可愛くって腹が立つ。『ポプテピピック展-しょーがねーだろ赤ちゃんなんだから-』レポート

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アニメ/ゲーム
アート
2022.10.18
『ポプテピピック展-しょーがねーだろ赤ちゃんなんだから-』 (C)大川ぶくぶ/竹書房、(C)大川ぶくぶ/竹書房・キングレコード

『ポプテピピック展-しょーがねーだろ赤ちゃんなんだから-』 (C)大川ぶくぶ/竹書房、(C)大川ぶくぶ/竹書房・キングレコード

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自称「クソ4コマ」「クソアニメ」の『ポプテピピック』が、初の展覧会を開催! 同作の誕生から今日までの軌跡を振り返る初の展示会『ポプテピピック展-しょーがねーだろ赤ちゃんなんだから-』は、2022年10月14日(金)から11月6日(日)まで、東京アニメセンターにて開催中だ。

本作はショートアニメの連続で構成されており、各コーナーの冒頭には製作者のクレジットが入る。若手の映像作家やクリエイターが積極的に登用され、ちょっとしたクリエイター見本市、デザインフェスティバル、もっと言えば文化祭のようなごった煮感が漂っている。ネタの大部分はアニメやゲーム、時事のパロディが占めているので、鑑賞時間の何割かはポカン……と口を開けることになるのだけれど、好き勝手に積み重なっていく表現を見ていると「そっちがその気ならこっちだって……!」といった心持ちになる。登場人物のポプ子とピピ美はキービジュアルなどでしばしば手の指を立てて見せるが、これはまさに作り手と受け手のケンカに近い渡りあいなのだ、と思う。地上波でこういった作品が放送されているのは、表現という行為そのものにとって大きな希望のはずだ。そして、当の『ポプテピピック』はこんな大袈裟な感想やゴタクなどは全く求めちゃいないだろうというのが作品の端々から感じられるのも、また笑える。

顔ではなく、腕をはめ込む撮影用パネルを発見。表紙でお馴染みのあのポーズをしてみるのも一興……?

顔ではなく、腕をはめ込む撮影用パネルを発見。表紙でお馴染みのあのポーズをしてみるのも一興……?

本展の料金は、税込で中学生以上:1,414(イーヨイーヨ)円、小学生:797(ナクナ)円という、衝撃のキリの悪さ。すでに『ポプテピピック』のペースである。

そして音声ガイドを務めるのは、会期前半は日笠陽子(ポプ子)、佐藤聡美(ピピ美)。10月26日(水)以降の後半は中村悠一(ポプ子)、杉田智和(ピピ美)だ。アプリをダウンロードの上、自身のスマホなどで再生するタイプの音声ガイドなので、使用する場合はイヤホンの持参をお忘れなく。

※音声の再生にはHoloModels®のダウンロードが別途必要です。
※前半と後半の台本は同じです。

記憶に刻まれる名シーンや迷シーン

「竹書房」にちなんで背景は竹林。同社への愛が溢れている。

「竹書房」にちなんで背景は竹林。同社への愛が溢れている。

『ポプテピピック』は、竹書房の『まんがライフWIN』にて2014年に連載開始した4コマ漫画だ。展示の冒頭では、その選りすぐりのエピソードをコミックス表紙イラストらとともに振り返る。同時に、作者・大川ぶくぶが連載開始前に竹書房と交わしたやり取りメモの複製も展示されており、それを見ると「ポプテピピック」は現在「POP TEAM EPIC」と表記されているが、当初は「POP TEEN EPIC」の案もあったことがうかがえて面白い。

アニメ1期のハイライトを集めたコーナー。天井にぶら下がるミニパネルも可愛い。

アニメ1期のハイライトを集めたコーナー。天井にぶら下がるミニパネルも可愛い。

続いて、アニメ1期のコーナーへ。右手のピンクの壁には各話ごとの名場面がポートフォリオ風に用意されており、手にとってパラパラと眺めることができる。そして左手のブルーの壁にずらりと並んでいるのはアニメ1期に登場した声優陣の名前だ。本作は1話ごとに前半・後半で演者が変わるので、とにかく数が多い。

立ち入り禁止を示す三角コーンも、赤&青のポプテピピックカラーで。

立ち入り禁止を示す三角コーンも、赤&青のポプテピピックカラーで。

奥の大スクリーンではアニメ1期のオープニングなどが放映されている。画面の両サイドにクチャっ……と置かれているのは、2018年に幕張メッセで開催されたイベント用に制作されたという、空気で膨らますポプ子とピピ美の人形。なんでこの状態で展示? という疑問は、音声ガイドと併せて鑑賞することで解決するだろう。

クリエイターさんいらっしゃい!

クリエイター諸氏の紹介パネルはタイトルの「しょーがねーだろ赤ちゃんなんだから」にちなんでか、幼少期の写真入り。

クリエイター諸氏の紹介パネルはタイトルの「しょーがねーだろ赤ちゃんなんだから」にちなんでか、幼少期の写真入り。

ここからはアニメ1期に参加したクリエイター紹介のコーナーだ。期待を裏切らない密度の高さで、個人的にはここが本展のハイライトと言ってもよいと思う。ノリに乗って楽しそうな人、うっすら戸惑いながらの人、クリエイターたちの個性がはっきりと現れたコメントの数々にきっとニヤニヤしてしまうはずだ。

シリーズディレクターなどを務めた梅木葵のパネルを見ると、ポプ子とピピ美のキャラ表には驚くほど細かく「ココお気をつけ下さい」と作画班へのコメントが入っている。あの“非の打ちどころのないかわいさ”はこうやって生まれていたのか……と深く納得である。

白衣がぶら下がる「AC部」の紹介コーナー

白衣がぶら下がる「AC部」の紹介コーナー

さまざまな表現が入り乱れる本作の中でも、特に異彩を放つのがクリエイターユニット「AC部」だろう。キャラ造形・声ともに全く原型を留めていないポプ子とピピ美の活躍する「ボブネミミッミ」のコーナーのほか、白衣を着たクリエイターふたりが突然実写で登場し、スケッチブックを仕掛け絵本のように使って高速紙芝居を上演するパフォーマンスには、度肝を抜かれた視聴者も多かったのではないだろうか。

後ろのモニターで実演の様子も見られるので、未見の方はぜひ!

後ろのモニターで実演の様子も見られるので、未見の方はぜひ!

紙芝居「感動ドキュメンタリー ヘルシェイク矢野」の大量のスケッチブックの展示。残念ながらめくって見ることはできないけれど、いちファンとしてはぜひ、文化財としてこのまま良い状態で時を超えてほしい気もする。

右から、大張正己、ことぶきつかさ、ティボ・トレスカの紹介。ちなみにティボ・トレスカのコメントは作中どおり全文フランス語(日本語訳無し)である。

右から、大張正己、ことぶきつかさ、ティボ・トレスカの紹介。ちなみにティボ・トレスカのコメントは作中どおり全文フランス語(日本語訳無し)である。

「バリってる」「スシってる」というネットスラングで一部に知られる、アニメーターの大張正己(彼の得意とするロボットアニメのツヤっとした作画→バリってる)、ことぶきつかさ(ことぶきの手がけた90年代アニメ風のキャラクターデザイン→スシってる)の一角も。両氏から寄せられたお茶目なコメントはもちろん、90年代風のポプ子とピピ美のイラストがとても可愛いので必見だ。

フェルト人形のポプ子とピピ美、手前はクトゥルフ。いずれもよく踊る。

フェルト人形のポプ子とピピ美、手前はクトゥルフ。いずれもよく踊る。

そして『ポプテピピック』といえばフェルト人形も外せない。「UchuPeople(ウチューピーポー)」のふたりによる「POP TEAM DANCE」のコーナーは、画面からそのままふんわり抜け出てきたようなフェルト人形のポプ子&ピピ美が歌い踊る、それはそれは精緻なコマ撮りアニメーションである。生で見ると、ポプ子とピピ美の再現度の高さに改めてじんわり感動する。

ポプテピピック流、あの手この手のおもてなし

左手「どうしたんだぁ〜い⁈」のセリフに、蒼井翔太登場時のインパクトが蘇る。

左手「どうしたんだぁ〜い⁈」のセリフに、蒼井翔太登場時のインパクトが蘇る。

さらに奥へ進むと、数々の撮影スポットが用意されている。こちらは本編で実際に使用された蒼井翔太の衣装だ。右側はアニメ2期のオープニングに登場するもので、解説によれば目の部分が『ポプテピピック』らしい“あるもの”を象ったデザインになっているのだそう。ぜひ確かめてみてほしい。

マジックインキを使って描かれたという大々的な落書き。

マジックインキを使って描かれたという大々的な落書き。

2022年8月、渋谷マルイの取り壊しに際して開催された落書きし放題のイベントで、大川ぶくぶがダイナミックに落書きを施した壁も再現されている。なお切り抜いて保管されたその壁は、このあと2026年オープン予定の新しい渋谷マルイに設置されるという。

ミラーボールがまばゆいダンスフロア。

ミラーボールがまばゆいダンスフロア。

展示の最後には「CLUB PPTP」と銘打たれたダンスフロア(?)が。写真には写りきらなかったが、ポプ子とピピ美の大きなバルーン人形も、ここではプリッと膨らんだ姿で迎えてくれる。壁にさりげなく「EISAI HARAMASUKOI」とあるので、作中で「流行るかな?」とネタになっていたオリジナル舞踊「エイサイハラマスコイ踊り」をする場所……なのかもしれない。

壁一面をタペストリーで飾った、ミュージアムショップのコーナー。

壁一面をタペストリーで飾った、ミュージアムショップのコーナー。

会場を出たら、物販コーナーに立ち寄ってみるのを力強くオススメする。なぜなら、商品につけられたポップが面白い! ここでまで笑わせにくるとは、『ポプテピピック』ってこう見えて実はすごくサービス精神が旺盛なのかもしれない。

『ポプテピピック展-しょーがねーだろ赤ちゃんなんだから-』は2022年10月14日(金)から11月6日(日)まで、東京アニメセンターにて開催。奔放なネタの数々とそれを裏打ちする職人魂を、その目で目撃してみてほしい。


(C)大川ぶくぶ/竹書房、(C)大川ぶくぶ/竹書房・キングレコード
文・写真=小杉 美香

展覧会情報

ポプテピピック展-しょーがねーだろ赤ちゃんなんだから-
【開催日時】2022年10月14日(金)~2022年11月6日(日)
【開催時間】11:00~20:00(展示最終入場19:30)
※年中無休(年末年始 / 施設点検日 / 展示入替日などで休館の場合あり)
【開催場所】東京アニメセンター in DNP PLAZA SHIBUYA
(東京都渋谷区神南1丁目21-3 渋谷MODI 2F)
【主催】ポプテピピック展実行委員会
【協力】大川ぶくぶ、キングレコード、竹書房

販売情報>
券種・料金】
前売券 平日1,414円(税込) 
当日券 一律1,600円(税込)
小学生(前売り・当日共通) 797円(税込)
※未就学児童(赤ちゃん含む)は入場料無料
販売時の注意事項】
10月14日(金)および土日祝日は「全日日時指定制」となります(平日の日時指定はありません)。
日時指定の前売券は入場日前日の23:59までイープラスにて販売いたします。
当日券は前売り券の残数がある場合のみ会場にて販売いたします。
※本イベントは、場内の混雑緩和・新型コロナウイルス感染対策等のため、全日程販売枚数に上限を設けさせていただきます。
※未就学児童は無料、ただし保育園、幼稚園、学童などの団体の入場はできません。
※未就学児童のお客様1名につき、必ず保護者(18歳以上)1名同伴・ご購入のうえご入場ください。
※未就学児童、および無料対象の方へは特典のお渡しはございません。特典をご希望の方はのご購入をお願いいたします。
※入場は入れ替え制ではございません。ただし、会場内の混雑状況により、時間制限・入場制限などを行う場合がございます。
※イベント時期、時間、人数制限、内容などは事情により予告なく変更、延期、中止となる場合がございます。
※運営状況についてはイベント公式サイト及びイベント公式Twitterでご案内いたします。
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