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石井琢磨、シェレンベルガー指揮ベルリン交響楽団との共演がリリース決定 『シューマン・ザ・ベスト』としてソロ曲も収録

2025.7.7
ニュース
クラシック

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自らのYouTubeチャンネル「TAKU音-TV」がフォロワー数32万人を超え、2025年6月8日ついにベルリン・フィルハーモニーホールでマエストロ=シェレンベルガー指揮ベルリン交響楽団との共演を果たし、さらに日本で12か所にのぼる彼らとのツアーを大好評のうちに終えた、ピアニスト石井琢磨。石井によるこの歴史的快挙が、文字通り歴史に刻まれることとなった。世界的なメジャー・レコード・レーベル「SONY MUSIC」から、多くの石井ファンも目撃したサントリーホールでのシェレンベルガー指揮ベルリン交響楽団との感動的共演が緊急リリースされることが発表されたのだ。

しかも、リリース日程は8月からの石井琢磨のリサイタル・ツアー初日にあわせたタイミングで、なんと!ベルリン・フィルハーモニーホールでの公演2日後に、グラミー賞も受賞しているドイツのトーンマイスター(録音技師)フィリップ・ネーデルによって、角野隼斗や藤田真央もレコーディングしたベルリンのb-sharpスタジオにて、「献呈」や「トロイメライ」などのシューマンの珠玉の名曲群までも録音し、タイトルも「シューマン・ザ・ベスト」とネーミングされた。石井のエネルギーとスピード感溢れる活躍には感嘆しかない。日本ツアーの模様も含め、関係者や本人のコメントも織り交ぜながら、このビッグ・ニュースをお届けしたい。

レコーディングの様子(撮影=Peter Adamik)

レコーディングの様子(撮影=Peter Adamik)

石井の故郷であり、第九初演の地=徳島から6月21日にスタートした、ベルリン交響楽団×石井琢磨の日本ツアーは、30日の東京サントリーホールまでに広島・福岡・千葉・横浜を経て、筆者が覗かせていただいたゲネ・リハーサルでは、すっかりリラックスした空気に包まれていた。ピアノ協奏曲も全曲を通さず、さらりと第1楽章のポイントの確認をする程度。バックヤードのケイタリングコーナーにコーヒーを淹れに来た石井に、チェロの女性奏者が「私もウィーンで勉強してたの」と声をかけ、ドイツ語で談笑する場面を目撃したが、すっかり団員やマエストロ=シェレンベルガーと打ち解けた雰囲気の中で音楽づくりが熟成されていることが垣間見えた。

超満員の熱気に包まれたサントリーホールでのプログラムは、贅沢にもシェレンベルガーが弾き振りをする、モーツァルトの「オーボエ協奏曲」でスタート。「のだめカンタービレ」でクラシックファン以外にも知られるオーボエの代表的な協奏曲を、シェレンベルガーがベルリン・フィル時代と遜色ない美しい音色でホールに満たしてくれた。その音楽でテンションが高まったところで、いよいよ石井琢磨の登場である。ベルリン・フィルハーモニーホールという世界的な舞台を経た石井の表情は、もはやサントリーホールはホームグランドと感じているかのような落ち着きすら見えた。しかし、シェレンベルガー指揮するベルリン交響楽団の劇的なトゥッティとともに、石井の見事な下降和音が奏でられると、ベルリンと同様に美しくも張り詰めた音楽の奔流がホールに響いた。

サントリーホール公演の模様(Photo: Atsushi Nishimura)

石井本来の流麗な表現とシェレンベルガーと公演を重ねて磨き上げた演奏が、ホールに満ちた観客を惹き込んでいくのがわかる。石井のピアノと会話するように展開していく、ベルリン交響楽団の、海外オーケストラ特有の奔馬のような勢いのある演奏も、重なる共演を経て、ベルリンと比較してもより緻密なアンサンブルに変化していた。録音の場所にこのタイミングを選んだのは、こうなることを見越した石井の慧眼に違いない。うってかわった第2楽章は、ゆったりとした音楽づくりのうちに、天国的な音の響きに浸る。第3楽章のイントロダクションにそのまま突入するが、その勢いは実に溌剌とし感動的である。石井が、見事なカデンツァを展開し、コーダへ。轟音のようなスタンディング・オベーションに、シェレンベルガーも終演後に興奮気味であったそうだ。一瞬のように感じさせられる感動的な30分間。だからこそ、この瞬間を永遠に石井は残しておきたかったのだろう。この原稿を執筆中の7月5日現在、ツアーの途中であるが、その中でエンジニアが仕上げてくるミックスをチェックして仕上げをしている最中であるらしく、完成したものは筆者も聴くことはできていないが、ライブ・レコーディングでありながら、シューマンのピアノ協奏曲史上屈指のクオリティのCDとなる予感がしている。

サントリーホール公演の模様(Photo: Atsushi Nishimura)

ソリスト・アンコールは、もちろん、シューマンがクララに捧げた歌曲集「ミルテの花」の中の「献呈」(リスト編曲)である。CDでは、なんとこの曲も含めて「トロイメライ」や「見知らぬ国へ」を含めた「子供の情景」のハイライトや、「森の情景」のハイライトなど、シューマンの珠玉の名曲がカップリング収録され、石井琢磨がクラシカル・レジェンド・コンサートの所沢公演と京都公演でも聴かせてくれた深遠なシューマンの世界へ誘ってくれる。「シューマン・ザ・ベスト」のタイトルに相応しい内容と言えるだろう。このレコーディングは、ベルリン・フィルハーモニーホールでの公演2日後に、グラミー賞も受賞しているドイツのトーンマイスター(録音技師)フィリップ・ネーデルによって、角野隼斗や藤田真央もレコーディングしたベルリンのb-sharpスタジオにて収録されたものである。

シェレンベルガーによるベートーヴェンの交響曲第7番も、カルロス・クライバーばりの快速テンポの第4楽章が会場を興奮の坩堝に。対談でもシェレンベルガーが話していた、カラヤンのドラマトゥルギーの影響も感じさせながらも、ライトでカジュアルな感覚は時代にあった演奏で、やはり本場ドイツの名門にしか表現できない、ベートーヴェンであった。鳴りやまぬスタンディング・オベーションのリピートに、オーケストラがいなくなった後に、マエストロが再登場するシーンも見られるほどの好評ぶりであった。

サントリーホール公演の模様(Photo: Atsushi Nishimura)

石井琢磨×マエストロ=シェレンベルガー×ベルリン交響楽団のタッグで、6月~7月にかけて、ベルリンと日本で展開された感動をもう一度CDで体験できることを心から喜びたい。最後に石井琢磨本人からのコメントも紹介する。

石井琢磨コメント

「ベルリン交響楽団の定期演奏会ソリストに抜擢されました。」と伝えられたとき、あまりにびっくりしすぎて声も出ませんでした。まさか自分がベルリン・フィルハーモニーホールでベルリン交響楽団とピアノ協奏曲を演奏できる日が来るなんて到底信じられなかったです。少し時間が経過してから、現実なんだと思えるようになったときに、ぜひこのピアノ協奏曲のレコーディングを最上の形で残して、皆さんに聴いていただきたいと思い、長い時間をかけて準備をしてきました。まずは、良い演奏をマエストロ=シェレンベルガーとベルリン交響楽団の仲間(あえて今仲間と呼ばせてもらいますが)とできて、それを皆さんに何度も追体験していただけるように、ソニー・ミュージックでリリースできることに心から感謝したいと思います。

レコーディングの様子(撮影=Peter Adamik)

インタビュー・まとめ:神山薫

リリース情報

石井琢磨『シューマン・ザ・ベスト』
 
発売日:2025年8月27日
品番:SICC-39139
定価:3,300円(税込)※高品質Blu-spec CD2仕様
 
~収録内容~
シューマン:
① ピアノ協奏曲イ短調 作品54
②「子供の情景」から第1曲「見知らぬ国と人々」
③「子供の情景」から第7曲「トロイメライ」
④「森の情景」から第3曲「孤独な花」
⑤「森の情景」から第7曲「予言の鳥」
⑥「森の情景」から第9曲「別れ」
⑦ 献呈(リスト編曲)
 
石井琢磨(ピアノ)
ベルリン交響楽団 ①
ハンスイェルク・シェレンベルガー(指揮)①
 
録音:2025年6月29日 横浜みなとみらいホール、6月30日 サントリーホール(ライヴ)①/2025年6月10日 b-sharp Studio ベルリン②~⑦