日本初、貴重な大回顧展『ボッティチェリ展』開催
ボッティチェリ展
2016年1月16日(土) ~ 4月3日(日)の期間、東京都美術館(東京・上野公園)にてイタリア・ルネサンス期を代表する巨匠、サンドロ・ボッティチェリ(1445-1510)の日本初の本格的な回顧展が開催される。
ボッティチェリの作品は多くが板に描かれており極めて繊細なため、これまでまとまった数の来日は叶わなかったが、今回、日伊国交樹立150周年を記念する企画として、イタリア政府の全面的なサポートにより、フィレンツェを中心に世界各地からボッティチェリの貴重な作品20点以上が東京に集う。
また、ボッティチェリの師であったフィリッポ・リッピおよびその息子でボッティチェリの弟子となったフィリッピーノ・リッピの作品も展示されている。本展覧会は4章で構成されており、イタリア・ルネサンスの中心的なこの3人の画家の作品を通じ、イタリア・ルネサンス美術の全盛期を回顧するまたとない機会となっている。
ボッティチェリの時代のフィレンツェ
まず、会場に入り、目に映るのが「ラーマ家の東方三博士の礼拝」。ボッティチェリがラーマ家より依頼されて描いた作品でボッティチェリの手による「東方三博士の礼拝」図としては古来もっとも名高いものとなっている。右下の黄色いガウンをまとった男性がボッティチェリの自画像となっている。自信に満ちたその表情がとても印象深い。
ラーマ家の東方三博士の礼拝 |サンドロ・ボッティチェリ
偉大な収集家にしてフィレンツェ内外の芸術制度を組織する主宰者であるロレンツォ・イル・マニーフィコ(豪華王)。ボッティチェリはロレンツォというカリスマ的存在に代表される時代の代弁者でもあった。第1章ではそんな時代の作品たちが展示されている。
聖母子 |アンドレア・デル・ヴェロッキオ(本名アンドレア・ディ・ミケーレ・ディ・フランチェスコ・チオーニ)と工房
竜と戦う大天使ミカエル |アントニオ・デル・ポッライオーロ(本名アントニオ・ディ・ヤコポ・ダントニオ・ベンチ)
フィリッポ・リッピ、ボッティチェリの師
ボッティチェリの師であるフィリッポ・リッピの作品が展示されている第2章。ドナテッロの彫刻やサンタ・マリア・デル・カルミネ修道院のマザッチョの壁画から大きな影響を受けたとされている。ボッティチェリとフィリッポ・リッピ、子弟の作品を見比べて楽しむことができる。
聖母子 |フィリッポ・リッピ
セルキオ川の流れを変える聖フレディアヌス、聖母の死の告知、聖アウグスティヌスの幻視(《バルバドーリ祭壇画》の裾絵) |フィリッポ・リッピ
サンドロ・ボッティチェリ、人そして芸術家
ボッティチェリの作品がメインで多く展示されているのが、第3章。ボッティチェリの本名はアレッサンドロ・ディ・マリアーノ・フィリペーピ。大食い大酒飲みの兄が「ボッティチェロ(小さな樽)」と呼ばれていたことから弟である彼は「ボッティチェリ」と呼ばれた。陽気な人物であり、ロレンツォ周辺の人文主義者から提供される、古典あるいは神話的主題を絵画に翻訳するのに必要な教養にも恵まれていた。
バラ園の聖母 |サンドロ・ボッティチェリ(本名アレッサンドロ・ディ・マリアーノ・フィリペーピ)
書斎の聖アウグスティヌス(聖アウグスティヌスに訪れた幻視) |サンドロ・ボッティチェリ
パリスの審判 |サンドロ・ボッティチェリと工房
美しきシモネッタの肖像 |サンドロ・ボッティチェリ
親密な聖母子の情愛が見て取れる作品。聖母の表情からはこれからの我が子に運命づけられた来るべき受難を予知しているようだ。聖母のマントやヴェール、髪の毛など緻密に仕上げられており、ぜひ近くまで寄って見てほしい。
聖母子(書物の聖母) |サンドロ・ボッティチェリ
フィリッピーノ・リッピ、ボッティチェリの弟子からライバルへ
弟子であり、ライバルでもあったフィリッピーノ・リッピ。美術愛好家たちに賞賛し続けられているボッティチェリだが、存命中の評価は元弟子であったフィリッピーノ・リッピによって脅かされることもあった。フィリッピーノ・リッピの作品も多く展示されている。
幼児キリストを礼拝する聖母 |フィリッピーノ・リッピ
聖母子と聖ステファヌス、洗礼者聖ヨハネ(「引見の間」のための祭壇画) |フィリッピーノ・リッピ
同時代の現存する円形画のなかで最大規模の作品。大きな作品であるが、細部まで緻密に描かれており、色彩も豊かで大変見ごたえのある作品となっている。
聖母子、洗礼者聖ヨハネと天使たち(コルシーニ家の円形画) |フィリッピーノ・リッピ
最後には撮影スポットも。展覧会の記念にボッティチェリと記念写真を撮影してみては。
撮影スポット
時代の流れを感じながら、「線の詩人」とも言われる画家の魅力が凝集した名画をせひ堪能してほしい。