「見どころ盛りだくさんな戦闘シーンに注目」~林翔太が松本幸大と競演、舞台『DOLL』オフィシャル稽古場レポート公開
(左から)林翔太、松本幸大 (C)玉梨ネコ・TOブックス (C)『DOLL』製作委員会
2023年6月1日(木)渋谷区文化総合センター大和田 さくらホールにて開幕する、林翔太主演、舞台『DOLL』。この度、オフィシャル稽古場レポート・稽古場写真が届いたので紹介する。
稽古場レポート
開幕を間近に控えた稽古場から最新の稽古の様子をお届けします!!
『リタイヤした人形師のMMO機巧叙事詩』は、小説から始まり、コミカライズ、さらにニコニコ漫画で100万回再生を果たすなど、メディアの枠を超え幅広い支持を集める人気作。今回初の舞台化にあたり、脚本を『ウルトラマン』『プリキュア』シリーズをはじめ特撮やアニメ、ノベライズで活躍する小林雄次が、演出を劇団『エムキチビート』主宰の元吉庸泰が手がけ、小説を原作にまた新たな世界を作り出している。
冒頭繰り広げられたのは、人形師世界一を決めるワールドカップ。世界一に選ばれたのは、室町時代から続く人形師の16代目・佐倉いろは。天才人形師だった祖父の薫陶を受け、将来を嘱望される若き人形師だ。しかし、いろはの成功を快く思わない者もいた——。
現実世界とVR(仮想)世界。重傷を負ったいろはが謎の差出人から誘われ、飛び込んだ世界で待っていたものとは——。
林翔太(中央) (C)玉梨ネコ・TOブックス (C)『DOLL』製作委員会
主人公の佐倉いろはを演じるのは林翔太。何者かによる放火による火事で人形師として致命的なケガを負ってしまう。VRマシンで現実世界を離れVR世界に誘われ飛び込んだ先で、人形制作に改めて向き合い、ドールを完成させ、数々の冒険とバトルを経て、人形師としての自身の在り方を見つめ直すことになっていく。
林の舞台人としてのキャリアは長く、これまでミュージカルからストレートプレイまで数々の作品で主演を務めてきた。しかしここまで役者として直球の芝居を求められる演劇作品はそうはないだろう。現実世界ではケガに絶望する若き人形師に扮し、VR世界では仮の姿で改めて人形と対峙する、その演じ分けも必要だ。
林が演じるいろはは、繊細で心優しく、世界での戸惑いを精妙に表現。それでいて物語と共に徐々に逞しさを宿し、キャラクターに奥行きを与えている。
盟友・松本幸大との競演! 見どころ盛りだくさんな戦闘シーンに注目!!
松本幸大(左) (C)玉梨ネコ・TOブックス (C)『DOLL』製作委員会
松本幸大が演じるのは、VR世界でいろはと対決する人形師・ズィーク。林と松本はジャニーズ事務所に入所した頃から切磋琢磨してきた間柄。今回久しぶりの共演だというが、作中はいろはとズィークの闘いが繰り広げられ、そこでの熱演、演技バトルも見所の一つ。ズィークはなぜかいろはに執着し執拗に追う、いろはの敵役。松本自身「今まで演じたことのない役への挑戦」と言う通り、笑顔のイメージが強い素顔とは一転、ふてぶてしくも大胆に憎まれ役を体現。狂気の面持ちで自身のドールをぞんざいに扱い、同時に内に抱える闇と苦悩を滲ませている。
搗宮姫奈 (C)玉梨ネコ・TOブックス (C)『DOLL』製作委員会
西葉瑞希、山下朱梨 (C)玉梨ネコ・TOブックス (C)『DOLL』製作委員会
いろはがついに完成させたドール・ミコト役の西葉瑞希とズィークに使役するドール・9号役の搗宮姫奈が激しく戦闘するシーンにも注目!いろはとズィークとの戦いは彼女たちドールを使う戦いでもあり、彼女たちがアクションへの果敢な挑戦をしつつ、現実世界ではまた違った顔を披露している。VR世界に飛び込んだいろはを導くナビドール役の山下朱梨は、丁寧に場を展開しつつも時にズィークの暴走に対し、冷静に場を動かす役割を果たし、戦闘シーンを盛り上げている。
陰山泰(右) (C)玉梨ネコ・TOブックス (C)『DOLL』製作委員会
いろはが親近感をもっているドール工房の主人・レトロ役の陰山泰は、彼らの戦闘を見守りながらも「人形つくりとは何か」を問いかけ諭し、やがては癒しをもたらす重要な役割を担っており、ベテランらしい安心感と放つ台詞が心に響く。
岩田陽葵 (C)玉梨ネコ・TOブックス (C)『DOLL』製作委員会
可憐さと高飛車な少女・サラ役の岩田陽葵は、いろはやズィークを見守りながらも、自身もドールとともに戦闘に参戦。声優やアーティストとしても活躍する彼女の可憐さも目を惹くものがある。
そして、VR世界で最強プレイヤーのディアベル、現実世界では刑事を演じる藤田玲が重要な場面で登場し、芝居に厚みを加えている。
藤田玲 (C)玉梨ネコ・TOブックス (C)『DOLL』製作委員会
本作の演出も実に面白い。VR世界の物語というと、映像やCGといった最新技術を駆使した演出がまず思い浮かぶだろうが、いい意味で裏切るものになっている。本作の演出は技術の類に一切頼らず、ダンスとアクション、パントマイムなど、身体表現を最大限に駆使し人形たちの世界を描き、場面転換はアンサンブルが手持ちで額縁を操り、表現の自由度も高いステージングとなっている。額縁はときに現実世界とVR世界を行き交う扉に、ときに心象風景を切り取る窓となり、舞台の景色をさまざまに変え、観る者のイマジネーションをかき立てていく。
なぜズィークはいろはに執着し、憎むのか。戦いを経て、いろはとズィークはこの先何を選択していくのか。
そしていろはの背負う真の現実とは? 謎が全て解けたとき、彼らの想いが胸にグッと迫りくる。
舞台は6月1日〜5日まで渋谷区文化総合センター大和田 さくらホールにて、6月16日〜18日まで京都劇場にて上演。人形作りにかける人形師たちと、それにかける役者たち、彼らの行方を見届けてみたい。
撮影:立川賢一 取材・文:小野寺悦子
人形師の家系に育ち将来を期待されている佐倉いろは(林翔太)。
最高傑作の人形を完成させ、人形師の日本一を競う品評会で優勝し、高く評価された矢先、いろはのアトリエは何者かの放火を受け全焼。一命を取り留めたものの腕に大火傷を負い二度と人形が作れない腕になってしまう。そんなある日、謎の差出人から「Dギア」というVRマシンがいろはに届く。
『DOLL’S ORDER』というVR(仮想)世界で人形を戦わせ、最高の「DOLL」を目指すというものだった。
なぜか執拗にいろはを狙うズィーク(松本幸大)という男が現れ、戦いに躊躇いながらも、自身のドール・ミコト(西葉瑞希)とともに、ズィークの戦闘ドール・9号(搗宮姫奈)との戦いに次第にのめり込んでいく。
VR世界でいろはを導くナビドール(山下朱梨)、ドール工房の主であるレトロ(陰山泰)、カフェで出会った高飛車な少女・サラ(岩田陽葵)、最強のプレイヤーであるディアベル(藤田玲)、人々との出会いと戦い、VR世界と現実世界、リンクする2つの世界で反目し合ういろはとズィーク。
その先に待つのは闇か、希望か——。