中村蓉ダンス公演『花の名前』俳優の永島敬三を新キャストに迎え待望の再演~原作は向田邦子の名作小説
中村蓉ダンス公演『花の名前』
中村蓉ダンス公演『花の名前』が、2023年1月14日(土)~15日(日)下北沢ハーフムーンホールにて行われる(全4回公演)。向⽥邦⼦の直木賞受賞作「花の名前」(「思い出トランプ」収載)を原作とし、2022年2⽉、神楽坂セッションハウスで⼀度だけ上演された話題作の再演だ。
中村蓉(撮影:前澤秀登)
中村蓉は早稲⽥⼤学在学時にコンテンポラリーダンスを始め、コンペティションほかで受賞を重ねた。国内外の演劇祭や芸術祭にて招待上演を果たし、近年では⼆期会ニューウェーブ・オペラ劇場『セルセ』の演出・振付、ドイツのマインフランケン劇場『ANATEVKA(屋根の上のヴァイオリン弾き)』 の振付を担当し反響をよぶなど、ダンスの魅力と可能性を広げている。
『花の名前』2022年2月公演(撮影:前澤秀登)
中村の多彩な活動のなかでも、異能が濃密に発揮されるのが単独公演。そこでは文学作品ことに小説をたびたび題材にしており、このたびの主催公演『花の名前』は『阿修羅のごとく』に続く向⽥邦⼦原作となる。ザ・昭和な空気感満載の原作を扱い「男⼥の役割が明確に区別されていた時代背景を持つ本作の中で、描かれる⼈の営み・男と⼥の関係を雄弁に語る ⾔葉の数々を、ダンス・歌・朗読を通して、お届けいたします」というのが謳い文句である。
『花の名前』2022年2月公演(撮影:前澤秀登)
今回新たに俳優の永島敬三(劇団柿喰う客)が出演する。ダンサーの⻑⾕川暢、オペラ歌⼿の和⽥美樹⼦は前回に続き登板。中村が異才出演者たちとともに挑む向田ワールドにご注目あれ。
■中村蓉(振付・構成・出演)コメント
向田邦子さんが綴るスリリングな人間関係が好きです。そこには魔法が出てくる訳でも、タイムスリップする訳でもなく、ただ台所があって食卓があって座布団があって電話機がある。本から顔を上げても、小説の中の風景とそう変わらない。なのに、まるで綱渡りでもしているかのような心地で、目の前の一行一行を固唾を飲んで読んでしまう…。向田邦子さんの小説からダンス作品を創作するのは2018年『阿修羅のごとく』以来、二回目です。
今回のテーマは「距離感」。小説の中で、電話機、じゃがいも、座布団が「スリリングな人間関係」を見つめているように、その「物言わぬ〈物の佇まい〉」に身体性を感じたことが、この度の創作の出発地点です。ただいま『花の名前』初演時の振付や演出を思い出したり新調したり、試行錯誤の稽古を行っていますが、「小説が語る物語」と「身体が奏でるストーリー」にズレが生じる、そのスリリングさに面白味を感じています。果たして身体は『花の名前』に戻って来られるのだろうか!?という距離感。
歌が上手過ぎるダンサー長谷川暢さんと、ダンスが上手過ぎるオペラ歌手和田美樹子さんに加え、今回新たに俳優の永島敬三さんにご出演いただきます。舞台で繰り広げられる物語の外、演じる登場人物の「これまでとこれから」までも想起させる永島さんの存在感や丁寧な所作に惹かれています。『花の名前』の中でも、向田邦子さんの言葉が放つ昭和の空気と今の私たちの身体を繋ぐ役割をになっていただけたらと考えている最中です。
ダンス、音楽、演劇、個性豊かな出演者が覗き込む向田邦子の世界『花の名前』をご一緒に味わっていただけましたら幸いです。
中村蓉『阿修羅のごとく』YoNakamura"Asura no gotoku"ダイジェスト
文=高橋森彦
公演情報
『花の名前』
〈振付・構成〉
〈原作〉
〈出演〉
〈会場〉
〈料金〉
ヨウ+ yoplusnnn@gmail.com
照明:久津美太地
音響:大園康司
記録映像:中瀬俊介
制作:目澤芙裕子 白井美優
宣伝美術:江野耕治