「今日を生ききること」と「10年後のために今日やらなきゃいけないこと」ーーBRAHMAN結成30周年、TOSHI-LOWが語る現在地

2025.10.17
インタビュー
音楽

撮影=ハヤシマコ

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BRAHMANが結成30周年を迎え、アニバーサリーイヤーの集大成とも言える『尽未来祭 2025』を来月11月22日(土)・23日(日)・24日(月・振休)に開催する。昨年11月には横浜BUNTAIにて、ワンマンライブ『六梵全書 Six full albums of all songs』を開催。約4時間にわたり75曲を披露する壮絶なライブで、アニバーサリーイヤーの新たな扉を開いたかと思えば、今年2月には7年振りのフルアルバム『viraha』をリリース。翌月3月からは全28都市28公演に及ぶツアーを完走し、『尽未来祭』を経て来年1月からは27箇所を回る『tour viraha 2026』の開催もすでに決定しているーーーと、30年の節目を超えてなお、その勢いは止まるどころか加速している。

今回SPICEでは『尽未来祭』の開催を前に、TOSHI-LOW(Vo)に話を訊いた。インタビュアーは、長年親交のあるFM802 DJの大抜卓人。30年の軌跡を振り返るうちに、話はバンドの変遷から、心境の変化や生き方にまでおよんだ。BRAHMANというバンドの独自性、そしてTOSHI-LOWのが語る現在地とはーーー。

「弱みを見せてるんじゃないかと思ってたけど、
素直でいるほうが心を動かせるとわかった」

ーーこうやって面と向かってじっくりとインタビューさせていただくのは、なんだか新鮮ですね。

そうだね。

ーー新鮮という話でいうと、8月に大阪で開催された野外イベント『RUSH BALL』なんですけど。BRAHMANがステージに出る直前の様子をバックヤードで見ていたら、TOSHI-LOWさんが細美武士さん(ELLEGARDEN、the HIATUS、MONOEYES、the LOW-ATUS)とKjさん(Dragon Ash)と一緒に色々とお話をされていて、そのうちにSEが流れてメンバーみんなステージに出て行ってるんですけど、TOSHI-LOWさんはずっと喋っていて。で、やっと「行ってくるわ」ってバっとステージに出ていった瞬間に、もう空気がバーっと変わったのがすごくわかったんですよ。それを見てKjさんが「早すぎるって、切り替え!」って言ってたんですよね。

あはは。あのときはKjの部屋で飲もうって話をしてたんだよね。「今日どうする? Kjの部屋で飲もうぜ!」「絶対、来ないでよ」って。

ーーSEが流れている最中に! でも、そこから明らかにまとってる空気が変わって、スイッチが入ったのを感じながら見てました。

入ったのかな? わかんないや。

ーー後ろから見ていてそう思ったんですよ。なんでこの話をしたかというと、僕が初めてお会いした時のTOSHI-LOWさんには、どこか立ち入ってはいけない、近寄りがたいオーラがあって。でも、先日の『tour viraha』のライブを観た時には、どこか祝祭といいますか、まるでTOSHI-LOWさんがお客さんと肩を組んでいるかのようなライブだったんです。そういう意味で、TOSHI-LOWさんの中で向き合い方がずいぶん変わったんじゃないかなと思ったからなんです。

そうだね。最近わかったのは、自分がコントロールできることって限られてるんだよね。例えば、怒りとか不安とかは湧いてくるものだから、感情って実はコントロールできないの。でも、そう思った時に、自分の態度はコントロールできるな、と。今までは内面のコントロールできないであろうものを、「緊張しちゃダメだ」とか「怒り抑えろ」みたいに考えていたけど、態度がしっかりしてれば内面では何を思ってもいいの。そこをコントロールするようになったからなんじゃないかな。

ーーなるほど。

体がそうなると心も変わるんだよね。当たり前だけど。前見て上見てしっかりしてると、心の方が「まあ、いけんじゃん」っていう風に変わってくる。何がコントロールできて何がコントロールできないのか、それが自分でわかってきた変化かな。

ーーそれはたくさん本を読む習慣から得たものですか?

それもあるだろうし。よく、「楽しいから笑ってるんじゃなくて、笑ってるから楽しい」っていうことあるじゃん。あれと同じなんだと思う。そういうものから自分の実体験としてヒントを得てるんだと思うんだよね。

ーー震災以降、弾き語りでいろいろなところで歌を届けてきたことで、歌との向き合い方も変わったのではないかなと。マインドセットもかつての戦うようなものではなくーーーもちろんファイティングスピリッツはそのままなんですけどーーーちょっと肩を組む感じの歌になったなと。だからきっと、今世代を超えてBRAHMANと共鳴しているのかなと思ったんです。

さっきの話に似ててさ。オープンな心があるなら、それを態度に出さなきゃいけないよね。もう、人からどういうふうに感じ取られてもいいんなら素直になった方がいいじゃない、みたいな感覚になれたのかな。若い時は、もう絶対笑わないという自分のスタイルがあったけど、それはとにかく何かを見せたら弱みになってしまうんじゃないかと思って隠してたんだと思うの。でも本当は、弱みを自分で認識して、それをちゃんと出していく方が強みになるというか。MCとかもそうでさ、「楽しいぜ!」「盛り上がろうぜ!」ではなくて、「いや、大変なこといっぱいあんじゃん」みたいな話を俺はよくするんだけど、それは、そっちの方が心が動いてグッとくるものがあるからなんだよ。正直なだけがいいとは思わないけど、やっぱり素直でなきゃダメなんだなとは思っていて。だからそういう考え方が出てくるようになったんじゃないかな。

ーー忘れられないのが2008年の『RUSH BALL』で。僕は全アーティストのバックステージインタビューを取ることになっていたのですが、BRAHMANだけはまだ誰も取材交渉してないと聞いて。それで当時のプロデューサーから僕は、直接TOSHI-LOWさんと話してほしいと言われたんですね。そこで、パッとTOSHI-LOWさんの方を見たら、TOSHI-LOWさんはシャドーボクシングしていて……。「あかん、100%無理や」「今から声掛けたらめちゃめちゃ怒られるんちゃうか」と思ったのをすごく覚えてます。それでも一度話してみようと決心して、TOSHI-LOWさんに話しかけたんですよ。「普段はFM802でDJしている者なんですけど、今回はテレビのインタビューで3分、いや4分、できたら5分ぐらい協力してもらえませんか」と。

(時間は)減るんじゃなくて増えてくんだ(笑)。

ーーそうしたら、シャドーをパッと止めて、「それすんだったら曲をかけてよ」とおっしゃったんです。それが僕のファーストコンタクトで、すぐに「すみません!」って帰ってスタッフに「絶対無理!」って。『RUSH BALL』以降もたびたびインタビューのオファーをさせていただいたんですけど、「5分だったらいいよ」って。でも「5分で全部準備して終わらせて帰るけどできるの?」っていう。常にスタンスでしたよね。ところが、震災以降は、生活をしている人たちに気づきをもたらしていくような、ノックするような言葉がすごく増えたような気がして。かつてのような、辛かった時、仲間のことを信用していなかった時を経て、今はどこか達観に近い感じになっているのかなと。

2008年のことはあんまり覚えてないんだけど、ほかの出演者に対しても「なんだこいつ」「どけよ、知らねえよ」って感じだったね。

ーーそこから仲間が増えて、本来のTOSHI-LOWさんの良さが出てきたのかなと。

結局、自分のことって自分では分かり得ないんだよ。人のことを知るには、その人の周りにいる人を見るのが一番だと思っていて。例えば、その人に近いスタッフをまず見るわけ。そうすると自ずとその人のことも見えてくる。それは自分に対しても同じで、自分自身を知ろうと思ったら、今自分の周りにいる人を見る。そこで、「この人とこの人がいるってことは大丈夫」って思うこともある。もしそうじゃなかったなら……たとえば、胡散臭い人たちがいっぱい集まっていたら今の自分はダメなんだろうなと思う。

ーーそれは、昔からそういう考え方だったんですか?

どうなんだろう。自分のことばっかりにフォーカスしてた時期もあるし。でも、その時も人のことを信用してなかったわけじゃないんだろうけど、単純にコミュニケーション能力が低かったんだと思う。今は誰とも喋れるし誰とでも喋ってみなきゃわかんないなって思う。

歌との向き合い方に変化
「学びがあるということは楽しい」

ーー歌との向き合い方も変わりましたか? 印象的だったのは、初めてのインタビューでTOSHI-LOWさんのルーツやBRAHMANの結成についてから、音楽を始めたキッカケまで話していただいたときのことで。その時に、「正直なところ、音楽をやりたいってわけじゃなかったし、最初はカルチャーを生み出すことにすごく憧れていた」と話してくれましたよね。

音楽は表現のひとつだからね。

ーー歌い手になりたいというよりも、表現者ですよね。歌で有名になりたいというのは全然なかった。

全くなかったね。でも、やっぱそこは細美武士の存在がでかいと思う。「歌が上手い」という表現がいいとは思わないけど、歌がいいとか声がいいということで人を感動させられるなんて思ったことなくて。汗かいて力いっぱいやったパフォーマンスや他の何かが刺さればいいと思うタイプだったから。どちらかというと、歌うというよりも言葉をぶつけるような感覚。それが震災の時にさ、みーちゃんが弾き語りで歌うと、エルレのことを知らないようなおばあちゃんたちが「うわーーー」って感動して。それを目の当たりにしたときに、「歌がいいということは何よりも説得力があるんだな」と思ったの。その時に、細美に「どうやって歌ってるの?」って聞いたことが変化の始まりだったかもしれない。

ーーそうでしたか。

「こうやって、こうなんだよ」って感覚的な話をしてくれたんだけどね。彼の真横で歌う機会が多いと、どうやって歌ってるのかよく見られるんだよ。「あ、背中を意識して顎を引いて歌った」とか。で、今度はそれを真似して自分でもやってみるの。上手い人の真似が一番上達するからね。そうやって人のいいところを取り入れようとしたことは、ひとつのターニングポイントだったかもしれないね。

ーー昔はそもそも「歌」という概念ではなかった?

そこまでではないけど、歌が上手いことは恥ずかしいことだと思っていたね。怒髪天の増子兄ぃも同じこと言ってたかな。今はあの人はめちゃくちゃ歌が上手いけど、昔は「うまく歌ったら負けだ」って。俺も本当にその通りだと思ってた。だからわざと叫ぶように歌ってたし、ビブラートなんてかけるやつは◯ねばいいとさえ思ってたからね(笑)。

ーー新しいアルバム『viraha』を聴いていても、向き合い方がずいぶん変わったんだろうなと思いました。今回、自分でデモまで作られてたでしょ? 今まであんまりそういう作り方はされてなかったんじゃないですか?

そうだね。今回はみんなに頼っていた部分を無くしたというか。あれこれ注文してメンバーの負担を大きくするんじゃなくて、自分でできる部分は一度煮詰めてから録ろうと。もうみんな年取ってるから、疲れるし早く帰りてぇだろうなとか思うし(笑)。

ーー昔のBRAHMANのドキュメンタリーを観た時とやり方が違っていたので驚きました。

すごい非効率的だと思うけど、ずっとああやって作ってきたからね。まあ、煮詰まったのをさらに煮詰めていくよさもあるんだけど。

ーー「SEE OFF」はどうやってできた曲なんですか?

あれは俺がコードを作って、それをメンバーに伝えて作った気がする。

ーー投げかけたらできる関係だったわけですよね。

自分があんまり音楽できるタイプじゃないとわかってるから、何かを投げかけることがバンドだと思ってたし、できないことをやってもらうっていうのが仲間であり集団なのかなって。でも、それじゃ弱いんだよね。だって、自分にできることがたくさんあって、それをもっとうまい人にやってもらえたなら、もっと良くなるわけじゃん? さっきの話じゃないけど、俺は音楽家になりたかったわけじゃないから、音楽の訓練をしたことがないのよ。だから、今になってそういう音楽的なことをしっかりやるのはすごく楽しいよね。学ぶべきことがあるのが楽しい。「今から学んでも遅い」と思う瞬間もあったけど、今、この時が常に一番若い日なんだから、もし10年後に始めたら10年遅れちゃうし、まずいよね。俺、いつも目先の今日のことと10年後のことを考えるの。それは、「今日を生ききる」ということと、「10年後にどうありたいか、そのためには今日からやんなきゃいけない」ということで。

ーーすごくいい考え方ですね。

もし10年後にこうありたいと思うなら、今日始めるしかないのよ。それをずっと繰り返してきたつもりなんだけど、やれていなかったこともいっぱいあって。だから音楽的なことを学ぶなら、今日始めなきゃいけないと思ったんだよね。

ーーその考え方も、ここ最近ではないですよね?

考え方としてはあったんだけど、やることが変わってきたのは10年前ぐらいかな。10年後にこうありたいから体を鍛えればいい、という時期もあったし。もっと哲学や死生観を見つめて精神だけを鍛えればいいと思っていた時期もあるし。それと同じように、今、音楽をどうしてやろうかというところに入ったんだと思う。20年後、30年後まで先のことはわかんないじゃん? でもさ、今から10年後、60歳の時にどんな姿勢で立っていたいかを考えたら、今日やるべきことは自ずと決まってくる。ただ単に若くありたいっていう人もいるけど、そういう願望はないの。周りのバンドマンを見ても年齢のわりに若い人が多いけど、よく見てみりゃみんなちゃんと年相応だしね。永遠の若さを求めるんじゃなくて、今から10年後に自分がどんなスタイルで立っていられるかがより重要だと思っている。だから、老けていくことも織り込み済みだし、むしろ、どういうおじいちゃんになっていくかも考えなきゃいけない。

飛行機になって空を飛ぶんじゃなくて、
自分たちの形のまま空を飛びたい

ーーBRAHMANは、2000年代のバンドマンたちがしのぎを削ってバチバチやってた時はストリートの最前にいて、震災以降は今までの戦うようなスタイルではなく、お客さんとの向き合い方に優しさが滲み出るようになりましたよね。そんな中、BRAHMANのセンスがすごいなと思ったのが、コロナ禍におけるBRAHMANのライブ演出なんです。ライブをやらないという選択肢もあったし、お客さんが声出しを我慢するようなライブをしなければならない場面もあったけれども、BRAHMANは歌の真髄を聴かせるライブにした。その発想の転換がすごいなと驚いて。それは「こういう時代ならこういうことができる」という見せ方だったなと。

できないことがたくさんあったからこそ逆に考えたの。だって、コロナがなかったら静かな曲だけでライブをやろうなんて思うことなかったから。そもそもホールでやろうとも思わなかったし。だからこれは、新しい自分たちと出会えるチャンスだし、さらにそれを見せることができるチャンスじゃんって。できないことを嘆くのは簡単だけど、できることを探し出してみればいくらでもあんだよ。好きか嫌いかは置いといてね。俺たちみたいな激しいバンドにアコースティックなライブを求めていないという人たちもいるかもしれないし。そんなのわかってんだよ。わかった上で静かだけど沸々としている音楽をやる、そういうチャレンジをする必要があると思ったんだよ。結果、そういった活動を通じて、バンドを支えてきた部分が底上げされたの。

ーーというと?

丁寧に歌うとか丁寧に演奏するとか、そういうベースになるところ。極端に言えば、今までは、演奏しなくても相手が納得すればそれでいいと思っていたけど、そうじゃなくて、演奏するにはメンバーみんなが息を合わせる必要性があることに気付いた。「ここは抑えてみようか」とか強弱のつけ方を話しあったり、今までにない気づきばかりだったね。

ーーそういったコロナ禍における選択も含めて、BRAHMANの30年の歴史において、みなさんは常に挑戦し続けてきたんだなと。

その分、「前のこういうのが好きだった」という人にとっては、俺らは過去を全部切り捨ててきたように見えたりもするんだろうけどね。だけど、俺らの中では全部繋がってるから。もちろん30年もやってると「あの時のアルバムが好きです」と言われることもあるよ。でも俺らの中では、それは変わったわけじゃなくて、すべて1本の線で繋がってる。それに、昔聴いてくれていた人達も、もういないのではなくて、いるんだよ。ずっとここまで一緒に歩いてきたという感覚がある。

ーーおっしゃる通り、初期の頃からライブでの表現、曲の作り方、心の在り方といった変化を全て経たからこそ、新しいアルバム『viraha』でも、こんなにバッキバキのハードコアでエネルギッシュで開けた作品にたどり着いたのかなと。

それもあるだろうね。例えば、今売れる音楽を理論的には作れると思うの。流行り廃りもあるけど、こういうコードでこういう風な音楽をみんなが求めてるのはわかるから、ある程度は作れると思う。だけど、じゃあ自分たちにとっての音楽とは何かを考えると、それは独自性ーーーつまり、俺らが思うオリジナリティーでしかない。その人にしか出せないものは替えがきかないわけよ。俺たちは音楽的に優れてるとも思ってないし、たくさんフェスに出て人気があるバンドと横に並んでいるからすごいとも思わない。だけど、なんでフェスやイベントに俺らが呼ばれるかと問われれば、それは圧倒的な独自性があるからなんだと思ってる。だから、俺たちにしかできないことをとことん探すことで自分たちの価値を上げられると思っていて。『viraha』が辿り着いたのも、そういうところなんじゃないかな。

ーー横浜BUNTAIでの4時間にわたるワンマンライブ『六梵全書 Six full albums of all songs』もまさに、BRAHMANにしかなしえない独自性ですよね。

あれは自分たちではやろうとは思わなかったけどね。スタッフや周りに無茶振りされてやってみた結果、大きなものを得られた。フルマラソンを走るためにフルマラソンを走る練習はしないのと同じように、4時間通してのリハはできなくって。だから、ちょっとずつ練習はしてたけど、最後まで全部歌えるかどうかは当日までわかんないままライブが始まったの。でもさ、声、出んのよ。4時間も爆音の中にいるから耳もやられちゃって、ほとんど聞こえてない。でも、音が額から出て、空気をここ(額の延長線)に当てるんだと思いながらずっとやってたら、声が出てんのよ。これ、初めて細美武士に「どうやって歌ってんの?」って聞いた時に教えてもらったのと同じだったんだよね。言ってたことはこれか、って。その通りだったのよ。

ーーそこに繋がってくるんですね……! そういった挑戦と進化の積み重ねの独自性が、歴史になるんですね。

そうかもね。誰かがやってることをブラッシュアップすることはできるじゃん。だけどやっぱり、誰もやってないことに挑戦することが自分たちのしたいことなんだと思う。もともと器用なバンドでもないし、売りにできるようなスキルを自分たちが持ってないことはわかってる。だからこそ、歪(いびつ)だけど自分たちだけの形であるために、1から1000を作るんじゃなくて、0から1を作る。それこそが自分たちがエネルギーを注ぎ続けてきた結果なんだと思う。飛行機になって空を飛ぶんじゃなくて、自分たちの形のまま空を飛びたいから。

ーーTOSHI-LOWさんにはかつて、「今日が最後の日で、歌を歌えるならこう歌うか」と考えていた頃がありましたが、今は「この先もうちょっと歌うために、今どういう歌を歌うか」「今日が最後じゃなくて、もしかしたら次の日もまた歌うために今日どういうふうに歌うのか」と、ステージに立つ想いも変わってるような気がするんですけど。

それもさっきの話と同じで、「今日を歌いきる」ということは「10年後にもし歌えるならどんな歌を歌うか」ということの始まりなんだよね。だから、別に今日終わってもいいんだよ。それは、「今日一日を生きる」ということだから。その上でもし、10年後にもう1度同じステージに立つならば今のままでは足りないと思うわけ。ガンジーが言ってる通りだよね。「永遠に生きるかのように学べ。明日死ぬかのように生きろ」ということなのかな。

ーー大事な考え方ですね。わかっていても、なかなかできないことなので憧れます。

そう考えると、やるかやらないかの選択肢がいきなり目の前に現れるのよ。賢くなりたいなら勉強するしかないじゃん。とはいえ、俺も本当は途中で終わると思ってたの。もう50歳だし、いつまで毎日走んないといけないんだよって思ってた。でも、「今日もしんどいのか……」と思いながらも毎日やんないといけないわけ。永遠にやりたいという欲望がある反面、どっかで終わりたいという欲望もあって。自分のノートを自分でピタッと閉じて、それを読み返す時間も必要なのかなって。なんというか、最後に「自分の人生ってこうだったな」と振り返る静かな時も本当は欲しいのかな。自分の人生が自分で全部決められるならね。

ーーそれは年齢的にもそういうフェーズに入ってきているのでしょうか。

精神的には、どう考えても最終章だよね。人生100年時代ならまだ半分50年あると思うかもしれないけど、精神的には20代ぐらいで8割ほど終わってると思うから。ほら、子供の頃の夏休みってすごく長かったじゃん。学校も5時間目まであるとすごく長く感じたけど、5時間目って今思えば夕方だからね(笑)。それが人間は慣れてくると短く感じるようになるし、新鮮味がなくなってくる。そう思うと、人生はもう、ほぼほぼ終わりに近いんじゃないかなって。もちろん、これからも新しいチャレンジをすると思うよ。だけど、どう考えたって予測できることの方が多いから。だからこそ、最終章にさしかかって自分はどうありたいかを考えちゃうし、この体が続く限りやり続けなければいけないと思うんだよ。

ーーなるほど。

考えない? 俺もそんなこと考えるなんて思わなかったけど、50歳になると急に「人生はいずれ終わる」という実感がすごい湧いてきてさ。死というものが、以前より身近になる。

アニバーサリーイヤーの集大成となる『尽未来祭』
気持ちで通じ合っている、仲間と作り上げる3日間に

ーー1人の人間としてもバンドとしてもひとつの節目に立たれているということが、お話からすごく伝わってきました。ここで『尽未来祭』についても聞かせてください。シークレットもありますが、10年前は、SUPER STUPIDの復活というサプライズもありましたよね。

今回はどういう感じになんのかね。10年前は大変だったよ、2度とやりたくないと思ったもん。パンドラの箱を開けるとはこういうことかと(笑)。

ーー同世代、先輩・後輩みんながBRAHMANをお祝いする、祝福の日になりますよね。ブッキングはどうやって進められたんですか?

30周年をちゃんと祝ってくれる人たちとやりたいなと思って。気持ちが互いに通じる人たちに自分で連絡して決めていったね。

ーーいわば、友達というか。

ほんと、みんな友達。だから、事務所同士とかじゃなくて、「今度30周年だから協力してよ」と話して返事をくれていた人に会ったタイミングで「出てよ」と言って。「いいよ」と言ってもらえた人たちが集まってくれてる。みんな飲みにも行ったことあるし。「たまに一緒にやったことあります」みたいな距離感ではない、深い関係の人たちばっかり。

ーーSUPER BEAVERとは、この10年で出会ったバンドですよね? 渋谷さんはTOSHI-LOWさんのことを「TOSHI-LOW」と呼んでますよね。

そうだね。若い子にいうんだけど、「別に『さん』いらないよ」って。なんか嫌なの、バンドマン同士で上下つくことが。別に話し方で失礼かどうかとか思わないし、過剰な敬語を使ってよいしょとか大っ嫌いだし。逆に言えば、俺も先輩にそういう接し方したくないから。もちろんリスペクトはすごくあるんだけど、それは態度だったり心で示せるものはあると思うからさ。むしろそんな敬語つかってちゃ一生仲良くなれないじゃん。ただのビジネスみたいな人もいるからね。

ーーそう思うと、本当に心からの仲間ばかりですよね。

初日は90年代からの繋がりも多いね。2日目は今のフェスで頑張っている人が多いのかな。3日目は、こういう時じゃないとなかなか一緒にやりづらいバンドが多いかな。1組1組と対バンするのもいいけどライブハウスでするわけにもいかないじゃん。だから、こういう機会だからこそ呼べるのかなって。

ーーLUNA SEAはどういうキッカケだったんですか?

SUGIちゃん(SUGIZO)と震災の支援先で会って。まだまだ「売名だ!」とか言われていた頃、SUGIちゃんは宮城県の石巻とかで俺たちとは全然別のルートから入って、ガンガン支援活動やってて。そこで出会ったんだよね。

ーーBUCK∞TICKの出演もすごいですね。

BUCK∞TICKとかThe Birthdayとか、ボーカルがいなくなっちゃう中でバンドを続けるという選択肢をとったことが、本当にすごいなと思っていて。今までは俺も、メンバーが変わるくらいならそこで終わりにした方が潔くていいと思ってたの、正直。だけど、欠けたところをみんなで補ってバンドを継続するって、なんてすごいことなんだろうと、想像しただけで心がぐーってなるというか……。だから、ただ応援したいとかそういうことじゃなくて、その新しい歩みを観てみたいという気持ちだね。

ーー2015年の『尽未来祭』で、TOSHI-LOWさんが「何も分からないままライブを始めて、切磋琢磨する中で憎しみも妬みもあって……でも改めて、やっぱりこういう人たちと一緒に俺はやってきたんだ」「だからすごく誇りに思って、この先やれそうな気がする」といったことを話していたのを覚えてて。あの日から先もやり続けてきた答えがこの3日間なんですね。

さっき話していた10年後の答えだよね。今はここに妬みもはないし、そもそも比べてもないし競争しようとも思ってないし。みんなすごいなって思ってるから。妬みも消えて、たぶん10年前に言ったことがやっと実現できたんだよね。

ーーなるほど……。そんなBRAHMANの30周年を祝う『尽未来祭』。ほかのどのイベントともフェスとも違う、独特な空気になるんだろうなと。

みんなが出てくれるってことがメッセージだからね。それ以上は求めてない。

ーーみんな並々ならぬ想いでステージに立たれると思うので、2度とない貴重な3日間をすごく楽しみにしています!

取材=大抜卓人 文=SPICE編集部(大西健斗)
撮影=ハヤシマコ 
ヘアメイク=JOUER INTERNATIONAL(モリエユウコ)

イベント情報

『尽未来祭 2025』
幕張メッセ国際展示場9-11ホール
2025年11月22日(土)23日(日)24日(月・振休)
OPEN 10:30 / START 12:00
 
<11/22出演者>
BRAHMAN / BACK DROP BOMB / THA BLUE HERB / EGO-WRAPPIN' / 黒夢 / LOW IQ 01 & THE RHYTHM MAKERS PLUS / MONGOL800 / RHYMESTER / Riddim Saunter / SCAFULL KING / ...secret
 
<11/23出演者>
BRAHMAN / ACIDMAN / The Birthday (クハラカズユキ, ヒライハルキ, フジイケンジ) / G-FREAK FACTORY / HEY-SMITH / MAN WITH A MISSION / マキシマム ザ ホルモン / ORANGE RANGE / SiM / 10-FEET
 
<11/24出演者>
BRAHMAN / ASIAN KUNG-FU GENERATION / BUCK∞TICK / DIR EN GREY / Dragon Ash / ELLEGARDEN / GEZAN / LUNA SEA / SUPER BEAVER / 04 Limited Sazabys
 
・3日通し券スタンディング ¥29,700(税込) SOLD OUT!!
・3日通し券サイド指定席 ¥38,330(税込) SOLD OUT!!
※スタンディングエリア両サイドの指定席エリア/スタンディングエリアの利用可能
・22日券スタンディング ¥13,330(税込)
・23日券スタンディング ¥13,330(税込) SOLD OUT!!
・24日券スタンディング ¥13,330(税込) SOLD OUT!!
 
<一般発売>
イープラス(国内専用) https://eplus.jp/jinmiraisai/

リリース情報

<New Blu-ray/DVD>
BRAHMAN『六梵全書 Six full albums of all songs』
2025年6月11日(水)発売
◎完全生産限定盤 A(Blu-ray/2枚組) 9.350 円(税込)TFXQ-78283~78284
◎完全生産限定盤 B(DVD/3枚組) 8.250 円(税込)TFBQ-18305~18307
 
■ご予約はこちら
 
<New Album>
BRAHMAN『viraha』
2025年2月26日(水)発売
◎初回生産限定盤 4.400円(税込)TFCC-81117~81118  
Disc1:六梵全書 Six full albums of all songs Documentary
Disc2:30th Anniversary Best Live Selection
◎初回仕様通常盤 3.300円(税込)TFCC-81120 
 
■ニューアルバムのご購入はこちら

【BRAHMAN 30th Anniversary 特設サイト】
 

ツアー情報

BRAHMAN tour viraha 2026
・2026/1/13 千葉 LOOK Guest: RADIOTS
・2026/1/15 茨城 水戸LIGHT HOUSE Guest: BACK DROP BOMB
・2026/1/18 埼玉 越谷 EASYGOINGS Guest: Bray me
・2026/1/27 三重 四日市CLUB ROOTS Guest: GASOLINE
・2026/1/29 徳島 club GRINDHOUSE Guest: 四星球
・2026/1/31 高知 X-pt. Guest: Oi-SKALL MATES
・2026/2/6 長崎 DRUM Be-7 Guest: ストレイテナー
・2026/2/8 佐賀 GEILS Guest: JUNIOR
・2026/2/10 宮崎 LAZARUS Guest: SHANK
・2026/2/12 大分 DRUM Be-0 Guest: PEAR OF THE WEST
・2026/2/15 富山 MAIRO Guest: UPSET BEHIND 
・2026/2/17 長野 JUNK BOX Guest: タテタカコ
・2026/2/26 鳥取 米子laughs Guest: FOMARE
・2026/2/28 山口 周南RISING HALL Guest: the band apart
・2026/3/13 福井 CHOP Guest: KOTORI
・2026/3/15 奈良 EVANS CASTLE HALL Guest: Age Factory
・2026/3/17 和歌山 CLUB GATE Guest: PROUD HAMMERS
・2026/3/22 愛知 名古屋ReNY limited Guest: フラワーカンパニーズ
・2026/3/24 大阪 GORILLA HALL Guest: SCAFULL KING
・2026/3/26 滋賀 U☆STONE Guest: SKA FREAKS
・2026/4/3 群馬 高崎芸術劇場 スタジオシアター Guest: G-FREAK FACTORY
・2026/4/7 岐阜 Yanagase ants Guest: STAB 4 REASON
・2026/4/14 秋田 Club SWINDLE Guest: 羅漢
・2026/4/16 山形 ミュージック昭和セッション Guest: 9mm Parabellum Bullet
・2026/4/18 岩手 KLUB COUNTER ACTION宮古 Guest: BULL THE BUFFALOS
・2026/5/8 岩手 KESEN ROCK FREAKS大船渡 Guest: FUNNY THINK
・2026/5/10 宮城 石巻BLUE RESISTANCE Guest: ASPARAGUS
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