりました。

ーーバンコクとチェンマイのインディーシーンには違いはありますか?

ガン:もちろんバンコクの方が都市として大きいので規模感の違いはあります。バンドの数やライブ、イベントの数ももちろん多いです。一方でチェンマイ発だとタイの国内ツアーをできるバンドは数えるくらいしかいないですね。あと楽曲制作の仕方にも違いがあります。バンコクは渋滞が多く、電車もそれほど本数が多いわけではないので、メンバーが集まってやり取りをするのが少し難しく、オンラインで楽曲を制作する傾向が強いです。チェンマイはバンコクに比べると渋滞などが少ないので、基本的には対面で会って、一緒に楽曲制作をしています。

ーータイにはタイポップスのようなマスを中心としたシーンも存在します。インディーシーンを比べるとどうですか?

ガン:タイには色んな場所がありますが、場所によってメジャーな音楽を聴く人が多い地域と、インディーミュージックを聴く人が多い地域に分かれていますね。タイ全体で見ると、ここ数年でバンドがかなり増えてきたので、若い世代はインディーミュージックを聴く人の方が多いかもしれません。

YONLAPA

YONLAPA

ーータイのインディーシーンで影響力のあるバンド、レジェンダリーなバンドを教えてください。

フュー:モダンドッグはレジェンドですね。タイポップスが多く聴かれていた中、バンドとして活動をしていた先駆け的な存在です。

ガン:セーク・ローソーさんもレジェンドですね。以前はローソーというバンドで活動をしていて、今はソロで活動しているロックのアーティストです。一時期イギリスにも住んでいてイギリスの音楽に影響を受けてタイでも活動していました。当時としてはタイではそういうアーティストは珍しかったですね。若い世代もみんな知っているアーティストです。

ーーYONLAPAのメンバーそれぞれが影響を受けた音楽も教えてください。

ノイナ:私が最初に一番影響を受けたバンドはパラモアですね。女性ボーカルで最高にクールなヘイリー・ウィリアムスに凄く憧れていて、いつか私もああいうボーカリストになりたいです。

ナーウィン:昔から60年代、70年代の音楽が好きで、ビートルズも大好きです。大学の時はアートを勉強していて、音楽だけでなくその時代のサイケデリックアートや、ヒッピー・カルチャーなどにも強く影響を受けています。YONLAPAを始めてからはマイ・ブラッディ・ヴァレンタインなどシューゲイザーも聴くことも増えてきて、その影響でピックを使って弾くようになりました。

ガン:ミュージック・バーでガレージ・ロックを演奏していたので、ガレージ・ロックはよく聴いていましたね。アーティストとして活動したいと思うようになってから、より色々な音楽を聴くようになっていって。その中でピンク・フロイドやビートルズなどサイケデリック・ロックにハマっていきました。ヒッピー・カルチャーにも影響を受けています。サイケデリック・アートなど音楽と絵が結びついた表現、音楽を絵と捉えるような感覚も好きですね。

YONLAPA

YONLAPA

ーーフューとノイナはどちらかというとポップスやロックを好んで聴いている感じですか?

フュー:そうですね。メジャーシーンのものも多く聴きます。バンドサウンドに限らず色んな音楽を聴いていますね。

ノイナ:中学生や高校生の時はロックバンドを多く聴いていましたが、大人になってからはポップスも聴くようになりました。クリーンだったり少し尖った、エッジのあるポップス、もちろんロックも好きです。

ーー音楽的なルーツが違う中、楽曲制作はどのような流れで進められていくのでしょうか?

ノイナ:基本的に楽曲制作は私からスタートします。その時の感情や想いなどを歌詞にし、コードやメロディなどの原型を作ります。デモが出来たらドラムのフューがリズムを作っていき、その後ナーウィンがベースを足していきます。そこからギターのガンのアレンジが加わっていく、という流れです。最初のデモと最終的な曲が大きく変わるということもあります。

ガン:最新シングルの「Is That True?」もその流れで作っていますね。

YONLAPA - Is That True? (Official Music Video)

ーーこの「Is That True?」はSpotify Japanの新譜プレイリスト『New Music Friday Japan』にリストインするなど日本からの注目度も高いです。2019年リリースの「Let Me Go」は日本からも多くMVが再生されました。

フュー:「Let Me Go」はMVが公開されてタイ以外の多くの国から反応がありました。一番MVが再生されたのはフィリピンとインドネシアで、日本と韓国からも多くの方が観てくれていていました。MVも「Sweetest Cure」以外は、全て自分たちでで制作しています。

ノイナ:スマホで撮影して、編集まで自分たちでしています。

YONLAPA - Let Me Go [Official MV]

ーー「Sweetest Cure」は日本で制作されたそうで、山本奈衣瑠さんが主演を務めていましたね。今回の日本ツアーでは対バン相手が大阪公演はDYGL、東京公演はnever young beachです。バンドの印象を聞かせてください。

ノイナ:私は今回のツアーの前からDYGLの大ファンだったんです。楽曲が大好きで、MV影響も受けています。DYGLのMVにインスピレーションを受けて、YONLAPAのMVを制作したりもしています。なので対バンすることが決まった時はすごく嬉しかったですね。never young beachは今回の対バンをきっかけに聴いたのですが、カッコ良くて、これから色々聴いてみたいと思っています。

ーーちなみに他に気になる日本のバンドはいますか?

ノイナ:No Busesは好きですね。曲もたくさん聴いていますし、MVも好きです。

フュー:私はCorneliusとTempalayが好きですね。

ノイナ:音楽だけでなくて、日本のテレビも観ています。ギャル曽根が好きです。

ーー意外な名前が出てきましたね(笑)。

ノイナ:たくさん食べるところを観るのが好きです(笑)。

ガン:ライブだけでなくプライベートでも日本に来るのが初めてなので、とても嬉しいですね。先週シンガポールでライブをしたのですが、それが初めての海外でのライブで、今回が2回目の海外ライブなんです。

ーーでは、最後に。今後のYONLAPAの活動について教えてください。

ガン:楽曲は今リリースしているものとは少し違ったムードの、ライブでも踊れる、盛り上がるような曲を作って行きたいなと思っています。今後も海外でのライブは機会があればやっていきたいですね。

YONLAPA、竹内琢也

YONLAPA、竹内琢也

取材・文=竹内琢也 撮影=高村直希

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