The Birthdayら8組が出演、『たとえばボクが踊ったら、』がつくる新しい文化、美しい音が残した余韻ーー3年ぶり開催の歓喜に満ちたライブを振り返る

レポート
音楽
2022.10.8
『たとえば ボクが 踊ったら、♯004』

『たとえば ボクが 踊ったら、♯004』

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『たとえばボクが踊ったら、#004』2022.9.11(SUN)大阪・服部緑地スポーツ広場A特設ステージ、服部緑地野外音楽堂

『たとえば ボクが 踊ったら、♯004』

『たとえば ボクが 踊ったら、♯004』

「大阪から新しい文化をつくっている」と、『たとえばボクが踊ったら、』の開催直前インタビュー(https://spice.eplus.jp/articles/306592)で、第1回から出演しているSPECIAL OTHERSは語っていた。この言葉をまさに体感することとなった、3年ぶり開催となる『たとえばボクが踊ったら、#004』(以下、『ボク踊』)。当日、会場となる服部緑地公園でどんな光景が広がっていたのか。出演したDOPING PANDA、Kan Sano、Kroi、RHYMESTER、SOIL&”PIMP"SESSIONS、SPECIAL OTHERS、The Birthday、ego apartment(WELCOME ACT)のライブとともに振り返りたい。

『たとえば ボクが 踊ったら、♯004』

『たとえば ボクが 踊ったら、♯004』

今年は晴天で、無事に当時を迎えることができた『ボク踊 #004』。まず天気がいいという時点で、込み上げてくる喜びもひとしおで、「最高の日になるぞ」と確信することになるのだが……なぜ晴れただけで感動したのか、そしてこのフェスの魅力を語るにあたり欠かせない、開催の歴史についてまずは振り返ってみる。『ボク踊』は、「関西で魅力的なキモチいいフェスしたい」という主催・夢番地 大野氏の想いから、2016年に大阪・服部緑地野外音楽堂でのThe BirthdayとSPECIAL OTHERSの2マンというカタチでスタートした。だれしもがうなるブッキングの妙に発表当時から話題となり当日もそれはもう大盛況に。しかし、The Birthdayのライブで「中断」という文字が頭に浮かぶほどの激しい雷雨が起こった。ギリギリのところで無事ステージを終え、ショーマストゴーオンの精神でロックンロールを鳴らし続けたThe Birthday。その姿は目の当たりにした観客の記憶に刻まれ、伝説的に語られることとなる。

2018年『たとえば ボクが 踊ったら、♯002』開催時、台風の被害で公園の木が倒れていた

2018年『たとえば ボクが 踊ったら、♯002』開催時、台風の被害で公園の木が倒れていた

そして2018年、服部緑地野外音楽堂に加え、同じ服部緑地公園内の10分ほど歩いたところにある、服部緑地スポーツ広場Aに特設ステージを新たに設け、規模を拡大し『ボク踊 #002』が開催された。初年度の伝説的幕開けの記憶も新しく、また当時は服部緑地公園で大規模な音楽フェスが開催されたことがないという前人未到の地であったこともあり、これまた発表と同時に話題を集め、音楽好きはどんなフェスになるのか期待を膨らませていたのだった。しかし、直前に関西を大型台風が直撃し、各地で甚大な被害を受ける。例に漏れず、緑地公園も公園内の木や鉄柱までもが倒れるなど大きな被害を受けた。しかし、公園の職員と運営スタッフの尽力のもと開催できると信じてギリギリまで全力で復旧。直前まで電気が通っていない、という絶望的な状況を乗り越え、安全面を確保した上で無事開催にこぎつけた。現場にはまだ、痛々しいほどの台風の爪痕が残っていたものの、あの頃は多くの人が心を痛めていたからこそ、フェスが開催され音楽が止むことなく鳴らし続けられたこと、おもいっきり大好きな音楽に身を委ねられることに心が癒され励みとなり、ほかにはない多幸感がグルーヴとなっていたことを覚えている。

『たとえば ボクが 踊ったら、♯004』

『たとえば ボクが 踊ったら、♯004』

そういった経緯もあり、再び服部緑地野外音楽堂の1会場のみで開催された、2019年の『ボク踊 #003』の頃には『ボク踊』連続参加の常連客も多く、このイベントを共につくりあげていく精神がはやくも醸成されていた。そして2020年、全世界で新型コロナウイルス感染症が猛威をふるい、フェスやライブだけでなくあらゆるカルチャーが歩みをとめざるをえない状況に。それでも『たとえばボクが踊ったら、presents Chillax』と題して、自治体のガイドラインを遵守した上で、どこよりも早く野外の有観客ライブを開催。イベント開催決定からわずか1ヶ月半、告知から当日まで10日というスピードで行われた。だれもが戸惑い手探りだった状況で、だれかがやらなければという切実な想いをもっての英断。大阪から再び音楽が鳴らされ、ライブの火が灯される節目となった。しかしながら、時勢により2021年は開催を断念。そして、今年3年ぶりに『ボク踊♯004』として2会場での開催が実現した。天候や新型コロナという苦難を乗り越え、ようやく無事開催することができたのだ。

『たとえば ボクが 踊ったら、♯004』

『たとえば ボクが 踊ったら、♯004』

前置きが長くなったが、だからこそ今年のうなだれるほど暑い晴天も喜びとなり、開催できた安堵がなによりまず大きかった人も多いはず。(ちなみに今年も直前に大雨が降り、前日のゲリラ豪雨で運営スタッフの心が折れた場面もあった)。さて、そういった歴史を踏まえると、最寄りの緑地公園駅から会場まで続く道にずらりとポスターが貼られた光景だけで込み上げてくるものがある。ここで『ボク踊』を語る上でかかせないロケーションについても触れておくと、東京からでも日帰り可能なほどアクセス良好な立地にあり、緑豊かな公園内にある2つのステージでライブが楽しめる。徒歩10分ほどの両ステージ間はもちろん、公園内に案内板などほとんどなく最低限にとどめられている。禁止行為や過剰な案内板を掲げなくとも、『ボク踊』に足を運んだ人たちなら大丈夫、という信頼の証のようにも感じた。また休日のおでかけで訪れたファミリーやランニングしている人たちなど日常的に公園を利用している人も多いため、そういった一般利用者と共存しているのもほかにはない風景のように思う。

『たとえば ボクが 踊ったら、♯004』

『たとえば ボクが 踊ったら、♯004』

朝早い時間から多くの観客がつめかけ、アウトドアチェアを設置したり最前で待機したり、それぞれの楽しみ方で開演を待ち侘びる中、『ボク踊』のこれまでを見届けてきたFM802・DJの加藤真樹子がMCで登場。開催できた喜びをあらわに、「気持ちよく踊りましょう!」と呼びかけから、ステージに登場したウェルカムアクト、ego apartmentのライブで開幕。

ego apartment

ego apartment

セッションからシームレスに楽曲を繋いでいき、初のフルアルバム『EGO APARTMENT』から全曲+αを披露。待ってましたと言わんばかりにクラップとハンズアップで応える観客たち。Dyna(Laptop/Bass)「人生で1番でかいステージ」と感慨深そうに語るも、楽曲のスケールからすればもっと大きなステージでも似合うと感じるほど、堂々たるアクトでのっけから会場を横にゆらしてゆく。

ego apartment

ego apartment

彼らのウェルカムアクト含め、約1時間のロングセットでライブをじっくりと楽しめるのも『ボク踊』の醍醐味。アーティストの個性が際立ち、楽曲世界のより深いところまで感じられる、ワンマンライブのような贅沢な時間を楽しめることを実感できる、すばらしい幕開けに。

Kan Sano

Kan Sano

一方、服部緑地野外音楽堂にはKan Sanoが登場。サックス、ドラム、ベースとのバンドによる「Magic!」でライブをスタートさせる。最新アルバム『Tokyo State Of Mind』の収録曲を中心に、「I MA」「Tokyo State Of Mind」「Play Date」「逃飛行レコード(98bpm)」、「Natsume」と惜しげもなく披露。ラストはフジファブリック「若者のすべて」を弾き語りでカバー。夏の終わりを観客とともに噛み締めるように、センチメンタルに歌を届けた。

Kan Sano

Kan Sano

Kroi

Kroi

特設ステージでは、Kroiがファンキーにぶっとい音をぶちかまして踊らせる。内田怜央(Gt.Vo)は「外でこんなに美味しいもの食べて、最高に踊って気持ちよくかえってください。こんな天気に会う曲を」と投げかけ「熱海」で会場の熱気はぐんぐん上昇。今度は「あとラスト4曲……ラスト4曲って言うことなかなかないよね(笑)」と内田。

Kroi

Kroi

破竹の勢いでシーンを席巻し、今夏は数々のフェスで鮮烈なステージをみせつけてきたKroiも、ほかにはない『ボク踊』のロングセットをとにかく楽しんでいる様子。「ぶち踊り狂いたい」との言葉通り、会場はハンズアップ&ジャンプで激しく揺れるお祭り状態に。ラストスパートではシャウトをキメて、心と体に刻みつけるような堂々たるステージを締めくくった。

DOPING PANDA

DOPING PANDA

今年、10年ぶりに再結成を果たしたDOPING PANDAは、「YA YA」「The Fire」「Lost & Found」フルスロットルで攻め立てていくのっけからアツい展開に。フルカワユタカ(Vo.Gt)が「踊りまくって。ここのバイブスで、君のバイブスで最後は大阪全体が揺れ動いているかも」と投げかけていたが、ドーパンのライブを待ち望んでいた観客たちの熱気と興奮で揺れるどころか爆発しそうな勢いに。息をつく暇がないほどにギアをどんどん上げていくと、会場に続々と拳が突き上がる。

DOPING PANDA

DOPING PANDA

「また大阪を、日本を踊らせまくるんで」と意気込み、ラストは「Kiss my surrender」。しかし、鳴り始めるもフルカワが演奏を中止。「ミスもある、違う曲をやるわ」と急遽「Crazy」に変更。咄嗟の判断とはいえ、ライブならではの痺れる場面に一同歓喜。もっと自由に、と踊る観客たちでいっぱいの光景はとても清々しいものだった。

『たとえば ボクが 踊ったら、♯004』

『たとえば ボクが 踊ったら、♯004』

KroiもMCでフードについて触れていたが、大阪を代表する人気店のフード出店がそろうのも魅力のひとつでもある。今回は「鉄板居酒屋 鉄板野郎!」に「TASOGARE COFFE STAND」「THE MUSEN IN SHOCK」など、名だたるフェスでのイベント出店やケータリング、自らがイベントを企画している店主たちで、関西のカルチャーシーンと切っても切れないラインナップ。飲食というひとが集う場を通して、大阪から独自の音楽、ファッションなどのムーヴを仕掛けている店が勢揃いしていた。このラインナップからも、イベントを通して全国に発信したい、大阪で盛り上がりをみせている「おもろい」シーンを感じることができたように思う。音楽だけではなく、ファッションもグルメもジャンルの垣根を超えて、同時多発的に何かを起こさないと文化になりえない。この日は、それを知っていて仕掛け続けている人たちが集まっていたようにも思う。

RHYMESTER

RHYMESTER

そして、もうひとつの魅力がここでしか見られないセッション。まずは、RHYMESTERが野外音楽堂のステージに登場。宇多丸が「みんな、いろんなことあってここに集まっていると思います。この状況がまだまだ続くかもしれないけれど、いつでも何度でも人は立ち上がれるという歌から」という言葉から「ONCE AGAIN」を投下。さらに、「メンツみただけでわかってんなこのフェスってね。大阪の代表格だよね」と評しつつ、DJとマイク2本で会場をこれでもかと沸かせ、「KING OF STAGE」の異名にふさわしい圧巻のステージをみせつけた。

SOIL&”PIMP"SESSIONS

SOIL&”PIMP"SESSIONS

そして、続くSOIL&"PIMP"SESSION'S。社長(Agitator)が暑さから上着を脱ぎ捨てると「みんなも脱げるものは脱いでここに置いていこう!」と投げかけ、分厚いサウンドを放ちグルーヴを練り上げていく。タブゾンビ(Tp)、丈青(Pf)、秋田ゴールドマン(Ba)、みどりん(Dr)とそれぞれのスキルが際立つソロパートでこそ、会場が大いに湧きクラップが鳴り響く瞬間は痛快。シンプルに音を楽しみ、身を委ねる時間がとにかく心地いい。夏の曲をと「SUMMER GODDESS」で熱烈に締めくくり、「この組み合わせはまちがいない。何度となくこのステージでいろんな音を鳴らしてきたけど、今日もやるよ!」と呼び込まれてRHYMESTERが再登場。Mummy-Dも「楽しみで仕方なかったよ」と喜びをあらわに「Funky Pongi × 爆発的」でセッションスタート。

RHYMESTER×SOIL&"PIMP"SESSIONS

RHYMESTER×SOIL&"PIMP"SESSIONS

宇多丸が「今日が、夏の最後になるはず。夏のいいところを……2022年もいろいろありましたけど、今日この最高の瞬間だけを持って帰ってください!」と「フラッシュバック、夏。」へ。そして、ドラマ『初恋の悪魔』(日本テレビ系)の最終章テーマ曲でライブではこの日が初披露となる「初恋の悪魔 –Dance With The Devil-」。繊細かつ強靭なバンドサウンドに合わせてバースをバチバチにキメていき、ラストは「ジャズィ・カンヴァセイション」で心地よく揺らす。「大阪でしかやってないから。また来年もきてください!」と言葉を残しステージを後に。贅沢なひとときの余韻に浸りながらも、おかわりを求める拍手が鳴り止まなかったことは言うまでもない。

SOIL&”PIMP"SESSIONS

SOIL&”PIMP"SESSIONS

SPECIAL OTHERS

SPECIAL OTHERS

急遽ステージでMCを任された、FM COCOLOのDJ・マーキーが「愛してやまない」と呼び込んだのは、SPECIAL OTHERS。デビュー15周年イヤーの締めくくりにリリースされたアルバムタイトルトラック「Anniversary」でライブが始まると、一音一音を美しく紡いでいき、観客も心地よさそうに体をゆらす。「beautiful world」「Flowers」と続き、日が沈みライトが映える夕暮れ時と鳴らされる音世界が見事にマッチ。

SPECIAL OTHERS

SPECIAL OTHERS

そして、かつてトリを飾った『ボク踊 #002』での「関東と関西でカレーに使う肉が牛肉と豚肉で異なる」というMCを掘り下げるなんでもない場面から、ラスト「Laurentech」ではイントロから歓声とクラップが。子供もお父さん、お母さんと一心不乱に踊っている美しい光景が広がっていた。

SPECIAL OTHERS

SPECIAL OTHERS

The Birthday

The Birthday

そしてラストを飾ったのは、The Birthday。機材トラブルで仕切り直す冒頭で、咄嗟にチバユウスケ(Vo.Gt)がハーモニカを奏でて即興演奏。これまたライブならではのシーンに心が弾む。いよいよギターを携え、「12月2日」「ある朝」「月光」と比較的新しい楽曲から「Red Eye」へと繋ぎ、鋭くもじっくりと、ヒリヒリとした展開で魅せていく。

The Birthday

The Birthday

「オルゴール」「ヘッドライト」から「ブラックバードカタルシス」で、観客の興奮も最高潮に達しようとしたところで、「OH BABY !」でとどめの1曲。さらにアンコールではビールを片手に「今日はやろうかね、もう1曲だけ」と呟き「1977」でステージをしめくくった。轟音を全身で浴びて、拳が震える……、最高にロックンロールなステージでイベントの幕が閉じられた。

The Birthday

The Birthday

The Birthday

The Birthday

『たとえば ボクが 踊ったら、♯004』

『たとえば ボクが 踊ったら、♯004』

スペアザのMCで、芹澤 "REMI" 優真(Key)が「こうやって野外で音楽を聴けることがどれだけ素晴らしいことか」と胸の内を明かしていたが、これは誰もがこの日、再認識したことだと思う。この3年間でライブやフェスで音楽を聴く、というこれまであたりまえのように楽しむことができたものが、あたりまえでなくなった。だからこそ、今、目の前で鳴らされている音に耳を澄し、心を解き放つようにして自由に踊る、その喜びを確かめ合うような1日だったように思う。それも緑豊かな公園で浴びる音は、どれほど気持ちがいいことか。

『たとえば ボクが 踊ったら、♯004』

『たとえば ボクが 踊ったら、♯004』

また、観客ひとりひとりがゴミを拾って帰る姿も印象的だった。会場内どころか、ステージ間を移動する公園内の歩道でもゴミが落ちていれば、拾う人を見かけた。これはマナーがいいとかモラルがあるというより、ひとりひとりが大切にしている、もっと根本的な想いを感じた。それは、フェスが好きで、もっというと『たとえば ボクが 踊ったら、』というイベントが好きで、音楽を愛しているからこそなのではないか、と。好きな音楽を聴いて、最高に気持ちいい時間を最後まで大事にしたい。アーティストとのグルーヴを最高の形で残したい、持ち帰りたい。という想いからくる行動だったように思う。

『たとえば ボクが 踊ったら、♯004』

『たとえば ボクが 踊ったら、♯004』

公園を管理している職員の人と運営スタッフが肩を叩き合い、並んで笑顔を浮かべながらステージを眺めている姿を見かけた。公園で「今日は、なんかあんの?」と尋ねられ、イベントについて話している人もいた。この日を待ち望んでいた人たちが、この日を最大限に楽しみながら、この日をまた迎えられるようにととった行動のひとつひとつが未来に繋がっているはず。その姿は、『ボク踊』というお祭りを通して、ひとつの街を、文化をつくっているようにも思えた。ほかにはない、『たとえばボクが踊ったら、』の魅力は、参加したひとりひとりの想いや行動にこそ宿っているのかもしれない。いつか振り返った時に、『ボク踊』がこの時代を象徴するひとつの文化になる日まで、来年もその先も見届けたい。

『たとえば ボクが 踊ったら、♯004』

『たとえば ボクが 踊ったら、♯004』

取材・文=大西健斗 写真=オフィシャル提供(Kazuki Watanabe、ハヤシマコ、Hoshina Ogawa)


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