ピアニスト・長富彩インタビュー シューマン、クララ・シューマン、ブラームスの作品で組み立てたコンサートを開催

インタビュー
クラシック
2023.2.7
長富彩   (C)Victor Entertainment

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ピアニスト・長富彩が2023年2月11日(土)大阪 あいおいニッセイ同和損保ザ・フェニックスホールにて、『長富彩 ピアノ・リサイタル』を開催する。長富に公演について聞いた、インタビュー記事が届いたので紹介する。


長富彩が2月11日に大阪のザ・フェニックスホールで、シューマン、クララ・シューマン、ブラームスという関係性の強い3人の作品を並べたピアノ・リサイタルをひらく。
クララ・シューマンの「即興曲」、シューマン(クララ・シューマン編曲)の「献呈」、シューマンの「謝肉祭」、「幻想小曲集」から4曲、ブラームスの「4つの小品」op.119 という非常に凝ったプログラミングである。
 
ーーまず、プログラムの意図を教えてください。
 
ここ数年、シューマンを弾く機会が増えて、シューマンを愛するようになっていました。それでシューマンをプログラムの核にしようと思いました。でもいろんな人から「シューマンってどこがいいの?」って訊かれる機会が多くて、私自身も、シューマンに取り組む前は、シューマンの本当の魅力がわかりにくいところがありました。
そこで、シューマンとシューマンの妻クララとクララに深く関わっていたブラームスの3人の恋愛模様や師弟関係を、音楽で描いてみたいという気持ちになりました。そして、その関係性を音でたどることによって、3人違う音が出れば面白い、興味をもってもらえるだろうと思い、このプログラムを作りました。

長富彩   (C)Victor Entertainment

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ーークララ・シューマンの作品の魅力を教えていただけますか?
 
クララの「即興曲」を演奏しますが、この作品は、女性にしか書けないような、女性らしさ満載の曲で、一目惚れというか、一聴き惚れをしてしまいました。鼻歌のような、お花畑を散歩しながら口ずさむようなメロディなのです。こんな素敵な音楽を書く女性をシューマンが愛したということも分かってもらいたいと思いました。
 
そしてこんな素敵な女性を愛して、シューマンはクララに「献呈」という歌を捧げました。
これまで、「献呈」はリストの編曲したものばかり弾いていましたが(注:長富はかつてリスト音楽院に留学していた)、今回はこの曲を捧げられたクララが編曲したものを演奏します。クララの編曲は、シンプルですが、原曲に忠実で、シューマンに対する尊敬が表れています。自分に捧げられた「献呈」をこのように編曲するのも素敵だなと思います。

ーーシューマンの「謝肉祭」はいかがですか?
 
聴いていたときは、あのテンションが取っつきにくくて、私は少し苦手でした。シューマンでも「交響的練習曲」や「子供の情景」は好きでしたが、「謝肉祭」や「クライスレリアーナ」はどこが魅力かよくわからないところがありました。でも、真剣に取り組んだら、内面から溢れてくる音の情熱の魅力に取り憑かれました。「謝肉祭」は、お祭りなのでテクニックも華やかですが、内面的な切なさがあり、さらけ出さない情熱の虜になりました。シューマンの渦巻く秘めた情熱が伝わればいいなと思います。
 
ーー「幻想小曲集」からは、「夕べに」、「飛翔」、「夜に」、「夢のもつれ」の4曲を演奏されるのですね。
 
私のイメージでは、”ザ・シューマン”という感じで、心から好きな曲です。この作品の爆発させないもどかしい情熱こそがシューマンの魅力だと思っています。

長富彩   (C)Victor Entertainment

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ーー最後がブラームスの「4つの小品」ですね。
 
年齢的に一番年下のブラームスが最後です。シューマンとクララの軸があって、その二人を聴いてからブラームスを聴いていただきたいと思いました。
 
「4つの小品」の第1曲は、今回のコンサートで、一番注目していただきたい、一番伝えたい曲です。うまく届けたい、私にとってチャレンジの曲です。クララやシューマンの音楽からガラッと変わるので、その1音目から楽しみなのです。
 
「4つの小品」の第1曲はとてもロマンティックですが、ブラームスの作曲は骨組みがしっかりしているので、縦にハーモニーを構築していきます。
シューマンは、演奏家が感情を思い切り載せて演奏しに行かなければなりませんが、ブラームスは、ちょっと引いたところから、歌っている人とそれを伴奏している人を見ているイメージで、冷静かつ情熱的に演奏します。
短いフレーズを大きなフレーズに組み立てるのがブラームスの難しさです。
私は、苦手だった作曲家に取り組むことによって、その作曲家の虜になってしまうことがあります。ベートーヴェンがそうでした。
実は、今はシューマンよりもブラームスの魅力にとりつかれ始めています。ブラームスはこれからもっと弾いていきたいと思っています。

ーー今回は大阪でのリサイタルですが、今は関西を拠点とされているそうですね。
 
東京出身ですが、結婚して10年くらい兵庫県に住んでいます。
子供が4月で4歳になります。保育園に入れず、これまでたいへんでしたが、いろんな人の協力でやってきました。子育てで時間が取れない分、練習での集中が高まりました。
4月からは幼稚園なので、今より練習に時間が取れるようになりますね。

 
ーー最後に、今回のリサイタルについて、メッセージをお願いいたします。
 
私が今虜になっている3人の作曲家のストーリーで組み立てたコンサートです。3人の関係性を、映画を見るような気持ちで、音楽で楽しんでいただきたいですね。私と一緒に3人それぞれの音を体感してください。

長富彩   (C)Victor Entertainment

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公演情報

『長富彩 ピアノ・リサイタル』
■日程:2023年2月11日(土)14:00開演(13:30開場)
​■会場:大阪 あいおいニッセイ同和損保ザ・フェニックスホール
​■出演: 
ピアノ 長富彩
 
■ 演奏予定曲⽬ ■ 
C.シューマン / 即興曲
R.シューマン / 謝肉祭 op.9
ブラームス / 4つの小品 op.119
ほか
※曲目は変更になる可能性がございます。
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