凰稀かなめの粋でオシャレな夢空間 Kaname Ouki Xmas Dinner Show 2015『Gift For You』レポート
凰稀かなめ(写真提供/kファクトリー)
2015年2月、惜しまれつつ宝塚歌劇団を退団した、元宙組男役トップスター凰稀かなめが、2015年のクリスマスシーズンを飾って、退団後初となるクリスマスディナーショー、Kaname Ouki Xmas Dinner Show 2015『Gift For You』を、大阪、東京、名古屋で華やかに開催した。
様々な雑誌掲載や、写真集『IOLANA』の発売、また2016年に女優デビューが決まっているミュージカル『1789』でのマリー・アントワネット役のビジュアル披露など、折々に「今の凰稀かなめ」を披露してくれてはいたが、こうした公のライブステージの場に現れるのは、退団後開催されたコンサート『The Begining』以来のこと。当日までのお楽しみとされていた内容も含めて、大きな期待を集めての初ディナーショーステージとなったが、『The Begining』でも共演した振付師また演出家として活躍する平澤智らの強力な助演も得て、スタイリッシュで小粋なショーステージが繰り広げられていた。
凰稀かなめ(写真提供/kファクトリー)
まず冒頭、黒のブラウスとパンツにマント風上着という、舞台化粧以外は宝塚時代の男役を彷彿とさせる、マニッシュな姿で凰稀が登場。挨拶と共にディナーショーの為のオリジナル曲「Gift For You」を歌いはじめる。ここで曲からではなく、まず挨拶からはじまるショーステージというのも珍しいな、と思わせた刹那、歌いかけていたその曲を、ピエロを思わせる人物に、ギフトボックスの中に盗み取られてしまう!という展開でハッとさせる。意外性のある巧みな出だしだ。
凰稀かなめ(写真提供/kファクトリー)
この時、バックの映像パネルには白い木立の映像が出ているのだが、その裸のツリーに綺麗にクリスマスの飾り付けをすることができたら、曲を返してあげようと言われた凰稀が(と言っても、言葉を発するのは凰稀1人で、謎かけはバンドの音楽で表現されるのもシャレている)、「皆さんも手伝ってくださいね」つまり盛り上げてくださいね!と進めて、黒のマントを赤のジャケットにチェンジ。熱いラテンナンバーが次々に披露され、会場の空気が一気に温まると、裸のツリーには赤の飾りが輝くという趣向。
凰稀かなめ(写真提供/kファクトリー)
なるほどと、会場も展開を汲み取り、更に大きな手拍子がわく中、凰稀は白のファーがついたロングジャケット姿に。この季節ならではのクリスマスメドレーを歌いながら客席を練り歩く。気さくに観客とのハイタッチが交わされるのは、ディナーショーならでは。この流れでいくつかマジックも披露して大拍手が起こると、ツリーには白い雪が降ってくる。
凰稀かなめ(写真提供/kファクトリー)
それでも、まだまだ飾りが足りないね、とのことで、凰稀の衣装は青のベストに。おもむろにタップシューズを履くところもたっぷりと見せて、果敢にタップダンスに挑戦。宝塚時代から、さほどタップダンスに縁があった方ではなかったと思うが、さすがに魅せ方には長けているし、名手平澤の共演も手伝って、躍動感いっぱいに決まったところで、ツリーに青の飾りが加わる。
凰稀かなめ(写真提供/kファクトリー)
ここで一度引っ込み、続いての登場では、この流れの中で唯一のスカート姿となる金色のふわふわとしたチュールスカートで、オールディズなメドレーを。途中サングラスも使って、コケティッシュな魅力もふりまくと、ツリーには金の飾りが輝く。
凰稀かなめ(写真提供/kファクトリー)
そのまま舞台上の早替わりで、これぞ王道の宝塚スターを思わせる紫のスーツ姿に。宝塚時代の凰稀かなめの代表作が次々と歌われ、空気が最高潮に高まると、ツリーには紫のリボンがかかって見事完成!ピエロを思わせる人物から、ボックスに盗み取られた曲を返され、オリジナル曲「Gift For You」の披露となり、美しいクリスマスツリーが輝いた。
凰稀かなめ(写真提供/kファクトリー)
ここまでの展開がまるで水の流れのようにすべらかなだけでなく、なんともオシャレで感嘆させられる。ディナーショーのショーというものは、基本的には様々な歌を歌って、MCでつないでいくもの、という先入観があっただけに、この巧みな構成には舌を巻いた。実によく考えられているし、凰稀かなめの多面的な魅力をふんだんに盛り込んでもいて、贅沢このうえない。
しかも、こうして美しく終わったと見せておいて、退団後のファーストコンサート『The Begining』で凰稀が扮し、グッズも発売されるほどの人気キャラクターになっている、マッシュルームカットに瓶底メガネの「付き人さん」になって再登場する大笑い場面まで用意されていて、座長役だった平澤とデュエットダンスを踊りはじめるに至っては、まさに抱腹絶倒だった。
自らを「びっくり箱のような人間」という凰稀かなめらしい、サービス精神満点なショーステージで、驚いたり笑ったり、何より幸福な笑顔で包まれる観客を最も見たいと思っているのが、他ならぬ凰稀自身なのだろうなと強く思わせてくれた、実りある1時間半だった。
凰稀かなめ(写真提供/kファクトリー)
そして最後の最後、アンコールでは白のドレス姿も披露しつつ、ショーの大半は「カッコいい凰稀かなめ」だったというのも、あくまでも自然体のこの人らしい在り様で、男役で培ったものと、しなやかな女性とか見事に共存している、今の時期ならではのショーになっていたと思う。歌唱発声も高い音域にも挑戦していて、進化を感じさせていた。
何よりも次の機会にも是非足を運びたいと思わせる、趣向を凝らしたステージの中に、凰稀かなめの魅力が存分に発揮されていたことが嬉しく、新たなステップに向かう今後への期待が更に高まる時間となった。
凰稀かなめ(写真提供/kファクトリー)
〈公演データ〉
【取材・文/橘涼香 写真提供/kファクトリー】