ドレスコーズ ポップマイスター・志磨遼平のタレントを大解放した傑作完成、時代を超える普遍性と忘れがたい2022年夏の刻印『戀愛大全』を語る

2022.10.19
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自分は主演ではなく、あくまでストーリーテラー、ナレーションとして参加している感じ。

――失われたロマンを求めて。確かにそうなんですよね、潔癖すぎて、人と触れ合うことにもストッパーが働いてしまう。恋愛もしづらい時代というか。

去年『バイエル』というアルバムを作った時は、それがすごく新鮮に思えて。こんなに離れて距離を取って、それでも関わり合わずにいられないなんて、なんて人間はいじらしいんだろうと思って、人が距離を保つ姿も自分にはロマンチックに感じられたんです。それが1年、2年と経って、文句一つ言わず、みんなつつましく耐え忍んで、いろんなことをあきらめて、もうまるで僕らは聖者みたいだ、という気持ちに変わってきまして。まさに「聖者」という曲にあるように、茨の道だろうと夕立に降られようと、僕らはきっと耐えて見せる。それはとても立派なことですけど、元々の僕らが背負っていた罪、悪さみたいなものは、このまま失われてしまうにはあまりに愛おしすぎる。だからこのアルバムには、“罪深い人間”がたくさん出てきます。

――確かにそうですね。「惡い男」はまさにそうで、「やりすぎた天使」の不良めいた男もそう。

「やりすぎた天使」の彼はきっと、不良っぽくて、お調子者で、はじめはかわいいものだったんです。それがいつからか度を超えて、引き返せないところまで足を踏み入れてしまって、とうとう帰ってこない。今はどこに行ったのかもわからない。

――まさに夏ですね。夏の初めにはあんなにピュアだった友人が、夏の終わりにはすっかり人格が変わってしまうとか、かつて身近にあったお話のような気がします。そんな曲がとてもポップなオールディーズ風のサウンドに乗って軽やかに歌われる。どの曲にも込めた思いは非常に深いですけど、音楽としてとてもポップで楽しめるアルバムだと思います。

それも夏のじりじりとした感じ、もう何も考えられない感じと言うんですかね。そういう風に聴こえるといいですね。

――ボーカルは、演じると言うとあれですけど、物語を語るように歌うトーンの歌が多いなという印象を受けたんですけども。

まさにそうです。自分は主演ではなく、あくまでストーリーテラー、ナレーションとして参加している感じ。それもさっき話したテクニックやノウハウのようなもので、あえてキーを低く設定したり、何声も重ねて録ったりすることで歌から感情が伝わりにくくなる、そういうテクニックがあるんです。

――エコーの使い方とかにも秘密があるんだろうなと思います。

秘密、ありますね。企業秘密が。

もうね、普段は最低の人間なので(笑)。せめて自分のバンドの活動は、自分の期待を裏切らぬようにやっております。

――『戀愛大全』というタイトルは、どこからきたものですか。

戀愛の戀の字を画数の多い旧漢字にしたのは、ウォン・カーウァイの『花樣年華』とか『堕落天使』とか、ホウ・シャオシェンだったら『戀戀風塵』とか、ああいう香港や台湾の映画のタイトルのように見えるといいなと思って。

――まさに映画的なアルバム。志磨さんの立場は、監督、主演、脚本をすべて手掛ける人という感じですかね。自身ではどう感じていますか。今作に限らず、ドレスコーズのプロジェクトの全体で言うと。

全体で言うと……ファンです。

――あはは。ファンですか。なるほど。

“こういうのが見たい”とか、“次のアルバムが待ち遠しい”とか、“こんなライブだったら気絶しちゃう”とか、なるべく僕の期待を裏切らないように活動するということです。

――素晴らしいですね。僕の期待を裏切らないように活動する。名言です。

もうね、普段は最低の人間なので(笑)。せめて自分のバンドの活動は、作品であったりライブパフォーマンスであったり、ビデオであったりデザインであったり、そういった全部、バンドにまつわる全てだけは、自分の期待を裏切らぬようにやっております。つまり、さっき言った“自分が飽きないように”するということ。好きなバンドでも、いつのまにか聴かなくなったりするじゃないですか。一時期、狂ったように聴いていても、かっこいいバンドはほかにも山のようにいるし。自分が自分にそうならないように、ずーっとかっこいいなと思いながらできるように。

――とても響く言葉です。

飽きないための努力はまったくしてないんですよ。ただおもしろいことを閃くだけなんで、その閃きがどうか続きますようにと願っているだけ。それさえあればいいという願いですね。“閃きが失われませんように”と毎晩お祈りして、ぐうぐう寝るみたいな(笑)。そのための努力はなんにもしていません。

――素晴らしいです。そしてリリースツアーがあります。11月に7都市を回る『the dresscodes TOUR2022『戀愛遊行』』。東京公演はツアーとは別に、『12月21日のドレスコーズ』と題して恵比寿ガーデンホールにて。

“れんあいゆうこう”と読むんですけど、遊行は遊びに行くの意味でもあるし、“ゆぎょう”と読むと修行の旅という意味もあるので、楽しいのか苦しいのかよくわからないところが面白いですね。アルバムの曲をメインに、アルバムのテーマに沿った昔のレパートリーも織り交ぜつつ、久々にやる曲もありつつ。楽しみです。

――いろんな曲がハマると思いますね。重いテーマではないので、ポップな曲もどんどん詰め込める。

自分の得意なパターンの曲が並ぶというか、自分の根幹みたいなものをバーンとお見せできるツアーになると思います。ぜひぜひお越しください。


取材・文=宮本英夫 撮影=森好弘

 

リリース情報

アルバム『戀愛大全』
2022年10月19日発売
 

<収録曲>
01. ナイトクロールライダー
02. 聖者
03. やりすぎた天使
04. 夏の調べ
05. ぼくのコリーダ
06. エロイーズ
07. ラストナイト
08. 惡い男
09. わすれてしまうよ
10. 横顔

【初回限定盤】
形態:CD+Blu-ray
価格:¥7,480(税抜価格 ¥6,800)
初回限定盤BD収録内容
・ドレスコーズLIVE VIDEO(11曲)
(from 『ドレスコーズ+柴田聡子inFIRE』)
・メイキング・オブ・戀愛大全

【通常盤】
形態:CD+Blu-ray
価格:¥3,850(税抜価格 ¥3,500)
通常盤BD収録内容
・「聖者」MUSIC VIDEO
・「エロイーズ」LIVE映像
(from 『ドレスコーズ+betcover!!』)

ライブ情報

the doresscodes TOUR2022
11月11日(金)北海道・札幌cube garden
11月13日(日)宮城・SENDAI CLUB JUNK BOX
11月23日(水・祝)岡山・YEBISU YA PRO
11月24日(木)福岡・BEAT STATION
11月26日(土)愛知・名古屋CLUB QUATTRO
11月27日(日)大阪・千日前ユニバース
11月30日(水)神奈川・CLUB CITTA’
 
12月21日のドレスコーズ
12月21日(水)恵比寿ガーデンホール

ボロフェスタ2022
11月3日(木、祝)、4日(金)、5日(土)、6日(日)
会場:京都KBSホール
※ドレスコーズの出演は11月5日(土)12:00~ORANGE SIDE STAGE
■オフィシャルサイト https://borofesta.jp/
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