ロイヤル・バレエの『マノン』は、ナタリア・オシポワ&リース・クラークに要注目~「英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン2023/24」

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2024.4.2
Reece Clarke & Natalia Osipova in Manon   ©2024 ROH.  Photographed by Andrej Uspenski

Reece Clarke & Natalia Osipova in Manon  ©2024 ROH. Photographed by Andrej Uspenski

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英国はロンドンのコヴェント・ガーデン、ロイヤル・オペラ・ハウス(ROH)で上演された、ロイヤル・オペラ、ロイヤル・バレエ団による世界最高峰のオペラとバレエを、特別映像を交えてスクリーンで体験できる人気シリーズ「英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン2023/24」。ライブでの観劇の魅力とは一味違う、映画館の大スクリーンと迫力ある音響で、日本にいながらにして最高峰のオペラとバレエの公演を堪能できる。そして、2024年4月5日(金)からは、ロイヤル・バレエの愛と官能の最高傑作『マノン』が、TOHOシネマズ 日本橋ほか全国で1週間限定公開される。そこで本作の見どころを、舞踊評論家・森菜穂美氏の解説とともに紹介する。

【動画】The Royal Ballet: Manon cinema trailer


今年で初演から50周年を迎える、ケネス・マクミラン振付の『マノン』は、『ロミオとジュリエット』『うたかたの恋―マイヤリング』と並び、マクミランの代表作と呼ばれるドラマティック・バレエの最高傑作だ。バレエのガラ公演でも、恋の高揚感に酔うロマンティックな「寝室のパ・ド・ドゥ」や、ルイジアナの沼地での死を前にした極限の愛を見せる壮絶な「沼地のパ・ド・ドゥ」が頻繁に踊られるなど、一度観たら忘れられない名場面の多い作品だ。

本上映では、ロイヤル・バレエのトップスターたちの贅沢な共演と共に、舞台に立っている一人一人のアンサンブルが、18世紀のパリ、そしてニューオーリーンズに生きる人々の息吹を細やかな演技で伝え、これぞ英国の本家ドラマティック・バレエという見ごたえのある舞台を堪能させてくれる。

マノンは贅沢な生活を選ぶのか、それとも貧しくても愛する人とともに生きるのか…一見華やかに見える本作であるが、マクミランによるシナリオについて森氏は「この貧困がはびこる世界観は、現代の格差社会や貧困と地続きのものを感じさせる」と解説、富と腐敗の対照性を明らかとし、人間心理の深層に迫ったストーリーを描き出している。

Reece Clarke in Manon  ©2024 ROH. Photographed by Andrej Uspenski

Reece Clarke in Manon ©2024 ROH. Photographed by Andrej Uspenski

今回マノンを演じるのは、世界的なスターバレリーナのナタリア・オシポワ。ボリショイ・バレエ時代から高い身体能力と技術で知られてきた彼女は、ロイヤル・バレエに移籍後には演技力を磨き、ロンドンでも熱狂的に支持されている。森氏はナタリアの魅力について、「流されるだけのヒロインではない、過酷な運命の中で生き抜こうとする強さを持つ新しいマノン像を目撃してほしい」と熱弁。強靭な肉体をすみずみまで使って物語を語る唯一無二の傑出した個性と表現力に注目してほしい。

Reece Clarke & Natalia Osipova in Manon  ©2024 ROH. Photographed by Andrej Uspenski

Reece Clarke & Natalia Osipova in Manon ©2024 ROH. Photographed by Andrej Uspenski

マノンを一途に愛するデ・グリュー役は、シネマの全幕作品では初主演のリース・クラーク。2022年にプリンシパルに昇進したばかりで、ロイヤル・バレエ一の長身、映画スターのような麗しい容姿の持ち主だ。オシポワとは、昨年夏のロイヤル・バレエ来日公演『ロミオとジュリエット』でも共演しており、見事なパートナーシップを築いている。森氏は「本作で重要なパ・ド・ドゥの素晴らしさと、息の合った演技は、観る者を深い感動に引きずり込むことだろう」と最大の見どころについても明かしている。

Reece Clarke in Manon  ©2024 ROH. Photographed by Andrej Uspenski

Reece Clarke in Manon ©2024 ROH. Photographed by Andrej Uspenski

マダムの館でのダンシング・ジェントルマンの踊りでは、アクリ瑠嘉を始め、カルヴィン・リチャードソン、ジョセフ・シセンズというプリンシパル有力候補の3人が華麗なステップを踏んでおり、次に誰が昇進するのかワクワクしながら観るのも本作の楽しみ方の一つだ。ベガ―チーフ(物乞いの頭)を演じる中尾太亮の鮮やかな跳躍や回転技、あでやかな高級娼婦を演じる崔由姫、前田紗江ら日本出身のダンサーたちの活躍も見逃せない。

演劇性に優れたバレエの世界最高峰、ロイヤル・バレエが本気を見せた最高傑作『マノン』、ぜひ大スクリーンで味わって、沼地にはまったまま帰れなくなるようなディープな舞台体験をしてみてほしい。

Reece Clarke & Natalia Osipova in Manon  ©2024 ROH. Photographed by Andrej Uspenski

Reece Clarke & Natalia Osipova in Manon ©2024 ROH. Photographed by Andrej Uspenski


※森菜穂美氏(舞踊評論家)による『マノン』解説全文は下記URLにて閲覧可能です。

■森菜穂美氏(舞踊評論家)による『マノン』解説全文はコチラ

上映情報

英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン2023/24
ロイヤル・バレエ『マノン』
 
2024/4/5(金)~4/11(木) TOHOシネマズ 日本橋 ほか1週間限定公開
 
【公開期間】2024年4月5日(金)~4月11日(木)
【公開劇場】
北海道 札幌シネマフロンティア
宮城 フォーラム仙台
東京 TOHOシネマズ日本橋
東京 イオンシネマ シアタス調布
千葉 TOHOシネマズ流山おおたかの森
神奈川 TOHOシネマズららぽーと横浜
愛知 ミッドランドシネマ
京都 イオンシネマ京都桂川
大阪 大阪ステーションシティシネマ
兵庫 TOHOシネマズ西宮OS
福岡 中洲大洋映画劇場
【上映時間】3時間11分
 

<ロイヤル・バレエ『マノン』作品情報>
 
【振付】ケネス・マクミラン
【音楽】ジュール・マスネ
【編曲】マーティン・イェーツ
(選曲:レイトン・ルーカス、協力 ヒルダ・ゴーント)
【美術】ニコラス・ジョージアディス
【照明デザイン】ジャコポ・パンターニ
【ステージング】ラウラ・モレ―ラ
【リハーサル監督】クリストファー・サウンダース
【レペティトゥール】ディアドラ・チャップマン、ヘレン・クローフォード
【プリンシパル指導】アレクサンドル・アグジャノフ、リアン・ベンジャミン、アレッサンドラ・フェリ、エドワード・ワトソン、ゼナイダ・ヤノウスキー
【コンサートマスター】セルゲィ・レヴィティン
【指揮】クン・ケッセルズ
【演奏】ロイヤル・オペラ・ハウス管弦楽団
 
【キャスト】
マノン:ナタリア・オシポワ
デ・グリュー:リース・クラーク
レスコー:アレクサンダー・キャンベル
ムッシュG.M.:ギャリー・エイヴィス
レスコーの愛人:マヤラ・マグリ
マダム:エリザベス・マクゴリアン
看守:ルーカス・ビヨルンボー・ブレンツロド
ベガー・チーフ(物乞いの頭):中尾太亮
高級娼婦:崔由姫、メリッサ・ハミルトン、前田紗江、アメリア・タウンゼント
三人の紳士:アクリ瑠嘉、カルヴィン・リチャードソン、ジョセフ・シセンズ
娼館の客:ハリー・チャーチス、デヴィッド・ドネリー、ジャコモ・ロヴェロ、クリストファー・サウンダース、トーマス・ホワイトヘッド
老紳士:フィリップ・モーズリー
娼婦、宿屋、洗濯女、女優、物乞い、街の人々、ねずみ捕り、召使、護衛、下男:ロイヤル・バレエのアーティスト
 

【STORY】
18世紀パリ。美しく衝動的な少女マノンは、若くハンサムだが貧しい学生デ・グリューと出会って恋に落ちる。だが、兄レスコーの手引きにより富豪ムッシュG.M.から愛人にならないかと誘われたマノンは、デ・グリューとの愛と、G.M.との豪奢な生活の間で引き裂かれる。
裏社交界のマダムの邸宅での宴にて華やかに着飾り、その美しさで男たちを魅了するマノン。ここを出て行こうというデ・グリューに彼女は、もっとお金を手に入れてからといかさま賭博をそそのかす。だがいかさまがG.M.に見破られた上、レスコーは殺され、マノンは逮捕される。
アメリカのニューオーリーンズに追放されたマノン。デ・グリューは夫と身分を偽り同行するが、マノンは好色な看守に目を付けられる。マノンを慰み者にした看守を殺した二人はルイジアナの沼地へと逃げ込むが、デ・グリューの腕の中でマノンは息絶える。

【公式サイト】
http://tohotowa.co.jp/roh/
【配給】東宝東和
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