映秀。 歌う喜びの申し子であり続け観客の心を幸福の渦へと巻き込んだ、CLUB QUATTRO TOURファイナル渋谷公演をレポート

レポート
音楽
2025.3.5
映秀。

映秀。

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映秀。CLUB QUATTRO TOUR "音の雨、言葉は傘、今から君と会う。"
2025.3.1 渋谷 CLUB QUATTRO

3rdアルバム『音の雨、言葉は傘、今から君と会う。』を引っ提げて2月21日(金)愛知・名古屋 CLUB QUATTRO、2月22日(土)大阪・梅田 CLUB QUATTROを巡ったツアー『映秀。CLUB QUATTRO TOUR "音の雨、言葉は傘、今から君と会う。"』が、3月1日(土)東京・渋谷 CLUB QUATTROでファイナルを迎えた。この公演の模様をレポートする。

4人のバンドメンバーに続いてステージに登場した映秀。がアコースティックギターを手にして「まほうのことば」がスタート。ギターを奏でながら響かせる歌声が瑞々しく会場の隅々にまで広がった。そして「涙のキセキ」に突入すると、一気に躍動感を帯びたバンドサウンド。「ほどほどにぎゅっとして」と「Boys & Girls」を歌いながら手拍子を浴びた映秀。の笑顔が無邪気で明るい。身も心も開放できる穏やかな空間が、序盤の4曲の時点で完璧に作り上げられていた。

「本日がツアーファイナルです。今回のアルバムは言葉を大切にして作りました。1音1音に込めた言葉、想い、考えだったり、何か一つでもあなたの中に残って持って帰ってくれたら嬉しいのと同時に、それがあなたの生活の傘になりますようにという想いを込めて演奏します」――作品とライブに込めている想いを語った映秀。は、「もしかしたらバレちゃってるかもしれないんだけど……音楽がめっちゃ大好きなんですよ(笑)」と言いつつ、音楽への愛情も独特な表現で観客に伝えた。「僕、みりん焼きも音楽も好きなんだけど、音楽の方がすごいところがあるんです。みりん焼きは“みんなで食べよう”ってなった時に食べられる量がちょっとになっちゃうけど、音楽ってここにいる全員で食べても全員がお腹を満たして帰れるんですよね」――会場に集まった全員のお腹を満たすことを力強く宣言した彼は、多彩な曲をさらに届けてくれた。「ハ茶メ茶オ茶メ」「東京散歩」「僕等の秘密遊園地」「喝采」……豊かな表情を浮かべる歌声、粋なビートの乗りこなしによって煌めき続けた各曲。歌っている彼自身はもちろん、演奏を繰り広げるメンバー、全力で受け止める観客も本当に楽しそう。映秀。は「一緒に音楽をするぞ!」とこのライブの中で何度も呼びかけていたが、会場にいた誰も彼もが音楽をとことん楽しみ尽くす達人だった。

密やかなピアノソロを経てスタートした「雨時雨」。ピアノ伴奏で歌った声から滲んだ悲しみは、いつしか熱情、震える心も映し出し始めた。続いて披露された「縁」は、エレキギターのみの伴奏で披露。無数の感情を受け止めた観客は、胸の内で豊かな物語を躍動させていたはずだ。そしてバンド演奏と歌の絶妙なコンビネーションも、このライブの圧倒的な楽しさだった。「超素敵なメンバーとやってるんで紹介させてください!」と言い、杉村謙心(Gt)、山本修也(Ba)、山近拓音(Dr)、榎本響(Key)を紹介してからスタートさせた「My Friend」は、バンドサウンドに包まれながら伸び伸びと歌っていた映秀。が、世界一幸せな男に見えた。続いて披露された「砂時計」「黄色の信号」「残響」も楽器の音色、フレーズの数々が歌と融け合いながら美しい色を浮かべていた。このようなステージを一緒に作れるメンバーとの出会いは、今の映秀。が手にしている大きな武器だと思う。

「最近、“幸せってなんだろう?”ってずっと考えて、やっと一つ見えたものがあって。それは“ありたい自分でいる”ということです」と語り始めた中盤でのMC。「いろんな人に優しくありたい」「誰に対しても優しくありたい」「他人の気持ちを尊重できる人になりたい」「自分にも他人にも嘘をつかない人になりたい」「一途な人でありたい」「やりたいことを一生懸命やる人でありたい」……ありたい自分像を列挙してから「全部挙げてくとわがままなんだよ。バレてる?(笑)」と笑った彼は、さらに言葉を続けた。「他人に迷惑をかけたり嫌なことをするんじゃなくて、他人のことを大切にできる上でわがままであれるのが自分の幸せ。幸せは未来にあるわけでも過去にあるわけでもなくて……。今、この瞬間に“ありたい自分であろう”と決意をすれば、そこに幸せが訪れると気づきました」という言葉に表れていた想いは、届ける音楽で次々体現されていった。「幸せの果てに」「反論」「全部しようぜ」「星の国から」……歌う喜びの申し子であり続けた彼は衝動にとことん忠実、紛れもなく“わがままな人物”であったが、観客の心を幸福の渦へと巻き込んでいた。

「楽しみたい時は一緒に楽しむし、苦しい時は抱き締めるし、一歩踏み出したい時は背中叩くし、そういう音楽、アーティスト、ライブをこれからもやっていきたいと思ってます。これからも応援をよろしくお願いします!」という言葉が添えられて、本編を締めくくった「よるおきてあさねむる」。ステージからフロアに向かって広がる温かなサウンドが、観客の掲げた掌を穏やかに揺らがせていた。この曲を届けた後、一旦ステージを後にした映秀。とバンドメンバー。しかしアンコールを求める手拍子に応えて彼らはすぐに戻ってきた。お揃いのツアーグッズを身につけている姿が微笑ましい。そして「アルバムは言葉を大切にして作ったって言ったんですけど、中でも自分にとって新しい取り組みをした曲があります。小説家のカツセマサヒコさんと一緒に作りました。最後に演奏して帰ろうと思います」という言葉の後、2曲が届けられた。瑞々しいサウンドが徐々に熱を帯びていく展開が素敵だった「瞳に吸い込まれて」。歌声が激しく震えた末に儚い余韻を残して幕切れた「youme」……曲に刻まれた世界と鮮やかにシンクロしていた歌は、演劇の一幕のようでもあった。歌い終えてからバンドメンバーと肩を組み、お辞儀をした映秀。の穏やかな笑顔が思い出される。歌っている時は“鬼気迫る”という表現がぴったりな時も度々ある彼なのだが、それ以外の場面では天真爛漫この上ない。そんな彼の魅力も再確認できるエンディングだった。

3rdアルバム『音の雨、言葉は傘、今から君と会う。』を引っ提げたツアーはファイナルを迎えたが、次のワンマンライブが8月2日(土)に東京で開催される旨が発表されている。ライブを観たことがある人はおそらく同意してくれると思うが、音に身を任せる喜びを目一杯に届けてくれるのが映秀。の歌だ。“一緒に音楽をする”という言葉の意味は、ライブがスタートしてから数分で本当によくわかる。良い歌、良い声、良い音楽を求めているあらゆる人に彼の音楽をぜひ聴いてほしい。

取材・文=田中大 撮影=Kazma Kobayashi

セットリスト

映秀。CLUB QUATTRO TOUR "音の雨、言葉は傘、今から君と会う。"
2025.3.1 渋谷 CLUB QUATTRO
01. まほうのことば
02. 涙のキセキ
03. ほどほどにぎゅっとして
04. Boys&Girls
05. ハ茶メ茶オ茶メ
06. 東京散歩
07. 僕等の秘密遊園地
08. 喝采
09. 雨時雨
10. 縁
11. My Friend
12. 砂時計
13. 黄色の信号
14. 残響
15. 幸せの果てに
16. 反論
17. 全部しようぜ
18. 星の国から
19. よるおきてあさねむる
<Encore>
20. 瞳に吸い込まれて
21. youme

リリース情報

アルバム『音の雨、言葉は傘、今から君と会う。』
2025年1月22日発売
UMCK-1789 ¥3,300
<収録曲>
01. まほうのことば
02. 涙のキセキ
03. 瞳に吸い込まれて
04. ほどほどにぎゅっとして
05. ⻩色の信号
06. Boys&Girls
07. 幸せの果てに
08. 星の国から
09. 全部しようぜ
10. My Friend
11. 縁
12. よるおきてあさねむる
13. youme

■特設サイト
https://sp.universal-music.co.jp/eisyu/otonoame/

ライブ情報

8月2日(土)東京
※会場、詳細等は後日発表

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