三越劇場のリアル・トラウム・シアター『メリー・ウィドウ』が大好評のうちに初日終了!

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2025年10月13日(月祝)三越劇場にてリアル・トラウム・シアター=ミュージカペラ『メリー・ウィドウ』 が開幕した。初日を終え、オフィシャルレポートが到着した。


IL DIVOに始まり、多くのフォロワーを生んできたクラシカル・クロスオーヴァーの男性ヴォーカル・ユニット。メルビッシュ湖上音楽祭やドイツのオペレッタツアーに参加するなど国際的なキャリアを歩むテノールの高島健一郎をリーダーとして、東京芸術大学を卒業した同門の声楽家たち4人が集まって結成されたREAL TRAUM(リアル・トラウム)はもはやそのジャンルにおいては日本のトップランナーと言えるのではなかろうか。

そんな彼らが、グループ結成2周年記念企画として、日本橋の三越劇場で主宰するリアル・トラウム・シアター=ミュージカペラ『メリー・ウィドウ』(レハール作曲のオペレッタの翻案)全5公演の初日が幕を開けた。初日の模様をこれからご覧になる方のネタバレとならない範囲で、その熱狂の公演の模様をお伝えしたい。

いよいよ明日開幕!!グループ結成2周年企画『メリー・ウィドウ』【日本語新訳】

まずは、高島がウィーンに留学してまで研鑽を積み、いつか日本でも演じてみたいと考えていたという、レハールのオペレッタをこんなに早く実現出来たことが驚嘆に値する。1年半以上の時間をかけて徐々に煮詰めていった企画と本人からも聞いていたが、どんな風に仕上がったのか、インタビューをした筆者も興味津々で劇場に足を運んだ。

老舗百貨店の6階にある劇場で普段は新劇などのざまざまな演劇が多く行われる劇場であるが、その歴史は1927年創設と100年近い歴史を誇る。ホールの中に一歩足を踏み入れると、クラシカルながらもその美しい内装にも感動する。1927年と言えばまさにレハールが大活躍していた時代であり、この劇場でレハールの『メリー・ウィドウ』を体験できる贅沢も味わいたい。

オリジナルは3幕で、短くても2時間30分以上の上演時間がかかるオペレッタであるが、ミュージカペラと銘打ったコンセプトに従い、なんと1時間50分ほど、2時間以内に大胆なカットを試み、休憩をはさむことなく一気に上演が試みられていた。そのことがプロットのテンポ感を良くして、あっという間にフィナーレを迎えていたというのが偽らざる感想である。

高島が自ら翻訳して、杉浦が演出とともに磨き上げていった日本語のセリフと歌詞も耳になじみが良く、日本大使館を舞台とした工夫も含めて、自然に舞台の世界へと引き込まれる。日本人が外国人の役を演じる時の違和感や不自然さを微塵も感じさせない。これまでのレハール『メリー・ウィドウ』の短所の多くをカバーできていたように感じた。もちろん原作にある東欧の架空の国の大使館あることのミステリアスな雰囲気やオリエンタリズムのような魅力はなくなったが、それを補ってあまりあるリアリティや共感性を実現した演出であったように思う。

キャストの歌と演技も素晴らしく、迷いながらも純粋な愛を貫こうとする高島のダニロやオリジナルでは単なるプレイボーイとして描かれがちなカミーユを鳥尾が彼の持ち味である少年性やピュアリティをもって実に魅力的な役に高めており、彼のアリアは初日の白眉であった。また女たちに翻弄され続ける津田大使の堺と道化役の根岸三等書記官の杉浦もコミカルな演技に奮闘して、会場を笑いの渦に巻き込む。2人がリードして男性陣で歌う、原作の「女女女」改め「LOVE LOVE LOVE LOVE」は、歌詞も秀逸であるが、振り付けも実に楽しく間違いなく一番の盛り上がりを築いたシーンであった。フランス人コンビを演じた近藤と仁賀も難しいコメディ部分の演技をしっかりとこなし、会場の空気をより楽しいものにしてくれた。倉田華奈役の小川は実に妖艶なハンナを演じ、名曲「ヴィリアの歌」で歌の実力を遺憾なく発揮した。ヴァランシエンヌ役の田代もミュージカルで培った歌とダンスで明るくキュートな魅力で観客を魅了した。また踊りと歌が分離しがちなオペレッタの限界をうちやぶり、歌とセリフと踊りの世界が見事に溶け合って、ひとつの感情を生み出ししていたことも新しい。そこは、「バレエ大好き」チャンネルで知られるけっけちゃんこと松浦景子と振付も担当した天野夏実の2人が縦横無尽に舞台をある時は駆け巡り、ある時は撹拌して、静的になりがちなオペレッタにはない雰囲気と楽しさを作り上げてくれた。

音楽監督の追川礼章の仕事も実に多才で見事である。レハールの豊かなオーケストレーションを弦楽カルテットと自らのピアノ演奏でミニマムな編成で最大に豊かなサウンドを生み出し、しかも指揮もつとめ、文字通り公演の要石のような役割を担っていた。

レハールの『メリー・ウィドウ』の新演出として間違いなく革命的かつ現代的な「笑いと感動に満ちた公演」だったのではないだろうか?高島の新翻訳、杉浦の演出、追川の音楽監督というオール30代の若々しい才能を結集して、クラシック音楽に新風を吹き込んだことは間違いない。Xでも「想像を超えた楽しさと感動」との書き込みが多く寄せられている。ぜひ、残された三越劇場での公演に足を運んでほしい!

文:神山薫

公演情報

リアル・トラウム・シアター=ミュージカペラ『メリー・ウィドウ』 
 
日程:2025年10月13日(月・祝) ~ 10月15日(水)
会場:三越劇場 (東京都)
 
ドイツ語翻訳:高島健一郎
演出:杉浦奎介
音楽監督:追川礼章
出演:高島健一郎(REAL TRAUM)、堺 裕馬(REAL TRAUM)、杉浦奎介(REAL TRAUM)、鳥尾匠海(REAL TRAUM)、小川栞奈、田代明、近藤真行、仁賀広大、松浦景子、追川礼章(音楽監督・Pf)

一般発売:9/13(土)10:00~ 
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