ピアニスト石井琢磨、新アルバム『Diversity』に込めたクラシック音楽の“多様性”への挑戦~秋ツアー&今後の目標まで深堀り!

インタビュー
クラシック
2024.6.22
石井琢磨

石井琢磨

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YouTubeチャンネル「TAKU-音 TV たくおん」の登録者数が27万人を突破、2024年2月にはクラシック音楽の殿堂・サントリーホールでのリサイタルを大成功に収めるなど飛ぶ鳥を落とす勢いで活動するピアニスト・石井琢磨が9月4日(水)に3枚目のアルバム『Diversity』を発表する。9月7日(土)からは愛知、東京、大阪など全11カ所をめぐるピアノリサイタルツアー「Diversity」が幕開け。自身の誕生日である11月17日(日)に埼玉でファイナル公演を迎える。あふれる才能を注いだアルバムについて、その作品を満喫できるコンサートについて、さらにサプライズが満載の今後の予定について石井に聞いた。

世界を旅しているようなワクワク感を コンサートを想定し構成された『Diversity

石井琢磨『Diversity』通常盤

石井琢磨『Diversity』通常盤

――3枚目のアルバム『Diversity』が9月4日(水)にリリースされます。

『Diversity』と名付けたのは、「クラシック音楽の多様性に挑戦したい」と思ったからです。前作『Szene(スツェーネ)』は、映画やドラマ、演劇、バレエなどの作品の中で、印象的なシーンを演出するクラシック音楽をセレクトしましたが、今作は、コンサートを想定し、世界を旅しているようなワクワク感を出したいという思いで構想しました。

曲のバラエティという意味合いでの多様性として、前作に引き続きござさん、菊池亮太さんに編曲をお願いした楽曲があります。お二人は、演奏がうまいことはもちろんなのですが、YouTubeでも活躍するピアニストとして、1音で人を魅了できる才能があるとリスペクトしています。

それから、同じく菊池亮太さん、そして髙木竜馬くんとの二台ピアノもスペシャルコンテンツとして収録しています。二人は、僕の人生にとってかけがえのない友人であり、尊敬するピアニストです。今回、どうしても大好きな二人を入れたくてお願いしました。僕らの友情を音に込めているので、ぜひそれも楽しんでいただきたいです。

そして、「固定概念にとらわれない」という意味で、僕自身も編曲に挑戦しています。ピアニストは、リリースする作品の中で自らが編曲をすることは稀なのですが、誰でも編曲に挑戦して良いんじゃないかという思いで、「花のワルツ」を単独で、そして「ジュピター」を横内日菜子さんと一緒に編曲しています。

クラシック音楽の扉を開ける番人に エンターテイナーであり続けたい

――初編曲という挑戦に、「花のワルツ」と「ジュピター」を選んだ理由についてお話し頂けますか。

「花のワルツ」は、前作で同じチャイコフスキー作の「眠れる森の美女」を入れた繋がりから選びました。ポイントは、オーケストラ曲をピアノソロに編曲していること。僕は常々、「クラシックの扉を開ける番人になりたい」と思っているのですが、今回、僕がこの曲を演奏することでオーケストラ曲にも親しんでいただき、それがオーケストラのコンサートに足を運ぶきっかけになれば、という気持ちで選びました。僕自身もそのきらいがあるのですが、オーケストラの公演は、ピアノソロ公演よりハードルが高いと思われている方も多いのではないでしょうか。でも、ソロもオーケストラも、そこにしかない喜びがあると思うので、それを体感してほしいなと思っています。

「ジュピター」は、原曲にリスペクトを持ちつつ、有名なメロディー部分の感動を最大値で感じてほしいと編曲を考えました。J-POPに例えるなら、ノレるサビの部分が繰り返し登場するようなイメージです。もう1回出てきたら良いのにな、と感じていた感動的な部分、その感動を最大化するために、エベレストのように高い高い山を作っています。

――遊び心、そして音楽へのリスペクトを感じる構成ですね。ござさん、菊池さんに編曲依頼をされた楽曲についても、お話し頂けますか。

ござさんには、特定の一曲の編曲ではなく、シュトラウス一家が生み出した曲をメドレーにした「ウィーン・パラフレーズ」という楽曲を製作して頂きました。6分ほどの曲の中には、ござさんならではのフレーズも随所に散りばめられており、ござさんテイストも感じて頂けると思います。基本的にはござさんの自由な発想で展開して頂いたのですが、アルバム自体がコンサートを想像しながら作成したものなので、全体の繋がりを考えて、この曲の最後は「ラデツキー行進曲」の魅力的な部分で締めくくってほしいとお願いしました。

――コンサートのための編曲とは贅沢ですね。菊池さんが編曲された「チム・チム・チェリー」についても教えてください。

「チム・チム・チェリー」は僕がドイツのストリートピアノで演奏したことがある、なじみ深い曲です。今回のアルバムには「ラ・カンパネラ」を収録しているのですが、この曲との繋がりを考えて、菊池さんには「ラ・カンパネラ」風の「チム・チム・チェリー」をお願いしました。

コンサートのプログラムは、曲同士の互換性も考えているんです。アルバムの中では、坂本龍一さんの「インテルメッツオ」とブラームスの「インテルメッツオ」を並べたのも、比較をしながら弾くことを提示したいという思いがありました。実は細かいギミックだらけなので、これをどうコンサートで体現していくのか考えている最中です。ぜひアルバムだけではなくコンサートも楽しみにして頂きたいです。

――座組まで考えるピアニストは、珍しいと思うのですが、その発想力はどこから沸いてくるのでしょうか。

YouTubeを見てくださっている人たちの多くは、演奏を聴きたいという思いと同時に「何が起こるのか?」を期待してくださっていると思うんです。なので、どんなときもワクワクを提供したい、エンターテイナーでありたいという思いがあります。気づけばプロデューサー視点で見ていることも多いので、何か思いついたら、気持ちに歯止めをかけずに、頭の中のアイデアを体現していきたいです。

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