「中立でありながら冷静」荒牧慶彦が語る“鬼太郎”という存在~舞台『ゲゲゲの鬼太郎 2025』インタビュー

2025.7.16
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荒牧慶彦

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水木しげる没後10年にあたる節目の今年、荒牧慶彦主演の舞台『ゲゲゲの鬼太郎』が完全新作舞台『ゲゲゲの鬼太郎 2025』として帰ってくる。1965年の連載開始以降、半世紀以上にわたり愛されてきた『ゲゲゲの鬼太郎』。2023年11月に公開された映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』も大ヒットし、“令和の鬼太郎ブーム”も到来した。

2025年8月に上演される本作では、前作に引き続き荒牧慶彦がゲゲゲの鬼太郎役を演じる。上坂すみれ、浅野ゆう子が前作から引き続き出演するほか、新キャストとして大塚明夫、美弥るりか、植田圭輔、廣野凌大、長友光弘、砂川脩弥らが名を連ねる。

前作はコロナ禍での上演となり、一部公演が中止となってしまった。座長の荒牧にとっても悔しさが残る公演になっただけに、新作公演へ懸ける想いは並々ならぬものがあるに違いない。その胸中を知るべく、再び鬼太郎に挑む荒牧にインタビューを実施。鬼太郎への想いや新作への期待を語ってもらった。

荒牧慶彦

荒牧慶彦が語る鬼太郎、そして妖怪の魅力とは?

ーー再びのゲゲゲの鬼太郎役となります。舞台『ゲゲゲの鬼太郎 2025』の上演、そして出演が決まっていかがでしたか。

初演の舞台『ゲゲゲの鬼太郎』(2022年)は、僕が出演してきた舞台の中で唯一、公演期間中にコロナ禍で中止になってしまったんです。その悔しさがあったからこそ、コロナ禍が明けた今、こうして新作として上演できるのは本当に嬉しいです。

再演ではなく新作になりますし、ねずみ男役も藤井隆さんから大塚明夫さんに変わられていたり、前回は砂かけばばあ役だった浅野ゆう子さんが吸血鬼のカミーラ役になっていたりと、新しい部分も多いので、気持ちを新たに頑張りたいなと思っています。

ーー2度目の鬼太郎役となりますが、役作りのうえで、今回課題となりそうなことはありますか。

それが結構、前回でつかめたんですよね。鬼太郎独自のテンション感というか。なので、そこは残しつつ、今回の物語でも鬼太郎らしさを全面に出していけたらなと思ってます。

ーー鬼太郎は誰もが知るキャラクターなだけに、稽古に入る時点で荒牧さんなりのイメージがあったかと思います。前作の稽古を通じて、役の捉え方の変化というものはありましたか。

原作の鬼太郎って少年じゃないですか。幽霊族としてはまだ子供なので、身長も小さいですし。でも、舞台の鬼太郎としては、もう少し青年になっている姿をイメージしてやっています。あまり子供っぽくしすぎず、人間のことも妖怪のことも知っているけど、それでも真ん中の立場でいたい、というイメージですかね。

最初はもうちょっと少年っぽくやろうかなと思ったんですが、まず身長的に全然違うじゃないですか(笑)。なので、どうしようかなと考えて、原作よりももう少し経験値を積んだ鬼太郎というイメージを僕の中で持って演じていました。

荒牧慶彦

ーー荒牧さんが思う鬼太郎の魅力について教えてください。

鬼太郎は幽霊族なこともあって、立場としては中立で公平というか。優しくはあるんだけど、ときに冷静で。感情移入しすぎてどちらかに寄ることもありますが、基本的に公正なジャッジができる鬼太郎っていうのが、僕はすごく好きです。

ーーでは、水木しげる先生が描く妖怪の世界の魅力、『ゲゲゲの鬼太郎』という作品の魅力とは?

妖怪って日本独自の感覚だなと思っています。西洋にもモンスターと呼ばれる存在がいますが、妖怪ってそれとも違っていて、日本人にとってはすごく身近で共に生きてきた、みんなに愛されている存在というか。

僕の周りでも、実は鬼太郎の妖怪ファンで「『水木しげるの妖怪図鑑』持ってるよ」みたいな学生時代の友達が何人かいたんですよね。僕も全然知らなかったから「え、そうなの!?」と(笑)。そこで、妖怪って愛されているんだなっていうのを実感しました。

作品の魅力というところでいうと、時代が変われば妖怪も違うし、起こる事件も違う。そういう社会風刺を交えているところが、いつの時代でも愛されている理由だと思いますし、僕自身も大好きな部分です。

ーーちなみに、子供の頃好きだった妖怪、お気に入りの妖怪はいますか?

ねずみ男が好きなんですよね、昔から。いや、もちろん問題児なのでムカつく部分もたくさんあるんですよ! ただ、彼がいるから、物語が転ぶという部分もたくさんありますからね。鬼太郎ももちろん好きでしたし、あとはキジムナー(南方妖怪の一種でガジュマルの木の精)のマスコットっぽい感じがかわいくて好きでした。

荒牧慶彦

「バチバチの殺陣」にも意欲満々、新キャストへの期待

ーー2022年は、残念ながら悔しい思いが残る公演になったとのことでしたが、その中でも得られたものや楽しかったことなど、思い出をお聞きできればと思います。

やっぱり僕らのファンだけじゃなく、作品のファンの方々が舞台版の『ゲゲゲの鬼太郎』も愛してくださった、楽しんでくださった。その姿を見られたことが、得られたものだったなと思います。

ーーそんな想いを抱いての今回の完全新作。新キャストの方もいらっしゃいますが、共演にあたり、楽しみにしていることや期待していることがあれば教えてください。

ねずみ男役の大塚明夫さんは声優として数々のキャラクターを演じられているじゃないですか。(身を乗り出して)実は僕、大塚さんの演じられている声が大好きなんですよ! 黒ひげ(アニメ『ONE PIECE』)とか、スネーク(ゲーム『メタルギアソリッド』シリーズ)とか! だからもう、共演がすごく楽しみで。共演できると知ったときはめちゃくちゃテンション上がりました。稽古が始まったら、ぜひあの声で名前を呼んでもらいたいです(笑)。

ーー新キャストには仲の良い植田圭輔さん、廣野凌大さんのお名前もあります。荒牧さんとの共演を楽しみにしているファンの方も多いと思いますが、すでに本作について何かお話しされましたか?

植ちゃん(植田)は同じ会社ですし、廣野くんも僕がやる作品によく出てくれていて、見知った仲だからこそ、僕らの間ではもう「やるべきことをやるだけだね」と。あと、僕らは日頃から殺陣も得意としているので、「せっかくなら殺陣もできたらいいね」という話はしています。前回も殺陣はあったんですが、廣野凌大くんは人間の役なので戦うかはわからないですけど(笑)、バチバチに動ける植ちゃんがいるので、ぜひ挑戦したいですね。

荒牧慶彦

ーーねこ娘役の上坂すみれさん、役は変わりますが浅野ゆう子さんは前回からの続投となります。前回ご一緒されてみて、お二人の役者としての魅力はどんなところに感じましたか。

浅野さんは大先輩なので、僕が言及するのはおこがましいくらいなんですが……。昔からテレビで拝見していた方で、今なお本当に美しくて。

前回、ゆう子さんが素敵だなって思ったエピソードがあって。カーテンコールで僕が最後ステージ上に残ってお辞儀をしてから袖に捌けていくんですが、ゆう子さんは絶対に袖で待っていてくれたんですよ。僕が主演だからと、立ててくださって。本当に素敵だなって思いましたね。

上坂さんは前回が初舞台、初アクションで。普段は声のお仕事をされているから、動くことには慣れていなかったと思うんですが、自分のできないところを克服しようとすごく前のめりに取り組まれていました。一生懸命な姿が印象的でした。

ーー一方の鬼太郎も、ビジュアルを拝見するとさらに素敵になっているなと感じました。ご自身ではどう受け止めていますか?

ビジュアル面も、前回よりパワーアップしていただいています。ちゃんちゃんこが派手になったし、実はウィッグも改善していただいたんです。前作を踏まえて「さらに荒牧くんに似合いそうな鬼太郎のウィッグを作ってきたよ」と。とくに毛の“ぴょん”っとなっている部分にすごく力を入れてくださったそうなので(笑)、ぜひそこも注目してもらえたら嬉しいです。

「人間の“醜さ”を包み隠さず出せる作品」

ーー今回は西洋妖怪・吸血鬼との戦いが描かれるとお聞きしました。脚本はこれからとのことですが、荒牧さんがぜひ注目してほしいポイントはどんなところでしょうか。

ショーアップされた演出ももちろん見どころですが、やっぱり『ゲゲゲの鬼太郎』ならではの部分も観てもらいたいなと思います。この作品の良さって少し怪しくて、人間の“醜い”ところを包み隠さず描くところだと思っていて。

水木先生の作品って人間の醜いところをしっかり描いて、「人間って愚かだな」となる。僕はその部分が好きなんですよね。もちろん僕は人間が大好きですし、光の部分があると思っていますが、同時に闇の部分もあると思っていて。それが包み隠さず出せるのがこの作品だと思います。

そして、妖怪だけが悪ではない。妖怪って悪にされがちな存在ですが、人間も自分たちのエゴで動いているという『ゲゲゲの鬼太郎』の世界観がすごく好きなので、そこは今回も舞台版でしっかり描かれていると思います。水木先生が『ゲゲゲの鬼太郎』を通して伝えたかったであろう部分を、この舞台でもしっかりと受け継いで表現していきたいです。

荒牧慶彦

 

取材・文=双海しお    撮影=池上夢貢

公演情報

舞台『ゲゲゲの鬼太郎 2025』
【脚本・演出】堤泰之
【出演】
荒牧慶彦 大塚明夫 上坂すみれ
植田圭輔 廣野凌大 / 美弥るりか / 浅野ゆう子

長友光弘(響) 砂川脩弥 ほか
 
【一般販売】6月28日(土)10:00~
 
【公式サイト】https://gegege-stage.jp/
【公式X】@gegege_stage
 
【東京公演】
日程 2025年8月2日(土)~16日(土)
会場 明治座
主催 舞台「ゲゲゲの鬼太郎」製作委員会
(C)水木プロ・東映アニメーション
(C)舞台「ゲゲゲの鬼太郎」製作委員会
お問合せ 明治座センター 03-3666-6666(10:00~17:00)
 
【大阪公演】
日程 2025年8月21日(木)~25日(月)
会場 新歌舞伎座
主催 新歌舞伎座
(C)水木プロ・東映アニメーション
(C)舞台「ゲゲゲの鬼太郎」製作委員会
お問合せ 新歌舞伎座テレホン予約センター 06-7730-2222(10:00~16:00)
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