yama、ライブ映像作品リリースを機に語る現在の想い「お互いにケアしあって、日常に戻って思い出したときに元気になれる」
自分は一緒にやっていく人たちに完璧な人を求めてはいなくて。その人なりの信念や美学があって、その上でなにか欠けてる部分や不器用さがある人の方が愛おしいというか、大切にしたい。
――去年のツアーはMCもされるようになって、そうやってボーカル表現以外のことをやった時に、やっぱりお客さんの反応って違うと思うんですよ。
違いますね。うん。
――だからそれは喋ることを決めてやるMCとか、盛り上げるためのMCとかじゃなくて。すごく曲が理解できるMCだなと思ったんですよね。
それは嬉しいです。そう、盛り上げるMCとかってむしろ本当に不得意な部類なので。多分、今後ももしかしたらあまりできないかもなとは思います。得意じゃないだろうなと思っているんですけど、でも最近はMCを意図して入れることも多くて。フェスとかのワンマンじゃない部分でも、意図してやっぱり入れたくてっていうのは、自分のいろいろな美学がある中で、“音楽だけで語れよ”っていう人ももちろんいると思うんですけど、でもやっぱり自分は他の人のライブとか見てても、自分がライブでMCする時でもそうなんですけど、やっぱり言葉を話した上で、次の曲に行った時のお客さんの反応が全然違うというか、解像度が高いと思うので。でもそれは変に説明しすぎるっていうことでもなくて、より伝わればいいなあっていう、ただそれだけの気持ちで最近は言葉を大事にしてますね。
――何も考えずに話してらっしゃったことがあれなんだとしたら、すごく素直なんだなと思って。
(笑)。そうですね。なんか普段からそういうことばっかり考えてて。よく日記とかも書くんですけど、その日記の内容とか、普段考えてることを本当に喋るっていう感じですね。だからこそ、そこにブレはないというか。まあ、月日が経っていたらもちろん考え変わってますけど、でもその一瞬一瞬で発してる言葉は嘘じゃないと思ってて。1回ライブでMCをし始めの時に、台本を書いてやってたらすごい怒られたので(苦笑)。“薄っぺらだよ”って言われて。それが伝わるぐらい、書いちゃうと薄っぺらになっちゃうんだなと思って、それからは台本書かずにその場で喋るように頑張ってますね。
――台本を書いてもなんかその時に見えたものとかで変わってきますよね。
そうですね。ほんとそうです。嘘をなるべく言わないようにしたいなと思ってますね。特にMCで。
――サポートメンバーの皆さんも嘘がないっていうか、演奏はもちろんうまいけど、そんなに皆さん器用じゃないというか、器用な人間性という感じがしなくて。
ああ~! それは正しいです、すごく。
――メンバーが楽しそうに見えるんです。
それを感じることもやっぱりあって。自分は一緒にやっていく人たち、それはメンバーもそうですけど、スタッフさんもそうで。むしろ完璧な人を求めてはいなくて。その人なりの信念だったり美学とかがあっていいと思っていて。その上で、なにか欠けてる部分とか不器用さがある人の方が愛おしいというか、大切にしたいなって思うんですね、自分は。自分自身がそうなので。なにか足りないところがたくさんあるんですけど、自分も。だけどそういう不器用な人たちが出す音って、演奏が上手い下手じゃなくて、心に響くか響かないっていうところに関わってくるような気がしてて。それはおっしゃる通りそうかもしれないですね。器用じゃないと思います(笑)。
――それはちょっとお客さんにも感じるというか。
うんうんうん。そうかも。なんとなくですけど、お客さんもきっと似てるんだろうなと思って。ファンの人とかと接してて、その時、そこにいる人にはたぶん自分と似たような人なんだろうなって、なんとなく感じることが多くて。で、自分は表現方法が音楽だったっていうだけで、きっと何かしらでちょっと不器用で、でもまっすぐな人たちがおそらく集まっていると思うので。そういう人たちが少しでも、生きづらさはあると思うんですけど、少しでも音楽を聴いてる時に安堵してくれたりとか、ほっとできたりしたらいいなあっていうのが、自分はずっとあって。特に最近ライブをもっと頑張ろうって思うようになってからより一層強く、この人たちのためにだし、自分もすごいエネルギーをもらえるので、感謝しながらやってますね。
――グッズも“感謝タオル”でしたし(笑)。
そうです(笑)。そうなんですよね。ちょっと渋いんで受け入れてもらえるか不安だったんですけど。案外皆さんね、楽しんでもらえて。
――ステージ上とお客さんと両方で感謝タオルを掲げているのがおもしろかったです。
(笑)。なんか面白いですよね。ちょっとチャーミングな皆さんが見れて良かったです。
――ところで、yamaさんの作品は提供曲と思えないぐらい、yamaさんの言葉のように思えるっていうのはすごい不思議です。
特に『Versus the night』は歌詞に関して割とお願いしたことが多くて。もう全ての作家さんに一緒にやる時にこういうコンセプトで、自分はこういう考えでっていうのを割と伝えるようにしてたので、その統一感が生まれたんだろうなとは思いますね。
――提供者にはご自身がアーティストで自分で歌う人もいっぱいいるし。だから歌詞も書かれていて、それが楽曲としていいものになっているように思えるんです。
なんか自分も曲を作り始めて、それを感じるようになって。もちろんいただいた曲は感情移入して表現させていただいているんですけど、だけどじゃあ自分の純粋に吐き出した言葉か?って言われたらそうではないので。そうなった時に、これからは全曲じゃないにしろ、ちゃんと自分が自分の意志で残す、残したい曲、残したい言葉をちゃんと書いていこうっていう思いで始めてっていう感じなので、続けていきたいなと思っています。
――「それでも僕は」の歌詞にある、音楽を聴くのもつらい時があるみたいなことって、やっぱり作家さんだったら出てこない言葉だと思うので。
そうなんですかね? どうなんだろう(笑)。
――ものを作る人だったらそういうこと自体はあると思うんですけど、そういう詞はなかなか書けないのかなと。
書かないですよね、確かにね。
――そういう意味でもこの曲がライブ本編のラストである意味を感じました。
もう自分も曲を書く時にライブで絶対に本編ラストにこの曲を歌いたいと思いながら書いたので。そういう意味では本当に自分が表現したいツアー、ライブになったなと思っています。やっぱり一昨年のツアーでは、どこか伝えきれなかった部分とか、本当はこういうことを言いたかった、歌いたかったっていうのが心残りだったので。それをより、なんだろうな、次また2回目にもし来てくれた人がいたら“こうだったんだよ”っていうのをちゃんと言いたいなと思って書き始めて、で、ちゃんと形になって最後に歌えてっていうことが実現できて良かった、そう思います。
――2021年の段階ではそんなにライブが楽しくなると思ってなかったんじゃないですか?
思ってないですね。思ってないです、全然(笑)。もう、なんか終わりかもなあぐらいに思ってましたね。誰も来てくれないんじゃないかな、とか、それぐらい落ち込んでましたね。
――でもやり始めたらこんなにテーマのあるアルバムができ、ツアーも納得できる終わり方ができたっていう。
そうですね。結局、自分の劣等感とか孤独感みたいなものって、おそらく解決はできないんです。多分どこまでいっても自分がどんなにこの先、これ以上たくさんの人に知ってもらえても、何かで功績を残せたとしても、多分それは拭えないと思っていて。でも、だからこそ、まあ一昨年は落ち込んでましたけど、無理矢理にでも能動的に動かないと変わっていかないんだなっていうのは本当に去年通して実感しましたね。最初はやっぱり心がついていかない、とりあえず頑張って体を動かすんだけどっていうので、なんとかリベンジをってことでやっていたのが、やっぱり能動的に動いていると心もどんどんついてきて、むしろ心が引っ張ってくれることもたくさんありましたし。だから大変な時こそちゃんと動こうっていうふうに学びましたね。
――自分の思想というか、ものの考え方そのものは変わらないまま進んでいくのは理想的ですね。それを変えちゃったら自分じゃなくなったりするわけですし。だから逆にむしろそのことを純度高く伝えていくことが楽しくなってきたのかな? と。
うんうん。そうだと思います。なんかすごく楽しいですね、最近はライブをやっていて。何かでつまずいて落ち込んでひとりで考えてっていうことを常にしちゃうんですけど、そういう時でもライブがあって、ライブ前まではすっごい憂鬱な時もあるんですけど、ライブが終わった瞬間に“あ、ちょっとしばらく頑張れそう”って思えることが最近多くて。それぐらい元気をもらえる時間というか、やっぱり目に見えないエネルギーがあるなあって感じながらやってて。だから本当の意味で、人生の意味になっちゃいましたね。
――やっぱりツアーはそういうものになっていくのかもしれないですね。
そうだと思います。お客さんにとってもそうであればいいなと思っていて。でも自分のこのツアーのために何かしてとか、ツアーのために全てを捧げてほしいとかではなくて、なんだろうな? ちょっと安らぎの場として立ち寄ってもらえたら嬉しいなあとは思ってますね。
――アンコールのMCでもおっしゃってましたけど、別にこのときだけが逃避できるみたいなことじゃなくて、ちょっとこの時間を日常にも持って帰れるっていうか。そうやってお互いに気持ちのなにかケアをできる場所なのかなって思います。
あー、そうだと思います。そう、お互いにケアしあって、また道別れて日常に戻って、なんかちょっと思い出したときに元気になれるというか。
――“自分はそういう風に感じた時があったんだ”って思うのが大事なんじゃないですかね。
そうですね。そう、そうですそうです。なんかこう、そのライブが最初から最後まですべてが大事っていうよりかは、一瞬心が動いたりとか、すごく脳裏に焼き付く瞬間とかがおそらくあると思うんですけど、その一瞬の積み重ねが多分、今後生きてく上で役に立ったりとか、引き出しから出したときた時に自分を肯定してくれたりとか、助けになる瞬間が来ると思っているので。その一瞬の積み重なりの一つになれたらいいなっていう感覚ですね。
――軸にあるものが変わらないまま、これからのyamaさんのライブがどうなっていくのかすごい楽しみです。
そうですね。もう自分は日々色々考えながら、ちょっとずつ考え方も変わってはいくと思うんですけど、“変わってるんだけど変わらない”みたいな、根本的なちょっと弱い部分はあるので、その弱さを大事に抱えながら、隠さないで抱えながら、今年も一個ずつ一個ずつ大事にライブができたらいいなと思っています。
取材・文=石角友香 ライブ写真撮影=Taku Fujii
リリース情報
2023年2月22日発売
Blu-ray盤:SRXL 388 ¥7,260(税抜価格 ¥6,600)
BD
DVD
<収録内容>
桃源郷
MoonWalker
ないの。
a.m.3:21
存在証明
マスカレイド
スモーキーヒロイン
Lost
光の夜
Oz.
ライカ
春を告げる
麻痺
くびったけ
それでも僕は
Hello/Hello
色彩
世界は美しいはずなんだ
the meaning of life TOUR 2022ドキュメンタリー映像
ライブ情報
4月1日(土)
※3会場のサーキット形式
・Zepp Sapporo (札幌市中央区南9条西4丁目4)
・SPiCE (札幌市中央区南8条西4丁目422 オリエンタルホテルB1F)
・SUSUKINO 810 (札幌市中央区南8条西4丁目422-51 8.4サウンドビル地下)
Slipstream presents KITASAN ROLLING 2023
4月 8日(土) 9日(日) アダストリアみとアリーナ
OSAKA METROPOLITAN ROCK FESTIVAL 2023
2023年5月13日(土)/14日(日)METROCK大阪特設会場(大阪府堺市・海とのふれあい広場)
TOKYO METROPOLITAN ROCK FESTIVAL 2023
5月20日(土)/21日(日)新木場・若洲公園(東京)
JAPAN JAM 2023
4月30日(日)・5月3日(水・祝)・4日(木・祝)・5日(金・祝)・6日(土) 千葉市蘇我スポーツ公園
※yama 5月5日出演