手越祐也の「もがいてきた軌跡」と「遠く先まで照らす光」を示した『LIVE TOUR 2025 NEVER END』ファイナル公式レポート&「シルエット」サプライズ配信コメント到着
『手越祐也 LIVE TOUR 2025 NEVER END』2025.9.15(MON)東京・立川ステージガーデン
2025年5月20日から始まった『手越祐也 LIVE TOUR 2025 NEVER END』。横浜、大阪、仙台、名古屋、東京、福岡、札幌と7都市のライブハウスをまわったのち、NHK大阪ホール、岡谷鋼機名古屋公会堂、立川ステージガーデンと3都市でホール公演を行なう、手越祐也にとっては初めての試みとなった。
2021年7月7日にソロアーティストとしてデビューし、一歩一歩前に進んできた彼の旅路は「決して順風満帆ではなかった」と事あるごとに振り返る手越だが、5月14日にリリースしたベストアルバム『手越祐也 SINGLES BEST』を引っ提げ臨んだ本ツアーのファイナル公演はまさにアーティスト・手越祐也の「もがいてきた軌跡」と「遠く先まで照らす光」を示すようなステージであったーー。
5か月の集大成ともいえる『手越祐也 LIVE TOUR 2025 NEVER END』のツアーファイナル(昼公演・夜公演)は9月15日、立川ステージガーデンにて開催された。2024年初頭の「手越祐也 LIVE TOUR 2024 絆 -KIZUNA-」以降、手越はひとつの会場で2日に渡り行なわれる公演の内容をまったく違うものにしてきたのは周知の事実であるが、今回のツアーファイナルは同日に行なわれる2公演のセットリストをはじめ、演出、衣装といったすべてが異なるステージを用意していた。この日の模様のオフィシャルレポートが到着した。
「このセットリストをやるのはこの昼公演がファイナル」
昼公演はツアータイトルにも重なる「Never-ending」からスタート。まばゆい光を背に登場した手越にペンライトの波がうねり、会場は一体となってコール&レスポンスを交わしていく。続く「Hello!!」、「Just Right」もステージと客席をつなぐ仕掛けが散りばめられている楽曲だ。手拍子やダンスを介して手越とHONEYYY(=手越祐也のファン)の距離がグッと近づいていく。
「大事な大事なみんなの名前が曲名になった、そんな楽曲を聞いてください」と、艶感たっぷりの歌とダンスで「HONEYYY」を披露したのち、『手越祐也 SINGLES BEST』のリリースで発表された「ヒラヒラ」、「ばいぶれーしょん」と続く。5月の時点では耳新しかったこれらの楽曲も、ツアーで歌われてきたことで成熟し深みを増していたのが印象的だった。
「Comfort Zone」、「七色エール」はしっとりと歌い上げる構成に。いつもはキレのよいダンスと鮮やかな歌唱で盛り上がる「Comfort Zone」だが、本ステージではスペシャルアレンジver.を披露。ドラムとアコースティックギターにあわせて一音一音丁寧に歌い上げるさまは圧巻だ。転調も多い難曲を、持てるかぎりの技術を使い多彩なアプローチで表現しきったヴォーカリスト・手越祐也に真骨頂を見た。同じくアコースティックver.の「七色エール」では、最後に歌詞にはない「みんなに七色エール」という言葉をそっと添え、会場をあたたかい空気で包み込んだ。
「ONE LIFE」は手越祐也の代表曲のひとつとも言える名曲だ。ソロデビュー年からさまざまなステージでこの曲を歌い続けてきた彼を見守ってきたファン一人ひとりの心の内に、忘れられない「ONE LIFE」があるのだろう、まっすぐステージを見つめペンライトを振るHONEYYYの姿が胸を打つ。
「My Own Beat」のコール&レスポンスで再び会場が一体になったのち、MCへ。9月4日の岡谷鋼機名古屋公会堂でのステージ以降、ロックバンドT.N.T.のヴォーカリストとして『黒フェス』や『TOMAKOMAI MIRAI FEST 2025』への出演や、TVドラマ『ぼくたちん家』への出演発表、バラエティー番組への出演など、活躍の場を広げている手越が「みんなに話したいことがいっぱいある」と嬉しそうに近況を報告すると、ファンからは大きな拍手が上がる。「まだまだ言いたいことがあるんだけど」と茶目っ気たっぷりに近い未来を匂わせつつ、ライブは後半へ。
「Lovin’U」で王道ロックを魅せたのち、王座に腰掛け高らかに歌う「DoLLs」、スタイリッシュなダンスが光る「Flash back」、ハットを被りショーダンスさながらのステージを作り上げる「Venus Symphony」と世界観を大切にした演出が特徴の楽曲が続き、会場の熱は最高潮へ。
「まだまだいけるだろ?」と言わんばかりに「Come Back To me」の歌とダンスで客席を挑発したのち、会場が一体となって歌う「OVER YOU」へ。「アダルトブルー」で気持ちの限りを尽くしたエールを送り、本編ラストは本ツアーがはじまってからずっと歌い続けてきた未公開曲「シルエット」(※昼公演の時点では曲のタイトル未発表)を披露。スモークがかかったステージ上にはあたたかい光が降り、その中央には手越祐也が佇んでいる。陽だまりのような優しさに溢れたヴォーカルは、会場の隅々までまっすぐに彼の想いを届けていた。
アンコールの1曲目に選んだのは、速いテンポに怒涛の歌詞が展開される「御どれ踊れや己が苑」だ。わずかな隙も許されないなか、コミカルに歌ったり、会場にウェーブを要求する余裕も見せながら最難曲を華麗に歌い上げた。続く「導火線」では、「流れ星」の歌詞に合わせてステージに一筋の星が流れる演出も。「モガケ!」もまた長く歌われてきた屈指の手越流応援歌だ。みんながひとつになって手を振り、「モガケ!モガケ!モガケ!」と歌う光景に、手越とファンがもがきながらも夢を一つひとつ掴んできた軌跡が重なる。
「5か月かけて各地を周り、そのすべてを栄養にしてこのステージにぶつけてきた」、「このセットリストをやるのはこの公演がファイナルだから、悔いがないように全力を出す」。ライブ中何度も手越の口から語られたこれらの言葉は、刹那を全力で楽しむためには努力を惜しまない彼の生きざまそのものだ。そんな手越が大切に育ててきたセットリストの最後を飾る「wake me up」は、彼が独立してすぐにギタリストのJUONと一緒に作った曲だ。
発表する場所も歌える環境もないまま、心の中に疼く不安や苛立ちを音楽に乗せて作った「wake me up」を「いまの手越祐也が歌うから意味があるなと、いつも心を熱くしながら歌わせてもらっている」と大切そうに語る手越。そんな彼の想いと決意は、力強いヴォーカルに乗って会場の隅々まで広がっていくのだった。
夜公演で新曲「シルエット」の配信リリースがサプライズ発表
WOWOWで独占生中継も行なわれた夜公演は「Flash back」からはじまり、「MAZE WORLD」、「Comfort Zone」とリズムやダンスが映える楽曲からスタート。開始からフルスロットルで駆け抜けた手越は「いつも手越とHONEYYYはこういう感じなんだなっていうのを、(中継を見ている手越祐也のライブ未経験の)たくさんの人に見せつけてやろうぜ!」と楽しそうに呼びかけ会場を煽る。
手越の言う「こういう感じ」を伝えるのに最適な曲はまさに、次に控えていた「ウインク」ライブアレンジver.だろう。ピアノの演奏に合わせてスローテンポで歌う頭サビ、「ずるいよ」と「バカ」の間の溜めにファンから「ヒュー!」と歓声が上がる。ときにコミカルに、ときに禍々しく歌う手越に、ファンはコール&レスポンスで応えていく。ステージと客席がまるで会話をしているような、自由で楽しい掛け合いこそが「いつものこういう感じ」であって、手越祐也が作るライブの魅力のひとつとも言えるのだ。
続く「LOVE SENSATION」、「MAKE ME ALIVE」でも大いにファンを巻き込み湧かせたのち、「アダルトブルー」、「シナモン」、「愛なんて」、「everlasting」としっとり聞かせる楽曲が続く。なかでも、ミラーボールが作る幾多の光の粒が紗幕越しに歌う手越を照らす「愛なんて」の幻想的な演出は、歌詞で描かれる切ない愛がストレートに染み込むような切実さをたたえ、涙を浮かべるファンの姿がまた美しい。
MCでは本ツアー中に歌われてきた未発表曲について、とうとう明かされる一幕も。「『あの曲なに?』ってのがあったでしょ?」との言葉ですでに何かを察したHONEYYYたちから大歓声が上がり、「シルエット」というタイトルであること、デビュー曲「シナモン」を作詞・作曲した小林未奈が同じく作詞・作曲していること、このライブが終わった数時間後の9月15日24時に配信を開始することがサプライズ発表された。(ちなみに、本ツアーのバンドメンバー、ダンサー紹介のアナウンスを小林未奈がすべて担当していることも明かされた)
嬉しいサプライズの余韻を残しつつ、ライブは後半へ。「ばいぶれーしょん」、「導火線」、「OVER YOU」と続き、久々の披露となった「LUV ME, LUV ME」へ。テンポの速いライブver.だが、ダンサーたちと華麗なダンスを魅せる手越にファンもダンスで応え、会場はさらに熱を増していく。手越が大切に歌い続けてきた「Addict」は、イントロから大歓声が上がり、手越とダンサーたちの息の合ったダンスにさらに盛り上がる。
「ドラキュラ」は毎回演出が楽しみな楽曲のひとつだが、今回はドラキュラに扮した手越がダンサーの首筋に噛みつく本格ver.(?!)を披露。HONEYYYからは悲鳴ともつかない歓声が漏れ出し、それらを含めてすべて食べ尽くした手越は「ごちそうさまでした~」と挑発的な笑いを浮かべキスを送るのだった。
続く「Gluttony」、「I’m coming」では力強いヴォーカルを見せつけた手越祐也。本編ラストにはなんとこのステージのみのスペシャルゲストとしてJUONが登場。演奏するのはもちろん「wake me up」だ。とっておきのサプライズに割れんばかりの歓声が轟くなか、手越祐也と、彼の辛い時期を支え続けた友・JUONがステージに並び歌う姿を5年前の彼らは果たして想像していただろうか──。しかし、あるいは手越祐也ならばどんなに回り道をしたとしても、いずれはここに行き着いていたのかもしれないと思う瞬間でもあった。
熱の余韻がわずかに漂うなか、アンコールを求める「ダーリン」コールで再び登場した手越は、「シルエット」、「ヒラヒラ」、「この手とその手」を丁寧に歌い上げ、終りが目の前に迫った『手越祐也 LIVE TOUR 2025 NEVER END』をファンと共に振り返った。そしてーー。
「みんなの今日、そして明日からの毎日が華やかに、笑顔で、ポジティブに。誰にも邪魔をされずに、バカにされずに、自分の夢ややりたいことを大切な人とともに突き進んでいけるように、この5か月間の感謝を込めて最後の1曲を歌いたいと思います」
昼公演から44曲を歌ってきた手越祐也が最後に選んだのは「Never-ending」。残る力をすべて出しきり歌う手越を支えるように、ファンの美しいコーラスが会場に響く。この刹那を精一杯生き抜き、それぞれの場所で自分を信じ努力を重ね、またここに集まろう。俺たちの旅路は決して終わらないのだから。音楽を介したステージと客席の対話からは、そんな声が聞こえてきたように感じる。
ツアーで歌い育ててきた「シルエット」配信リリースコメント
ーー『手越祐也 LIVE TOUR 2025 NEVER END』が始まってずっと歌われてきた未発表曲がありました。ファンの方たちの間では「謎の曲」として話題になっていた「シルエット」ですが、ツアーで先に歌ってからリリースすることになった経緯は?
ツアーをまわる前に「シルエット」という楽曲はすでにできあがっていましたが、小林未奈ちゃんが作ってくれた歌詞も曲も素晴らしかったので、「ツアーで歌いながら曲を育てていくのはどうだろう?」ということになったんです。ファンの方たちからしたら「なになに?」ってなるだろうとは思っていたけれど、各地のステージで歌ったあとにレコーディングをしたら、また違った歌い方になるんじゃないかと。チームのみんなも「それはいいね」ってことで、今回初めての試みとして挑戦しました。
ーーツアーで育てた楽曲をレコーディングしたのはいつ頃でしたか?
ツアーファイナルの24時にリリースすることは最初のほうで決めていたので、ちょうどツアーの折り返しぐらいのタイミングでレコーディングしました。ただやっぱり、ステージ上でファンのみなさんを前にして歌う「シルエット」とレコーディングブースで歌う「シルエット」はテンション感が違いますから、そのバランスを考えながら歌い方を調整したのは確かです。
ーーバランスとは?
レコーディングブースでの冷静な感じの歌い方のみで作ってしまうと、それまでツアーで楽曲を育ててきた意味がなくなりますし、ステージで歌う感じのみで作ってしまうと、小林未奈ちゃんが想像していた「シルエット」の世界観が崩れてしまう可能性もある。実際に未奈ちゃんがレコーディングにも立ち会ってくれたので、両方の良い部分を生かした歌い方ができたんじゃないかと思います。
ーー「シルエット」にはどんな思いを込められているのでしょうか?
家族や子ども、兄弟、友達、恋人、ペットなど、人それぞれに大切な存在がいると思うんです。そういった存在のすべてに対して当てはまるような歌詞と世界観を「シルエット」では作りたいと思いました。歌詞のなかに「ハニー」という言葉が出てくるので、例えばファンの方たちには、僕がみんなを思って歌っていることを想像しながら聞いてほしいし。
そういった意味でも、すべてのシチュエーションにおいて成立する楽曲だと思いますし、いろんなあたたかさを含んでいて、聞く人の背中を押してあげられるような楽曲に仕上がっていると思います。カラオケで歌う機会がもしあれば、大切な人の前で歌ったり、大切な人を思い浮かべながら歌ってほしいですね。
ーーツアーファイナル後24時に「シルエット」をリリースするというサプライズ発表を用意した意図は?
ツアーのファイナルってひとつの物語が終わるので……僕もそうですけど、ファンのみんなも寂しいと思うんですよね。でも、その次の何か、例えばツアーや音源を発表できれば、物語はまた続いていくじゃないですか。やっぱりそういうのが僕は好きなんですよね。もちろん、いまの段階では発表できないいろんなことを準備はしていますが、ファンのみんなからしたら、発表されていない準備って止まっているのと一緒なので。僕はそういうものを止めたくないという思いがあるんです。
取材・文=とみたまい
セットリスト
リリース情報
リリース情報
2025年5月14日(水)発売
①BEST ALBUM + 本人コーラス入りカラオケ(CD:2枚組)+ Blu-ray付
②BEST ALBUM(CD:1枚)+ DVD付
③BEST ALBUM(CD:1枚)
2024.12.20 Zepp Haneda