“あお”をテーマに掲げた2025年の締めくくりと次に向かう決意を見せたGalileo Galileiビルボード公演をレポート
Galileo Galilei
Billboard Live presents Galileo Galilei “BLUE WINTER”
2025.12.9 ビルボードライブ東京
ビルボード公演としては昨年のバンド初のビルボードライブ横浜に続く今回。東京と大阪で開催された『BLUE WINTER』の東京公演2ndショーをレポートする。
と、その前に再始動後3年を数える今年のGalileo Galilei(以下、GG)の活動を振り返ってみると、2月には彼らのファンを公言するポーター・ロビンソンのライブにゲスト出演。3月の再録アルバム『BLUE』のリリース、それを体現する一夜限りのライブ『あおにもどる』を開催。8月にはBase Ball Bearとの2マンツアー、そして11月にはアルバム『MANSTER』『MANTRAL』『BLUE』という“3兄弟アルバム”を軸にした『TRITRAL TOUR』を開催した。他にもイベントにも精力的に出演し、バンドとしての活動がギアアップした印象が強いが、何と言ってもギターのDAIKIが正式メンバーに加入し、5人組バンドのアンサンブルや見え方が明快になった『TRITRAL TOUR』は今とこれからのGGを明示している。
Galileo Galilei
2回目のビルボード公演だが、すっかりクリスマスと忘年会を兼ねた恒例行事に感じられるのは筆者だけだろうか。ライブハウス公演より少しお洒落しつつ、リラックスしたムードが漂うフロアはファンがこのライブを待望していることを感じる。ちなみに今年のスペシャルドリンクはツアー名を冠したもので、多くのテーブルにそれが見える。開場BGMはDijonをフィーチャーしたボン・イヴェールやMK.geeだったりして、今年の潮流を感じながらメンバーの登場を待つことに。フロアを通ってステージに上がった5人、今年は普通の衣装である。去年のクリスマス仕様の“ダサセーター”は暑かったのだろう。
Galileo Galilei
特筆(!?)すべきはセンターに岩井郁人(Gt/Key)が立ち、尾崎雄貴(Vo/Gt/Key)はバンドを俯瞰するようなステージ右端にいることだった。スターターは『TRITRAL TOUR』でも重要な位置にあった「UFO」で、岩井とDAIKI(Gt)のツインギターが拓かれた、そして胸がダイレクトに震わせる。2人が向き合ってプレイしていることも要因かもしれない。そして岡崎真輝(Ba)のプレイも非常にグルーヴィだ。メンバーの表情やプレイの細部を受け取れるこの会場ならではの魔法、そしてファンの満たされた表情もライブを駆動していく。さらに後ろの幕が早くもオープンになり、夜景とイルミネーションに加えて月もライブの演出に加わる。夜景を背景に、物語を聴くような「くそったれども」が新鮮に響いたあとは、先日のツアーでも盛り上がりを見せた「リトライ」。“1・2、1・2・3!”のカウントを岩井が担い、ファンも一緒に声を上げる。そのタイミングでグッとフロア全体の温度が上がる感覚を得た。『TRITRAL TOUR』から間もない公演だけに、この日のセットリストもそれを踏襲していると思うのだが、会場のアットホームな雰囲気も手伝って、ファン同士の笑顔も伝播する。
尾崎雄貴
岩井郁人
DAIKI
イントロが野球場のSEそのものに変わって、よりユーモアを感じるようになった「MATTO LIFE」はブルージーな人生の歌でありつつ、言葉遊びでもある内容がすっかり浸透した感じで、ディランばりの雄貴のトーキングボーカルや岩井のエルビス・コステロっぽさのあるオルガンのフレーズにもニヤついてしまった。オルガンなだけに、より野球場っぽさが増すという効果もあったかもしれない。曲終わりでスペシャルドリンクを手にした雄貴が乾杯の発声をして、ダンサンブルな「SPIN!」へ。アッパーなビートに加え、DAIKIのギターが曲にとびきりの輝きを与えていた。一転、人を愛することの歓びと怖さが同居する「色彩」に圧倒される。全員の演奏がこの曲の深淵を表現しているのは間違いないが、特にコーラスと丹念なアルペジオで寄り添う岩井のプレイは格別だ。雄貴と岩井が向き合って鍵盤を弾く「BABY I LOVE YOU」につながる構成もいい流れ。シンセのレイヤーが支配し、さまざまなSEや生音のプレイが挟まれるスタイルに、個人的には最近見たDijonのライブの折衷的な感覚を思い出した。もしかしたら上の階から俯瞰で見るからこそ感じる面白さなのかも知れないが、ショーというよりスタジオライブを見ている感覚はこの会場、そしてGGならではだと思う。
Galileo Galilei
一瞬、フロアの照明も明るくなりファンの表情を確認したメンバー。雄貴は「5人になってまとまんなくて」と言いつつ楽しそうだ。そして“青”をテーマに活動してきた今年、この『BLUE WINTER』も『TRITRAL TOUR』の延長にあるものとして、1年の区切りのライブができることが嬉しい言う。「ここで1年の区切りをつけて5人になたGalileo Galileiを始めていきたいと思ってます。今日はある種、忘年会。ということで、我が社の社歌を」と、「やさしいせかい.com」が奏でられた。さらに「この曲も社歌っぽいのでは?」と感じた「4匹のくじら」が続けて演奏される。だがフォーキーなニュアンスは社歌というより、旅のテーマソングかもしれない。雄貴のMCもあってか、フロアはよりリラックスしたムードで今のGGを満喫している。
Galileo Galilei
ベースとギターリフが曲の個性を際立たせた「ナンバー」でタフさを増したあとは、変拍子のクラップにファンが悪戦苦闘しながら食い下がる「タタラ」。筆者からは尾崎和樹(Dr)のクラップがよく見えたのでどんな打ち方なのか理解でき、より楽しめた。演奏後、雄貴が「今までで一番テクニカルなお客さんだ」というと、岩井も「感動した」と一言。後日、和樹が解説動画をSNSにアップしていたので今後の参考にしたいところだ。そして本編ラスト的に今年のタームを象徴するGGのロックンロール「あおにもどる」を披露。岩井とDAIKIの長いリフレインが5人バンドGalileo Galileiのアンサンブルを象徴するようにグルーヴを増していった。
岡崎真輝
尾崎和樹
そして今回のビルボード公演のスペシャリテは尊敬するthe pillowsの「ハイブリッド レインボウ」のカバー。演奏を前に雄貴から山中さわおバンドとの対バンに呼ばれたこと、GG結成後初ライブではなぜかハードコア系のイベントだったが、そこで演奏したのが「ハイブリッド レインボウ」だったこと、そして再始動後、予測できないほどさまざまなご褒美をもらっていて、今のムードを大事にして2026年はこの5人で爆発する予感があり、これまでより外に向けた活動をしていくと思う、と一気に話してくれた。尊敬する先輩の音楽をこのタイミングでカバーすることの理由も含め、これ以上の説得力はないんじゃないだろうか。今のGGに比べるとシンプルな楽曲だが、サビのコード進行の素晴らしさ、栄光の基準を他人に委ねちゃいけないことなど、どれほど心強いアンサムなのかを実感した次第だ。ラストは「星を落とす」で、ギターサウンドがきらめくレイヤーを作り出し、夜景も相まってこの街は私たちのもの、そんな音楽だから作り得る前向きな気持をもたらしてくれたのだった。
どこか孤高な存在であるGalileo Galileiが、そこにとどまらない躍進を来年は見せてくれそうだ。2026年、5月からスタートする全国7ヶ所を巡る全国ツアー『NAKED HERO』に期待したい。
Galileo Galilei
文=石角友香
撮影=Masanori Naruse
セットリスト
2025.12.9 ビルボードライブ東京
1. UFO
2. くそったれども
3. リトライ
4. MATTO LIFE
5. SPIN!
6. 色彩
7. BABY I LOVE YOU
8. やさしいせかい.com
9. 4匹のくじら
10. ナンバー
11. タタラ
12. あおにもどる
13. ハイブリット レインボウ(the pillowsカバー)
14. 星を落とす
計14曲
配信情報
ツアー情報
オールスタンディング(KT Zepp Yokohama公演のみ2階指定席あり)