浜中文一・室 龍太は「特に兄弟感がある」上口耕平・水田航生は「いろんな発見をもらう」とウォーリー木下が語る ミュージカル『ダブル・トラブル』公開稽古&取材会レポート
(左から)ウォーリー木下、室 龍太、浜中文一、上口耕平、水田航生 撮影:岡千里
出演者2名、演奏はピアノのみというシンプルな構成で、およそ10名の登場人物が次々に現れる、ミュージカルコメディ『ダブル・トラブル』。ミュージカル映画の曲を書くというチャンスを掴み、ブロードウェイからハリウッドへやってきた作曲家の兄・ジミーと作詞家の弟・ボビーが仕事や恋に奔走する抱腹絶倒のコメディ作品だ。2019年は原田優一・太田基裕とふぉ〜ゆ〜の福田悠太・辰巳雄大の2チーム、2022年の夏は浜中文一・相葉裕樹・日野真一郎(LE VELVETS)・横山賀三、林翔太・寺西拓人、原田優一・太田基裕の各チームによって上演し、いずれも大成功を収めてきた。
そして今シーズン、2022-23冬の『ダブル・トラブル』は新たなチームが3つ誕生する。12月12日(月)からスタートするTeamDは浜中文一と室 龍太。12月23日(金)からスタートするTeamEは、上口耕平と水田航生のコンビ。2023年2月2日(木)からのTeamFは、ふぉ〜ゆ〜の越岡裕貴と松崎祐介。また、翻訳・訳詞は今作で第14回小田島雄志・翻訳戯曲賞を受賞した高橋亜子。演出は初演から引き続きウォーリー木下が務める。
開幕に先駆け、TeamDの浜中文一・室 龍太、TeamEの上口耕平・水田航生、演出のウォーリー木下による公開稽古と取材会が行われた。
まず披露されたのは、TeamDによる「二人だけで」。兄弟がハリウッドに到着してすぐに歌う、夢と希望に溢れたナンバーだ。夏の公演では弟のボビーを演じていた浜中が、今回は兄のジミーとして初参加の室をリード。ちょっぴりキザな兄と明るく元気な弟といった雰囲気で、息の合ったダンスやタップを次々に見せる。TeamEは、兄弟が社長に聞かせる「ファーストクラスの愛」のパフォーマンスを行った。ピアノを弾きながらノリノリで自分達の曲を披露する姿は自信に満ち溢れているがどこかコミカルでユーモラス。両チーム1曲ずつの披露だったが、曲が始まる前や曲中の台詞、歌唱、ダンスからそれぞれのチームのカラーがしっかり見えており、どちらも全編通して観てみたいと思わされた。
(左から)浜中文一、室 龍太 撮影:岡千里
(左から)水田航生、上口耕平 撮影:岡千里
続いて行われた取材会はオンラインということもあり、浜中は「皆さんちゃんと聞こえてますかね? こっちからだと分からないから」と心配そうな表情に。「みんなどれくらい真剣な顔で見てるのかな。きっと全然笑ってないんでしょうね」という言葉に隣の室が「なんですかさっきから!」と突っ込むと、「大丈夫? 盛り上がってますか? よかった」と安心した様子になっていた。
夏の公演では弟を演じ、今回は兄役となることについて聞かれた浜中は「弟のセリフを覚えているくらいで何かが変わるわけではないです。兄の姿をずっと見ていましたから、それを自分でどう作っていくかを楽しんでいます」と余裕を見せる。続いて室が稽古の感想を聞かれると、浜中がなにやら耳打ちする。「稽古は終盤ですけど、出来のほうは序盤です(笑)」と言わされた室に、一同は大爆笑。
室は改めて「ミュージカル自体が初めてなので不安でしたが、徐々に不安もなくなりつつあります。ただ、最初は『楽しみます』ってウォーリーさんにお伝えしたんですけど、まだ楽しめてないです。ウォーリーさんがすごく嬉しそうに『あ、楽しんでくれるんだ』みたいなことを言っていた意味がわかりました。作品的にも個人的にもすごく大変。でも作品自体はすごく面白いので、それを届けられたら」と意気込む。それに対し、浜中は「映像資料や本番を観ていたようなので、それを引きずらず、室くんがやりたいことをやってほしいですね」と期待を寄せる。
また、約10名を演じ分ける本作。息ぴったりに見えたと言われると、浜中は「そうですか?」と不可解そうな顔に。「なんで否定するんですか!」という室に「真実をお伝えしないと」ととぼけ、TeamEや室は口々に「これ報道番組じゃないよ」「空気はそうだけど」と突っ込むなど、和気藹々としたやりとりが繰り広げられた。
(左から)浜中文一、室 龍太 撮影:岡千里
続くTeamEの二人も稽古の感想を尋ねられ、上口は「急ピッチで進んでいます。不思議と稽古場で色々生まれるというか。家で考えて持っていくんですけど、追いつかないくらいの分量があるので。今日はなにが出るだろうという感じで行くと航生が答えてくれたり、すごいパスが飛んできたり。稽古場ではその日のセッションを楽しむように心がけて毎日挑んでいます」と、本作ならではの雰囲気を楽しんでいることを明かす。水田は「まだ耕平くんと一緒にやって1週間程度ですが、すごく濃密な稽古ができています。稽古場で、打ち合わせなくバチッと揃ったり、意図が合ったりする瞬間が現時点でたくさんあります。すごくいい雰囲気の中、色々なものが稽古場で生み出されるのを感じています」と手応えを語る。
自分達でもアイデアを出しながら稽古を進めているのかを尋ねられると、上口が「ウォーリーさんはたまたま起きたこと、僕らが無意識にした反応をすごくキャッチしてくれて、『今はこう見えたからこの方向に行ってみよう』と膨らませてくれます。僕らも気付かなかったところをどんどん発見してくれるので、僕らも自由に発信していくような稽古になっていますね」と話し、水田も「以下同文です」と大きく頷いていた。
(左から)上口耕平、水田航生 撮影:岡千里
これまで多くのチームを手がけてきたウォーリーは、今回のチームの印象を尋ねられると「TeamDは多分いろんなことを知っているんだろうなという感じがします。僕には想像できないいろんな情報があってそれが兄弟っぽいなと思いながら見ています。今までやった組み合わせの中でも特に兄弟感がある。文ちゃん自身はたいしたことないと思ってるでしょうが、兄も弟もやるのはやっぱりすごいこと。無意識に全体をコントロールしてくれるので、その中で室くんがどれだけ遊べるかが、このチームで僕が楽しみにしていることです」と期待をのぞかせる。TeamEについては「自分達でも言っていましたが、最初の読み合わせの時から不思議と空気感が出来上がっていました。今まで5〜6チームくらいやってきたけど、『そういうアプローチがあるんだ』とか、いろんな発見をいただいています。それをフィードバックしながら作っています。今までにない軽快でおしゃれな『ダブル・トラブル』ができそうで、とても期待しています」と語った。
また、キャストによって印象が大きく変わる本作の魅力について尋ねられると、「2人芝居がなかなかないですし、これだけいろんなことが詰め込まれている作品も珍しい。落語のように、同じテキストでいろんなやり方ができる作品です。それぞれのキャストが自分の今までの役者人生で培ったものを持って挑んでくれるので毎回新鮮。今回挑んでくれている役者さんが何年後かにやっても全然違うものになるだろうし、もちろん違う役者さんがやってくれることでも違う作品になる。とても稀有な作品だと思います」と面白さを分析した。
ウォーリー木下 撮影:岡千里
最後に、公演を楽しみにしている方々へのメッセージを尋ねられ、室は「本当に楽しい作品なので、気軽に劇場に足を運んでいただきたいと思います」、上口は「すごくライブ感溢れる作品です。たくさんの発見があるし、毎回『その瞬間になにが生まれるか』を楽しめると思うので、ぜひ何度でも観ていただきたいと思っています」、水田は「年末年始で忙しい時期だと思いますが、これだけ笑えて、エンターテインメントの全てが詰め込まれている作品はなかなかないと思います。年の瀬と年の頭に、ぜひ観にきてください。長くやっていますので、友達や家族を誘って、SNSでもたくさん告知をして、たくさんの方に観ていただきたいです」とアピールした。
最後の浜中は、「どうも、5人組ロックバンド、ダブル・トラブリーです」と突然の方向転換。上口が「ウォーリーさんも入ってるんだ」というと「だから“トラブリー”にした。これだけで見たくなるでしょ?」と言い出し、ウォーリーから「(本番に出演するのは)2人だけだよ(笑)」と突っ込まれる。「……こんな感じの舞台です。みんなで楽しくやっています。みなさん劇場でお会いしましょう。では、さようなら」と真面目に(?)締めるも、水田から「報道番組の終わり方(笑)」と突っ込みが入り、最後まで和やかな雰囲気で取材会が終了した。
本作は2012年12月12日(月)、自由劇場にてTeamDからスタート。12月23日(金)〜2023年1月22日(日)まで引き続き自由劇場でTeamEの公演が行われる。続いて、新国立劇場 小劇場に会場を移し、1月21日(土)・26日(木)〜29日(日)まで再びTeamD、2月2日(木)〜19日(日)までTeamFが上演される。
取材・文=吉田沙奈
公演情報
【TeamD・E】発売中
【TeamF】2022年12月10日(土)